博客 金烏工房

中国史に関する書籍・映画・テレビ番組の感想などをつれづれに語るブログです。

『興亡の世界史06 イスラーム帝国のジハード』

2006年11月30日 | 世界史書籍
小杉 泰『興亡の世界史06 イスラーム帝国のジハード』(講談社、2006年11月)

ムハンマドからアッバース朝のあたりまでの初期イスラームが中心かと思いきや、それ以後、近現代の状況についても結構紙幅を割いてますね。以下、個人的に面白いと思ったポイントを控えておきます。

○イスラーム以前のマッカ(メッカ)で信仰されていた多神教はきちんとした体系があるものではなく、交易相手の信仰するキリスト教の要素も取り入れるなど、具体的な利益があると思えばどの宗教の神でも取り入れるという無節操なものであった。……何だか現代日本の状況と似てるような気がします(^^;)

○一口にジハードと言っても、外敵に対する防衛のための「剣のジハード」だけではなく、このほかに自分の心の悪と戦う「内面のジハード」、社会的な善行を行い、公正の樹立のために努力する「社会的ジハード」も存在する。

○イスラーム勢力の征服によって一気にイスラームへの改宗者が増加したわけではなく、改宗者の増加速度はかなり緩やかであった。イランの場合、住民の大半が改宗するまで300年近くかかっている。

○イスラーム諸王朝が各地に割拠して以後も、これらの諸王朝は「イスラーム世界」としての緩やかなつながりを保っており、現在よりは安全・快適に各地を移動できたようである。

○現代のイスラーム過激派は、イスラーム最初の分派で正統カリフ第4代アリーの暗殺に関わったハワリージュ派に似ているという声が近年になって聞かれるようになった。

このシリーズ、前も書いたように興味深いタイトルが多いのですが、さすがに全21巻となると購入価格もさることながら置き場所にも困りますなあ(^^;)
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『巷談 中国近代英傑列伝』

2006年11月28日 | 中国学書籍
陳舜臣『巷談 中国近代英傑列伝』(集英社新書、2006年11月)

アヘン戦争から辛亥革命あたりまでの人物伝です。甲骨文研究で知られる劉鉄雲・王国維が取り上げられていたのと、各人物の経歴や面白いエピソードが非常にコンパクトにまとまっており、世界史の授業のアンチョコとして便利そうだという理由で購入(^^;) 
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『少年楊家将』その1

2006年11月26日 | 中国古典小説ドラマ
『少年楊家将』DVD版第1~7話まで見ました。

以前『封神榜』とこの作品のどちらを購入しようか迷っているという旨の文章を書きましたが、「いちいちこんなのを買ってるから金が貯まらんのだ!」と心の中で自分を罵りながら、こちらも買ってしまいました(^^;)

この作品は『楊家将』の前半部、楊家が宋に仕え始めた頃から初代の楊業が戦場で自尽するまでを描いた作品で、楊業の子のうち楊四郎・五郎・六郎・七郎が主役ということになっているようです。ただし四郎は物語の序盤では家族と生き別れになっているという設定になっています。楊大郎・二郎・三郎も登場しますが、朴訥な五郎、発明が得意な六郎、やんちゃな七郎と弟たちが個性豊かなのに対して、こちらは没個性的で誰が大郎で誰が三郎なのやら見分けがつきません。 

で、物語は楊家軍が雁門関で遼軍と対峙し、楊五郎が一騎打ちで遼軍の大将・耶律斜を打ち破ったところから始まります。敗軍の将となった耶律斜はこの雪辱を果たすことを決意し、宋に潜入して楊家軍、ひいては宋軍の力を弱めるための工作に従事することになります。

彼はまず手始めに楊業の末娘・楊八妹を誘拐し、散々楊家の面々を翻弄します。しかし彼の真の狙いは楊家軍の目を楊八妹の捜索に惹き付けておいて、その隙に警護の手薄となった太宗を暗殺することにありました。耶律斜は皇室の太廟に侵入して祭天の儀式を行っている太宗を襲撃しますが、事前に陰謀を察知していた楊業によって阻まれ、また楊八妹も母の佘賽花や兄に助け出されます。この件がきっかけで六郎は宋に禅譲した後周の皇女・柴郡主と、五郎は鍛冶屋の女将の関紅と親しくなります。しかし耶律斜は追っ手を逃れ、関紅の弟を人質にとって彼女の家に勝手に居候を決め込み、彼女を困惑させます。

その後、太宗は朔州への出兵を決意し、御前試合で楊大郎・二郎を打ち破った潘豹を総大将、その父親で丞相の潘仁美を監軍とします。(この潘家が楊家のライバルとなります。)また楊業は潘豹の補佐と宋軍の新兵器の開発を命じられます。楊七郎はドラ息子の潘豹が兄を打ち破ったのを不審に思い、彼を尾行するうちに彼が酔紅楼という遊郭の常連で、そこで身体が頑強になる薬をドーピングしていたことを突き止めます。また七郎は酔紅楼で働く小琳と親しくなりますが、実は酔紅楼は耶律斜が経営する遊郭で、そこで働く女性も全員が遼人で、しかもそれぞれ武芸を身に付けています。楊七郎は小琳に催眠術をかけられ、遼軍に加担して父が開発した新兵器を強奪してしまい……

同じ古典の同じ部分を題材にしていながら北方謙三の小説とまるで雰囲気が違っていることに驚きです(^^;) また一家の末娘の楊八妹は子役が演じていますが、実におしゃまでかわいいです。小憎たらしいだけだった『神雕侠侶』の少年楊過とは段違いです。やっぱり子役はかわいげがあってナンボぼだと思った次第……
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リウ・イーフェイからのメール

2006年11月25日 | 雑記
今日、以下のようなメールが届きました。

送信者:私は劉亦菲
件名:如何がお過ごしですか?

>はじめまして。 私は劉亦菲です。
>私は中国で女優を辞めました。
>今私は仕事を運営しています。
>今年日本で新しい仕事をする為にお金を貯めています。
>日本の知る為勉強を頑張っています。
>日本であなたの知っていることを教えて下さい。
>私は今日本語の勉強をしています。
>沢山の人と話して友達作る為に友達から
>無料のサイトを教えてもらいました。。
>自己紹介と写真掲載しました。私を見て下さい。
>http://www.hard-sex-life.com/?f=s

「んなわけあるかい!」と、ひとしきり大笑いさせていただきました(^^;)

しかしこのメールに引っ掛かるには少なくとも劉亦菲が何者か知っている必要があるわけで、やっぱり武侠サイトの管理人とかに狙い打ちして送信しているんでしょうか。
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『虹を架ける王妃』

2006年11月25日 | その他映像作品
『奇跡の夫婦愛スペシャル 虹を架ける王妃』を見てました。

朝鮮王朝最後の皇太子・李垠と梨本宮方子の夫婦を描いたドラマで、新聞のテレビ欄には「第一夜」と書いてあったので、今夜が前編、明日が後編かと思いきや、太平洋戦争が終結したところであっさりと完結してしまいました。どうも明日は別の夫婦が題材になるようです……

この夫婦の場合、戦前・戦中よりむしろ戦後になってからの方がドラマチックなエピソードが多いだけに、どうにも物足りない印象を受けました。
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『中国古代書簡集』

2006年11月23日 | 中国学書籍
佐藤武敏『中国古代書簡集』(講談社学術文庫、2006年11月)

春秋時代から後漢にかけての人々が遣り取りしあった書簡の中から興味深いものを取り上げた本です。

李斯や司馬遷、李陵、蘇武といった有名人の書簡もあれば、無名の兵士が故郷の母に送ったものもあり、はたまた漢と匈奴といった国同士の遣り取りもあれば、地方から都に出向した官吏と留守宅を守る妻との遣り取りもありと、取り上げられている書簡のバリエーションが非常に豊かで、漢文のアンソロジーを編むのにこういう視点もあったのかと感心しました。

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『大漢風』第7話

2006年11月20日 | ドラマ『大漢風』
いつの間にか劉邦と呂雉との間に娘(魯元公主)が産まれましたが、劉邦はと言えば相変わらず暇を見ては曹姫のもとに通っております。そこで業を煮やした呂雉が曹姫の産んだ劉肥を攫って井戸に沈めて溺死させようとする暴挙に出ます。幸い夏侯嬰が劉肥を助けて今回は事なきを得ますが、呂雉の行動はどこまでエスカレートしていくのでしょうか……

業を煮やすと言えば、二世皇帝が酒食に溺れて政務を趙高に任せきりにしているのに業を煮やした李斯が後宮に乗り込んできて暴れまくるという場面がありましたが、李斯・二世皇帝・趙高の三人が出て来る場面は毎回コントのようで、秦の天下が危機に瀕しているとかそういう悲壮感が全く感じられません(^^;)
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『封神榜』その3

2006年11月20日 | 中国古典小説ドラマ
『封神榜』第17~24話まで見ました。

姫昌の西岐帰還、殷の宰相比干の横死、黄飛虎一家の西岐への投降、崇侯虎の敗死といったエピソードが展開されます。姜子牙がやっとこさ西岐の丞相に登用され、武吉、雷震子、黄天化、黄天祥、聞仲といった原典でもお馴染みの連中が続々と登場してきます。雷震子は最初はかわいい少年ですが、師父・雲中子の陰謀により、とても7歳の子供とは思えない姿に変身させられてしまいます。

こんな姿にさせられても怒らない雷震子もアレですが、突然彼と遭遇して「7年前にあなたに拾われた雷震子です」と告げられ、「おおっ、あの時の!」と素直に納得する姫昌も大概です(^^;)

ここへきてやっとこさ戦闘の場面も増えてきましたが、雑魚レベルの武将でも一騎打ちとなるといちいち騎乗から飛び上がって空中戦を繰り広げるのは何とかならんもんでしょうか……

で、物語は文王の死期が近づく中、申公豹が手下の妖怪・鳳来(ドラマオリジナルキャラです)を人間の女性に化けさせ、彼女を亡き比干の娘の子嫻(やはりオリジナルキャラ。黄飛虎の妹で紂王の妃の黄貴妃から剣術を習ったという設定。)と道連れにして西岐に向かわせ、妲己に取り憑いた狐狸精と同じように彼女を武王の妃にして誘惑させようとした所で一旦完結です。

この続きが気になるところですが、残念ながら後編のDVDがまだリリースされておりませぬ…… タイトルには「四十集電子連続劇」とあるので、残り十六話分がそのうち出るということなんでしょう。ここまでは殷周の宮廷での動きを丁寧に描いてきましたが、残り話数から勘定すると、肝心の殷周両陣営や闡教・截教の戦いは大幅に省略されそうな悪寒が…… それでもエンディングのキャストを見ると楊戩や十天君、趙公明といった面子は登場してくれるようでありますが。
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『陸小鳳伝奇三 決戦前後』

2006年11月19日 | 小説
古龍著・土屋文子訳『陸小鳳伝奇三 決戦前後』(早稲田出版、2006年11月)

バリー・ウォン監督映画『決戦・紫禁城』原作として翻訳が待たれていた本書がいよいよ刊行されました。個人的にも古龍作品の中で最も読んでみたい作品だったので、週末に入手して貪るように読んでました。(ちなみに二番目に読みたい作品は『PRIDE』原作の『絶代双驕』です……)

中身の方は、初っぱなから前巻のキャラクターをあっさり殺してしまったりと、実に古龍らしい展開が繰り広げられます(^^;) 

読了後、映画版が陸小鳳を宮廷の密偵・龍龍九というキャラに換えたり、オリジナルキャラを登場させたりしながらも、意外と原作の大筋は外しておらず、また原作の要素をうまく取り入れていることがわかり、感心しました。映画の方でイーキン・チェン演じる西門吹雪が大福のような菓子を作っていた理由もわかりましたし…… 何だかもう一度『決戦・紫禁城』を見たくなってきましたよ。
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西周期の賄賂の記録?

2006年11月17日 | 学術
『人民網』によると、今月陝西省扶風県で多数の西周青銅器を収めた窖蔵が発見され、その中に111字の銘文を有する青銅尊があったとのこと。これがどうやら当時の貴族が賄賂を送ったことを記録しているらしいということで注目されているようです。
       
「陝西出土西周青銅器 真実記録貴族行賄」
http://scitech.people.com.cn/BIG5/5036143.html
「陝西新出土青銅器『講述』古人為官司送礼故事」
http://scitech.people.com.cn/BIG5/5049310.html

上の記事によると、ある王(王?)の五年に琱生という人物が私田を開発して多数の奴僕を収養しようとしたところ、それが違法行為だということで検挙された。朝廷は召伯虎という人物を責任者としてこの件を裁かせることにしたが、琱生は裁判を有利に進めるために召伯虎の母に織物と壺を贈り、召伯虎の父にも玉璋を贈った。召伯虎の母は夫(召伯虎の父)を通じて息子に口利きを行った。それらの裏工作の甲斐があって召伯虎は琱生に有利な裁決をくだし、その後琱生は召伯虎にも玉圭を贈って感謝の意を示したといった内容であるとのこと。

今まで発見された金文の中では五年琱生簋と六年琱生簋が同じく琱生や召伯虎のことを記述したものであり、今回発見された尊銘の記述はそれらの銘文の内容と関連しているようです。

なお、五年琱生簋・六年琱生簋によると召伯虎と琱生は同族で、召伯虎が本家筋、琱生が分家筋という間柄のようです。そのため、この銘文での贈答を単なる賄賂ということで片付けて良いかどうか疑問がないでもないですが、その辺りの詮索は銘文の拓本や釈文全文が発表されるのを待つしかないですね。
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