博客 金烏工房

中国史に関する書籍・映画・テレビ番組の感想などをつれづれに語るブログです。

今週の『続・宮廷女官若曦』その1

2014年10月31日 | 中国近現代ドラマ
『宮廷女官若曦』(『歩歩驚心』)の続編となる『続・宮廷女官若曦 輪廻の恋』(原題『歩歩驚情』)ですが、ほとんど現代物になっている、そして個人的に『歩歩驚心』にはトラウマがあるということで、これはスルーしてもいいかなと思ってたら、十阿哥(の転生っぽい人)がオカマになってるとか何とか不穏な噂が耳に入ってきたので、結局BSジャパンで放送中の日本語版を見てみることに。取り敢えず今週月曜からの第3~7話まで鑑賞。

第1~2話は未見ですが、現代に戻った若曦こと張暁が博物館で出会った四阿哥のそっくりさん殷正(四阿哥の名胤と類似の音)を追っかけ、彼の会社に入社したところ、会長の康震天が康煕帝そっくりで、直接の上司であるジャック(なぜ英名なのかは突っ込まないで下さい)が十阿哥と瓜二つだった……という展開のようです。ジャックはオカマというよりはお姉キャラみたいな感じですがw 殷正は康震天の後妻の連れ子で会社の副会長となっていますが、色々複雑な家族関係を抱えている模様。

そして他ならぬ張暁と瓜二つの藍蘭(劉詩詩が一人二役で演じています)がモデルとして康震天の会社に雇われ、殷正と恋仲に。張暁はと言えば前作と同様またぞろ電気ショックを受けて清朝康煕~雍正年間にタイムスリップした時の記憶を失ってしまいます。その記憶を取り戻せるか、そして藍蘭の正体は?というあたりが見所となるようです。

八阿哥の転生っぽい殷正の義弟康司瀚(康震天の前妻との間の子)と、十四阿哥の転生っぽい康司宇(康震天と殷正の母との間の子)も登場し、殷正とともに康震天の後継者候補ということになっているようですが、この二人は前作とはキャスティングが変わっていて残念…… 他には前作で蒸し焼きにされた侍女玉檀が張暁の友人として登場しています。

このドラマ、上海唐人制作だけあって非常にテンポが良く、現代物としてはクオリティが高い方だと思いますが、清代のシーンが無いんですよね…… たまに回想シーンで前作の映像が出てくるぐらい。聞くところによれば大陸で放映されているバージョンはその回想シーンすら削除されているとのことですが。(日本語版は香港などで放送されているバージョンを盛ってきているとのこと)

で、今週のハイライトは殷正の持つ清代の玉の指輪に刻まれている満洲語の意味が「君が僕の時代に戻れないなら僕が君の時代に行き君を捜し出す」であると判明したシーン。殷正の秘書が「何だか意味深」なんて言ってますが、視聴者にとっては意味深どころか直球です(^^;)
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『ゲーム・オブ・スローンズ第三章 戦乱の嵐(前編)』その1

2014年10月26日 | その他映像作品
ということで『ゲーム・オブ・スローンズ第三章』を見始めました。今回は前半部第1~5話まで鑑賞。例によって原作の細かな筋を忘却した状態で見ております。いい加減な記憶力で原作と比較すると、割とオリジナルの演出が多いような気もするのですが……

ブラックウォーターの戦いの敗北によって意気消沈するスタニスをよそに、キングズランディングではタイウィンが「王の手」となり、ジョフリーとタイレル家のマージェリーとの婚姻を進めます。サーセイは息子の婚姻に、ティリオンは「王の手」の座を追われたことに不満顔ですが……?そしてブライエニーによってキングズランディングに護送されていたジェイミーは、途上で傭兵に捕らえられて右腕を切り落とされ、ロブの配下のルース・ボルトンに引き渡されることに……

ジェイミーは傭兵に「父親の威光を笠に着ないと何も出来ない」となぶられたうえに利き手を失い、すっかり自信を失ってなぜか風呂場でブライエニーと混浴しながら、「王殺し(キングスレイヤー)」の二つ名の由来となったエイリス王殺害時の状況を告白したりしております。

で、それより更に悲惨な状況に置かれているのがラムジー・スノウ(ルース・ボストンの私生児にあたります)に監禁されたシオン・グレイジョイさん。地下牢で散々拷問されたところを、姉ヤーラの配下と称する青年の助けで脱獄し、島から抜け出すという直前になってなぜか突然その青年が裏切り、再び監禁されることに…… まあ、その青年が実はラムジー本人だったというオチなんでしょうけど、色々歪んでるなとw

ジョフリーと婚約したマージェリーは未来の夫の凶暴性を知りつつ適当にいい方向に誘導し、サーセイの反発も適当にやり過ごしと、見ていて胸糞が悪くなるぐらいにそつがありません。 兄のロラスの方は男の美人局に引っかかったりしているのですが、これは一体どういう層に向けたサービスシーンなんでしょうか?

そして我らがスターク家のロブはオリキャラの恋人タリサといちゃつきつつ、ラニスター家の人質を殺害した罪でカースターク家の当主を処刑し、カースターク勢が軍から脱けた補填をしようと、一旦は婚約を破棄したフレイ家を頼ることにし、着々と自分で自分の死亡フラグを立てつつあります。

今回メリサンドルさんの出番が少ないのが個人的に不満なのですが、ブラックウォーターでの敗戦責任を問い詰められた際に「私を戦場に連れて行ってたら勝ってた」と言い訳しているあたりは相変わらずだなとw
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『十月囲城』その10(完)

2014年10月19日 | 中国近現代ドラマ
『十月囲城』第55~最終60話まで見ました。

秦少白から官府側のスパイではないかと疑われかけた重甲は、鉄山と示し合わせて鉄山爆殺未遂事件をおこしたりして革命党員の信頼を回復しますが、それに反比例して阿四の信頼は下がる一方。重甲は革命党員の意見を誘導して広州で起義をおこさせ、鉄山らに計画の情報を流して革命党を一網打尽にしようとしますが、土壇場ですべてが重甲の掌の上と気付いた秦少白は重甲に無断で計画を変更、鉄山から弾薬の支給を命じられていた阿四には製造局の爆破と重甲殺害を命じます。

しかし阿四は重甲を追い詰めるつもりがあべこべに刺殺されて簀巻きにされ、広州城の堀へと投げ捨てられます。そして重甲の策謀により革命党側と、革命党に味方するはずの新軍とが同志討ちさせられ、秦少白も乱戦の中で死亡。こうして1911年3月29日の「黄花崗の起義」は幕を閉じたのでありました…… 


結局「黄花崗の起義」でおいしい所を全部持っていってしまった重甲さん……

しかしその後、武昌蜂起によって辛亥革命が勃発。広州では清朝からの独立を宣言し、広東軍政府が成立。革命党と官府との間をうまく立ち回っていた重甲は軍政府の高官に成り上がっておりました。一方、鉄山は部下とともに香港へと逃れて孫文暗殺のため潜伏生活を送っております。そして我らが阿四は刺殺されたと見せかけ、密かに阿純に助け出されて一命を取り留め、香港で人力車引きの仕事に戻っておりました。

が、重甲は阿純と平和に暮らしていた阿四を見逃さず、抹殺をはかります。重甲側の襲撃から逃れた阿四は、重甲が密かに袁世凱に内通しており、鉄山を使って香港に遊説する予定の孫文の暗殺を謀っていると察知。何とか孫文の関係者に暗殺計画を知らせようとしますが……

【総括】
ということで、気がついてみれば貧乏で教養の無い典型的な「老百姓」であった阿四が、金玉満堂の李家の令息重光の替え玉に仕立て上げられて四苦八苦しつつ成長していくという話だったはずが、いつの間にか正道を歩もうとする阿四と、性格が屈折しまくりで覇道を歩もうとする重甲との兄弟相克の物語となっておりました。アクションに定評のある鞠覚亮が監督に加わっていますが、個々のアクションは見応えのあるものに仕上がっているものの、アクションシーンの数自体は少なく、脚本で見せる展開になっています。同監督の『侠骨丹心』とか『逆水寒』のストーリーのグダグダぶりを思い出すと、隔世の感があります(^^;)
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『十月囲城』その9

2014年10月12日 | 中国近現代ドラマ
『十月囲城』第49~54話まで見ました。

自分がボランティアをしている教会に通っていた紳士「文先生」の正体が一家の仇鉄山であることを知ってしまった李念慈ですが、阿四を助けるために彼との結婚を承諾。約束通り釈放されたうえ、製造局総裁にも復帰してます。ついでに李重甲も軍務復帰を許されたうえ、以前より出世してます。阿四の釈放と製造局総裁復帰についてはさすがに弟分の鉄剛から「え、何で?」とツッコミが入ってますが、鉄山先生、「阿四をうまく利用して、我らの味方かどうかいまいち信用ならん重甲を牽制するのだ」と、ちょっと無理な言い訳をしておりますw

しかし革命党側では重甲の工作もあって阿四は裏切り者と見なされ、秦少白からも距離を置かれてしまいます。重甲は鉄山にはいまいち信用されていないのに、革命党の面々からはなぜか鉄のように堅い信用を得てております。ひょっとして革命党の皆さんは物凄くアホなんではないでしょうか。そして重甲に唆された革命党の一員で新軍の軍人于鎮偉によって阿四が狙撃されることに…… ここで街中での人力車同士のカーチェイスが繰り広げられます。このドラマ、こういうアクションシーンのクオリティは高いのですが、数が少ないのが何とも残念です。

で、念慈を頼って鉄山のもとに逃げ込んだ阿四は、ついでに終身監禁処分となった岳父区肇新の釈放を願い出て鉄山が認可。誰もが気が触れたふりをしているだけだと疑わない区肇新ですが、娘の舒雲がいる李府に引き取られてからも牢内にいた時と様子が変わらず、どうやら本当に気が触れていたらしいと嘆息する阿四と舒雲。

そんな最中、過年の起義で父親とともに新軍に弾薬を届ける任務を任されつつも、行方知れずになっていた小丁が姿を現し、起義の時に新軍に銃のみ届けられて弾薬が届かなかった案件の実情が明らかにされるかと期待されましたが、重甲が先回りして小丁を殺害。これと前後してやはり鉄山・重甲の差し金で製造局内の革命党員が一斉検挙・処刑され、革命党からは阿四が裏切って鉄山に情報を流したと見なされ、信頼を完全に失ってしまった阿四ですが、ここで阿四と二人きりになった区肇新が実は今まで鉄山や重甲を警戒してずっと気が触れた振りをしていただけだったと告白。やはりそんなことだろうと思ってましたw

区肇新は亡くなった李重光の名を傷つけないためにも汚名を挽回したい、李玉堂の意志を受け継いで革命を成し遂げたいという阿四の心意気に感じ入り、引き続き舒雲や重甲らの前では気が触れたふりを続けつつも、密かに彼の参謀役となることに。阿四を追い詰めるべく裏で糸を引いているのは重甲ではないかと示唆します。そしていっそ思い切って鉄山に投降して革命党のためのスパイとなれと入れ知恵。鉄山の手先として革命党に潜入してスパイとなっている重甲と逆のことをやれと言うわけですね。何だか『インファナル・アフェア』みたいな展開になってきましたがw

そして阿四は小丁が重甲によって殺害されたという証拠と証人をつかんで秦少白に突きつけ、秦はようやく重甲を疑うようになります。状況を察した重甲は革命党の信頼を取り戻すべく何やらまた鉄山と悪巧みをしておりますが……?
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『十月囲城』その8

2014年10月05日 | 中国近現代ドラマ
『十月囲城』第43~48話まで見ました。

過年を迎えようとしている広州。阿四は岳父の区肇新の目を謀って製造局の弾薬を革命党に横流ししようとしたり、鉄山が職務報告のため上京中と聞き、その隙を狙って秦少白らと起義の計画を練ったりしておりますが、そんな動きは区肇新にはお見通しでした。阿四はこれを奇貨として秦少白と区肇新との会談を取りもち、革命党側が広州での起義を取りやめるかわりに区肇新が秦少白の身の安全を保証するということで話し合いがつきますが、2人が区府を一歩出た瞬間に区肇新の部下が秦少白を取り押さえ、連れ去ってしまいます。

区肇新の裏切りに憤る阿四ですが、この件は実は鉄山の差し金なのでした。実は鉄山、上京したと見せかけて広州に潜伏しており、重甲をスパイに使って革命党側の動向を把握したり、区肇新の部下を買収して秦少白を拘束させたりしたという次第。秦少白救出のために起義決行を決意した阿四と革命党の面々ですが、革命党側に出入りしている重甲の暗躍により次々と起義の動きを官軍が先回りして封じ込め、革命党側として決起を決めた新軍には製造局から李府の執事の丁父子が弾薬を届けるはずが、やはり官軍に阻止されて銃のみが届けられて弾薬が届かず、官軍に包囲されて蜂の巣状態に。阿四も革命党に関与したとして囚われの身に。

その間に鉄山のスパイのはずの重甲はなぜか投獄されていた秦少白を救出し、銃撃戦に巻き込まれて彼が負傷すると、途中で落ち合った区舒雲とともに病院に搬送させたりしています。で、鉄山にその行動を咎められると「スパイの任務を全うするべく、革命党の連中の信用を得るためにやりました」と下手な言い訳をw

そして舒雲は牢内の阿四と対面したところ、阿四と父親の区肇新との間に行き違いがあること、その背後に何者かの暗躍があることを察知しますが、その父親も革命党への関与や製造局絡みの汚職を理由に投獄されてしまっているのでありました…… となると後は頼りになるのは革命党と官府の間でコウモリ状態の重甲しかいないというわけですが、ここで重甲が「これで舒雲はもうオレのもの」などとつぶやいております。お前の真の目的はそれだったのかw

そして都から欽差の富が到着。彼と鉄山・広州総督張鳳歧(ここで初めて広州総督の姓名が明らかとなります)によって区肇新の取り調べを開始。しかしその時には牢内の過酷な環境が災いしたのか、既に区肇新は気が触れてしまっておりました。鉄山は気が触れたふりをしているだけではないかと疑っておりますが、正直私もそう思います(^^;)が、ともかく富の裁定により区肇新は度を超えた汚職を理由に終身監禁、ついでに阿四も裁判を経ずに適当に死罪が決まります。

ここでなぜか鉄山が重甲を呼び出し、姉の李念慈が彼との結婚を承諾すれば阿四は釈放してやると約束。鉄山は時々貿易商に扮して念慈がボランティアをしている教会に通っており、彼女に惚れていたのでした。貿易商の正体が鉄山とはつゆ知らない念慈は阿四を救うため、涙ながらに鉄山との結婚を承諾。重甲的には鉄山と義理の兄弟となるのは願ったりかなったりですが、阿四の釈放はノーサンキューのはずですが……?

ということで重甲さんが順調にドラマ『宝蓮灯』の二郎神のごとく何をやりたいのかわからないポジションにはまっておりますw
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2014年9月に読んだ本

2014年10月01日 | 読書メーター
ナポレオン ~覇道進撃~ (7) (ヤングキングコミックス)ナポレオン ~覇道進撃~ (7) (ヤングキングコミックス)感想
ナポレオンの全盛期はまだ続行中。タレイランの助言を無視し、配下から叙爵への不満が漏れることが没落へのフラグとなっていくのかなという程度。プロシア王妃ルイーゼの描写は前巻ので味を占めたなとw
読了日:9月1日 著者:長谷川哲也

近現代2 (岩波講座 日本歴史 第16巻)近現代2 (岩波講座 日本歴史 第16巻)感想
「伝統文化の創造と近代天皇制」では最後に明治期の宮中での仏教信仰の継続について言及。「藩閥と政党」では西洋的な政党、特に複数の政党が互いに承認してあって競合する状況が理解しづらかったとする。「近代学校教育制度の確立と家族」では学制による小学校での教育課程が当初寺子屋での教育と比べて役に立たないと人々に思われていたと指摘。「地主制の成立と農村社会」では、中国などと比較して日本では地主と小作人との信頼関係が強く、地主制が安定的に発達したとする。言い換えれば日本の小作人の「社畜」度が高いということになろうか。
読了日:9月2日 著者:

ヒトラー演説 - 熱狂の真実 (中公新書)ヒトラー演説 - 熱狂の真実 (中公新書)感想
ラジオ演説がヒトラーと聴衆との間の一体感を損なわせ、演説を聞くことを飽きさせるなどマイナスに作用したとか、小学生も演説の内容にツッコミを入れていたとか、第二次大戦の戦況が不利になるにつれヒトラーが演説へのやる気を失っていたとか、面白いトピックが多い。ただ、演説に頻出する用語の分析とこの種のトピックがあまりうまく結びついていないという印象を受けた。
読了日:9月5日 著者:高田博行

統帥権と帝国陸海軍の時代 (平凡社新書)統帥権と帝国陸海軍の時代 (平凡社新書)感想
『戦争の世界史』の解説では日本の「統帥権の独立」の源流をプロイセンの制度に位置づけていたと思うが、本書によるとそう単純な話でもないらしい。そして第一次世界大戦での敗戦により、そのドイツなど統帥権の独立性の保つ先進国が消滅した後も、日本では「統帥権の独立」がガラパゴス的な発達を遂げて「魔法の杖」と化し、敗戦による軍部の消滅によってようやく解消に至ったとする。日露戦争以後の展開が簡略な通史となってしまっているのが残念。
読了日:9月8日 著者:秦郁彦

中国古代文明の謎 (光文社文庫―グラフィティ・歴史謎事典)中国古代文明の謎 (光文社文庫―グラフィティ・歴史謎事典)感想
1988年出版の本で、しかも一般読者向けの文庫版であるが、睡虎地秦簡、特に日書の良質な入門書となっている。写真や図版が多く、半分フォトブックのような体裁であるが、史跡の写真も現在の様子とは様変わりしている所もあり、それはそれで資料的価値が見出せる。
読了日:9月11日 著者:工藤元男

誰も調べなかった日本文化史: 土下座・先生・牛・全裸 (ちくま文庫)誰も調べなかった日本文化史: 土下座・先生・牛・全裸 (ちくま文庫)感想
「土下座・先生・牛・全裸」と、不穏なキーワードが羅列されているサブタイトルが本書のすべてを表しています。「日本文化史」という言葉から連想されるような茶道もわびさびも浮世絵も「おもてなし」も出てきませんが、無意味な土下座も夏場のネクタイをめぐる熾烈な戦いもキラキラネームも確かに日本の文化です。巻末に朝ドラ『花子とアン』で局地的に物議を醸した「銀ブラ」をめぐる話もあり。
読了日:9月19日 著者:パオロ・マッツァリーノ

なぜ時代劇は滅びるのか (新潮新書)なぜ時代劇は滅びるのか (新潮新書)感想
時代劇が高齢者向けで古臭いというイメージが固定観念にすぎないというのは、中国の時代劇を見ていると納得できる。(中国には子供向けや女性向けの時代劇というのもちゃんとある。)結局ドラマにしても映画にしても時代劇の量産ができなくなったというのが「滅びる」原因のすべてではないかと思った。たとえば本書終盤で槍玉に挙げられている大河ドラマにしても、大河クラスの作品が一年にもう一つ制作できるという状況になれば、メインを戦国・幕末ホームドラマ大河にしてもう一つの方で冒険するという選択肢が可能になるだろう。
読了日:9月21日 著者:春日太一

コレモ日本語アルカ?――異人のことばが生まれるとき (そうだったんだ!日本語)コレモ日本語アルカ?――異人のことばが生まれるとき (そうだったんだ!日本語)感想
現代でも漫画などに現れる中国人の「アルヨことば」は幕末以来横浜で日本人と外国人との会話の中で使われた「横浜ことば」が源流と見られるが、その「横浜ことば」が満洲国で日本人と現地人との間で使われた「満洲ピジン」に影響を与えた。その「満洲ピジン」が更に中国の抗日ドラマで日本兵の決まり文句として使われる「メシメシ」「バカヤロ」などの「鬼子ピジン」の形成に影響を与えたということで、「アルヨことば」と抗日物の日本兵の怪しげな日本語がいわば兄弟の関係にあったという、ある意味衝撃的な結論が導き出されている。
読了日:9月24日 著者:金水敏

王道の狗1 (中公文庫 コミック版 や 3-30)王道の狗1 (中公文庫 コミック版 や 3-30)感想
秩父事件・大阪事件に関与した自由党の残党が収容先の北海道で脱獄してアイヌの男に助けられ……という感じで始まるが、今のところ話が物凄くとっちらかっている印象。この先話がまとまっていくのか不安。
読了日:9月28日 著者:安彦良和

秋風秋雨人を愁殺す: 秋瑾女士伝 (ちくま学芸文庫)秋風秋雨人を愁殺す: 秋瑾女士伝 (ちくま学芸文庫)感想
著者の表現を借りれば、イプセン流の「人形の家」などどこにも存在しない激動期の中国で、死後に革命の女神という人形に仕立て上げられた秋瑾の物語。当時の革命党が西太后や光緒帝をどう見ていたかについては、確かによくわからないところがある。
読了日:9月28日 著者:武田泰淳

古代中国の思想 (岩波現代文庫)古代中国の思想 (岩波現代文庫)感想
放送大学の教材で30年前の著作とあって基本的にはオーソドックスな概説書だが、最後の「人間史のこと」で、後漢末から六朝にかけての『漢紀』などの帝紀と「先賢伝」「耆旧伝」をそれぞれ紀伝体史書から本紀・列伝を単行させたものとし、『帝王世紀』『古史考』を帝紀の範囲を太古から当代までを広げた通史であるとしたうえで、『日本書紀』をその帝紀・通史の体裁を踏襲したものとし、『日本書紀』の編纂を中国史学史の文脈の中に位置づけている点が面白い。
読了日:9月30日 著者:戸川芳郎
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