博客 金烏工房

中国史に関する書籍・映画・テレビ番組の感想などをつれづれに語るブログです。

『武媚娘伝奇』その9

2015年07月27日 | 中国歴史ドラマ
『武媚娘伝奇』第47~52話まで見ました。

無事に長安に帰還したものの、戦場で受けた毒矢の傷が癒えない太宗。ついでに媚娘も長安郊外の寺で反省の日々を送っていたところを太宗が連れ帰ったという体裁にして再び宮廷へ。初代の高祖が定めた規程により、宮廷の女性が從軍すると死罪になるということになっているようです。

媚娘は数年ぶりに徐慧と再会しますが、ダークサイドに落ちきった彼女はかつての韋貴妃をも凌ぐ酷烈な後宮の支配者となっていたのでした。徐慧は太宗に媚娘を妃に昇格させる意志があるのを知ると、それを阻むために、長孫無忌ら群臣に媚娘が禁忌を冒して太宗の北方親征に従軍していたと怪文書を配布。「女主武氏」の予言の一件から媚娘の存在を快く思っていなかった長孫無忌が媚娘の排斥に乗り出します。そしてかつて「女主武氏」の騒動の最中に命を落とした欽天監李淳風の師袁天罡に再び媚娘が「女主武氏」であるかどうか占わせるよう太宗に要求します。

しかし媚娘自身の太宗への提案により、彼女が重臣房玄齡の息子房遺愛に嫁入りする高陽公主の侍女となり、宮廷を出ることでこの一件は幕引き。ここで徐慧が「武媚娘!どうしていつも危機に陥っても死なないのよ!」と叫んでいますが、この台詞、視聴者の疑問を代弁してますね (^_^;) で、太子逼宮の一件以来徐慧が媚娘を陥れようと画策していたことをようやく悟り、御花園で二人が対峙。徐慧自身の口からこれまでの悪事を暴露させ、それを媚娘に呼ばれて茂みに隠れていた太宗にも聞かせたことで、徐慧は永久監禁処分に。二人の暗闘はこうして幕を閉じたのでした……

そして媚娘が高陽公主の侍女としてともに房府に入って一年。なりゆきで高陽公主が結婚前から好き合っていた弁機和尚との駆け落ちを手助けすることになった媚娘ですが、公主の素行を密かに探っていた長孫無忌が、これを口実に媚娘を処断しようと身柄を確保。その頃、太宗は衰えた体力を取り戻すために服用していた丹薬の副作用と、公主の駆け落ち未遂による心労の影響から昏倒を繰り返すようになり、いよいよ死期が近づいてきたようですが……?

ということでとっくに折り返し地点を過ぎているこのドラマですが、次回あたりからようやく高宗の時代に入るようです……
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『武媚娘伝奇』その8

2015年07月20日 | 中国歴史ドラマ
『武媚娘伝奇』第41~46話まで見ました。

五行草服用による流産のせいで二度と子供を産めない体になってしまった蕭薔。それもこれも流産を進めた徐慧プラス媚娘のせいということで、2人を甘露殿に呼び出して閉じ込め、殿内に火を着けて焼死させようとします。そして天井から梁が焼け落ちて媚娘の頭上に落下するところを「ここであなたを死なせたら永遠に陛下の中にあたなのことが残ってしまう!それに私とあなたの勝負はまだ着いてない!」と、徐慧が身をもって庇います。なんやこの執念(´Д`;) しかしその功績により徐慧は賢妃に昇格、媚娘も彼女が自分を陥れようとしているのではないかという疑惑を打ち消します。

その頃、太宗は廃太子李承乾にかわり、晋王李治を新たな後継に据えようと検討。自分が後継に選ばれないのは、太宗の死後、自分の子に帝位を伝えるために他の兄弟を粛清するのではないかと父皇に警戒されていると知った魏王李泰は、その不安を払拭しようと「私が太子になったら晋王を後継とし、息子たちを殺害します!」と無茶ぶりな誓いを立て、太宗や群臣にドン引きされてしまいます。長孫無忌がコメントを求められ、「こんなことを言うのは余程の阿呆でなければ人でなしです。絶対に魏王を太子にしてはいけません」と発言していますが、残念でもなく当然の反応ですね (^_^;) で、晋王が後継に選ばれ、やけくそになった魏王は晋王を人質に取って父皇への逼宮を決行。

呉王李恪は事態を知って父皇を救おうとしますが、ここで彼の母楊淑妃が、実は自分は元々李元吉の妃であり、呉王も太宗ではなく李元吉との間の子であるという衝撃の事実を暴露。そしてこの事態を奇貨としてお前が新帝となれと嗾けます。一度はその気になる呉王でしたが、やはり事態を知って駆けつけた媚娘の説得に応じ、父皇と晋王を救援することに。呉王の部隊と魏王の手勢とが睨み合う中、人質の晋王は見張り役の李義府を懐柔してその場を逃れ、魏王は乱戦の中で死亡。楊淑妃の手配により太宗殺害のための部隊の一員として派遣された李牧は、土壇場で裏切って太宗を救出。事破れたことを知った楊淑妃は呉王と媚娘の目の前で服毒死してしまいます。媚娘の目の前で死んだ妃嬪はこれで何人目でしょうか……

こうして晴れて太子となった晋王は名門出身の妃嬪を娶ることに。下の画像のうち、上段が後の王皇后、下段が張馨予演じる後の蕭淑妃。それぞれドラマ後半でメインを張るはずですが、ここでは顔見せ程度の登場です。





太宗は都を晋王に任せ、北方親征へと出発。李牧と媚娘は太宗の思し召しにより密かに宮中から出されてともに民間で暮らすことになっておりましたが、その太宗から北方の蘇楼寒の襲撃により窮地に陥っていることを知ると、援軍として進軍していた呉王と合流し、救援に駆けつけることに。間一髪のところで太宗の救出に成功しますが、太宗と媚娘を戦場から離脱させるために李牧が犠牲となってしまい……

ということで今回のパートは大胆なフィクションを交えつつドラマ中盤の展開を盛り上げております (^_^;) 媚娘が日本の大河ドラマのヒロインかと見紛うような八面六臂の活躍ぶりを見せておりますが、日本とは違って序盤から頭がいいところを強調している、ネゴシエーター的なことも露骨にやっているということで、大河のヒロインよりはその活躍ぶりに説得力が出ていると思います。
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『武媚娘伝奇』その7

2015年07月10日 | 読書メーター
『武媚娘伝奇』第35~40話まで見ました。

太子李承乾と侯君集による逼宮(皇帝に退位を迫るクーデタ)の動きは太宗によってあえなく鎮圧され、太子の一党ということで媚娘も掖庭獄に投獄。何としても彼女を助けたい雉奴こと晋王李治は、投獄される寸前の彼女の入れ知恵により、雨の中父皇の宮殿の前で跪いて兄太子の助命を嘆願。同じような雨の中での嘆願の場面は『宮廷女官若曦』でもありましたが、宮廷物ってこういうシチュエーションがよくありますよね…… ともかく太宗は李承乾の太子廃位を決定し、また晋王を次の太子候補として意識するようになります。

一方、韋貴妃はこの機会に媚娘を亡き者にしようと掖庭獄に刺客を送りますが、楊淑妃の方は彼女を獄中より救いだそうと、彼女の幼馴染み李牧を派遣。


李牧を演じるのは、媚娘の中の人范冰冰と交際中の李晨。劇中では李孝常の謀反に巻き込まれ、その一党として処刑されるところを楊淑妃の思し召しで救出され、身分と名前を偽って宮廷に入り込んだという設定。

間一髪で刺客の魔の手より救われた媚娘ですが、太宗の裁定により獄中より出ることは許されたものの才人の称号を剥奪され、一宮女へと降格。ここで晋王に対し、「廃太子と魏王李泰・呉王李恪との兄弟間の後継者争いを終わらせるには、あなたが太子になるしかありません」と焚き付けております。で、段々とその気になっていく晋王。父皇や群臣の面前で北方の対外政策について見事な見識を披露したりしております。その見識は無論媚娘の指導というか入れ知恵によるものなんですが、二人のこの関係が後年まで続いていくことになるんでしょうね。

その頃、太宗の子を身ごもったものの叔母韋貴妃の陰謀により生命の危機にさらされていた蕭薔は、徐慧の入れ知恵により五行草を服用して流産に見せかけ、自ら堕胎し、更に気が触れたふりをして韋貴妃が五行草の薬湯を飲ませて堕胎させたと太宗に告発。これにより韋貴妃は掖庭獄に投獄され、媚娘への復讐(と言っても堕胎の一件ら媚娘が絡んでいるわけではないのですが)を魏王李泰に託して獄中で自害。

韋貴妃一派が排除され、自分の推す晋王が次第に太宗に認められていき、媚娘的にはすべてが順調に進んでいるかと思いきや、ダークサイドに落ちた徐慧の画策により、衛兵として宮中に留まっていた李牧の身分が怪しいと太宗に目を付けられてしまいます。媚娘は謀反人を告発する奏書から李牧に関する文書を抜き取ったりと色々小細工を試みますが、当の李牧も媚娘への思いや、謀反人の身内ということで家族にも過酷な仕打ちを強いた太宗への復讐を諦めきれないようで、媚娘は事を収めるには自分自身が李牧とともに宮中より出るしかないと思い詰め……
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『武媚娘伝奇』その6

2015年07月03日 | 中国歴史ドラマ
『武媚娘伝奇』第29~34話まで見ました。

前回太子李承乾自ら殺害したはずの称心でしたが、あれは別人だった模様…… 本物は太子によって邙山の山小屋に匿われておりました。しかしそれも魏王李泰やダークサイドに落ちた徐慧の画策によってあっさり太宗に露見してしまいます。そして太宗自ら邙山に赴き、称心を誅殺。ここで太子が、称心を寵愛したのは幼い頃の遊び友達で玄武門の変で太宗によって処刑された承訓(太宗の兄李建成の子で太子の従弟)のかわりだったと激白。

この一件が最後の一押しとなり、太子は父帝に対する謀反を画策するようになります。太子一派と結びつきを強めていた媚娘はその叛意を知り、太子の師魏徴と相談。病で余命幾ばくも無い魏徴は、今際の際に見舞いに来るはずの太宗にそれとなく太子を廃する意志を確認→廃立の意志があるなら、功臣への死後の特典として宮城内で葬列を行う際に、棺の上に黒布を掛けておく、廃立の意志がないなら白布を掛けておくこととする。→廃立の意志がある場合(=黒布が掛かっていた場合)のみ決起せよと提案。

媚娘は太子妃への贈り物にかこつけて棺の黒布と白布の件を手紙で太子に伝達することに。それで黒布の場合は彼女が太宗に事の次第を伝える心づもりでしたが、媚娘を陥れようとする徐慧の画策により、黒布と白布の関係を逆にした手紙に入れ替えられてしまいます。徐慧は媚娘から太子の叛意について知らされ、内心媚娘を裏切る気満々でも真顔で「あなたがどんな選択をしても私は常にあなたの味方」とか言うんですから、大したタマです (^_^;)

そして魏徴が病没。彼の棺の上に掛かっているのが白布であったので胸をなで下ろす媚娘。しかし「太宗に廃太子の意志とあり」と解した太子が将軍の侯君集とともに決起したとの情報を聞き、慌てて兵を収めるよう説得に向かいますが、そのまま囚われの身に…… 一方の太宗は徐慧から謀反の情報を得ていたこともあり、外地から呼び寄せていた将軍李勣の軍隊によりあっという間に謀反を鎮圧してしまったのでした。完全に詰んでしまった感のある媚娘の運命やいかに?
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2015年6月に読んだ本

2015年07月01日 | 読書メーター
物語イギリスの歴史(下) - 清教徒・名誉革命からエリザベス2世まで (中公新書 2319)物語イギリスの歴史(下) - 清教徒・名誉革命からエリザベス2世まで (中公新書 2319)感想
下巻はイングランドの議会政治の定着がメインテーマ。「大英帝国」の形成とその解体については他書に譲るということであっさり端折られていますが、イングランドの王室史・政治史としてはかなりまとまったものとなっています。
読了日:6月2日 著者:君塚直隆

風と共に去りぬ 第4巻 (新潮文庫)風と共に去りぬ 第4巻 (新潮文庫)感想
南北戦争後の現実を受け入れ、とにかく状況に適応しようともがく人々、敗戦という現実を受け入れられずになすすべもないまま流されていく人々、そして黒人に対する北部人の視点と南部人の視点、このあたりの描写がリアル。我らがスカーレットは状況に適応しすぎてブラック企業の創業者みたいになってますが……
読了日:6月4日 著者:マーガレットミッチェル

古代の女性官僚: 女官の出世・結婚・引退 (歴史文化ライブラリー)古代の女性官僚: 女官の出世・結婚・引退 (歴史文化ライブラリー)感想
日本の女官は中国・朝鮮半島のそれとは異なって君主の側妾ではなく、まさしく女性の官僚であったこと、男官との婚姻が普通に行われていたこと、親兄弟や夫の七光りで出世したというわけではなく逆に女官の七光りで出世した男性がいたこと、女官が平安中期の清少納言・紫式部ら女房につながつていくことなど、非常に興味深く読んだ。比較対象としての中国・朝鮮の女官の把握が少々洗いような気もするが、それは中国史なり朝鮮史なりの分野の研究者のやるべき仕事ということになるだろうか。
読了日:6月7日 著者:伊集院葉子

軍国日本と『孫子』 (ちくま新書)軍国日本と『孫子』 (ちくま新書)感想
近代日本で『孫子』がどのように読まれ、あるいは読まれなくなったのかという話。終章の、戦後になって『孫子』がビジネスのための啓蒙書として読まれるようになっていく過程をもう少し丁寧に追ったら面白いのではないかと思った。
読了日:6月11日 著者:湯浅邦弘

海洋帝国興隆史 ヨーロッパ・海・近代世界システム (講談社選書メチエ)海洋帝国興隆史 ヨーロッパ・海・近代世界システム (講談社選書メチエ)感想
海洋帝国としてのポルトガルの再評価、イギリスがヘゲモニー国家となるうえで電信が果たした役割など、読みどころは多い。第四章で触れられている三角貿易とアヘン戦争との関係について、アヘンの取り引きが当時の中国の貿易赤字の原因のすべてというわけではないのではないかという指摘が注目される。今後更なる研究の進展を期待したいところ。
読了日:6月13日 著者:玉木俊明

古代中国を読む (岩波新書 青版 908)古代中国を読む (岩波新書 青版 908)感想
中国古代史に関して研究成果をまとめた本ではなく、研究の過程や『論語』『左伝』などの史料に対する見方をまとめた本。必然的に著者による『中国古代政治思想研究』所収の諸論考などのダイジェストにもなっています。中国古代史の研究とはどういうものかを知るには良い本かもしれません。
読了日:6月15日 著者:小倉芳彦

木簡と中国古代 (京大人文研漢籍セミナー)木簡と中国古代 (京大人文研漢籍セミナー)感想
冨谷至・目黒杏子・土口史記の三氏による講演録。土口氏による漢代木簡の長官署名の話が最も興味深かった。
読了日:6月17日 著者:富谷至,目黒杏子

歴史と私 - 史料と歩んだ歴史家の回想 (中公新書 2317)歴史と私 - 史料と歩んだ歴史家の回想 (中公新書 2317)感想
日本近現代史の大家による回顧録。研究者による史料の発掘と保管、研究に対する同時代の影響、政治家等への聞き取り調査等々、ふんだんに盛り込まれている個別のネタに関して興味は尽きない。ただ、著者の「新しい歴史教科書を作る会」への関与については多少言及されているという程度。著者にとってはあまり触れたくない「黒歴史」事項ということなのだろうか。
読了日:6月19日 著者:伊藤隆

教育という病 子どもと先生を苦しめる「教育リスク」 (光文社新書)教育という病 子どもと先生を苦しめる「教育リスク」 (光文社新書)感想
組体操、2分の1成人式、部活など学校での教育リスクについて論じている。根幹にあるのは無闇に感動と頑張りを求める日本の社会の問題ということになりそうだ。衝撃的だったのは、「柔道発祥の地」である日本の学校で死亡・重傷といった柔道事故が多発してきたのに対して、欧米では安全指導がはかられ、そのような事故がほとんど起きていないということ。もっとも、柔道事故に関しては日本でも改善がはかられているとのことだが…
読了日:6月20日 著者:内田良

完訳 楊家将演義 上巻完訳 楊家将演義 上巻感想
待望の楊家将演義(正確には『北宋志伝』)の翻訳だが、序盤の呼延賛がメインのあたりはかなり話がグダグダだなと。楊家の話がメインとなり、楊大郎が太宗の身代わりとなって死ぬあたりから安心して読めるようになります。楊家将に関してはちゃんと起承転結をつけて、各バージョンから有名エピソードを過不足なくまとめた編訳版の刊行が望まれるのかもしれない。(北方謙三の『楊家将』は残念ながらその役割を果たしていません。)
読了日:6月22日 著者:

楊家将演義 読本楊家将演義 読本感想
楊家将を題材とした演劇、映像メディアでの展開、物語に登場する神仙など、楊家将に関する興味深い話題が盛り込まれている。ただ「楊家将演義の舞台となった時代」の章については、同章の論考が所定の役割をあまり果たせておらず、かつ本書の他の章や、同時刊行の訳本の巻末の解説がその役割を果たしているので、この章自体が不要であったと思う。
読了日:6月26日 著者:

中国史(下) (岩波文庫)中国史(下) (岩波文庫)感想
上下巻通読してみて、通史としては「尖っている」分、21世紀の今になって読み返すと問題意識の古さが目に付く。却ってこれ以前に書かれた貝塚茂樹の『中国の歴史』の方が現在でも通用するすんなり読める部分が多いのではないか。その反面、現代史(最近世史)に関しては、外モンゴル問題の部分以外はそれほど外したことを書いてないなと感じたが……
読了日:6月29日 著者:宮崎市定
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