博客 金烏工房

中国史に関する書籍・映画・テレビ番組の感想などをつれづれに語るブログです。

『大秦帝国之崛起』その7(完) 未来への最終決戦

2017年03月24日 | 中国歴史ドラマ
『大秦帝国之崛起』第37~最終40話まで見ました。

自分が推薦した鄭安平が趙に投降したことで、自分も大罪は免れないと昭襄王に罪を請う范雎ですが、なぜか白起に罪が降されて封君から兵卒の身分に落とされ、范雎は無罪放免に。なんでや、白起関係ないやろ!!(´Д`;) その後も趙との戦いは苦戦を強いられ、范雎は白起のもとに足を運び、出征を請うことに。しかし…… 白起「だから長平の戦いの直後に邯鄲を攻めようと奏上したのに、君はそれを邪魔したよね?」「どーせ出征して軍功を立てても王上に疎まれるんでしょ?」「今更死ぬのなんて怖くないもんね」とさっくり拒否。「悩んでたことが嘘みたいね」「だってもう自由よ何だってできる」「何も怖くない」という感じで、白起の言動がアナ雪みたいになってます(^_^;)

結局秦軍は邯鄲からの撤退を余儀なくされ、今度は逆に趙・魏・楚の連合軍に攻められると、昭襄王は白起に自決を命じます。だから白起関係ないやろ!!(´Д`;) 君臣間の矛盾を一身に背負わされた感のある白起ですが、最後に長平の戦い以来別離していた趙国出身の妻が戻ってきたのは唯一の救いかもしれません……

そして河東郡が陥落すると、郡守の王稽を推薦したのはまたもや范雎ということで、今度はさすがに二人まとめて投獄(後に鄭安平ともども処刑)。昭襄王は嬴摎を自分の副将に抜擢して対処を図ります。この嬴摎は『史記』に「将軍摎」として現れる人物です。勢いに乗る趙・魏・楚は周の天子を奉じ、他の3カ国(斉・韓・燕)と合わせて六国による合縦の形成を図ります。


そしてここでなぜか前作『大秦帝国之縦横』の主役恵文王が現れ、年老いた息子昭襄王を激励。

他の六国をすべて敵に回し、さすがにピンチかと思いきや、昭襄王は秦の兵力は六国の連合軍を余裕で上回ると余裕綽々。六国が奉じようとしていた周の赧王(周王朝最後の王となります)が病没すると、自ら天子になると宣言し、天子の座を賭けて汾城で六国の連合軍と決戦し、見事撃破します。


当年兄武王の死の原因となった周の九鼎を接収し、敗北を認めた六国の王を招いて天子の位に即く昭襄王。当初の予定では六国は藩王国として残すはずでしたが、それでは諸王が帰国後またぞろ合縦を図るだろうということで、昭襄王はいずれ六国をすべて滅亡させてやると宣言。憤然とした諸王は次々と即位の儀式を中座するといったところで幕引き。

【総括】
ということで最終回近辺では天子の座を賭けて昭襄王が六国の王と未来への最終決戦的な戦いを行うというオリジナル展開が繰り広げられましたが、何かバトル系少年漫画の打ち切りエンドみたいな締め方ですよね。「その5」で触れた事情により、第四部以降が無事に制作・放映できるかどうかわからないような状況になっているわけですが、スタッフの方も制作中から何か期する所があったのかもしれません……

第一部『裂変』、第二部『縦横』と、同じ原作をドラマ化していながら、本作は各部ごとに面白さの方向が異なるという不思議なシリーズです。特に今作は前作『縦横』と制作スタッフが重複しているはずですが、作風の違いが見られるような気がします。基本的に『史記』に見られる展開をなぞっているだけ……のはずなんですが、映像やストーリー展開から制作側のモチベーションというか禍々しさが感じられます。

特に秦の昭襄王については、主役の皇帝が晩年に専制君主化するという展開はこれまでの『康熙王朝』や『漢武大帝』でも見られたものですが、従来の作品ですと「青年の頃には理想に燃えていた」とかエクスキューズが入るもんなんですよね。しかし今回は昭襄王の若年の頃から老成した晩年までの約50年間を描いているにも関わらず、最初から最後まで一貫して身勝手なクズという物凄い設定になっています。さすがは始皇帝の曾祖父と言うべきでしょうか。

前作『縦横』がイマイチだと感じていたので、本作にここまで魅力を感じてハマるとは予想もできませんでした。現在放映中の大河ドラマ『おんな城主直虎』を物足りなく感じるレベルで(これも決して出来が悪い作品ではないのですが)、最終回まで見終わった今、ロスが怖いというか、今後生半可な歴史ドラマに満足できなくなりそうで怖いです (^_^;)
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『大秦帝国之崛起』その6 殿堂入りしました

2017年03月20日 | 中国歴史ドラマ
『大秦帝国之崛起』第31~36話まで見ました。

白起が秦・趙の決戦の舞台となる長平に到来し、王齕に替わって総大将となりますが、秦軍ではこれを機密事項とし、趙軍を出し抜こうとします。で、趙括はまんまと「もし白起が総大将だったなら慎重に行動せねばならないが、相手は王齕。これは天の助けだ( ・`ω・´)」などと言い出す始末。あとは決戦前にドヤ顔で配下に『孫子』の竹簡を広げて講義をしたりと、趙括のやらかしぶりがどんどん酷いことになっていっています…… しかしこのドラマで趙が廉頗に替えて趙括を総大将としたのも、兵糧不足で廉頗のひたすら持久戦という戦法に趙の朝廷が耐えきれなくなり、積極攻勢を主張する趙括に飛びついたからですし、趙括を起用しようがしまいが趙国が詰んでいることには変わりがないんですよね。

それで秦軍のおとり作戦に引っかかり、秦の総大将が白起に交替していることを悟った趙括でしたが、時既に遅く、なすすべもないまま泫氏谷で秦軍に包囲され、砦からの糧道が断たれてしまいます。しかし趙括は「きっと本国から援軍が来る!」と将兵を励ましながら、本陣の台に『孫子』など兵法書の竹簡を並べて一心不乱に読みふけったりしています。そんな悲しい描写もうやめてよ(´;ω;`) 事態を知った趙の朝廷の方でも援軍を送って趙括の救出を図りますが、秦軍に阻まれ、結局兵糧が尽きた趙括は包囲されてから46日目で最後の突撃を敢行して玉砕死を遂げます。

そして白起は降伏を申し出た趙軍20万人の投降を受け入れることにしますが、彼らを養う兵糧が問題に。秦軍の方も兵糧に余裕があるわけではないのです。しかし彼らを釈放して故国に返してしまうと、趙国にみすみす20万の大軍を返還しまうことになるので、白起としては彼らを秦軍に編入するか、皆殺しにしてしまうかしか選択肢がありません。取り敢えず使者を派遣して昭襄王に兵糧を請うことにしますが、20万人の捕虜のことを伏せておくように指示します。しかしその場で使者の話を聞いていた張禄(范雎)の厳しいツッコミにより、捕虜の件がバレバレに……

范雎の提案により、昭襄王は白起に対して、書面ではなく口頭での通達により、暗に捕虜を皆殺しにするよう仄めかすことにします。昭襄王の意図を知った白起の妻は、自分が趙国出身ということで決死の覚悟で翻意を促し、昭襄王は、使者には今回の件に関して全く事情を知らない第三者を選び、捕虜の対応については白起の好きにせよということで白紙の詔書を使者に託し、詔書とは別に口頭の通達を託すこともしないという措置を約束します。それなら「公正中立」に白起が判断できるということで、20万の捕虜の命は助かったと白起の妻は喜びますが……

ところが白紙の詔書を受け取った白起は、捕虜を養うための食糧が送られてこないということで昭襄王の意を察し、捕虜虐殺を実行に移します。一件「公正中立」のようでも、食糧を送らないという措置が強力なメッセージになっているんですよね。為政者の言う「公正中立」の正体なんてこんなもんです。この為政者による「公正中立」の欺瞞を暴いたという一点だけで、本作は中国時代劇の殿堂入りに値します。

そして長平の戦いの勝利の余勢を駆って趙の都・邯鄲に攻め入ることを昭襄王に奏上する白起ですが、白起にこれ以上手柄を立てさせたくない范雎の進言により却下。昭襄王は趙から六城を割譲させる条件で和平に同意します。しかし趙の方では本当に城を割譲させるかどうかで議論に。宰相虞卿の「約束通り割譲したところで秦がまた攻めてこない保証はありますか?」という発言が決め手となり、和平の条件を反故にして諸国との合縦を図ります。

で、激怒した昭襄王は、戦地から帰国した白起に邯鄲攻めを命じますが、白起は「長平の戦いの傷がまだ癒えておりません。それに邯鄲攻めの好機は既に逸しております。だからあの時すぐに邯鄲に攻め入るべきと言ったじゃないですか?」と静かに激おこして出征を拒否。趙の君臣も昭襄王も掌返しが酷すぎやしませんかね……

昭襄王は結局邯鄲攻めを強行するも、王陵・王齕の諸将は出征から三年経っても邯鄲を陥落させられません。仕方が無いので昭襄王自ら白起に出征を請いますが、上記の理由に加えて「私が出征しても勝てません。無理なものは無理です」ということでやはり拒否。この時に白起の「私は秦国に忠誠を尽くして参りました」という言葉に対して昭襄王が「秦国に忠誠を誓う前に寡人(私)に忠誠を誓え!」と目を剥いて言い返しているのですが、このドラマ、ドサクサに紛れて言ったらアカン台詞をしれっと混ぜていやしませんか?(´Д`;)

昭襄王は范雎の進言により、彼の恩人に当たる鄭安平を総大将として派遣しますが、平原君・信陵君・春申君の連合軍の捕虜となり、あっさり降伏。という所で次回へ。
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『大秦帝国之崛起』その5

2017年03月14日 | 中国歴史ドラマ
『大秦帝国之崛起』第25~30話まで見ました。

秦から首を要求された魏の宰相魏斉ですが、趙の平原君のもとに匿われるものの、その平原君が使者として秦に到来すると、昭襄王が魏斉の首を彼に求めて抑留、その間に魏斉は平原君の屋敷から同じく趙の虞卿のもとへと逃され、更に虞卿とともに信陵君を頼って魏へと戻りますが、信陵君が身柄引き受けを躊躇している間に前途を悲観して自害……

で、魏斉の首が秦へと送られ、昭襄王が張禄(范雎)に「おい、お前の欲しかったものが届いたぞ!」と首を見せます。張禄はさすがに一瞬びびってます。これで嬉しそうにしている昭襄王はちょっと精神的にヤバい人なんじゃという気がします。この人、始皇帝の祖先と言われて何となく納得できそうなところがありますね。

その後、張禄の提案で秦が韓・魏を攻め、韓より上党郡を割譲されることになります。しかし現地の民衆が秦への割譲に反発し、「ならいっそ」ということで独断で趙への投降を敢行。趙でも平原君の後押しで上党郡の受け入れを決定しますが、結局は秦に攻め取られてしまいます。そして秦側は更に長平へと侵攻することに……ということでいよいよ本作の山場・長平の戦いに突入です。

趙側は老将・廉頗を長平の守将とし、秦側もなかなか取り付くしまがありません。そして魏・楚などと合縦を図ります。そこで秦では張禄を平原君のもとに派遣して和議を模索する姿勢を示す一方で、白起を魏に派遣して合縦の切り崩しを図ります。


著名人物にクズばかりが目立つ本作にあって唯一の良心的な存在となっている白起ですが……

で、魏では魏王と信陵君が白起に応対して、かつて先王が若き日の魏冉と白起を評価していたというなごやかな話で始まったと思ったら、白起がいきなり「殺された太子倬の旧居を訪ねて太子の霊をお祀りしたい」と言い出して一瞬その場の雰囲気が凍り付きますw その後信陵君らと魏の長城を視察中に、春申君が刺客を放って白起暗殺を図ります。戦国四君は何でこうも揃いも揃って仁義のない人ばかりなんでしょうか…… 結局秦側は韓・魏との関係を修復し、楚も秦・趙の対立から離脱し、趙は一ヵ国で秦と対峙することに。

そして長平の戦いが開始されてから三年目。戦力では秦が上回るものの、趙では徹底して守戦を図る廉頗が総大将として秦側の攻勢を食い止めておりました。しかし両国とも兵糧不足が深刻な問題となります。秦では白起が蜀道の整備に取りかかり、蜀からの兵糧運搬を成功させる一方で、趙では平原君が守戦一辺倒の廉頗への不満を募らせます。それで廉頗が全千から都の邯鄲に召還されますが…… 廉頗「我が軍の戦力は秦より劣りますが、ワシが指揮を取る限り秦の攻勢を食い止めてみせますぞ!( ・`ω・´)」 趙の孝成王「だから兵糧がないと言っているではないか!(´Д`;) 秦はいつ攻勢を諦めるというのか!!」


そんなこんなで、おまけに秦側の工作もあって積極攻勢を主張する趙括に総大将が交替。一方、秦ではいよいよ切り札白起が総大将に。ここで趙括の母親が出てきて息子を総大将とすることに反対し……というお馴染みの話も挿入されるのですが、趙が相変わらず兵糧不足に苦しむ一方で秦が蜀からの兵糧を手に入れたという時点で、総大将が廉頗だろうが趙括だろうが勝負は着いてますよね。今回の描写を見ると、どうもベテランの廉頗に替えて口先だけで実戦経験のない趙括を任用した趙がアホという単純な話にするつもりはないようですが?

【今回のおまけ】
本作第30話で、秦側が趙の有力者の買収工作を進める場面が出てくるのですが、これに関してこういうニュースが……

「中国の歴史ドラマに習主席らの名前「賄賂に弱い将軍」で」
http://jp.wsj.com/articles/SB10681214028215414391304583007313464442902

要するに買収工作リストに相当する竹簡に、習近平とか胡錦濤とか出て来ちゃいけない名前がぞろぞろ篆書で書かれており、これが物議を醸しているというニュースです。現在閲覧できる公式配信の動画では、このワンシーンがカットされた状態になっています。スタッフの悪ふざけということなんでしょうが、思えば第一部『裂変』のテレビ放映の経緯からして、制作サイド的には今回放映局のCCTV1(中国中央電視台総合チャンネル)には、含むところがあってもおかしくないんですよね。(こちらの過去記事を参照→「大秦帝国テレビ放映」)また、昭襄王や孟嘗君、張禄らの、やや悪意が込められたキャラクター描写を見てると、作品全体の雰囲気にこの「悪ふざけ」がうまくマッチしているようにも思います。
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『大秦帝国之崛起』その4

2017年03月08日 | 中国歴史ドラマ
『大秦帝国之崛起』第19~24話まで見ました。

義渠駭による謀反はあっさり秦側に露見し、かつての妻である宣太后の同意のもとで殺害されてしまいます。前作のラスト&本作の冒頭で死んでしまった息子の隣に葬られるさまは何だかせつないです……

そして魏冉は陶邑の更なる拡大を目指して魏に侵攻し、和議を結ぶために王稽とともに魏の宮廷に出向いたところで、魏の大夫須賈の食客として范睢が登場。


宮城谷昌光の小説の主人公にもなっている人物ですが、本作では風采の上がらないねずみ男というかボヤッキーみたいなナリです。

で、こいつが主人を見捨てて魏冉に取り入ろうとしたということで、殴る蹴るの暴行を受けて簀巻きにされ、更には須賈と魏の宰相魏斉に小便を引っかけられるという屈辱を受け、下男の鄭安平に助けられ、命からがら魏から逃亡。名前を張禄と改め、数日前に会ったばかりの王稽を頼って昭襄王との面会に漕ぎ着けます。(以下、范睢を張禄と表記します)

そして昭襄王に宣太后・魏冉・華陽君(宣太后の弟の一人)といった外戚の排除と、彼らのかわりに厚かましくも自分を登用するように進言します。昭襄王は以前に同じく外戚の排除を図って孟嘗君を秦に迎えたところ、酷い目に遭ったという経緯があるので、激怒して張禄を追い返すかと思いきや、ニッコニコで彼を客卿に任命し、魏冉にかわって軍務を任せます。ダメだこの人、若い頃と全く変わってないw 職権を奪われた当然魏冉はブチ切れるわけですが、天性の煽り体質である張禄も口の方では負けてはいません (^_^;)

張禄は義渠駭による謀反に加担しようとした報復として、趙への侵攻を計画。そのために太子倬を魏に人質にやり、魏と同盟を結ぶことを提案します。人質というのは元々リスクを伴ううえに、太子倬は魏冉らと同調して反張禄派に属しているということで、初孫にあたる彼の死を悟る宣太后……

事態を知った趙では、戦国四君の一人である平原君が魏に赴き、自分の妻の弟である信陵君(やはり戦国四君の一人)を頼って魏秦同盟の離間を図ります。


ということで平原君です。後で春申君の出番もあるようで、このドラマでは先に登場した孟嘗君と合わせて、戦国四君が四人とも登場するみたいです。

この二人の会話。 平原君「ということで君ん所の王様に秦との同盟を破棄するように言って欲しいんだが。」 信陵君「秦から太子が人質に来てるから、それは無理だぜ?」 平原君「ということは、その太子が死んでしまえば同盟が決裂するわけだな?」 信陵君「先斬後奏(=要するに事後報告)というやつだな(ニヤリ)」 平原君&信陵君「ということで秦の太子の首を持ってきましたー!!☆=(*ゝωб)」 魏の安釐王「ほげぇぇぇぇぇ!!何やらかしとんのじゃーーー!!」 しかしこうなった以上、どう詫びを入れても秦には許してもらえないということで、魏では秦との同盟を破棄して趙とともに秦と戦うことに。平原君と信陵君も孟嘗君に負けず劣らずのクズですね……

秦では魏冉派の白起を避けて胡傷を大将としますが、趙では趙奢を大将として閼与の戦いに臨み、見事に秦を撃破。秦では太子の死の原因を作ったうえに敗戦の責任者となった張禄が断罪されるのかと思いきや、太子の棺が魏から秦に送られてきた時に、張禄が真っ先に「この仇を決して忘れない!私が魏に攻めこんで太子の仇を取って見せます!」とか言い出します。こいつも戦国四君や魏冉に匹敵するクズですw 本作は何かクズの見本市になってきた感が……

で、なぜかこの張禄が魏冉にかわって丞相に任命され、封君として応侯に封じられます。当然この処置に納得できない魏冉は、異父兄の華陽君や甥たち(昭襄王の弟たち)とともに昭襄王の廃位を図りますが、宣太后の同意が得られず、そしてその宣太后が没すると、魏冉らは咸陽所払いとなり、それぞれの封地に引っ込むことに。

邪魔者がいなくなって晴れて秦国第一の権臣となった張禄ですが、そこへかつての主人須賈が魏の使者として到来します。


今の身分を隠して下男として接近し、ここぞというところで正体を明かしてドヤ顔で意趣返しを果たす張禄。商鞅・張儀に続く本作での宰相枠となるはずの彼ですが、この二人に比べてクズッぷりと小物っぷりが際立っていますね (^_^;) そしてその須賈に魏斉の首を寄越せと脅しつけますが、事態を知った魏斉が、やはりクズの頭領である趙の平原君を頼って逃亡し……というところで次回へ。

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『大秦帝国之崛起』その3

2017年03月01日 | 中国歴史ドラマ
『大秦帝国之崛起』第13~18話まで見ました。

秦討伐のための合縦を成立させた蘇秦ですが、彼の真の狙いは、斉の湣王の領土欲を刺激して秦を伐つと見せかけて小国の宋を征服させ、同盟諸国のヘイトを募らせて斉を破滅に追い込むというもの。政敵の趙の奉陽君に燕のスパイであることを湣王にバラされかけますが、蘇秦も負けじと奉陽君を批判し、二人仲良く牢獄へ。

そして蘇秦の真意を見抜けなかった湣王はまんまと宋へと侵攻し、今度は我らが秦の昭襄王が「このまま斉に従っていてはあなた方も宋と同じ運命になりますよ?」と諸国との同盟を成立させ、斉があべこべに攻められる番に。燕の楽毅を総大将として諸国が一枚岩になるかと思いきや、楚は巧みに出兵を回避し、逆に斉に少数の援軍を送って湣王を救い出し、恩を売ろうと画策。しかしその援軍を率いた淖歯が湣王を殺害し、それに先だって蘇秦も裏切り者として車裂の刑に処されたのでした……

一方、昭襄王の叔父・魏冉は魏の孟嘗君と、自分が宋の陶邑を、孟嘗君が他の宋の領土を得るという形で裏取引。この魏冉が更に欲をかいて陶邑の領土を拡大しようと魏へと侵攻します。魏冉のやりように怒った孟嘗君は、持ち前のコミュ力であっという間に燕・趙との対秦同盟を成立させ、函谷関へと押し寄せます。昭襄王はその後始末のために魏冉を丞相をから罷免。

何とか事が収まったと思ったら、今度は昭襄王の寵姫・魏伶優が、趙から「和氏の璧」を取り寄せ、宣太后の贈り物をしたらどうかと唆します。実はこの伶優、反乱をおこした公子壮の関係者の子孫で、昭襄王とは仇同士という因縁があるのですが……


じゃあ秦の領土と交換しようということで、秦に使者としてやって来るのが藺相如。画像のごとく、お馴染み「完璧帰趙」のエピソードが展開されます。前回楚の懐王が秦から逃亡後に諸国でたらい回しに遭った時に、趙で身分の証明としてこの「和氏の璧」を差し出す場面がありましたが、今回の伏線だったんですね……

ついで秦では楚への侵攻が計画され、白起が蜀の治水で活躍した李冰父子の協力を得て旧都の鄢を水攻めにし、更に都の郢も陥落。水攻めで多くの死者が出たことに心を痛めた宣太后は、それと前後して生まれた初の曾孫に子楚と名づけます。後の荘襄王、始皇帝の父親ですね。


いつぞやの楚の懐王の帰還をめぐって宮廷を追われていた屈原は、楚の衰退に絶望して汨羅に入水。激昂のあまり川に飛び込むということもなく、割と冷静に歩いてズブズブと川の中を歩いて行く入水のしかたが印象的です。ともかくこれで第2部『縦横』からの登場人物が退場することに。

こうしてまた時が過ぎ去り、ふいにこれまた前作の登場人物義渠駭が咸陽を訪れます。宣太后が秦の恵文王に嫁ぐ以前の夫ですね。かつては義渠王と称していましたが、秦の統治に服した今は義渠県令となっています。その彼が宣太后と昔話に興じるのかと思いきや、密かに趙と結託して秦攻めと義渠国復興を画策し……というあたりで次回へ。
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2017年2月に読んだ本

2017年03月01日 | 読書メーター
哲学入門 (ちくま新書)哲学入門 (ちくま新書)感想何となく青空文庫に転がっていた三木清の『哲学入門』に手を出してみて、「これはアカン」と放棄して、次に手に取ったのが本書。こちらは語り口は取っつきやすいが内容は手強い。哲学入門というよりは、科学哲学的な視点からの哲学入門と言うべきか。今の時代に即した新しさを感じさせる入門書にはなっていると思う。読了日:02月03日 著者:戸田山 和久

英語の帝国 ある島国の言語の1500年史 (講談社選書メチエ)英語の帝国 ある島国の言語の1500年史 (講談社選書メチエ)感想英語圏の広がりの歴史をイングランドによるウェールズの征服から説き起こす。各段階の植民地での英語の受け入れ方が、常に現地人の側から自発的に子供達の栄達のために現地語ではなく英語での学校教育を求めるという形をとること、そしてネイティブによる英語教育と、英語を現地語ではなく英語で教えるという手法が重視されることを、今の日本の英語教育の状況と重ねる。前近代の日本では漢文の素養を求められることはあっても、ネイティブによる教育や、中国語の発音に習熟することは求められなかったと思うが…読了日:02月06日 著者:平田 雅博

知のスクランブル: 文理的思考の挑戦 (ちくま新書 1239)知のスクランブル: 文理的思考の挑戦 (ちくま新書 1239)感想日本大学文理学部に属する18学科の各分野のさわりを集めたもの。哲学・史学・社会福祉学・教育学・体育学・地球科学・生命科学等々、それぞれの分野が「こういう発想でこういうことに取り組む学問です」というのをちゃんと提示できていると思う。無論各講の内容自体にも面白いものが多いが、試み自体を評価したい本。読了日:02月10日 著者:

平安京はいらなかった: 古代の夢を喰らう中世 (歴史文化ライブラリー)平安京はいらなかった: 古代の夢を喰らう中世 (歴史文化ライブラリー)感想唐の長安をもとに設計された平安京が、日本の朝廷や住民にとっていかにオーバーサイズで持て余していたか、それをどう適切な規模へとダウンサイジングしていったかを追う。平安京を日本が「小中華」をめざした時代の夢の跡ととらえているわけである。古代の都の都城プランに注目した研究は数あるが、プランと現実との乖離に注目した点が新しい。ただ、平安京を「未完の都城」と見た場合、古今東西厳密な意味でプラン通りに完成された都は果たして存在したのかという疑問もないわけではないが…読了日:02月13日 著者:桃崎 有一郎

ロシア革命――破局の8か月 (岩波新書)ロシア革命――破局の8か月 (岩波新書)感想二月革命から十月革命に至るまでの臨時政府の動きを中心に描く。時に首相の辞表を残して行方をくらましたというケレンスキーのアレっぷりと(彼は十月革命後も生き延びて、1970年にニューヨークで89歳にて没したそうな)、第5章に描かれるロシアとポーランド・フィンランド・ウクライナとの距離感の違いを面白く読んだ。読了日:02月15日 著者:池田 嘉郎

日本の古代国家 (岩波文庫)日本の古代国家 (岩波文庫)感想いわゆる「マルクス主義」の立場からの古代国家像。以下、門外漢による勝手な印象だが、東アジア史の文脈から日本の古代国家をとらえ直そうとしているのは、現在の視点からも新鮮。(おそらく「東洋的専制」の文脈からの着想なんだろうが…)そして特に第四章では、文化人類学の視点から古代国家をとらえようと試みている。著者はヨーロッパ留学時に文化人類学の勉強に没頭したということだが、中国の古史研究でも文化人類学的な視点からの研究が試みられてきており、同時進行的に同じような手法が模索されていたという点で興味深い。読了日:02月16日 著者:石母田 正

紅霞後宮物語 (富士見L文庫)紅霞後宮物語 (富士見L文庫)感想新聞広告に釣られて購入。女性が兵士・軍人になることができて、それがうっかり皇后に引き上げられてしまうという世界観や展開は、昨今中国で流行りのネット小説原作時代劇を思わせる。中国の関係者の目に止まればドラマ化もあり得るのではないかと思う。かつての『中華一番』のように、中国人(あるいは台湾なども含めた中華圏の人々)の感性に合いそうな作品を出してきたという点を高く評価したい。読了日:02月17日 著者:雪村花菜

長安の都市計画 (講談社選書メチエ (223))長安の都市計画 (講談社選書メチエ (223))感想『平安京はいらなかった』で問題となっていた都城プランと実態との乖離について、そしたら平安京のモデルとなった唐代の長安ではそのあたりどうだったのかということで読んでみた。『平安京~』とは違って、さすがに都市のダウンサイジングとか住民自身による破壊という話は出てこなかったが、理念的な「宇宙の都」から「生活の都」へと転換していくさまが第三章でまとめられており、面白く読んだ。読了日:02月19日 著者:妹尾 達彦

聖徳太子: 実像と伝説の間聖徳太子: 実像と伝説の間感想ブログ「聖徳太子研究の最前線」の筆者による著書。大山誠一氏らによる聖徳太子虚構説への批判や、最近話題になった「厩戸王」という呼称の問題点についても触れている。読みどころは『日本書紀』などの関連史料の出典を仏典から洗い出す手法。『日本書紀』の記述の出典探しはやり尽くされたと思っていたが、本書によるとまだまだ研究の余地が残されているようだ。読了日:02月21日 著者:石井 公成

楽しく学べる「知財」入門 (講談社現代新書)楽しく学べる「知財」入門 (講談社現代新書)感想東京五輪エンブレム騒動、面白い恋人、個人で商標を大量出願する元弁理士など、最近の話題を題材にして著作権・商標権・特許権といった知的財産権について解説。企業によるトラブル回避のテクニックや、「公序良俗に反していること」が現行の法律では規制できない不当な行為を排除する伝家の宝刀となっているという指摘が面白い。読了日:02月24日 著者:稲穂 健市

東アジアの王権と思想 増補新装版東アジアの王権と思想 増補新装版感想同じ著者による概説『日本政治思想史[十七~十九世紀]』の基礎となった緒論考を収録。蘭学が中国を相対化させたまでは良かったが、中国を「支那」として蔑視するきっかけとなったという指摘は何度読んでも暗澹とさせられる。また、日本人が儒学的な枠組みで西洋文明を受け入れ、西洋が新たな「中華」となったということで、「西洋化」とはある意味「中国化」であったとも指摘しているが、日本がめざしているのは結局「小中華」にすぎないのかと思った。読了日:02月26日 著者:渡辺 浩
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