博客 金烏工房

中国史に関する書籍・映画・テレビ番組の感想などをつれづれに語るブログです。

『ナポレオン』13巻と久々の上海新天地

2010年04月29日 | 書籍(その他)
今日はリハビリを兼ねて、退院後に一番行きたかった所、難波の上海新天地へ。2年ぶりぐらいに行ってみたら、やっぱり内装とか店舗の配置とかが変わってるんですが。1階にあった中国土産売り場が日本土産売り場になってました。店員&客の中国人濃度も上がっていて、レジでは普通に中国語で話しかけられる始末……(以前は一応日本語で話しかけられたと思う。)食品売り場もお菓子・ドリンク類が激減してました。

もちろん影視コーナーも物色し、張紀中制作『倚天屠龍記』と、周潤発主演『孔子』、ドニーさんの『錦衣衛』・『十月囲城』を購入。本当は張芸謀の『三槍拍案驚奇』が欲しかったのですが、置いてなかった……

で、表題の長谷川哲也『ナポレオン 獅子の時代』13巻ですが、3月に刊行されたらしいということでこれまで病院帰りに附近の本屋で探してみたのですが、本書どころか出版元の少年画報社の本すら見当たらず。仕方ないので結局Amazonで取り寄せました。

【今巻のあらすじ】

はるばるエジプトに遠征したナポレオンだが、妻のジョゼフィーヌが浮気性であるという事実を突き付けられ激怒。一方、ナポレオンの部将ランヌはフランスに残した妻の貞節を疑わず、余裕をこいていたが……

以下、本書107~108頁よりナポレオン(以下「ナ」と略称)とランヌ(同様に「ラ」と略称)のやりとりを拾い出してみます。

ナ「最悪のニュースだ」
ラ「俺にはもっと悪いニュースが」「フランスから……女房に子供ができたそうだ」
ナ「!一年会ってない…」
ラ「父親は俺じゃない」
2人が一瞬の間沈黙して見つめ合う
ラ「結論--女なんてクソだ」
ナ「そうだ」
2人のうちどちらかが地面に「ペッ」と唾を吐く
ナ「殺しまくれ」
ラ「ああ」

かくしてカイロの反乱に対して、フランス軍は「女子供も容赦するな」と恐るべき虐殺を繰り広げることになったのである……って、工エエエ(´д`)エエエ工 こんな経緯でかよ!この作品、何か毎巻のようにツッコミ所を盛り込んできますなあ(^^;)
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『「世界征服」は可能か?』

2007年06月26日 | 書籍(その他)
岡田斗司夫『「世界征服」は可能か?』(ちくまプリマー新書、2007年6月)

誰もが一度は憧れる(?)世界征服。だけどこの現実世界で世界を征服するって一体どういうことなんだろう?また世界を征服して何かいいことがあるんだろうか?そういった疑問を大まじめに考察した本です。

こうなるとやっぱり気になるのが、これを武侠小説の世界にあてはめるとどうなるのかということであります(^^;) 

武侠小説の世界で「世界征服」に相当する行為は「武林制覇」もしくは「武林の盟主となる」といったところでしょう。本書では世界征服を狙う支配者を「魔王タイプ」「独裁者タイプ」「王様タイプ」「黒幕タイプ」の四タイプに分けています。この手の悪役が多く登場する金庸の『笑傲江湖』をこれにあてはめてみると、日月神教の任我行は強烈な怨みを内に抱いた魔王タイプ(あるいは東方不敗の一派に幽閉される前は独裁者タイプだったかもしれません)、同じく日月神教の東方不敗は自分が大好きで取り巻きを重用し、支配体制の維持も人任せにしてしまう王様タイプ、偽君子の岳不群は黒幕タイプ、五嶽剣派盟主の左冷禅は仕切り屋で部下からの信望が厚い独裁者タイプといったところでしょうか。

一昔前の特撮物やアニメなんかだと主人公側は悪役のこういった世界征服の野望を打ち砕くのが目的になったわけですが、金庸作品の場合だと、『碧血剣』の袁承志のように悪役のかわりに周囲の人々から武林の盟主に推戴される(あるいは祭り上げられそうになる)ことが多いですね。支配者の五番目のタイプとして、本人にその気は無いのに周囲の人々から支配者として祭り上げられる「御輿タイプ」というのを追加しても良いかもしれません。

この本を読みながらこういう取りとめのないことを考えてしまいましたが、本書はこういう具合にいじり甲斐のある本です(^^;)
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『日本とフランス 二つの民主主義』

2006年09月13日 | 書籍(その他)
薬師院仁志『日本とフランス 二つの民主主義』(光文社新書、2006年8月)

民主主義にはアメリカのような自由主義型と、フランスのような平等主義型(社会民主主義型) の2つのタイプがある。自由主義型は企業間の自由な経済競争によって社会全体が発展していくという考え方で、その結果、国民の間で経済的な格差が生じてもやむを得ないとする。また公的機関についてもできるだけ民営化を進めていこうととする。一方、平等主義型は国民の間の格差をできるだけ平等に保つことを理想とし、教育・医療・交通などの公的な分野では政府が積極的に規制を行うとする。

医療機関を例えに出せば、自由主義の考え方に基づけば、患者は自分のニーズに応じた治療を受ける権利を持っており、医者は自分の技術に応じた報酬を得る権利を持っているということになる。だから質の高い医療を受けようと思えば患者が相応の治療費を払わねばならず、貧乏人は質の低い医療しか受けられないということになる。平等主義はこれを問題とし、医療費を公的に定め、国民に健康保険の加入を義務づけて、なるたけ安価で質の高い医療を誰でも受けられるようにしようという発想になる。

フランスなどヨーロッパ諸国や南米諸国ではこうした平等主義的な政策を主張する左派が政権を担っていたり、大きな勢力を保っていることが多い。ところが日本ではアメリカの影響で、自由主義を理想とする風潮が強い。しかもしばらく前までは右派であるはずの自民党が公的機関の保護など平等主義的な政策を展開し、社会党などの左派が反対に公的機関の民営化などの自由主義的な政策を主張するという捻れ現象が起こっていた。しかし右派の自民党が郵政民営化など本来あるべき自由主義的な政策を打ち出すと、同じく自由主義的政策を主張していた野党は独自性が打ち出せなくなってしまった。また、有権者には自由主義的な政策に反対して平等主義的な政策を主張する政党を支持するという選択肢が無くなってしまった。

そこで自由主義と対比される存在として、フランスを例に平等主義型の民主主義とはどんなものなのか見ていこうというのが本書の主旨です。かといって一方的にアメリカの政治をこきおろし、フランスの政治を賛美するという態度を取っているわけではなく、問題点も含めてあくまでサンプルとしてフランスの政治のあり方を見ていこうとする所に好感が持てます。

日本でなぜ社会党などの左派政党が没落したかという分析は非常に面白いと思いましたが、ただ右派と左派の捻れ現象が起こった理由を戦前に自由主義も社会主義も一緒くたに弾圧されたからだと簡単に片付けてしまっているのはどんなもんでしょう。近代日本の西洋思想の受容について触れている小島毅『近代日本の陽明学』(講談社メチエ、2006年8月)なんかを読むと、これにはもっと根深い事情があるんではないかという気がするのですが……
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『人体 失敗の進化史』

2006年07月13日 | 書籍(その他)
遠藤秀紀『人体 失敗の進化史』(光文社新書、2006年6月)

生物の進化というものは目的に応じて器官を新たに作り出すのではなく、別の目的で発達した器官を「取り敢えず」流用し、変化させることによって果たされる。進化とは地上での生活への適応や二足歩行の獲得といった遠大な目標に向かって計画的に進められるものではなく、手近な環境に適応するために行き当たりばったりで行われるものである。本書はこういったことを多くの事例の紹介によって説明しています。

例えば哺乳類の耳小骨は元々顎の関節の骨だったとか、脊椎動物の骨は最初は体内にカルシウムを蓄えるためだけに作られた器官だったとか、ヘソは実は卵生の動物にもあって、卵の黄身をためこむ卵黄嚢につながっているとか、二足歩行の実現によって人間は肩こりや冷え性、ヘルニアなど様々なトラブルを抱えるようになったとか、「へぇー」と思うような解説を読み進めているうちに、我々が「進化」や「恐竜」といった言葉に何となく抱いていた夢や壮大なロマンがぶち壊されていくこと請け合いです(^^;) 
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『知って楽しい地図の話』

2006年06月25日 | 書籍(その他)
田代博『知って楽しい地図の話』(新日本出版社、2005年12月)

私は高校で非常勤講師をしているのですが、その勤務先で先日、図書室担当の先生から「今度こういう本が入荷しましたので、読んでみてください」と薦められたのがこの本です。中身は高校地理の副読本的なものなので、面白かったら生徒にも推薦してほしいというつもりで貸してくださったのでしょうか。あるいはこの本を読んでお前がもっと勉強しろということなのかもしれませんが(^^;)

著者は高校の地理の先生ですが、『しんぶん赤旗』にコラムを連載していたという点に一抹の不安を感じつつ読み進めていきましたが、中身はそれほど政治的に偏りもなく、楽しく読ませていただきました。

特に面白かったのは世界地図の図法の使い分けの話です。世界地図というのは原理的には立体の地図である地球儀を無理に平面にうつしたものなので、陸地の面積比を正確に再現しようとすれば陸地の形がゆがんでしまう、陸地の形を見栄え良くしようとすれば陸地の面積比や、二点間の距離比、方位の関係などがおかしくなってしまうというように、何かしら不都合が生じてしまいます。

例えば我々おなじみのメルカトル図法は、ある地点から目的地までを結んだ直線と経線のなす角度を正しく表した正角図法の一種で、昔は海図として使用されました。これは他の図法と比べて陸地の形が整っているので、世界地図のポスターなんかにもよく使用されます。しかしこの図法は二点間の距離比や方位については不正確ですし、またグリーンランドや北米大陸などが実際よりも拡大されていたりすることからわかるように、陸地の面積比も不正確です。

そこで、分布図・密度図を作る際には陸地の面積比を正確に表した正積図法(モルワイデ図法などがこれに該当します。)を用い、ある地点からの距離や方位を示す場合には正距方位図法を用いるといったように、用途によって世界地図の図法を使い分ける必要がでてくるわけです。

ここまでは地理の授業で必ず習う話ですが、この本では官公庁のHPや新聞などでこういった図法の使い分けがちゃんとなされていないという事例をいくつか紹介しております。距離・方位・面積を正確に再現していない図法を使って中心からの距離・方位を図示したり、分布図を作ったりするというミスが結構あるようなのです。官公庁や新聞社なんかでもこういうミスは普通にスルーされちゃうもんなんですね…… 諸外国でもこういう事例があるのか、こういうベタなミスをするのは日本だけなのか気になるところです。

あとは、電子地図や景観描画ソフトなど、地理に関わるソフトウェア・HPやその利用法をたくさん紹介しているのも良いです。
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グーグル

2006年04月23日 | 書籍(その他)


佐々木俊尚『グーグル Google-既存のビジネスを破壊する-』(文春新書)

タイトルの通り、グーグルの登場と普及が今までの企業活動をどのように破壊しているのか、またグーグルが今までの検索エンジンと比べてどのあたりが画期的だったのかを解説した本です。

内容的には前に紹介した『ウェブ進化論』(本ブログでの紹介ページはこちら)と重なっている部分もあるのですが、こちらはキーワード広告の導入によって零細・中小企業が廃業の瀬戸際から救われた事例など、具体的な事例を盛り込んでおり、『ウェブ進化論』の内容を補完する本であると言えます。

また、最終章にはグーグルの企業としての問題点にも切り込んでおり、その面でもこういったことに触れていない『ウェブ進化論』を補完する内容になっております。この問題点については、悪徳商法によって儲けている企業が、自分たちのやり方を批判しているサイトをグーグルで検索できないように要請し、その要請をグーグル側がそのまんま受け入れてしまう「グーグル八分」問題、グーグルが提供するアドセンス広告を、ブログ運営者自身だけではなく他人が嫌がらせのために何回もクリックした場合にも、グーグル側が一方的なアドセンス契約を停止してしまう「クリック詐欺」問題、そしてグーグルが国家の要請によって都合の悪い情報を検索・閲覧できなくするという政治問題の3つを取り上げています。

しかし最初の2つの問題については、グーグル側がいずれ、こういった問題によって個人ユーザーからのイメージが悪くなるということを認識すれば、徐々に改善されていくのではないかと思います。もしこういった問題を放置するという姿勢を続けたとしても、かつてグーグルが他の検索エンジンの問題点を改善してトップの位置に躍り出たのと同じように、他の新しい検索エンジンが新規参入し、こういった問題点を改善することによって、グーグルをトップの位置から引きずり下ろすことになるんじゃないかと思います。

本当に憂慮すべきなのは最後の政治問題じゃないかと。
本書ではグーグルが中国政府の要請によって天安門事件や法輪功など、政治的に都合の悪いホームページを見られなくした事例が紹介されています。これについては私は以前からそういった動きがあると知っていたので、『ウェブ進化論』でこの問題について触れていないのを不審に思っていました。『ウェブ進化論』では「どうせこんなバカなことが10年も20年も続くまい」と楽観的に見て、敢えてこの問題をスルーしているのかと思いましたが、本書でグーグルマップ上でホワイトハウスや沖縄の米軍基地の精密航空写真が見られないように処理されているという事例を読んで、「こんなバカがこれからもずっと続くのだろう」という印象を持ちました……

グーグルの問題点ばかりに目がいってしまいましたが、ワープロソフトや表計算ソフトをブラウザ上で無料で使用できるようにする計画や、図書館の蔵書をデシタル化し、検索できるようにする事業については是非成し遂げて欲しいと期待しております。図書館の件については著作権絡みで猛烈な反対に遭っているとのことですが、中国では超星数字図書館という先例が既にできているわけで、グーグルのやる気と押し次第で充分に実現は可能だと思います(^^;)
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ウェブ進化論

2006年04月16日 | 書籍(その他)

梅田望夫『ウェブ進化論』(ちくま新書)

北京旅行中に読んでた本です。
GoogleやAmazonといった企業のどのへんが凄いのか、Web2.0やロングテールとはいったい何かといったことが、非常にわかりやすく説明されてます。ネット社会の将来については見方ちと甘いかなという気もしますが、今までのIT関係の一般書はそのあたり悲観的・批判的な内容のものが多かったので、一冊ぐらい楽観的な見方を貫いた本があってもいいかとも思いました(^^;)

面白かったのは、Wikipediaに関するエピソードです。
この本の著者がメディア企業から講演を頼まれると、必ずWikipediaでその企業の項目を表示させる。するとその企業の幹部が、Wikipediaの記述のどこそこが間違っている。こんな間違いを載せている百科事典は信用できんと怒り出したりする。そこで著者がその間違っている記述をその場で即時に訂正してしまうという話です。Wikipediaに関しては、例え記述に間違いが多いという評価が正しいとしても、はじめからそういうものだと認識して使えば何も問題はないんじゃないかと思います。この本にも同様のツッコミがありますが、紙の百科事典には間違いや偏った見方による記述がないというわけでもないでしょうし。

あと、世間では楽天やライブドアがIT企業の代表のように言われているが、実はこの2つの企業はテクノロジーに対する関心が薄く、YahooやGoogleなどとは業種が異なっている。むしろダイエー、セブンイレブン、TSUTAYA、ユニクロなどと同じく生活密着型サービス企業に属するという指摘にはたいへん納得しました。
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