博客 金烏工房

中国史に関する書籍・映画・テレビ番組の感想などをつれづれに語るブログです。

『延禧攻略』その8

2019年09月23日 | 中国歴史ドラマ
『延禧攻略』第36~40話まで見ました。

傅恒と爾晴との結婚式が行われますが、傅恒は新婚初夜に「やはり瓔珞のことが忘れられない。しばらく時間をくれないか」と告白。それをやさしく受け入れたかに見えた爾晴ですが、どんどんと夫への不信感と他の女性への嫉妬心が増幅されていき、富察家の侍女青蓮が夫と浮気していると思い込んで残酷な処罰をしたあたりから、傅恒に愛想を尽かされてしまいます。

当の瓔珞は乾隆帝から「辛者庫での雑役から赦免してやるかわりに、傅恒の前で『今までずっと騙していた。あなたのことは好きでも何でもない』と告白するか、大雪の日に半日かけて三歩ごとに叩頭しながら紫禁城の宮殿を周回するか好きな方を選べ」と言われ、躊躇なく後者を選びます。

で、途中で力尽き、大雪の中で倒れていたところを助け出された瓔珞ですが、運び込まれた宮殿に様子を見にやって来た乾隆帝から「朕第一次勉強女人」と男女の関係を無理強いされそうになり、「これで陛下のお手つきになれば計算通り(ニヤリ 」とわざと相手の興をそぐような態度を示して難を逃れます。で、瓔珞は元通り長春宮へ。かたや瓔珞の哥哥こと袁春望さんも嫻貴妃に抜擢され、内務府の副管事となります。

貴妃と言えば、純妃も六阿哥を出産した功により貴妃に昇格。人知れず傅恒を慕っていた彼女も、どうやら嫻貴妃にその秘密をつかまれてしまったようで、更に「皇子女のいない妃嬪の末路は悲惨なものよ」と言い含められ、後宮レースに参戦するようになっていたのでした。

完全に闇落ちして人が変わったというか本性を隠さなくなった爾晴ですが、夫が留守の間にOB面して長春宮に居座るようになり、皇后に怪しいお薬を飲ませて懐妊に至らせます。(昏倒する前に懐妊していた赤子は結局流産してしまったようです)瓔珞は皇后はもう出産に耐えられる体ではないのにと不満と不安を募らせます。

そして亡き二阿哥の命日を思い出し、酔っ払った乾隆帝が突然押しかけて泊まり込むことになりますが、酔い冷ましと称して爾晴が怪しいお酒を飲ませて懐妊。傅恒への当てつけに彼の子として生むことに。傅恒は事の次第を知らされて憤怒しますが、不義の子が皇上の種とあってはどうしょうもありません。このお腹の中の子が乾隆帝の寵臣福康安となるはずで、于正版福康安伝説がここから始まるわけですね (^_^;)

そんなこととは露知らず、皇后は命がけで七阿哥を出産。乾隆帝は早くもこの子を皇位継承者と見定めます。となると「自分が産んだ六阿哥はどうなる?」という純貴妃の不安を嫻貴妃が増幅させます。その後2年間は何事もなく時が過ぎますが、乾隆13年除夕。瓔珞が負傷した父親の見舞いで宮廷を留守にした隙を突き、何者かが長春宮の七阿哥が眠る建物に放火。七阿哥は救出されたものの既に窒息死した後でした……

二阿哥に続き、その生まれ変わりと希望を託した七阿哥までもが不慮の死を遂げ、取り乱す皇后ですが、乾隆帝はそんな彼女に「皇后としての威厳を保て」と諭すしかないのでした。そして皇后の地位にあること自体に絶望した彼女は、瓔珞の帰りを待つことなく紫禁城内の壁から飛び降り自殺をしてしまいます…… 姉、あるいは師匠として慕った皇后に遺体として対面する形となった瓔珞は、乾隆帝を面罵して殉死を賜ろうとしますが、「瓔珞を自由の身に」という皇后の遺書が発見され、円明園で皇后の墓守をすることになり……


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『延禧攻略』その7

2019年09月17日 | 中国歴史ドラマ
『延禧攻略』第31~35話まで見ました。

嫻妃の提案で水害に遭った避難民に炊き出しを行うことになりますが、そこへ高貴妃の意を承けた暴徒が押し入り、「炊き出しなどお為ごかしだ」と騒ぎ立てますが、その場に居合わせた袁春望さんが暴動に発展する前に暴徒を処断。嫻妃の覚えめでたく辛者庫の管事に出世します。まあやる気になれば何でもできる人なんですね。

一方、高貴妃は芸人を雇い入れ、皇太后の誕生祝いの宴の出し物として「万紫千紅」を練習させますが、これは木の棒の先端に穴を空けて溶かした鉄を入れ、それを振り回して火花を派手に散らせるという危険の多い出し物で、練習を強要させられた芸人たちの怨みを買っておりました。で、その予行演習を乾隆帝&嫻妃に見せようとしたところ、芸人たちは敢えて高貴妃に接近して火花を散らせ、彼女の背中に大火傷を負わせます。

しかも「万紫千紅」の原料には「鉄水」だけでなく「金水」、すなわち糞尿も含まれており、火傷の痕から病原菌が入り込むようにするという手の入れよう。これで高貴妃は自慢の肌つやの良さを失うばかりか命の危険にさらされます。これは皇后突き落としの一件で意趣返しを図っていた瓔珞の入れ知恵なのでした。高貴妃は格下扱いしていた嫻妃からも「仮に一命は取り留めたとしても、これでもう皇上の寵愛は得られないわねえ」と脅しを食らいます。高貴妃はプライドの高さから治療を拒絶し、最後に乾隆帝に美しいままの姿で崑曲を踊る姿を見せて自害。彼女は『宮廷の諍い女』で言うところの華妃のポジションなんですが、全体の半分を待たずして退場です。嫻妃は彼女の穴を埋めるように貴妃に昇格。

さて、瓔珞はかつての侍女仲間の明玉の手引きで夜な夜なこっそり長春宮に通い詰め、昏睡状態の皇后を見舞っておりました。乾隆帝はそんな彼女の姿を見て赦免しようと思い立ちますが、爾晴の陰謀でおじゃんに…… 


爾晴は傅恒との結婚を望んでおり、彼の心をつかんだ瓔珞が許せないのでした。乾隆帝も傅恒を大官の孫娘である爾晴と結婚させようとします。更に瓔珞は木偶を使って高貴妃を呪詛したと告発され、乾隆帝直々の取り調べを受けることになります。実はこれは純妃の陰謀で、彼女も傅恒に惚れていたのでした。無論皇帝の妃嬪の身ではもちろん自分が彼と結婚するわけにもいかず、せめて生まれが良くて才徳のある美女と結婚させようとあれこれ画策していたところ、傅恒が身分の低い瓔珞に惚れてしまって敵意を燃やしたという次第。発想が何かダメなアイドルファンっぽいですが……

事態を知った傅恒は瓔珞を救うために彼女との結婚を諦め、乾隆帝から提案されていた爾晴との結婚を決意するのでした…… お陰で罪には問われずに済んだものの傷心の瓔珞に、袁春望さんは「お前をずっと守ってやれるのは私だけだ」なんて言ってますけど、こいつも心に何か歪んだものを抱えてそうです。で、ついでに袁春望さんの身の上が語られますが、どうも雍正帝の落とし子だったのが諸事情で民間で育てられたうえ、父親の認知が得られないまま人に騙されて宦官にさせられてしまったということのようです。

そして遂に皇后が目覚めますが、傅恒の婚約を知って失望。更に乾隆帝が傅恒と瓔珞の結婚を認めないのは、実は乾隆帝が瓔珞に惚れているからではないかと察してしまいます……


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『延禧攻略』その6

2019年09月11日 | 中国歴史ドラマ
『延禧攻略』第26~30話まで見ました。

瓔珞との結婚を望むようになった傅恒ですが、家格が違いすぎるということで皇后は困惑し、乾隆帝は激怒します。皇后の侍女爾晴は誠実なように見えて傅恒との結婚で玉の輿を狙っていたようで、皇后にいっそ瓔珞を乾隆帝に入内させるよう薦め、乾隆帝自身もそれを望むかのような素振りを見せます。しかし当の瓔珞は姉の復讐あるのみと傅恒との結婚も入内も拒絶。そんな中、皇后が懐妊したことが判明。喜びに沸く皇宮ですが、嫻妃は皇后の心遣いが徒になって獄中の弟が病死したことで皇后を逆恨みするようになります。

復讐の決意を固めた瓔珞は、寿康宮に乗り込んで裕太妃を糾弾。「お前の姉を殺してなどいない!」と天に誓う太妃をよそに、敷地内で建設中の仏堂に落雷し、発火。「天罰だ!」という瓔珞の言葉を受けてショック死してしまいます。偶然の事故のようにも見えますが、瓔珞は事前に落雷の可能性を知っており…… 母を亡くして傷心の孔昼にまたぞろ嫻妃が抜け目なく接近。彼が幼い頃に恩を施したことがあるようです。

裕太妃の死に瓔珞が関わっていると知って激怒した乾隆帝は長春宮へと怒鳴り込みますが、瓔珞は既に皇后の怒りを買ったという体裁で辛者庫へと送られた後でした。彼女はここで奴僕として苦役に服することになります。ということで後宮物でお馴染み苦役ターンです (^_^;)


瓔珞はかつて自分が辛者庫に追い込んだ錦綉と再会。そして今ひとり宦官の袁春望と出会います。彼はかつて嫻妃が弟に差し入れる金を作ろうと密かに装飾品を売り払おうとし、高貴妃に見つかって処罰されそうになった時に、罪をかぶって口裏を合わせるのを拒絶し、上司の宦官の怒りを買って辛者庫に送られたという身の上。

誰とも口をきこうとしない彼ですが、瓔珞と傅恒との密会を目撃したり、自分に言い寄ろうとした張管事(男)を瓔珞が棒で撲殺して遺体を適当に処分たりしているうちに仲良くなり、なりゆきで義兄妹の契りを結ぶことに。そういや韋小宝もこんな感じで襲いかかってきた宮中の人間を消したりてたので、このドラマ、やはり女版『鹿鼎記』みがありますね。

一方、身重の皇后は皇太后主催の重陽の宴に出席しますが、そこへ生臭い料理に釣られたのか蝙蝠の大群が来襲。混乱の中で高貴妃が皇后を突き落とし、十数日以上の昏睡状態に陥ります。そしてみなが浮き足立つ中、落ち着いて対処し、皇太后の身を守った嫻妃がその信頼を得るようになりますが、これって嫻妃が仕組んだということですよね……?
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『延禧攻略』その5

2019年09月04日 | 中国歴史ドラマ
『延禧攻略』第21~25話まで見ました。

舒貴人はこっそり自分が献上した仏舎利を盗んで瓔珞を陥れようとしますが、瓔珞は西洋手品の実演にかこつけて、盗難を公にせずに舒貴人の袖元から仏舎利を取り戻します。この手品の演出も大概なんですけど、前回のパッヘルベルのカノンのインパクトが強すぎましたね……


嘉嬪にかわる高貴妃の新たな軍師枠らしい舒貴人。

舒貴人&高貴妃は発想を逆転させ、瓔珞を自分たちの手先に仕立て上げようとします。そして彼女を呼び出し、姉の阿満を殺害したのはやはり傅恒ではないかと、当時現場に残されていた彼の帯を手渡します。そして毒薬を渡し、傅恒と皇后を毒殺するよう唆しますが、もちろんあっさり彼女たちの話を聞き入れる瓔珞ではありません。彼女は何者かが傅恒の衣服を盗み、侍衛に変装して凶行に及んだのではないかと推理します。


で、姉の身を汚した犯人はあっさり乾隆帝の愛弟・和親王の孔昼であることが判明。皇室の面々が宴に呼ばれた際に、母の急病で急遽欠勤した傅恒の衣服を勝手に拝借して凶行に及んだとのこと。孔昼は他のドラマと同じく韜晦癖のある変人として描かれていますが、本作では更にクズ属性が付加されています。

罪を指弾してもそれを認めても反省の色はなく、「ハイ、オレが悪かった」「お前の姉の名誉のためにはオレの侍妾だったということにしておいてやる」「お前の父親も取り立ててやる」「金が欲しいならやる」と、木で鼻をくくったような対応で、更には「世上没有永远的敌人」(この世には永遠の敵同士なんていない)と、下手人が一番言ってはいけないことも平気で口にします。仲介した皇后も彼の態度には呆れ顔で「威逼利诱」と非難します。 しかし彼は姉の身を汚したことは認めましたが、殺害はしていないと言い張ります。

当然瓔珞は相手が皇族だろうと乾隆帝と仲の良い皇弟だろうと、このまま引き下がるつもりはありません。夜な夜な孔昼をおびき出し、彼が自分を暴行しようとしたと乾隆帝に訴え出ます。乾隆帝も、他の皇族からも彼の素行に関してクレームが出ていることもあり、今度ばかりは庇いきれず処分を検討し始めます。


そんな息子の状況に心を痛める孔昼の生母・裕太妃。彼女は虫も殺さないやさしい性格だともっぱらの評判ですが、実は瓔珞の姉に手を掛けたのはこの裕太妃なのでした。「息子を誘惑した汚らわしい女」という歪んだ認知でもって阿満を手に掛けたという次第。瓔珞に対しても密かに刺客を送り込み、暗殺が失敗に終わると、今度は直接彼女を呼び出し、「これ以上調子に乗るとお前の父がどうなるかわかっているだろう?」と脅しつけます。事態を薄々察した皇后は、失意の瓔珞を励ますのでした……

ということで、全体の3分の1を越えたあたりであっさり瓔珞の姉の死の真相が判明しました。一部で今期の朝ドラが「いろいろ問題が出るけどサクサク解決してしまう」と揶揄されているようですが、バカを言ってはいけません。本当にサクサク展開するドラマとは本作のような作品を言うのです。というより、これまでも指摘してきたように、このスピード感こそが于正作品の持ち味なんですよね。

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2019年8月に読んだ本

2019年09月01日 | 読書メーター
ヒトラーの時代-ドイツ国民はなぜ独裁者に熱狂したのか (中公新書)ヒトラーの時代-ドイツ国民はなぜ独裁者に熱狂したのか (中公新書)感想
既にごく基本的な事項も含めて種々の錯誤が指摘されている本作だが、文章力の方は衰えを見せていない。(それだけに厄介かもしれない)ユダヤ人の亡命ハンドブックの話など面白い話題も多いし、現代の日本の政治状況と何やら重なりそうな記述も散見されるが、個別の事項について錯誤がないかいちいち疑ってかからないといけない状況になっているのが辛いというかもったいない。
読了日:08月01日 著者:池内 紀

戦争の記憶 コロンビア大学特別講義 学生との対話 (講談社現代新書)戦争の記憶 コロンビア大学特別講義 学生との対話 (講談社現代新書)感想
歴史と記憶とは異なるという観点から、それぞれの国の「戦争の記憶」について語り合う講義録というか、学生たちによる対話集。広島・長崎の原爆投下や9・11事件から抜け落ちてしまう記憶は何かという問題、メディアは記憶の伝達手段であって、記憶を操作する存在ではないということ、慰安婦問題が国際的に共通の記憶となるまでのプロセスを面白く読んだ。
読了日:08月04日 著者:キャロル・グラック

南北戦争の時代 19世紀 (岩波新書)南北戦争の時代 19世紀 (岩波新書)感想
今巻は近代戦争最初の総力戦と位置づけられる南北戦争を経て、「奴隷国家」として誕生したアメリカが「移民国家」へと変貌していく様子を描く。逆にアメリカから出て行く動きとして、「自由黒人」をリベリアに植民させる運動にも言及している。ストウ夫人も熱烈な植民論者であったとのこと。最後に南北戦争の「戦争の記憶」について触れているのも面白い。
読了日:08月06日 著者:貴堂 嘉之

思想史で読む史学概論思想史で読む史学概論感想
日本思想史専攻の研究者による史学概論。近現代の一国史が固有性を求めるのに対し、前近代の王朝史が共通性・普遍性を意識していたこと、秀吉の朝鮮出兵について民族主義的な視点が支配的だったはずの韓国から却ってトランスナショナル・ヒストリー的な研究が出てきていること、植民地時代の『朝鮮史』の編纂をめぐって、たとえ実証主義的、学術的であっても、ひとたび「正史」として編纂されることで、現地の人々の多様な歴史や視線を抑圧・隠蔽する権力として作用するという議論を面白く読んだ。
読了日:08月09日 著者:桂島宣弘

幸福な監視国家・中国 (NHK出版新書)幸福な監視国家・中国 (NHK出版新書)感想
信用スコア、監視カメラ網などといった形で進められている中国の管理社会・監視社会化について、中国のみで見られる特異な状況として扱うのではなく、中国特有の歴史的背景に留意しつつも、日本も直面し得る普遍的な問題として議論する。類書に見られるような中国論だけでなく、倫理学的な観点からの議論も展開されているのが本書の特徴となる。中国を自分たちとは異質な他者として扱い、その影響力を切断してしまえば我々の社会のディストピア化が避けられるという発想が却って危険であるという指摘が印象的。
読了日:08月11日 著者:梶谷 懐,高口 康太

ブルース・リー (ちくま文庫)ブルース・リー (ちくま文庫)感想
ブルース・リーの子役時代の作品について詳述するとともに、90年代あたりまでの香港映画史ともなっている点に特色がある。ブルース・リーがその出自から香港にあってもアメリカにあっても異分子であったこと、ブルース・リーのミソジニー、中国武術とナショナリズムの問題、ブルース・リー作品の世界的な受容など、取り扱う話題は幅広い。香港映画に興味のある向きは手にとって損はないと思う。
読了日:08月14日 著者:四方田 犬彦

美学への招待 増補版 (中公新書)美学への招待 増補版 (中公新書)感想
美学の概論というよりは、美学の研究者はこういう問題意識を持っていますということを提示する本。「センス」の概念が示すものとか、我々が芸術に触れるうえで複製がオリジナルになるという倒錯といった馴染みやすい話題から、芸術の哲学としての美学の世界へと我々を引き込んでくる。時節柄「少女像」に示されるような芸術と政治の関係について言及した箇所はないかと期待したが、増補分の第10章でその糸口ぐらいは得られたかもしれない。
読了日:08月21日 著者:佐々木 健一

愛と欲望の三国志 (講談社現代新書)愛と欲望の三国志 (講談社現代新書)感想
日本での三国志の受容についてまとめる。江戸時代の『通俗三国志』と対馬・朝鮮半島との関係、近代日本で孔明が推された背景、日中戦争期に三国志ブームがおこり、中国理解のために読まれたといったことなどが読みどころ。本書で取り上げられているのは活字メディアというか小説だけだが、漫画やゲームについては今後の研究課題ということだろうか。
読了日:08月22日 著者:箱崎 みどり

【増補改訂】オリンピック全大会 人と時代と夢の物語 (朝日選書)【増補改訂】オリンピック全大会 人と時代と夢の物語 (朝日選書)感想
1896年のアテネ大会から2016年のリオデジャネイロ大会まで夏季五輪を総覧。各大会の名選手や豆知識の紹介にとどまらず、歴史的背景、政治性・政治利用をめぐるIOC・国家・選手間のせめぎあい、プロとアマの間、商業性や経済利用の問題、そしてレガシーなどの新しい動向をちゃんと押さえたオリンピック論となっている。私の見た限りパラリンピックに関する言及がないのが唯一の不満。
読了日:08月25日 著者:武田 薫

日本近現代史講義-成功と失敗の歴史に学ぶ (中公新書)日本近現代史講義-成功と失敗の歴史に学ぶ (中公新書)感想
「日本近現代史講義」とあるが、テーマは国際政治や外交に関するものに偏っている。各章ともそれぞれの研究者の論著の良い要約となっているが、自民党本部での3年間にわたる講義を書籍化したものという成立から、研究者が政治家に何を伝えたかったかという読み方もできる。第13章で近現代日本とイギリスとを対比のうえ、日本は大陸において果たすべき自らの役割を定義してこなかった、その理由と帰結について問うていくべきというメッセージが特に心に残る。
読了日:08月27日 著者:山内昌之,細谷雄一

奴隷船の世界史 (岩波新書)奴隷船の世界史 (岩波新書)感想
奴隷貿易・奴隷船だけでなく、イギリスを中心に展開された奴隷貿易廃止運動、そして現代の奴隷制へと話が展開する。奴隷貿易研究のためにTSTDのようなデータベースが構築され、広く利用されていることにも触れられている。奴隷船において黒人奴隷だけでなく水夫も債務奴隷と言うべき存在であり、過酷な扱いを受けたというのは、何となく現代の労働問題の重層性を連想させる。
読了日:08月30日 著者:布留川 正博

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