博客 金烏工房

中国史に関する書籍・映画・テレビ番組の感想などをつれづれに語るブログです。

『大秦賦』その10

2021年01月31日 | 中国歴史ドラマ

秦側からの画策もあって、趙の悼襄王は秦と盟約を結ぶことにし、更に自ら秦に赴いて結盟の儀を執り行うことを承諾。悼襄王は嬴政が秦にいた頃からの因縁がある人物でジャイアン的な役回りなのですが、粗暴で暗愚と見せかけて狡猾という属性がいつの間にやら付加されてます。

趙では留守の隙を突いて春平君が謀反を画策。秦の滞在中、嬴政は悼襄王が春平君の刺客に殺害されたりしないようあれこれ配慮しているのですが、当の悼襄王はあわよくば嬴政を暗殺しようと画策しています……

おまけに人質として秦にやってきた燕の太子丹が「秦趙同盟が成れば我が燕が趙から攻められる」とばかりに結盟の阻止を図ろうとしてくるので更に話がややこしくなります (^_^;) 太子丹は旧知の趙姫に悼襄王が咸陽にやってきていると吹き込み、実父や申越が彼のせいで死んだと恨み骨髄の彼女は刺客を放ちます。結局事情を知った嬴政が太子丹の偽首を悼襄王に差し出して彼をなだめ、無事盟約締結に漕ぎ着けるのですが……

ここらへんで書同文(文字の統一)とか、同盟の記念に秦と趙で車軌を統一しようとか、それらしい歴史イベントも出てきます。

で、悼襄王はこれで後顧の憂いなしと帰国後に燕へと派兵しますが、秦はその隙を突いて趙に攻め込みます。当然盟約締結の狙いは最初からそれなわけで、もうひたすら汚いとしか言いようがありませんw


一時は秦軍に邯鄲まで攻め寄せられ、その心労からかさしもの悼襄王も病に倒れ、娼婦出身の倡后が群臣を指揮して朝廷を支えようとします。この人も気がつけばいつの間にかメインキャラとなってます。

彼女は春平君を警戒し、色仕掛けで彼を懐柔しますが、その様子を悼襄王がこっそり目にしてしまい、ショックで憤死。こんな死に方でいいのでしょうか…… そして後になって倡后が不審な動きを見せる春平君に「先王は何で死んだのかしらね?」なんて脅しをかけてますが、お前のせいやないか(´Д`;)

で、今回は悼襄王の葬儀に参列する六国の面々が合従を形成するかどうかを話し合うというあたりまで。
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『大江大河』その3

2021年01月27日 | 中国近現代ドラマ
『大江大河』第21~30話まで見ました。


贈賄1万元につき1年という計算で、陳平原に2万元の賄賂を送った雷東宝は2年間服役することに。小雷家の苦難と栄光の歴史を振り返りながら東宝が妻との面会に出てくる場面がなかなかせつない…… 

小雷家では大学出の楚郷長の指揮のもと立て直しを図ることになりますが、やはり資金繰りがうまくいかなかったり、東宝の母親が村におれなくなって韋春紅に引き取られたり、村長の雷士根ら村の幹部連がなかなか面会に来なかったりという状況ですが、獄中の東宝はまだそれなりに威信を保っている模様。このあたりは第1部の老書記の末路とは少し異なります。


そのとばっちりを食う形で楊巡の揚子街電器街も趙小波(第1部で楊巡の彼女を奪った人物です)に安く買いたたかれてしまい、苦境に追い込まれますが、ここで久々の歴史イベント鄧小平の南巡講話が発生。宋運輝はこれに目を付けて、改革開放を一層進めようとする波が楊巡にも雷東宝にも有利に働くだろうと予言。小輝の政治の風向きを読む能力は相変わらず冴えているようです。

その言葉を証明するかのように、電器市場を売り払って得た資金など諸々をつぎ込んで開店した東海の日用品・食料品市場は連日の大盛況となります。市場の用地の大家にあたる蕭然も市場への投資を申し出ます。

さて、東海化工では外国企業との合弁が上から認可されます。日本企業から工場の二期工事のための機械設備を導入しようという話だったのが、宋運輝は当初の計画通り欧米企業と合弁しようと話を進めていきます。


ここで取り引き候補のアメリカ企業の担当者として登場するのが、第1部で宋運輝の教え子だった梁思申。第4の主人公がここでようやく登場です。初登場シーンでコーラを飲んでいるのは、やはり第1部で当時まだ珍しかったコーラを宋運輝と一緒に飲むシーンを連想させますが……

梁思申は視察団を率いて東海化工との合弁のための調査・交渉に臨みます。同僚たちがきっちり8時間で仕事を切り上げホテルに引き上げる中、寝る間も惜しんで仕事に励む彼女に宋運輝がかける言葉が、本作の主題歌のタイトルにもなっている「和光同塵」ですね。

またここで従兄の起業パートナーとして蕭然が絡んできたり、その蕭然の身元調査のために楊巡と対面して彼に惚れられたりしてます (^_^;) その楊巡、彼女との会話から、高級ホテルが不足している東海に四つ星ホテルを建てようというアイデアを得ますが……


第30話では梁思申が母&母方の祖父とともに上海観光をする場面で、90年代当時の上海の風景と思しき映像が挿入されます。建設途中の上海テレビ塔なんかも映っていてなかなか面白い趣向です。
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『大秦賦』その9

2021年01月26日 | 中国歴史ドラマ
いつの間にかテンセント国際版のWeTVで『大秦帝国~天下統一への道~』という邦題で日本語版の配信が開始されてしまいましたが、こちらはチクチクと中文版で鑑賞を続けます。ということで『大秦賦』第49~54話まで見ました。


呂不韋が咸陽の市民の皆さんに見守られつつ封地の洛陽へと退避する中で、鄭国渠の工事の陣頭指揮に当たっていた鄭国さんが韓のスパイであると判明。当然の如く彼は地位を追われ、嫪毐の乱の論功行賞で不満をため込んでいた宗室の面々が宮廷から外客を一掃する「逐客令」の執行を要求。嬴政も彼らの要望を受け入れざるを得なくなります。

宗室たちは鄭国渠の工事の指揮を引き継ぎ、自分たちの力を見せてやると意気込みますが、長雨で水路の堤が無残にも決壊。自分たちの無力を思い知ります。渭陽君は李斯から預かった「諫逐客書」を献上し、逐客令の解除に同意します。


さて、この間に李斯ら外客たちが続々と秦から退去するのを目の当たりにし、趙が多額の契約金をチラつかせて彼らの取り込みを図ります。そこで李斯の意を受けた外客の陳馳が一芝居。趙に仕官するということで大勢の食客を引き連れ、邯鄲の宿屋でツケで飲み食い&長逗留をしたりと、わざと邯鄲市民からの評判を下げるような行動を繰り返します。

趙の丞相の郭開の方も、秦からの外客を登用すると秦で人質経験が長かった元の太子の春平君の勢力が強くなるということで、彼らを体よく追い出そうとします。結局外客たちは逐客令解除のタイミングを見計らって秦へと帰還することに。陳馳はあべこべに趙の重臣の頓弱を引き抜いたりしていますw

で、李斯らが朝堂に復帰していよいよ東出を開始。最初の標的は魏。魏から三城を得て今度は韓か趙かということになりますが、ここで嫪毐の乱以後雍城で軟禁状態にある趙姫の処遇が問題に。趙が彼女を人質に取るかもしれないという懸案が浮上します。


実際趙の倡后の提案により、丞相の郭開自らが雍城に潜入し、お忍びでスイーツを味わおうとしていた趙姫を捕縛しますが、間一髪自ら駆けつけた嬴政らによってあべこべに郭開が囚われの身に。郭開は以後秦との内通者となることを約束させられてしまい……というところで次回へ。
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『大秦賦』その8

2021年01月19日 | 中国歴史ドラマ
『大秦賦』第42~48話まで見ました。

一触即発状態の嬴政と嫪毐。そんな中で嬴政は敢えて太后や群臣を引き連れて旧都雍城での冠礼を敢行することに。冠礼を終えれば晴れて公式的にも成人したということで親政が開始できるわけですが、嫪毐は当然その留守を突いてクーデターを起こそうとするわけです。

嫪毐側は要所を制圧していき、咸陽の王宮に残された赤子の扶蘇の身柄の捕捉を狙います。扶蘇の母親は羋華という設定。扶蘇の母が楚出身ではないかという説を生かしています。


嬴政お付きの侍女で幼馴染みの冬児、樊於期の連携で何とか扶蘇は守られますが、序盤からレギュラーとして登場していた冬児が犠牲に…… 呂不韋、嫪毐と対立して罷免された隗状、華陽太后の身内の羋氏一党、そして渭陽君ら宗室たちが決死の抵抗を試みます。そして雍城での冠礼を無事に終えた嬴政が咸陽へと帰還。嫪毐の乱は鎮圧へと向かいます。


嫪毐もお縄に。第1話から登場したこの人もここで退場。何気にこのドラマで最も印象の強いキャラクターかもしれません。咸陽での市街戦もなかなか見応えがありましたが、始皇帝のドラマで中盤の見所が嫪毐の乱というのはなかなか評価に困ります (^_^;)

乱の鎮圧後、論功行賞により隗状と昌平君(羋啓)が左右丞相に引き上げられる一方で、趙姫は雍城に幽閉されることとなり、嫪毐を推薦した呂不韋への批判が高まります。特に乱の鎮圧で多大な犠牲を出した割には恩賞が少ないと不満の宗室たちの怨みが呂不韋に向かい、彼の処刑を求めますが、嬴政は呂不韋の封地への隠居を決定し……というあたりで次回へ。


おまけ。イケメン嫪毐と入れ替わるように登場したイケメン趙高。

中国、始皇帝ドラマが物議 「暴君礼賛」に懸念の声
https://news.yahoo.co.jp/articles/4fd4292c9138126252a1d592659cbd15dad72fb2

もうひとつおまけに、中国での本作の不評ぶりが遂にYahoo!ニュースになってしまいましたが、本作を「暴君の礼賛」「歴史の美化」と評価するのは相当ずれているように思います。根拠となっているシーンも考証の不徹底は責められてもプロパガンダと断じるには断片的すぎます。

まあこういう意見には、中盤の見所が嫪毐の乱ということで、実はこのドラマは不法に権力を得ようとするトランプ一派が嫪毐に仮託されているとか適当に混ぜっ返しておけばいいのかもしれません(もちろん本作の制作はかなり前に溯るので、そう見えたとしても偶然の一致です)
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『大江大河2』その2

2021年01月17日 | 中国近現代ドラマ
『大江大河2』第11~20話まで見ました。

宋運輝は東海赴任以来、単身赴任のような形で妻子と離れて暮らしていたおりましたが、妻の程開顔だけ取り敢えず東海に引っ越してくることに。ここらへんで妻の義兄の仕事の問題やら、開顔の新しい職場の上司の問題やら、宋運輝は妻や義実家との関係に苦しむことになります。


上司の隋姐と兄嫁とを引きあわせる開顔。これが新たなるトラブルの火種に。

そして楊巡と尋建祥も金州での電器屋商売に見切りを付け、揚子街電器市場の権利を売却して東海で新たな商売を始めようとあれこれ算段することになります。宋運輝のコネで用地を獲得しますが、それがイマイチ条件の悪い土地で……


さて、雷東宝はと言えば、長年二人三脚でやってきた県の書記の陳平原が市職に栄転したと思ったら、その陳平原が汚職で逮捕されてしまい、そのとばっちりが雷東宝に降りかかります。

陳平原の妻の入院費用にかこつけたりして彼に贈賄していたほか、楊巡の電器市場の資金を横領していたと見なされた、というか楊巡の一件の方がより問題視されたようで、楊巡も参考人として身柄を押さえられてしまいます。韋春紅は自分に対してわだかまりがあると承知の上で宋運輝に助けを求めます。

宋運輝は、楊巡の小雷家に対する出資証明書を発見し、双方同意のうえ電器市場を小雷家グループの系列企業化していたことが証明できれば、残るは陳平原への贈賄の問題のみとなり、死刑は免れると判断。証明書は意外な所に隠れていたのですが、ここらへんは伏線の張り方がうまいです。そして雷東宝の亡き前妻への気持ちも明らかとなります。

宋運輝はこの頃には両親や娘の小引も手元に引き取って、妻と合わせて5人で暮らすようになっておりましたが、その妻との関係が段々とこじれていき……というあたりで次回へ。
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『大秦賦』その7

2021年01月13日 | 中国歴史ドラマ
『大秦賦』第37~42話まで見ました。

呂不韋と並ぶ権勢を手中にした嫪毐は、自分の秘密を知る李斯を葬ろうとします。李斯と陽泉君はともに楚出身ということで、先頃亡くなった楚の考烈王の弔問のために楚に派遣されていたのですが、そこへ嫪毐の刺客が襲撃。


そこへ李信が救出に駆けつけます。嬴政は嫪毐の行動を読んでおり、彼を楚に派遣していたのでした。李信はこのドラマでは登場しないかその他大勢の扱いかなと思っていたのですが、意外な所で見せ場がありました (^_^;)


ついでに楚の場面で登場した、どこかで見たような李園。春申君の食客という役回りですが、中の人は『宝蓮灯』の猪八戒などでお馴染みの謝寧。ここで春申君が暗殺されたり、楚の太子が実は春申君の種というネタが出てくるのですが、嬴政自身の出生をめぐる伝聞と結びつけるといったような気の利いた演出はありません……

なおも図に乗る嫪毐ですが、その彼が何者かに命を狙われるという事件が発生。実は彼に遺恨を持つ鄭貨(呂不韋の家宰)が主人に無断で刺客を放ったのですが、嫪毐は自分を快く思わない王族の長老関内侯が黒幕に違いないと、彼を捕らえさせます。この関内侯というのはオリキャラなんですが、『大秦帝国』シリーズは1作目からこういう謎の王族の長老みたいなキャラがチョイチョイ登場してます。

結局関内侯は彼によって王族の身分を剥奪された公子虞によって拷問死。そして渭陽君(公子傒)の妻小紫も嫪毐によって身を汚され、夫に嫪毐の秘密を明かして自害。ついでに李斯もこの小紫から知らされた秘密を嬴政に打ち明けます。嫪毐は元を正せば呂不韋が推薦した人物ということで、嬴政の不信感は遂に呂不韋にも及びます。

怒りの渭陽君は朝堂で嫪毐の秘密を暴露して刺殺しようとしますが、嬴政は母と自分の名誉を守るため、渭陽君の片腕を切り捨てて阻止。しかし当然嫪毐を許したわけではなく、単身甘泉宮に乗り込んで趙姫と嫪毐の隠し子の存在を自ら確認。嫪毐は最早これまでと、食客たちと謀反を計画し、趙姫との間の子を新君に押し立てようとします。無論嬴政の方も嫪毐排除のための準備を着々と進めます。


夜な夜な趙姫と嫪毐の寝室に忍び込み、こっそり剣を吊す嬴政。微妙に精神を病んできたようです……

ここらへんの話は『コウラン伝』ではどうなるんでしょうね?(嫪毐はイケメンで登場するらしい)
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『大秦賦』その6

2021年01月07日 | 中国歴史ドラマ
『大秦賦』第31~36話まで見ました。

『大秦賦』第31話。成蟜は韓との戦いの軍功(前回触れたような事情によりほとんど八百長なわけですが)によって長安君に封じられますが、趙姫は成蟜母子を韓と通謀しているとして捕らえさせます。事態を知った嬴政の取りなしにより2人は釈放されるものの、韓夫人は趙姫に「お前の秘密を知っているぞ?」と仄めかしつつ自害。韓夫人の自害までの流れは『大秦帝国』というよりは『コウラン伝』みたいなノリですね……

しかし趙姫&呂不韋はなおも成蟜の処断を諦めません。また成蟜を秦王に押し立てようという韓の陰謀も継続しており、趙の悼襄王&郭開もその陰謀に加担します。呂不韋はそうした水面下の動きを知りつつ、敢えて成蟜を趙に出征させます。


お目付役はこのドラマで序盤から登場している樊於期。呂不韋配下の軍人から嬴政の郎中に取り立てられ、今回は成蟜は補佐役ですが、呂不韋の意を受けて成蟜を唆し、韓・趙の陰謀に乗って謀反を決意させます。で、いよいよ決起となった瞬間にやはり呂不韋の意を受けた王翦が乗り込んできて有無を言わさずその場で成蟜を腰斬。

事後に知らされた嬴政は悔しがるばかりで何も出来ず、更に嬴政の冠礼=親政の開始も趙姫と呂不韋によって2年延期が決定されてしまいます。母や近親に実権を握られて何も出来ないという点は第3部の昭襄王と同じなんですけど、曾孫の嬴政の方が情けなさが倍増してる感があります (^_^;) 一方、李斯はひょんなことから趙姫の秘密を知ってしまいます。


そんなこととは露知らず、李斯が客卿、樊於期が将軍、蒙恬が郎中に抜擢される中で、趙姫は嫪毐への受封を求めて群臣に物議を醸します。反発が大きいのを見て、亡き夫の異母兄で宗室筆頭格の公子傒(渭陽君)を懐柔にかかります。自分に好意を抱いてるのを趙姫に見透かされているわけですが、この人すっかりダメンズキャラになってしまいましたね……

その裏で呂不韋と嫪毐が政治的な暗闘を繰り広げたり、各国が呂不韋と嫪毐の食客としてスパイを送り込もうとしたり、ついでに李斯が呂不韋暗殺未遂犯の公子虞を嫪毐の食客として潜り込ませたりとそれぞれの思惑が渦巻きます。そして18年前に荘襄王と呂不韋の秦への帰還を助けた功により長信侯への封爵が決定してしまい……
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『大江大河2』その1

2021年01月05日 | 中国近現代ドラマ
昨年末よりいよいよ『大江大河』第2部が放映!ということで『大江大河2』第1~10話まで鑑賞。全39話予定です。


時は1988年。第1部のラストで金州化工を出て東海化工の設立準備に従事することとなった宋運輝。しかし技術面の担当者として彼の異動が遅れたことから、「東海項目」自体が国家から批准されないかもしれないという事態に。

プロジェクトが何とか認可され、工場の建設工事が開始された後も、工場設備の輸入の段階でアメリカ主導の西側諸国による禁輸措置が発令されたり(作中で詳しい説明はないのですが、これは時期的に天安門事件を承けた経済制裁ということでしょうか?)と様々な困難が降りかかりますが、組織内の同僚や北京の上役路小第らの信頼を得て切り抜けていき、東海化工の第一副工場長に抜擢されます。


一方、小雷家の村委書記雷東宝は、新設の製銅工場で技術面の不備による爆破事故が発生したことから、村の企業全体の信頼回復や資金繰りに苦しむことになります。その最中で彼を支え続けた春紅飯店の老板娘韋春紅と再婚することを決意しますが、それがもとで「亡くなった萍萍が見捨てられた」と宋一家の両親との関係が断絶してしまい……


今回は出番が増えるのかと思った楊巡ですが、名前だけはよく出てくるという状態が続いて今作での初登場は第7話のラスト。電器市場揚子街のオーナーとして景気よく自動車を乗り回している彼ですが(借金の差し押さえ品らしい)、市場での店子の家賃をめぐってトラブルが発生。しかしビジネスパートナーとなった尋建祥と二人三脚でピンチを切り抜けます。

今作は上記3人に加え、宋運輝の教え子梁思申も主役という扱いになるようです。国営企業代表が宋運輝、集団企業代表が雷東宝、個体企業代表が楊巡、そして外資系の代表が彼女という構造ですね。第2部では出番がないと思っていたキャラクターも意外に序盤から登場。水書記……はともかく、閔忠生や虞山卿もきっちり登場します (^_^;)
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『大秦賦』その5

2021年01月01日 | 中国歴史ドラマ
『大秦賦』第25~30話まで見ました。


華陽太后の推す楚出身の羋華と趙姫の推す斉の離秋公主のどちらを娶るか思い悩む嬴政だが、両方娶れば角が立たないと気付きます。そしてどちらを正夫人とするかは、秦では以後王后を立てないということでめでたく解決。これで始皇帝、二世の皇后に関する記録がないという帳尻を合わせるわけですね。しかしこうして見るとこの2人、双子の姉妹みたいですね……

その一方で、秦では人質に取っていた趙の悼襄王の兄の春平君を帰国させ、王位継承争いを起こさせようとしますが、倡女出身の悼襄王夫人が春平君を美人局で引っかけ、王位継承を諦めさせます。こんなの今時于正でもやらんやろと言いたくなる展開ですが (^_^;)

そしてここらへんで楚などの諸国から秦への民衆の逃亡が相次ぎます。これが諸国の対秦合従の形成へとつながっていくわけですが、この描写が史実に反している、覇権主義の現れだと中国で物議を醸している模様…… ただ、これが政治的プロパガンダなら、その前提として秦の善政をアピールしなきゃいけないはずなのですが、そういう描写は全くありません。正直批判としては穿ちすぎだと思うのですが、本邦の大河ドラマなんかでも特に来期のような近現代史物に関してはこれぐらいのツッコミはした方がいいのかもしれませんね。


前241年、趙・楚等五カ国が史上最後の合従を形成し、秦都咸陽へと迫ります。連合軍の総大将は趙の龐煖。凄くいい感じに枯れた爺ですが、中の人は『レッドクリフ』の張飛などの暴れ者の役の印象が強い臧金生です。


このピンチを嬴政に抜擢された王翦の策により切り抜け、連合軍は撤退。王翦の中の人は2003年版『射鵰英雄伝』の「西毒」こと尤勇智(尤勇)。『大秦帝国』シリーズには第1部にも出演し、龐涓を演じています。この「蕞の戦い」で樊於期は太子丹を見逃してやります。ここで2人のつながりが生まれるわけですね。


国家の危機に君主としての器量を見せたということで、いよいよ嬴政の親政が決定。気を良くした嬴政は近臣と狩りに出かけ、野生の馬と遭遇。ここで彼の異母弟成蟜がこの馬を馴らし、お褒めの言葉を貰うというイベントが発生。

嬴政が馴らせなかった馬を馴らしたということで評判が高まり、彼を王に推す声も高まります。成蟜自身は『キングダム』とは違って気性の良い単なるアホの子で政治的な野心もないわけですが、母の韓夫人は不安が隠せません。息子を早く封君にでもしてもらって母子2人領地に隠居したいと願うのですが、実家の韓国の兄に相談したところ、成蟜を韓に出征させて八百長で五城を秦に割譲させ、ゆくゆくは成蟜を秦王に押し立てようと、更に不安でたまらなくなるような計画が持ち上がってしまいます。

そして呂不韋の思惑もあり、出征が決定してしまい…… というあたりで次回へ。
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2020年12月に読んだ本

2021年01月01日 | 読書メーター
1984年に生まれて (単行本)1984年に生まれて (単行本)感想
1984年に国外に出奔し、放浪を続ける父の人生と、1984年に女性として中国に生まれ、人生に疑問を抱き続ける主人公軽雲、2人の人生の軌跡と交錯を描く。また軽雲の同級生たち21世紀の若者の人生の歩みは、我々日本人にとっても身につまされるものではないかと思う。そこへオーウェルの『1984年』的な世界観が薄く覆い被さるという構造となっている。大仰なディストピア小説を期待すると肩透かしを食らうかもしれないが、中国現代社会の切り取り方としては充分面白い。
読了日:12月02日 著者:郝 景芳

ユリイカ 2020年12月号 特集=偽書の世界 ーディオニュシオス文書、ヴォイニッチ写本から神代文字、椿井文書までーユリイカ 2020年12月号 特集=偽書の世界 ーディオニュシオス文書、ヴォイニッチ写本から神代文字、椿井文書までー感想
偽書というよりは偽史の考察といった方がよさそうな論考も並ぶ。中国学に関係するものが少ないのが残念だが、宮紀子氏の文章は『東方見聞録』偽書説から話が「清明上河図」偽作説に及び、新居洋子氏の文章は、西洋人が『尚書』に注目したいきさつから、話がド・ギーニュのエジプト人中国植民説に及び、偽史のリンク史とでも言うべきか、ともに思わぬ方向に話が広がっていくのが面白い。越野優子氏の源氏物語に関する文章は、逆に「偽」でないもの=「真」とは何かを考えさせる。
読了日:12月05日 著者:馬部隆弘,小澤実,原田実,乗代雄介,呉座勇一

「中国史」が亡びるとき―地域史から医療史へ (研文選書)「中国史」が亡びるとき―地域史から医療史へ (研文選書)感想
著者のここ10年ほどのエッセー、評論をまとめたもの。時勢と著者の専門柄、新型コロナに関する話題も含まれている。日本に中国史の学会がないことで、歴史的事実をめぐる暴論に歯止めを掛けられないなどの種々の不具合が生じていること、中国論で問題となりやすい中国は特殊か普遍かという話、「資料はあるものではなく、つくるもの」という問題意識、日中韓で「世界史」が歴史を共有するきっかけになるのではないかという指摘が印象に残った。
読了日:12月07日 著者:飯島 渉

文字とことば (シリーズ古代史をひらく)文字とことば (シリーズ古代史をひらく)感想
漢字使用のはじまり、識字層の範囲、訓読の問題、口頭と文字との関係、仮名の位置づけ、和歌との関係、出土文字資料による成果と従来の研究との摺り合わせ等々、内容が思ったより多岐にわたっている。口頭から文字へという従来想定されていた変化は、実際には口頭から口頭プラス文字へという変化だったのではないかという指摘や、日本への漢字伝来の際の中継地点である朝鮮半島の重要性、記紀において万葉仮名の甲類・乙類を使い分けていたのが実は特別な措置だったという指摘が面白い。
読了日:12月10日 著者:吉村 武彦,吉川 真司,川尻 秋生

中国の歴史5 中華の崩壊と拡大 魏晋南北朝 (講談社学術文庫)中国の歴史5 中華の崩壊と拡大 魏晋南北朝 (講談社学術文庫)感想
「民族の時代」としての魏晋南北朝史を描き出す。「漢」に反発していたかに見えた「胡」が「中華」であると自認しはじめ、たとえば五胡から出たはずの北魏が自らを五胡から弁別しようとするといった動きをおこしていく。そして「中華」としての意識は「中国」の外の朝鮮半島諸国や倭国も持つようになっていくということで、古代の日本史も「中華」の歴史の中にうまく取り込んでいる。
読了日:12月13日 著者:川本 芳昭

西洋美術とレイシズム (ちくまプリマー新書)西洋美術とレイシズム (ちくまプリマー新書)感想
ノアの息子のハム、ハガルとイシュマエルの母子、イエスの誕生を祝福した東方三博士など、聖書にまつわる絵画の中の人物の描写を通して、レイシズム、更にはセクシズムやオリエンタリズムを読み取る。絵画が制作された、あるいは聖書が著述された当時の文脈を読み取るうちに、近現代の優生思想、現代の難民など、現在の問題を反映した文脈へとつながっていく。歴史的文脈と現在の解釈、この2つは容易に切り離せるものではないのだろう。
読了日:12月15日 著者:岡田 温司

中国の歴史6 絢爛たる世界帝国 隋唐時代 (講談社学術文庫)中国の歴史6 絢爛たる世界帝国 隋唐時代 (講談社学術文庫)感想
通史としてシリーズ中最もオーソドックスな構成かつ内容。唐王朝では皇后が空位の期間が長いこと、それを皇太子の地位が不安定で、嫡長子相続の制度が確立しなかったのと結びつけて考えていること、外交面では吐蕃の位置づけに注目していることが特徴か。煬帝墓誌や吉備真備関係の石刻など近年の大発見も承けて、文庫版の補遺は他の巻より比較的充実している。
読了日:12月18日 著者:氣賀澤 保規

北魏史 洛陽遷都の前と後 東方選書54北魏史 洛陽遷都の前と後 東方選書54感想
孝文帝時代を画期として、隋唐へとつながる存在としての北魏(+前身の代国と後継王朝)を描き出す。孝文帝の改革が単なる漢化ではなく中華の地の支配者となることを目指したものであったこと、北魏の仏教政策が廃仏を経て国家宗教化していくなど、従来とは異なる大きな性格の変化があったことなどを指摘。一方で隋唐を拓跋国家として評価することは、隋唐は北朝だけでなく南朝からも多くのものを継承しているという観点から違和感を示している。この点は逆説的で面白い。
読了日:12月21日 著者:窪添慶文

太平天国――皇帝なき中国の挫折 (岩波新書, 新赤版 1862)太平天国――皇帝なき中国の挫折 (岩波新書, 新赤版 1862)感想
近代中国の「ありえた可能性」として見る太平天国。太平天国では人間が皇帝を名乗ることを認めておらず、「天王」洪秀全とその他の王たちとの間で決定的な違いはないといった、従来の中国の政権とは異なる点と、「革命」勢力として後の中国共産党と共通する点とを取り上げる。また、彼らを鎮圧する側となった曾国藩を太平天国と表裏の関係で見る。強国化の道を突き進む中国に対して、中国社会が持っていた異なる可能性を提示するという手法は、歴史イフの果たすことのできる役割を示しているようで面白い。
読了日:12月23日 著者:菊池 秀明

アメリカ黒人史: 奴隷制からBLMまで (ちくま新書, 1539)アメリカ黒人史: 奴隷制からBLMまで (ちくま新書, 1539)感想
奴隷船からBLMまでアメリカで黒人たちが歩んだ道のり。黒人たちのよき保護者を自認しながらも、彼らの本音をまるでわかっていなかった南部白人たち、白人と協調しながら黒人の地位向上をめざすという方針をとり、白人から話のわかる人物として受け入れられたブッカー・T・ワシントンへの賛否両論、北部黒人の垢抜けない南部黒人に対する複雑な思いなどは、他の差別問題でも似たような局面があるかもしれない。
読了日:12月25日 著者:ジェームス・M・バーダマン

書聖 王羲之: その謎を解く (岩波現代文庫 文芸 330)書聖 王羲之: その謎を解く (岩波現代文庫 文芸 330)感想
王羲之の評伝かと思いきや、無論評伝の部分もあるのだが、その後の中国や日本での受容史、蘭亭序の真偽をめぐる論争など、関連する議論が中心で、王羲之(受容・評価)を軸とする中日書道史という趣きが強い。
読了日:12月28日 著者:魚住 和晃

82年生まれ、キム・ジヨン (単行本)82年生まれ、キム・ジヨン (単行本)感想
現代韓国女性が幼い頃から歩まされる道のり。彼氏の兵役など韓国ならではの要素もあるが、心性の面では日本も大差ないのではないか。ラストの一段に「現実」が示される。伊東順子氏の解説も良い補足となっている。
読了日:12月29日 著者:チョ・ナムジュ

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