博客 金烏工房

中国史に関する書籍・映画・テレビ番組の感想などをつれづれに語るブログです。

『人民的名義』その11(完)

2017年06月25日 | 中国近現代ドラマ
王文革が蔡成功の息子を人質にとって立て籠もった件ですが、説得に駆けつけた陳岩石がかわりに人質となって子供を解放させ、それと並行して省の方では立て籠もりの原因となった大風集団の株権を山水集団に手放させます。そして株権が自分たちの手に戻ったと王文革が気を抜いた隙に警察が突撃し、王を逮捕。軽傷を負ったうえに疲労が酷いということで陳老はそのまま病院に運ばれて入院。

そして反貪局で劉新建の審問が終わると、省の幹部会議での決定により、趙瑞龍・高小琴・蕭鋼玉ら関係者の身柄を拘束。(事の発端となった丁義珍はアフリカでひっそりと趙瑞龍の雇ったスナイパーに狙撃されて死亡しました。)

で、それぞれの審問が開始されますが、高小琴の応答がどうも要領を得ないということで、侯亮平が革命京劇「沙家浜」の「智闘」の段を歌わせたところ、今までと歌い方が違う、これは別人だ!となり、寸手のところで再び香港に逃亡しようとしていた高小琴を空港のカウンターで捕捉。これまで侯亮平が宴席で高小琴と「智闘」を歌うというシーンが二度挿入されていたのですが、この場面のための伏線だったんですね。

で、高小琴だと思って最初に拘束されたのは、彼女の双子の妹で、カモフラージュのために香港から急遽連れて来られた高小鳳というオチでした。実はこの妹の方は高育良の愛人で、趙瑞龍が呂州市月牙湖で美食城を開業するために手土産として高育良と引き合わされ、高育良が思いのほか彼女に惚れ込んで、6年前の2008年に密かに呉恵芬と離婚し、彼女と再婚していたという事情が明らかとなります。

高育良と呉恵芬は世間体のこともあって離婚の事情を周囲に隠し、6年間仮面夫婦を続けていたわけですね。で、高小鳳は育良書記の威光もあって香港で彼との間に生まれた子供とともに暮らしていたという次第。事情が暴露された後も高育良は「私は法に反することは何もやっていない」などと言っていますが、これまた本邦でもよく耳にする理屈ですね。


そして残るは逃亡を続ける祁同偉。逃亡先がかつて彼が麻薬犯と戦って大手柄を建て、出世の糸口になった孤鷹嶺であると察し、侯亮平は説得のためヘリに乗り込んで現地へと向かいます。しかし彼はかつての恩人宅に立て籠もり、投降を拒否して拳銃自殺を遂げてしまいます。そして無事に捕縛された関係者の審判が開始され……

【総括】
ということで、中国の国内問題に対する啓発ドラマのはずが、すっかり日本の籠池・加計問題に対する啓発ドラマのようなノリになってしまいました (^_^;) まあ中国ではあの手の不正はあちらこちらで起こっていて、それに対する当事者の言い訳とか、当事者を擁護する周囲の屁理屈なんかも聞き飽きているということだろうなと。

露悪的なところもないではないですが、『大秦帝国之崛起』が制作者の思いの丈をありのままにぶちまけていたというか、ダダ漏れのように感じられたのに対し、こちらはかなり抑制的で計算されて作られている印象を受けますね。どちらも日本で放映して欲しい……と言いたいところですが、本作の方は外国での放映やソフト販売が許可されていないらしいということで残念です…… 

メインテーマの反腐敗問題だけでなく、何かとSNSや動画といったネット環境が活用される世相であるとか、生活水準や社会的地位、そして個人の志向によって変わる食事のシーンといった具合に現代中国の生活のディティールがちゃんと表現されているという点でも面白いドラマだと思います。
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『人民的名義』その10

2017年06月20日 | 中国近現代ドラマ
『人民的名義』第46~50話まで見ました。

高育良が高小琴らしき女性といちゃついている暴露写真ですが、どういうわけか反貪局の職員用宿舎で謹慎中の侯亮平のもとにも届けられます。


写真を届けたのは宿舎管理員の丁秀萍さん。事の次第は監視カメラにバッチリ映っていたので当局にバレバレで、彼女は呂梁に呼び出しを食らいますが、「侯亮平は気さくで仕事熱心ないい人なのに、大事な仕事を邪魔立てして謹慎させるお前達は一体何を考えているのか」などと言いたいことをぶちまけます。

写真は外部で接触した何者かに手渡されたということですが、実は趙瑞龍のかつての商売敵兼交渉相手である杜伯仲が、趙から多額の融資を引き出すために脅しとして関係各所に送りつけたものでした。「小高」はもともと趙瑞龍が愛人として「老高」こと高育良にあてがったのですが、杜伯仲は二人のために別荘を用意し、二人の関係を熟知し、暴露写真を撮影できる立場にあったというわけです。(無論呂梁や侯亮平らはこの時点ではそういう裏事情は知りません。)

写真を手にした侯亮平は一瞬困惑しますが、「よっしゃ高老師本人に見せたろ。」ということで、休暇を取って漢東にやって来ていた妻とともに高宅へ。「実は今日先生にご報告したいことがありまして」と高育良に暴露写真を見せる侯亮平。こいつ本当にやりやがったwww しかし意外にも妻の呉恵芬が「こんなの夫を陥れるための陰謀よ!」と否定。高育良も表情を少し引きつらせつつ「その通りだ!」と同調します。この少し前に呉恵芬は姉に実は夫のことで思い悩んで抑鬱症を患っていると告白する場面があったのですが、これ以上追い詰めると彼女の抑鬱症がますます悪化してしまいそうです…… 高育良は侯亮平に北京への帰任を薦め、あからさまに厄介払いを図りますが……

帰宅後、管理員の丁秀萍さんが侯亮平に今度は「気をつけて!写真の件で当局がお前を追求しようとしている」という書き付けを送り、再び呂梁に呼び出されますが、今回も「お前達から侯局長を守ろうと思ったんだ!」と逆ギレしてますw 結局彼女は配置転換で宿舎の管理員から外されることになりますが、二回もやらかしてもクビにならないあたり、意外とホワイトな職場なのかもしれません (^_^;)

さて、車を売りに行ったまま行方をくらませていた蔡成功の運転手と会計の尤瑞星ですが、陸亦可の母親の呉法官の機転により、売ろうとした車のナンバープレートが偽造だったということで摘発され、隣の省の苑南県法院で拘留されていることが判明。陸亦可らは二人の身柄を引き取りに行くことに。

祁同偉らも二人の身柄の確保を狙い、携帯電話の盗聴を仕掛けたり現地の警察を動員して道路を封鎖させたりしますが、何とかすり抜けて青山区検察院で二人の訊問を開始。漢東省検察院でも蔡成功の訊問を行い、二限同時訊問となります。その結果、蔡成功のウソが明らかとなり、侯亮平の嫌疑が晴れ、沙瑞金は早速彼の職場への復帰を決定。

蔡成功が侯亮平を陥れるような虚偽の告発をしたのは、息子をたてに脅されたためということですが、果たして元大風厰の工員で蔡成功を怨む王文革がその息子を人質に取ってマンションに立て籠もり……というところで次回完結編へ。蔡成功がウソしか言ってないと見せかけつつ、実はそうでもないというのが面白いところ。籠池氏や前川氏を一方的に嘘つき呼ばわりする人より、本作の制作者の方が人間を見ているという気がしますw
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『人民的名義』その9

2017年06月14日 | 中国近現代ドラマ
『人民的名義』第41~45話まで見ました。

高育良は祁同偉にいよいよ侯亮平排除のゴーサインを出します。前々から高育良の一味だったらしい京州市人民検察院検察長の蕭鋼玉の差し金もあり、蔡成功は侯亮平に40万元の預金入り銀行カードを賄賂として差し出したこと、1万元の現金を賄賂として手渡したこと、そして侯が丁義珍と共同で炭坑開発ビジネスを計画していたと告発。高育良は沙瑞金と、侯の上司にあたる漢東省検察長の季昌明に侯の取り調べを要請します。


高育良と蕭鋼玉のサービスシーン…… なぜかサウナで密談をしております。

香港に逃亡中の趙瑞龍も、御用メディア『鏡鑑周刊』の経営者劉生と通謀して側面支援し、省内で反腐敗に取り組む沙瑞金を「この3ヶ月の反腐敗の動きでもって漢東省での30年の改革開放の成果を否定しようとしている」と攻撃を展開。「経済がうまくいっているんだから多少の問題は目をつぶれ」というのは、日本でも政権批判に対する攻撃としてよく使われる理屈ですが、このドラマ、今の日本での政権擁護の理屈を丁寧に先回りして潰していってる感がありますね。

状況を察した侯亮平は、タイムオーバーになるまでギリギリ粘ろうということで、夜を徹して劉新建の再審を決行。逆に高育良&蕭鋼玉は告発によって劉新建への訊問をストップさせようとしますが、季昌明は侯をフォローしてできる限り時間稼ぎを図ります。その甲斐あって劉からある程度の情報を引き出すことに成功。

そして今度は侯亮平が訊問される番に。季昌明の監督のもと、蕭鋼玉と、いつの間にか反貪局副局長から同じ検察院内の紀検組組長に転任していた呂梁が訊問を担当します。蔡成功からの1万元の賄賂については受け取りを拒絶し、その場に居合わせた蔡の運転手がその証人となり、40万元の銀行カードと丁義珍との共同ビジネスについては事実無根で、大風集団の会計がその証人となると反論。しかし銀行カードは本人の身分証かそのコピーがないと作れません。そこで侯亮平は、4年前に蔡成功と飲んで酔っ払い、その足でホテルに宿泊する際に身分証をフロントに見せなきゃいけないというので、カードを蔡に預けたことを思い出します。その時にコピーを取られたのだろうということなんですが、今日本でも問題になっているように、酔っ払ってる間に何をされるかわからない社会というのは男女を問わず怖いですよね……

その証言を承け、季昌明は侯亮平の停職と謹慎を決定。侯亮平は謹慎中も陳岩石らとコンタクトを取ったりと大人しくしておりません。侯亮平の疑惑を晴らす鍵となる運転手と会計係ですが、実は陳岩石が顧問を務める新大風公司でも廃車の売買を請け負って呂州市に向かったまま行方をくらませて問題となっており、反貪局の面々を中心に捜索が行われることに。

一方、沙瑞金らの手元には高育良と高小琴とがただならぬ関係にあることを示す暴露写真が…… これから侯亮平の一件への反撃として彼の女性問題が取り沙汰されことになるんでしょうか。何かへの報復として女性問題が取り沙汰されるという光景はやはり最近どこかで目にしましたよね?こうしてみると日本政治は『人民的名義』の世界から一歩も出てませんね。

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『人民的名義』その8

2017年06月09日 | 中国近現代ドラマ
『人民的名義』第36~40話まで見ました。

祁同偉からのお誘いで、高小琴が経営するホテル「山水荘園」にて趙瑞龍との「鴻門宴」に臨むことになった侯亮平。これと並行して京州市にやって来た侯の姪劉姍と鄭乾、そしてお目付役の林華華による歓迎会も展開されますが、このドラマこういう対比が好きですよね (^_^;)

で、侯亮平の方は高小琴からの現ナマの受け取りも山水集団の株の所有も拒否し、彼らのグループに入るのを拒絶したということで、密かに趙瑞龍が雇った東南アジア一のスナイパー「花斑虎」に命を狙われます。しかし「あいつきっちり死角に入ってますね」とか言いつつ狙いが定められず、そして趙東来ら市公安局の動きがあったことと、趙瑞龍の姉から電話で「バカなことはやめろ」という忠告がなされたこともあって撤退。このスナイパー、前回の劉新建が侯亮平に追い詰められた時も劉の狙撃を依頼されていたのですが、この時も「劉がちょこまか動いて狙いが定められない」とか言ってたんですよね。やる気がなくて適当に手を抜いてるのではないかという疑惑が……(趙からの依頼料は20万元だそうです)

「鴻門宴」を脱した侯亮平は、祁同偉らが山水集団の株を所有しているという情報をテコにその夜のうちに劉新建への再訊問を決行。「趙立春前書記による改革がなかったら、今の漢東省の繁栄はなかったんだぞ!?」と、かつて秘書を務めていた趙立春の権威をたてに居丈高に振る舞う劉新建ですが、それに対して訊問を担当する林華華が「趙立春なんていなくても、李立春だか王立春だかが同じことをやったでしょ。中国の民衆が改革を選んだのであって、何とか立春さんが改革を賜ったわけではないと知るべきよ。」と反論をしています。その理屈でいくと、経済政策にアベノミクスなどと首相の名前を冠しているのはバカみたいだということになりそうですがw

しかしその間に、後難を恐れた趙瑞龍と高小琴は香港へと高飛びしてしまいます。特に趙瑞龍は出国禁止措置が取られていたのですが、偽のパスポートを用意して(彼は5種類のパスポートを所持しているそうな)、京州市ではなく呂州市の空港から出航に成功します。

しかし劉新建の訊問からははかばかしい成果が得られず、徹夜明けで帰宅した侯亮平ですが、そこへ高育良から呼び出しの電話が。祁同偉をかばい、これ以上の追求をやめるようにという高育良と衝突する侯亮平。その後高育良は祁同偉と会い、彼から本作冒頭で丁義珍に国外逃亡を勧めたのは、自分の意を承けた高小琴であること、そして陳海の謀殺を指示したのも自分であることを告白します。更には高育良自身もどうやら高小琴と深い関係があるようですが……?

呼び出しと言えば、その頃我らが達康書記も光明区に視察にやって来た沙瑞金から呼び出しを受けておりました。


例の腰をかがめなきゃ係員と話ができない光明区区役所の窓口ですが、結局撤去されずに腰の低い椅子とサービス用の氷砂糖を置いてごまかしてるだけだった模様w そして李達康は以前に自分が孫連城にしたように、裏側に回った沙瑞金と腰をかがめて応対させられるハメに…… 

沙瑞金と李達康はその後、従業員が窓から出入りしている大風厰も視察し、光明区長孫連城の怠慢ぶりに呆れます。沙瑞金は封鎖されていた工場の入り口を開放し、光明区側が移転地を用意するまで旧工場の使用を認可します。このドラマ、政財界の汚職だけでなくこういう「懶政」の問題も取り上げるんですね。
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『人民的名義』その7

2017年06月04日 | 中国近現代ドラマ
『人民的名義』第31~35話まで見ました。

呂州市での視察を終えた沙瑞金は、かつての同僚李達康の割を食う形で低い役職に留め置かれていた易学習を、呂州市市長代行に抜擢することを決定。その途端に「あいつがデキるやつだとオレは前から知ってた」みたいな昔話を次々と語り始める漢東省の幹部たち…… そして高育良はこの機に祁同偉を副省長へと昇格させようとしますが、こちらはあえなく却下。

その祁同偉ですが、以前から従弟らを地方公安局の要職に就けていたうえ、その身内が性犯罪を犯したということで揉み消しに走ります。有力者の身内の性犯罪の揉み消しに走る……日本でも最近耳にしたような話ですが、それはともかく妻の梁璐がさすがに座視できないと高育良に告発し、高も祁の副省長昇格が却下されたのは、他の省幹部がその情報をつかんでいるからではないか、このことが高自身への攻撃材料にされるのではないかと懸念し、揉み消しの阻止を図ります。


一方反貪局では欧陽菁への取り調べを再開しますが、獄中で誕生日を過ごすことになった彼女のためにバースデー・ケーキを用意するというサプライズもあり、蔡成功からの賄賂とされた50万元の銀行カードが、実は漢東油汽集団の会長劉新建からのもので、蔡成功は賄賂の仲介役にすぎなかったことを告白します。劉新建は前任の省委書記趙立春の元秘書で、今もその息子趙瑞龍や高小琴とのつながりを保持しています。(李達康は劉の更に前任の秘書ということになる模様)

趙東来の捜査により、一一六事件の前後の蔡成功から陳海への二度の通報のうち、一度は蔡成功の名を騙った山水集団の財務部長劉慶祝によるものであったことが判明。劉慶祝は一一六事件の直後に出張先の岩台市で心筋梗塞を発して急死したとされていますが、山水集団側による謀殺ではないかということで彼の妻魏彩霞を取り調べます。


本作に登場する夫婦の多分に漏れずこの夫婦も色々問題があったようで、夫の死因などそっちのけで当世流行の広場舞に夢中。侯亮平は彼女から、夫の死の直後に高小琴が口止め料として彼女に多額の金を渡していたこと、高小琴と高育良との間に往来があったこと、趙瑞龍が山水集団の株主となっていたことなどを聞き出します。劉慶祝は神経症を発しており、陳海と接触して内部告発を図り、山水集団側に消されたということのようです。今話題の加計問題でいうと前川前事務官のような役回りということになるでしょうか。更に彼女が夫と愛人の跡を付けてその会話を録音していたということで、侯亮平はその録音資料を押収。

あとは劉慶祝が残した帳簿が必要ということで、反貪局では山水集団と漢東油汽集団の一斉捜索を決行。ここで陸亦可は高小琴に「山水集団を創造したのは権力か能力か?」と問い掛けますが、汎用性が高そうな台詞が出てきましたね……


一方の劉新建は身柄を拘束するなら窓から飛び降りると激昂。侯亮平に「お前の祖父母は革命のために尽くした党員だろ?祖父母に会わせる顔があるのか?」と言われてブチ切れ、「オレだって党員だ!」と突然マルクスの『共産党宣言』を暗誦しはじめます。しかし籠池問題が下火になったと思ったら加計問題が出てくるように、よくもまあこれだけ次から次へと疑惑の人物が出てくるもんですね……

その裏で忘れられかけつつある新生大風公司の用地問題ですが、光明区側が移転地を用意しないということで、鄭西坡らは区によって封鎖されたはずの旧工場での操業を決行。状況を知った区役所員が駆けつけますが、間に入った鄭乾の「入り口を封鎖して窓から工員を出入りさせればいい。それなら区側の顔も立つ。」という提案に双方が納得。更に人目に付くとまずいという区役所員の要望で、夜間に操業することで双方折り合います。こんな一休さんの頓智みたいな解決法でいいんでしょうか (^_^;)

ということで元から腐敗の教科書という意味合いもあって制作された本作ですが、特に今回見た部分は今の日本の状況ともオーバーラップしていますね。反中意識が強まれば強まるほど日本政治の中国化が進むのはどうしたことでしょうか。本作の日本語版を放映する意義が強まってきたのではないかと思います。
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2017年5月に読んだ本

2017年06月01日 | 読書メーター
日本国憲法の誕生 増補改訂版 (岩波現代文庫)日本国憲法の誕生 増補改訂版 (岩波現代文庫)感想
旧版に続いて再読して強く印象づけられたのは、「頭の良さ」を誇りながら頑迷さゆえに無様に敗北した松本蒸治、粛々とGHQ案の「日本化」を図った佐藤達夫、誰よりも日本の人権状況について問題意識を持っていた「素人」のベアテ・シロタ、「芦田修正」の解釈をめぐって都合良く「自衛戦争合憲論はワシが育てた」と掌を返す芦田均など、「憲法改正」に関わった人間の動きや個性が生き生きと描かれていることである。著者の本意とは異なるだろうが、本書を下敷きにして憲法誕生の映画やドラマを作ると面白い作品になるのではないかと思う。
読了日:05月04日 著者:古関 彰一

プロテスタンティズム - 宗教改革から現代政治まで (中公新書)プロテスタンティズム - 宗教改革から現代政治まで (中公新書)感想
ルターから始まったとされるプロテスタント。その実ルターにはカトリックから分離して新しい宗派を立てるつもりがなかったという話から始まり、ルター派の成立、更なる「宗教改革」を求める洗礼主義の動き、ルター派がドイツで定着して保守的となり、ナチスを支持した経緯、アメリカや日本などでの展開などをコンパクトにまとめている。内容としてはドイツでの展開が占める比重が大きいが、ドイツの大統領に期待される役割、アメリカのプロテスタンティズムとの比較など面白く読んだ。
読了日:05月06日 著者:深井 智朗

モラルの起源――実験社会科学からの問い (岩波新書)モラルの起源――実験社会科学からの問い (岩波新書)感想
社会科学の文脈で議論される「共有地の悲劇」や公平な分配といった問題が、動物と人間との比較や心理学的な実験を通して議論されている。「最後通告」ゲームによる実験から、市場経済の論理が浸透している社会ほど公平な分配がなされやすいという指摘など、個別の項目に関しては面白い話題が多いが、全体的には著者の言う「実験社会科学」の中間報告という感じがする。
読了日:05月08日 著者:亀田 達也

『レ・ミゼラブル』の世界 (岩波新書)『レ・ミゼラブル』の世界 (岩波新書)感想
著者ユゴーの生涯や主張と絡ませつつ『レ・ミゼラブル』を読み解く。ユゴー自身の政治的立場が王党派から始まってボナパルト主義、七月王政支持、共和主義といったように幾度も変転を経ていること、特にナポレオン1世と3世への評価の変転が、ジャン・ヴァルジャンの人生をナポレオン1世と重ね合わせる(二人は同年の生まれという設定になっている)など、作品に強い影響を及ぼしていることを指摘する。小説家の人生・人格と作品そのものの関係について時々議論がなされることがあるが、本書を読むと簡単に切り離せないものではないかと感じる。
読了日:05月10日 著者:西永 良成

現代中国入門 (ちくま新書1258)現代中国入門 (ちくま新書1258)感想
中国の歴史・現代文化・対外政策・国防・尖閣問題・台湾等々専門の研究者が各項目について語るというオムニバスだが、ここに書き切れないほど示唆に富む議論が多い。書店でケント・ギルバートの新書の隣にしれっと並べて欲しい一冊。ただ、経済政策や少数民族問題など触れられていない事項も多々残されているので、是非とも第二弾を期待したい。
読了日:05月13日 著者:光田 剛,鈴木 将久,佐藤 賢,池上 善彦,坂元 ひろ子,中島 隆博,毛利 亜樹,杉浦 康之,井上 正也,丸川 哲史,仲里 効

わかる仏教史 (角川ソフィア文庫)わかる仏教史 (角川ソフィア文庫)感想
中国仏教や日本仏教などについても一通りのことは説明しているが、インドでの仏教誕生と展開がメインの通史。タイトル通り簡潔でわかりやすいが、龍樹の評価はそれでいいのだろうかという疑問も。聖徳太子とアショーカ王との比較で、アショーカ王が権力者の義務を強調しているのに対し、聖徳太子は憲法十七条で家臣の義務しか説いていないという指摘は、昨今の憲法をめぐる議論で示唆されるものがある。
読了日:05月16日 著者:宮元 啓一

『日本書紀』の呪縛 シリーズ<本と日本史>1 (集英社新書)『日本書紀』の呪縛 シリーズ<本と日本史>1 (集英社新書)感想
『日本書紀』の成立と権威化、そして『日本書紀』を前提とした、氏族・寺院単位による『古語拾遺』『先代旧事本紀』などの反国史・加国史の登場について論じる。我々はそろそろ『日本書紀』の規定する枠組みから離れて自由に歴史を語ってもよいのではないかという著者の主張は、個人的には『史記』の枠組みから離れて中国古代史を語れるかという課題とも重なる。
読了日:05月18日 著者:吉田 一彦

万葉集から古代を読みとく (ちくま新書1254)万葉集から古代を読みとく (ちくま新書1254)感想
著者自身が「普通の入門書ではない」と言っているように『万葉集』をめぐる雑感に近い構成だが、第四章の歌木簡の用途と、類似の「逸歌」がたくさん存在したのではないかという想定、第八~九章の歌と歌集・日記・物語との関係をめぐる話、大伴家持の「未使用歌」の話を面白く読んだ。『竹取物語』については、従来の多数の仙女が一人の男と結婚するというハーレム系の物語であった竹取翁の話を逆転させ、多数の男が一人の仙女を取り合ってしかも結婚が成立しないという設定が当時受けたのではないかと思ったが…
読了日:05月19日 著者:上野 誠

浄土真宗とは何か - 親鸞の教えとその系譜 (中公新書)浄土真宗とは何か - 親鸞の教えとその系譜 (中公新書)感想
親鸞は新しい宗派を建てたというつもりがなく、自分が属した天台宗の延長で宗教活動を行ったこと、近代に入って西欧の宗教改革との対比で鎌倉新仏教の一派として評価されるようになったこと、親鸞の信仰のあり方にも揺れがあったこと、妻の恵信尼や長男の善鸞らも親鸞の主張を完全に理解していたかというと疑問があることなどを、史料の読解を通じて解き明かしていく。後代の評価と当時の実像との違いや「理想化」の過程を考えるうえで面白い題材となっている。
読了日:05月22日 著者:小山 聡子

鏡が語る古代史 (岩波新書)鏡が語る古代史 (岩波新書)感想
中国古代の銅鏡について、紋様とともに特に銘文の内容に注目する。銘文に引かれている詩句と文献に見える詩との照合が可能であることや、前一世紀の鏡に「中国」の語が見えること、その他銘文から読み取れる思想の話が興味深い。中盤以降はひたすら鏡工の変遷が語られるが、それすらも退屈どころか面白く、終盤にはそれが三角縁神獣鏡の制作地の話につながっていく。単なる飾りかと思われた銅鏡の銘文も史料としてまじめに読み込めば様々なことが読み取れるのだと感服した。
読了日:05月23日 著者:岡村 秀典

万葉びとの宴 (講談社現代新書)万葉びとの宴 (講談社現代新書)感想
著者の近著『万葉集から古代を読みとく』の大伴家持が宴に備えて和歌を準備していたという話が面白かったので、こちらも読んでみることに。ひたすら宴会の場で詠まれた和歌の話が続くが、当時の機知とかコミュニケーションのあり方というか「空気の読み方」が窺い知れて面白い。
読了日:05月26日 著者:上野 誠

物語 オランダの歴史 - 大航海時代から「寛容」国家の現代まで (中公新書 2434)物語 オランダの歴史 - 大航海時代から「寛容」国家の現代まで (中公新書 2434)感想
オランダでは既存の語をつなぎ合わせる形で学術用語を造語していたが、それが蘭学を通じて日本での学術用語の訳出に大きな影響を与えたこと、ナポレオンの弟ルイ・ボナパルトがオランダ国王として船舶の爆発事故に適切な処置を採り、「被災者の父」と国民から慕われたこと、近代オランダが「柱状社会」と形容される強固な縦割り社会であったことから、ナチスに類するファシズム政党が根付かなかったという指摘などが面白い。
読了日:05月30日 著者:桜田 美津夫

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