博客 金烏工房

中国史に関する書籍・映画・テレビ番組の感想などをつれづれに語るブログです。

『成化十四年』その5

2020年07月31日 | 武侠ドラマ
『成化十四年』第25~30話まで見ました。

李子龍の刺客から逃れて何とか順天府に戻って来られた唐泛たちでしたが、朶児拉が毒矢を受けてしまい、神医裴淮や汪植配下の宦官丁容も解毒薬を作れないという事態に。唐泛は敢えて毒矢で体を傷つけて解毒剤生成の実験台となります。


一方、隋州にも大事が出来。留守中に順天府で隋州の偽物が出没し、高官や金持ちを脅して金をゆすり取っていたのでした。隋州は身の潔白を証明するために彼らの足取りを追いますが、逆に彼らから仲間としてスカウトされ、行動を共にすることに (^_^;) 時代物でお馴染みの偽物ネタですが、このドラマでは思わぬ展開にw

一方、汪植は強敵と見定めた李子龍と接見しますが、帰り際に爆破装置を詰めた箱を手渡されてしまいます。ちょっとでも衝撃を与えたら大爆発するというアレですね。丁容が箱を分解して事なきを得ますが、汪植は爆破装置の出元は宮中の武器庫ではないかと疑います。

隋州は正体を隠して偽隋州の一味に加わり、錦衣衛と連携しつつ適当なタイミングで投降を促そうとしますが、万通らに追われた一同は、汪植が経営する歓意楼に立てこもるハメに。現場に駆けつけた錦衣衛の万通と東廠の尚銘は、政敵の汪植を始末する絶好の機会とばかりに、外から矢を射かけたり火攻めにしようとか言い出したりやりたい放題w そして尚銘は西廠ナンバー2の丁容に「汪植が死ねばお前が西廠のトップだ」と耳打ちして抱き込みを図ります。こういう展開が見たかったw

結局毒を押して救出に駆けつけた唐泛らの尽力により立てこもり事件は無事解決しましたが、できれば命だけは助けたいという隋州の願いも空しく、偽物一味は全員落命…… 毒の方は不透明なルートで李子龍から流れてきた解毒剤により、朶児拉も唐泛も無事に回復。隋州は錦衣衛に復帰できましたが、かつての部下の薛凌と同格の小旗からやり直しです。

宮中では皇室や国家の用を足すための氷室から氷が流出していることが問題に。一方、順天府の市中では氷が潤沢に出回って値下がりしていることから、何者かが氷室から氷を盗んで市中に流しているのだろうということになります。


で、歓意楼の女将が金三なる人物から安い氷を仕入れているということで、こいつが怪しいと、唐泛が女装して歓意楼の妓女に扮して金三と接触することに (^_^;) 偽物に女装とベタなネタが続きます。この金三、儲けた金で貧しい人々いわゆる義賊のようなのですが、唐泛とは逆に女性が男装しているようで……という所で次回に続きます。
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『成化十四年』その4

2020年07月25日 | 武侠ドラマ
『成化十四年』第19~24話まで見ました。

汪植の推薦により、唐泛は嫌々官銀の産地の雲和に知府として赴任し、鉛が混ぜられて品質が劣る偽官銀の流通について調査することになります。雲和ではこれまで三代の知府が在任中に謎の死を遂げていたのでした。1人で赴任するのは不安だらけなので、錦衣衛をクビになった隋州や朶児拉らを帯同しています。


現地では銀鉱の主の馬林がお出迎え。中の人は古装でお馴染みの李立群です。土地の有力者で、雲和の影の支配者と言っていい人物ですが、息子が銀鉱の採掘員を動員して待遇改善を求めて激しい労働運動を展開していたりと、気苦労も多い様子。

この馬林、接待はもちろん家屋敷に美女軍団など贈賄攻勢で唐泛を味方に取り込もうとし、唐泛の方も相手を油断させて尻尾をつかむために、敢えて贈賄攻勢に乗ったふりをします。


そして遂に馬林を信用させることに成功し、偽官銀工房に案内されたうえ、その黒幕となる李子龍とも引きあわされます。以前に登場した銭泰の黒幕になっていた人物ですね。しかし李子龍は唐泛を信用していないようで……?

一方、都でも問題が出来。これまたいつぞや登場した遼東の将軍陳鉞が汪植に、軍用金として支給される銀に品質の悪い雲和産の偽官銀が混ざっており、額面より価値が低いことで苦労していると苦衷を訴えます。汪植は取り敢えず自分の裁量で国庫からその埋め合わせをしますが、その賠償を迫られます。で、その昔万貴妃から下賜された鶏缸杯を質に入れて金を作りますが、それがもとで宮中の品が民間に流出したと、万貴妃も巻き込む大事件になりかけます。

これは成化帝の判断により事なきを得ますが、ここで万貴妃と汪植との出会いが語られます。万貴妃は汪植と亡くなった我が子との年の頃が近いということで、彼を自分の子供のように手に掛けてかわいがってきたようです。で、万貴妃は愛する成化帝の身を案じて、唯一信用できる彼を西廠の主として推薦したとのこと。まさかこの2人でハートウォーミングなエピソードが展開されるとは (^_^;)


この汪植、雲和の唐泛から、三朝元老の万安が偽官銀の件に一枚噛んでいるという情報が寄せられると、万安の屋敷を家宅捜索し、これまで不正にため込んだ金塊を押収。彼は内閣首輔の地位は保ったものの、表立っては汪植に反抗できなくなります。

そして雲和でも馬林が家宅捜索を受けて家財没収。銀鉱の採掘・経営権も取り上げられて無一文となります。唐泛はこの功績により昇格の上都への帰任が認められます。喜び勇んで順天府に戻ろうとする彼ですが、李子龍の手下に襲撃され、命からがら帰還に成功。一方、命だけは許されたと思われた馬林も李子龍の手下から落とし前をつけるよう要求され、毒杯を仰いで自害。

といったところで次回へ。李子龍は成化年間に宮中に侵入を図ったことで知られる実在の人物。万安も万貴妃の遠縁で実在の人物です。この2人がドラマではどういう動きを見せてくれるでしょうか?
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『成化十四年』その3

2020年07月19日 | 武侠ドラマ
『成化十四年』第13~18話まで見ました。


子供攫い事件は実行犯の逃亡兵が捕まり事件解決となったものの、総計千余名の子供が犠牲になったということで、「国家の宝と言うべき子供たちをむざむざと死なせてしまった」と成化帝が群臣の前でガチ切れしてます。このドラマの成化帝は宦官を重用し、万貴妃の言いなりの暗君……と見せかけて実は物の道理がわかる明君というポジションのようです。


そして順天府では新たな事件が発覚。若い女性が殺害されて心臓が抜き取られるという事件が続発しているというのですが、医学のために好んで解剖している神医の裴淮が容疑者ということにされてしまいます。

彼の無実を晴らそうと唐泛が捜査に乗り出しますが、更に朶児拉も事件に巻き込まれたようで行方不明となってしまいます。犯人のターゲットは、いずれも彼女のような外族の女性なのでした。捜査で浮かび上がったのは、「朱大善人」「皇族之光」と謳われる郡王の朱見謀。子供攫い事件でも顔見せで登場した人物です。皇室の良心とされる人物ですが、若い頃に女性との恋愛を巡ってトラウマを負ったようで、民衆への善行の一方で密かに残虐な行為に手を染めていたのでした。

皇族ということで罪をその馬夫駝三に押っつけ、都からの所払いで済まされそうになったところ、裁判で朱見謀の出生の秘密を暴き、彼を自害に追い込んだということで、唐泛は順天府から通州へと左遷されます。


通州には姉の嫁ぎ先もあるということで気楽に赴任した唐泛ですが、その姉の唐瑜と甥っ子の賀澄は婚家の賀家から手ひどい扱いを受けていたのでした…… 唐姉弟は父母を亡くした孤児の出身で賀澄も癲癇が持病ということで侮られ、たまりかねて離縁しようとする唐瑜ですが、賀家の跡取りということで賀澄を彼女の手元に引き取ることは許しません。そこで唐泛は母子がともに暮らせるよう一計を案じます。

一方、順天府では隋州と余家のお嬢様余秀蓮との婚約話が進みます。彼女の長兄余正鵬は父親の死に汪植が関与したということで彼を仇敵視しているのですが、余秀蓮と余家の次男余正麟を残して余家一家が何者かに惨殺されるという事件が発生。余家と因縁があった汪植が容疑者となります。成化帝は汪植の無実を確信していますし、当の汪植は自分の冤罪より、これと前後して問題となっていた偽官銀の流通の方が気になっているようですが、彼とは政敵になる東廠のボス尚明や錦衣衛のボス万通がここぞと追い詰めようとします。

ここで唐泛に白羽の矢が当てられ、順天府に舞い戻って真犯人が余家の厨子の張であることを突きとめます。この張、余秀蓮に片思いし、余正鵬がうっかり「汪植を殺した者に妹をくれてやる」と口走ったのを真に受けて単身汪植を刺殺しようとしたりするめちゃくちゃな人物なのですが……

めでたく事件解決となったところで、唐泛は今度は偽官銀の調査のために雲和に派遣されることになり、隋州の方は汪植排斥の巻き添えを食って禁書を密かに所有していたという濡れ衣を着せられますが…… というところで次回へ。朱見謀が匿っていた謎の女性が話に絡んでくるのはもう少し後でしょうか?
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『成化十四年』その2

2020年07月12日 | 武侠ドラマ
『成化十四年』第7~12話まで見ました。

刑死者が不自然に多いという告発を承けて江西吉安府に視察に来た隋州。知府の黄景隆はかつては模範的な官吏でしたが、自分の裁きで刑に服した犯罪者に家族を殺されたという過去があり、「軽微な犯罪だからといって見逃せば将来大きな犯罪をなす」というダメな割れ窓理論みたいなのの信奉者になった模様。しかもこれを問題視した隋州が黄景隆によって偽の錦衣衛ということにされてしまい、投獄されてしまいます。

順天府の唐泛は、隋州から寄せられた密書の暗号を読み解き、彼のピンチを察知します。で、隋州の部下の薛凌とともに吉安に赴き、牢内で隋州に接見。しかし自分の力では彼を救い出せません。救い出させる力があるのは汪植のみですが、彼は今成化帝の命令により、遼東に出張中。


ということで順天府に戻った彼は、旧知のオイラート人の少女朶児拉と従者の巨漢・烏雲布拉格から馬を借り、ともに遼東に向かいます。


遼東では汪植が現地のオイラート人・女真族による馬市を監督することになっていましたが、馬市に出される予定の馬が大量に盗まれるという事件が発生し、頭を痛めておりました。ということで成化十四年の女真族です (^_^;) このドラマに出てくるオイラートや女真族、本当にモンゴル語や満洲語なのかどうかはよくわかりませんが、取り敢えず通訳ができる人物以外は漢語を話しておりません。

「ここに唐泛がいれば……」と思っていたところに当の本人がやって来たということで、彼の手であっという間に真相を解明。汪植は吉安で彼にそっくりの偽物と会ったという唐泛の言葉にも惹かれ、今度は海路で吉安へ。北に行ったり南に行ったりと忙しいですが、遼東行きは陸路で馬、江西行きは海路で船ということで、「南船北馬」という言葉を連想させます。しかしこの遼東の話と江西の話が全くつながらないんですよねえ…… 黄景隆が遼東のオイラートと密貿易をしていて……なんて話もありません。単にスタッフが草原でロケをしたかっただけなのかもしれません。

で、黄景隆は牢獄に放火して囚人ごと燃やし尽くし、証拠隠滅を図ろうとしたり、汪植の偽物を使ってやり過ごそうとしますが、結局はお縄に。黄景隆に大明律法への遵法を主張する隋州に対し、「情」でもって犯罪者に酷薄な扱いをした黄景隆は「いずれお前もワシと同じ境地に至るだろう」と不気味な予言を残します。

ここから次の事件へ。順天府では吏部侍郎の息子が攫われるという事件が発生。その子は捜索の末に無事保護されますが、ここ数年順天府では子供が攫われる事件が頻発していることが発覚。エライ人の身内に被害者が出たことでようやく大事として認知されるというのは現代でも割とあるあるなんじゃないでしょうか……

捜査に当たる汪植は冬児をおとりに使いますが、まんまと相手に隙を突かれて彼女を攫われてしまいます。そして人攫いの黒幕の商人銭泰は錦衣衛のボス万大人と結託しているようで…… というあたりで次回へ。この前後に唐泛の姉と甥が登場したり、謎の篤志家朱大善人が出てきたりしますが、今のところこのエピソードとは深い関わりはないようです。こういう本筋に関係ない要素を積極的に盛り込んでくるスタイルは嫌いではないですw
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『成化十四年』その1

2020年07月06日 | 武侠ドラマ
ジャッキー・チェン監修の明朝ドラマということで『成化十四年』を見始めました。今回は全48話中。第1~6話まで見ました。


舞台は明朝成化十四年(1478年)の順天府(現在の北京)。世代的には『大明皇妃』のヒロインの孫世代ですね。主役は順天府の六品推官で抜群の推理力を誇る唐泛(上の画像の白服)と、錦衣衛北鎮撫司総旗の隋州(黒服&ヒゲの方)の2人。唐泛は武安侯のドラ息子鄭誠の殺害事件、隋州は太子の学友韓早の殺害と、それぞれ別々の事件を追っていたところを、バディを組んで捜査することになり……という出だし。

唐泛は科挙で状元まであともう一歩だったという秀才ですが、武芸はからっきし。隋州の方は特務機関である錦衣衛に所属するだけあって荒事はお手の物と対照的なコンビです。隋州はまた成化帝の母后周太后の親類でもあり、宮中にコネが効きます。


この2人に絡んでくるのが西廠提督を務める宦官の汪植。成化帝の寵愛が深い万貴妃の子分的な存在のようです。西廠というのは、宦官による特務機関である東廠に加えて成化年間に新たに設置された機関ですが、当然のごとく東廠とは対立関係にある模様。

で、唐泛&隋州のコンビと、秘密の多い汪植との駆け引きを軸に捜査が進んでいきます。本来別個のはずの2つの事件は韓早の遺体が鄭誠殺害に利用されたことで交錯。鄭誠殺害の方は、武安侯府の将来を悲観した彼の弟が黒幕ということで幕引き。武安侯が若い頃倭寇の討伐に従事したということで、倭国から応仁の乱を逃れてきたという、その配下の忍者が登場します (^_^;) 何となく香港映画『スウォーズマン』に出てきた忍者を連想させますね。

韓早の方も、万貴妃によって死に追い詰められた太子の生母紀淑妃お付きの宦官が、万貴妃に濡れ衣を着せようとおこした毒殺事件だったことが判明しますが、こちらは成化帝の政治判断もあって真相は闇に葬られます。

このほか神医キャラの裴淮、オイラート人の少女朶児拉、唐泛の大家の元侍女で記憶力抜群を誇る冬児などが主役2人を取り巻きます。今回は2つの事件解決の後、汪植が遼東へ、隋州が江西へ派遣されるあたりまで。アクション・シーンはまあまあ見応えありますが、数が少ない…… 最近流行りの地方というか下町グルメのシーンの方が印象的ですね。
コメント (2)
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2020年6月に読んだ本

2020年07月01日 | 読書メーター
マックス・ヴェーバー――主体的人間の悲喜劇 (岩波新書)マックス・ヴェーバー――主体的人間の悲喜劇 (岩波新書)感想中公新書の『マックス・ウェーバー』とは異なり、こちらは完全な伝記となっている。彼の生きた時代とその軌跡から思想の生まれた背景をあぶり出すという趣向だが、反ユダヤ主義、社会ダーウィニズム、男女観、ポーランド人やアメリカ人に対する視線といった、彼の持った偏見と、それがどう変化したのか(あるいはしなかったのか)を中心に描いている。ヴェーバーの思想の現代的意義を説くという方向には否定的なのも中公新書の方とは対照的。読了日:06月01日 著者:今野 元

白人ナショナリズム アメリカを揺るがす「文化的反動」 (中公新書)白人ナショナリズム アメリカを揺るがす「文化的反動」 (中公新書)感想白人ナショナリズムに染まる動機、思想的政治的背景、その現在を描き出しているが、彼らから見た日本の評価や、白人ナショナリズムと訣別した人々の話も盛り込まれているのが面白い。遺伝学との関係は、ベネディクト『レイシズム』での議論も想起させる。中国に関しては警戒論とともに連携を結び得る相手という評価もあるようで、彼らの対中観をもっと掘り下げて欲しかったと思う。読了日:06月03日 著者:渡辺靖

東大連続講義 歴史学の思考法東大連続講義 歴史学の思考法感想東大の一般教養の歴史学のテキストということだが、歴史学の専門科目の史学概論のテキストとしても通用するものになっている。歴史の法則性、史料の種類と扱い、植民地主義、歴史用語のアナクロニズムの問題、近隣諸国との史実評価の不一致の問題等々、文字通り「歴史学の思考法」のエッセンスをまとめたものとなっている。読了日:06月05日 著者:

三国志 - 研究家の知られざる狂熱 - (ワニブックスPLUS新書)三国志 - 研究家の知られざる狂熱 - (ワニブックスPLUS新書)感想三国志関連の研究で知られる渡邉義浩氏の三国志との出会いから現在までの研究のあゆみ。名士論、儒教国家論といった学説がどういう文脈、問題意識のもとで生み出されてきたかがまとめられており、一研究者の自伝として面白く読める。また論文や研究のテーマをどうやって見つけ、どうやって次のテーマにつなげていくかという、研究手法のサンプルともなっている。読了日:06月07日 著者:渡邉 義浩

戦国期足利将軍研究の最前線戦国期足利将軍研究の最前線感想応仁の乱以後も急激に没落して名ばかりの存在になったわけではなく、15代義昭に至るまで相応の権威を保っていた足利将軍。それを軍事面、裁判、栄転の授与、和平調停など、多角的な視点から描き出す。旧洋泉社の最前線シリーズとは差別化を図ったということだが、確かに読みやすい文章、内容となっている。読了日:06月10日 著者:

香港と日本 --記憶・表象・アイデンティティ (ちくま新書)香港と日本 --記憶・表象・アイデンティティ (ちくま新書)感想香港人の目からは、香港の中、大陸中国、そして日本がどう見えているかという香港人の世界観のサンプル。ただしそれが香港人の世界観の最大公約数と見てよいのかどうかはわからない。著者の大陸人への目線は、多くが大陸から来たはずの香港人自身の父祖への視線として跳ね返ってくるのではないだろうか。それが本書で触れられている家族との「政治闘争」の背景になっているのではないか。読了日:06月14日 著者:銭 俊華

人事の古代史 ──律令官人制からみた古代日本 (ちくま新書)人事の古代史 ──律令官人制からみた古代日本 (ちくま新書)感想人事というか律令官制の古代史。扱われている時代は奈良から平安初期までが中心。正倉院文書で知られる写経生としての登用が余剰人員のための公共事業としての性質があったとする点など、官職に就けない散位をめぐる話が面白い。官制に関する議論は無味乾燥なものとなりがちだが、具体事例を多く盛り込んだ「人事」の話に落とし込むことで面白く読めるようになっている。読了日:06月18日 著者:十川陽一

三体Ⅱ 黒暗森林(上)三体Ⅱ 黒暗森林(上)感想第一部の読後感から予想した展開とはまるで異なった話が展開され、良い意味で期待を裏切ってくれた。イナゴの根性を持つ老百姓史強の続投が嬉しい。「智子」によって科学の発展を封じられた後の人類の戦いというかあがきは、科学と技術の関係、科学と技術の違いについてのわかりやすい説明となっている。また昨今の新型コロナにまつわる混乱や今後の見通しを暗示したかのような展開が出てくるのも驚かされる。読了日:06月21日 著者:劉 慈欣

「慵斎叢話」 15世紀朝鮮奇譚の世界 (集英社新書)「慵斎叢話」 15世紀朝鮮奇譚の世界 (集英社新書)感想朝鮮王朝前期の士大夫の随筆に描かれた小話を通じて当時の社会や世相を探っていく。我が国の『鸚鵡郎中記』『甲子夜話』に相当する書と言えるかもしれない。著者は韓流時代劇からは朝鮮時代を正確に理解できないというが、その実本書は韓流時代劇や映画の良きガイドという側面もある。林羅山と朝鮮通信使、朝鮮の文献との関わりに関する話が面白い。読了日:06月24日 著者:野崎 充彦

ビザンツ帝国-千年の興亡と皇帝たち (中公新書 (2595))ビザンツ帝国-千年の興亡と皇帝たち (中公新書 (2595))感想馴染みのない人名が続出するが、異端宣告をされてもその宗派がすぐに衰えたわけではないという機微、女帝エイレネの即位とカール戴冠との関係、テマ制という用語の出現とその実態との関係、ルネサンスだらけのビザンツ帝国、アレクシオス1世と十字軍など、個別の史実よりも高校世界史で語られる事項の詳細を面白く読んだ。ビザンツ史をユーラシア史の中でどう位置づけるかという視線が随所に感じられるのがよい。読了日:06月27日 著者:中谷 功治

司馬光とその時代 (中国歴史人物選)司馬光とその時代 (中国歴史人物選)感想『資治通鑑』の編纂や新法・旧法の対立といった必須事項を押さえつつ、党争が盛んではあっても対立する相手に敬意を表したという北宋の時代の気風や、欧陽修・文彦博・包拯といった人々との交友、そして新法を廃したのちに新しい改革の企図や手順を提示しえなかったという、司馬光の限界も描いている。読了日:06月30日 著者:木田 知生
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