博客 金烏工房

中国史に関する書籍・映画・テレビ番組の感想などをつれづれに語るブログです。

『那年花開月正圓』その10

2017年11月25日 | 中国近現代ドラマ
『那年花開月正圓』第55~60話まで見ました。

水に浸かって乾かしたら逆に味が良くなったということでこれを「金花茯茶」として売り出し、危機から一転大儲けをする周瑩。その頃書院の用務員に身をやつした沈星移は、書院の学生の影響もあってすっかり当時流行の変法運動のシンパになっています。このドラマ、さりげなくこういう時代背景を感じさせる要素が盛り込まれているのかいいですね。

しかし好事魔が多し。趙白石の師(趙白石が通ってた学校の先生ということではなく、科挙の際に試験官になったなどの事情で師弟関係となり、彼の政治上の後ろ盾になったということでしょう)の張長清が周瑩に面会を求め、国家のために陝西機器織布局の株権をすべて官府に売却するよう要求します。張長清のバックには更に大物の李大人(李鴻章のことなんでしょう)がおり、彼の進める「富国強兵」に協力をしろというわけですね。しかし陝西機器織布局の開業に至るまでに呉家は巨額の資金をつぎ込んでおり、ようやく儲けが出始めて資金の回収ができるようになったところだということで、婉曲に拒否。

そこで張長清は、夫が周瑩と不倫関係にあるのではないかと不信感を持っている呉漪を巻き込み、周瑩に収賄の疑惑有りと捏造し、彼女を投獄させて機器織布局の株権を引っぱがすという方策に出ます。こういう洋務運動の裏面史みたいなのを描いているのも面白いですね。ちなみに清朝政府は後年鉄道国有化令を発して、今回の機器織布局と同じような感じで各地の鉄道の利権を接収しようとするわけですが、本作の呉家に相当するような民族資本家と呼ばれる人々の反発を受けて四川暴動が勃発し、これが更に辛亥革命へとつながっていきます。

で、周瑩は北京へと連行されてしまい、趙白石の説得により機器織布局の株権を手放すことに同意します。これで釈放となるのかと思いきや、今度は貝勒から郡王に昇格した載漪の横槍により差し戻しとなり、周瑩は出所できません。彼の狙いは自分が機器織布局の株権を得ることのようです。

そして事情を知った星移は父親に頭を下げ、星月貿易行の株権譲渡と引き替えに、杜明礼を仲介して載漪に周瑩の出所を約束させ、彼女の身柄を引き取りに行きますが、これが杜明礼のワナで、牢破りを図ったということにされてしまい、星移も投獄されてしまいます……

趙白石は二叔・四叔の委託を受けて載漪と折衝しようとしますが、伝手がありません。そこで杜明礼を襲撃して刃物で脅しつけて彼の王府に潜入。そして載漪に直接賄賂となる銀票が上海の西洋人との契約権を譲渡し、周瑩の釈放に同意させます。さすがお役人のくせに自分で黒覆面を身につけて間諜のようなことをやるだけあって、やり口が単刀直入です (^_^;)


今まで名前だけの登場でしたが、ここでようやく姿を現した載漪。年齢に比してちょっと老けすぎではないかと思いますが……


こうして出所し、呉家東院に戻った周瑩ですが、自分のために投獄されてしまった星移が獄中で病死したと聞かされて気落ちし……というところで次回へ。

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『那年花開月正圓』その9

2017年11月19日 | 中国近現代ドラマ
『那年花開月正圓』第49~54話まで見ました。

杜明礼の画策により、胡詠梅は周瑩の業務提携の申し入れを蹴り、彼女に洋布の安売り競争を仕掛けることに。そっちがそのつもりならということで周瑩もビジネス対決を受けて立ち、韓三春&千紅夫妻に譲渡していた呉家東院の株権2割の返還を受け、それを元手安売り&サービス攻勢と胡家の洋布との品質比較アピールを展開し、胡詠梅を破産寸前にまで追い込みます。胡詠梅もその実無理に無理を重ねて安売りをしていたので、矢も楯もたまらずに杜明礼に助けを求めますが、杜明礼は彼女を見捨てることを決意。杜明礼が画策しなけりゃ普通に周瑩との業務提携でお互いWin-Winで終わってたんだから、そこは自分が破産しても助けてやれよと思うのですが、「あの御方」こと貝勒爺の手前そうもいかない模様……

そして呉聘の死は、胡詠梅が自分を毒殺しようとして失敗した結果ではないかと思い当たってしまう周瑩。呉聘が彼女の好物の甑糕(蒸しパンの菓子)を屋台で毎日土産に買って帰ってるのに目を付けて屋台ごと買収し、毒を仕込んで周瑩に食べさせようとするという物凄く手の込んだことをやってたわけですね。そしてそれを呉聘がうっかり口にして死んでしまったということになるようですが…… 呉聘の墓前で胡詠梅にそのことを糾弾する周瑩ですが、胡詠梅は棒で彼女を殴りつけ、更には刃物を持ち出し、そこを義父の周老四が彼女をかばって刺殺されてしまい、胡詠梅自身もその刃物で自害。周老四はその前後の回で何か死亡フラグくさい台詞を口にしてるなあと思ったら死んでしまいました(´Д`;)

その間に二叔の娘の呉漪が千紅の入れ知恵で、兄のもとに遊びに来ていた趙白石への差し入れのお酒にいけない薬を少し混ぜて既成事実をこしらえてしまい、結婚へと持ち込んでいます。しかし趙白石の心が周瑩に傾いているのを察知してしまい……

父親を亡くして傷心の周瑩ですが、呉家東院の復興も目途が立ったということで、ここらあたりで視察旅行を兼ねて上海に武者修行に出た沈星移を探訪することに。


星移は「星月貿易行」を立ち上げ、租界の西洋人に内陸の物品を卸す運送業を展開しています。周瑩に知り合いの西洋商人を紹介したり、西洋料理のマナーやワルツを教えたりして、二人はいい雰囲気になりますが、そこへ周瑩のもとに趙白石からの密書が届き、星移の父の沈四海が呉蔚文の冤罪でっち上げに関与していたことが判明し、一転頑なな態度になり、星移から教えて貰ったことを駆使して彼の取引先を奪いに行きます。周瑩の態度の急変戸惑う星移ですが、父親の所業を知り、また沈四海が杜明礼と手を切ろうとしないことに絶望し、貿易行を放り投げて家を出、地元の貧乏書院の住み込み雑用係に身をやつします。

涇陽に戻った周瑩は二叔・四叔の前で沈家を潰すと宣言。一方で沈家の傍らには杜明礼、杜明礼の背後には貝勒爺がいるということで、黒幕の存在にようやく気づきます。そう言えば周瑩と杜明礼はまだ対面したことはないんですよね。彼女は取り敢えず沈家の取引先を奪取にかかりますが、一方の沈四海の方も磚茶を積み込んだ呉家の船の底に穴を開けさせ、茶葉を水につけてダメにしてしまうという作戦を敢行、このあたりは中国ドラマお得意のきたないなさすが合戦が展開されます (^_^;) しかしその水につかったはずの磚茶を乾かしてお茶を入れると、もとの茶葉より味が良くなるということが判明し……というあたりで次回へ。

上海では周瑩が星移の指導で身につけた技で商売を開拓していくというRPG的な要素もあり、商売物の面白さが味わえるようになっています。今期の朝ドラも中盤あたりでそういう面白さが味わえるようになってくるんでしょうか……

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『那年花開月正圓』その8

2017年11月12日 | 中国近現代ドラマ
『那年花開月正圓』第43~48話まで見ました。

陝西機器織布局開業の目途がついたということで、この機会に二叔と四叔は周瑩に呉家大当家の地位を返還することにし、そのかわりに前回の図爾丹のプロポーズ事件を承けて彼女に生涯再婚せず、呉家で一生を終えるという誓いを立てるように要求しますが、周瑩は将来のことまではわからないとさっくり拒絶。

そうこうしているうちに織布局開業の日を迎えますが、これまで呉家の土布工場で働いていた職人たちが仕事を奪われるということで、杜明礼の意を承けた陶掌櫃に唆され。周瑩や趙白石らが参列する中で織布局に押し入り、機械打ち壊しを決行します。実行犯は全員趙白石によって検挙されますが、機械はすべて操業が不可能なレベルまで破壊され、暴徒から周瑩をかばった沈星家は骨折などの重傷を負い、周瑩もショックで吐血し、昏倒してしまいます。

孫が負傷したのは周瑩のせいだということで、星移の祖母が杜明礼の仲介で朝廷から授かった二品の官位を盾に呉家に怒鳴り込んできます。黙って聞き流していた周瑩ですが、罵倒が亡き呉聘に及んだところでキレた周瑩が「カネで手に入れた官位がそんなに偉いのか」と反撃w その後肋骨の骨折を押して星移がプロポーズにやって来ますが、これはもうダメだと観念した周瑩は、星移と呉家一同、そして証人として趙白石も呉家の廟に集め、生涯再婚をしないという誓いを立て、星移を絶望させます。ついでに密かに彼女を思っていた趙白石も絶望させてしまったようですが (^_^;) そして趙白石に惚れていた呉漪は、そんな彼の気持ちに気づいてしまいます……

で、誓いを立てたということで二叔・四叔は約束通り周瑩に呉家大当家の地位を返還しますが、「じゃあこれから機器織布局を再建するね」と彼女が提案すると首を横に振り拒絶…… 周瑩は織布局の再建費用十万両を調達するため、呉家東院の全従業員を対象に、今で言う社員持株制を提案し、少額でよいからと出資者を募ります。


儲けが出なかった時の元本保証をして欲しいということで、呉家東院の日用品や飾りまで従業員の抵当に入れられ、希望者の名札が貼り付けられます (^_^;) これに気分を害して食卓に食器をどんと叩き付ける義母の鄭氏ですが、お付きの侍女の張媽に「その食卓は私の物になるかもしれませんのでもう少し丁寧に扱って下さい」と言われる始末w

一方、傷心の星移は父親の勧めもあって上海に商売修業の旅に出て、西洋との貿易会社をおこします。物珍しさから涇陽の周瑩へと電報を送ったりしてますが、こういう文明開化的な要素を盛り込んだドラマというのも今までそれほど見なかったような気がします。そう言えばこのドラマ、洋務運動の時期を舞台にした作品でもあるんですよね。


そしてあっという間に十万両の出資金を調達して織布局再建・再始動へと漕ぎ着けます。開業にあたって機械打ち壊しの実行犯の無罪放免を願い出て、彼らも職工として雇用することを約束しますが、その前に彼らの目の前で愛用の土布の織機を叩き壊させてしっかりトラウマを植え付けたりしています (^_^;) 周瑩は因縁のある胡詠梅に敢えて織布局で生産した洋布を安価で卸すので販売してもらえないかと業務提携を持ちかけますが、そこへ織布局操業停止のミッションに失敗したことから「貝勒爺」に厳罰を加えられた杜明礼が姿を現し……というところで次回へ。
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『那年花開月正圓』その7

2017年11月06日 | 中国近現代ドラマ
『那年花開月正圓』第37~42話まで見ました。

図爾丹は偽薬の一件は呉遇一味の仕業であったと納得。周瑩と意気投合して土布をすべて買い取り、今後も呉家と取り引きを続けることを約束します。


ミッションを果たし、図爾丹との再会を約しつつ迪化から涇陽に帰還した周瑩。前髪が取れて貴婦人っぽい雰囲気になりましたが、言動は相変わらずです……

さて、周瑩は来年には迪化にも洋布が入ってくるだろうということで土布に見切りを付け、いっそのこと織布機を西洋から輸入して洋布を自家生産できないかと検討しはじめます。折りよく三寿幇討伐の功績で西安布政使に出世した趙白石も、上海での事例に倣って陝西でも機器織布局すなわち官立の西洋式織布工場を立ち上げ、地元の商人から出資者を募って地域で洋布の生産を推進していこうと計画。これまで上海から洋布を買い入れていた胡詠梅と、同じく土布販売に見切りを付けていた沈星移が出資者に名乗りを挙げます。

しかし好事魔が多し。杜明礼の主人の「貝勒爺」こと載漪が自分の権益を侵されることを案じて趙白石の計画を潰すよう指令。杜明礼の指示で沈家は出資の取りやめに同意しましたが、胡詠梅はなかなか同意しません。それどころか、逆に杜明礼に載漪の配下なんかやめてしまって自分の共同経営者になって欲しいと提案します。気持ちが揺れる杜明礼ですが、査坤が彼に「ひょっとして自分の身分というものを忘れちゃいませんよね、杜公公?」とささやきかけ、一気に現実に引き戻させます。この二人、もとは載漪に仕える宦官だったようです…… それでも逡巡する杜明礼を見て、査坤がいつぞやの呉家に三寿幇を襲撃させた件に彼女が関与していたことを官憲にバラすと脅しをかけ、ようやく出資の取りやめに同意させますが、怒った彼女は杜明礼に絶交を突きつけます。

それまで彼女の古月洋布店から配当金が入るたびに、「お金が貯まったら西湖に屋敷を構えて過ごしたい」「オレは人間の生活というのを取り戻したい」などと夢や希望を語り、権利意識に目覚めつつあった二人ですが、これで奴隷の身に逆戻りかと思えば、そういうわけでもないようで……?

事態を知った周瑩は今こそ涇陽での洋布商売を独占するチャンスと、二叔・四叔を説得して出資金総額二十万両を調達しようとしますが、さすがに無茶な計画だと反発され、呉家の大当家の地位を取り上げられてしまいます。

そこへ図爾丹が約束通り涇陽へと来訪し、唐突に周瑩にプロポーズを敢行。困惑あるいは怒りを隠せない二叔と四叔。肝心の周瑩は戸惑う様子を見せますが、図爾丹に心が揺れたというわけではなく、彼の持参金に心が揺れたようです (^_^;) 彼の財力があれば陝西機器織布局の出資金総額を一括払いできる、結婚を承諾したふりをして二十万両をかすめ取ろうと皮算用に励んでいたようですが、最後に彼を騙すようなことはできないと翻意し、「恋愛感情は亡夫の遺体とともに黄土に葬り去った」と求婚を拒絶。

それでもビジネスパートナーとしての付き合いはできるはずと食い下がる周瑩ですが、「申し訳ないがそういう割り切りはできない」ということで図爾丹は呉家との取り引きを停止すると宣言。このところの呉家の商売は図爾丹との取り引きに頼り切りだったということで状況は一気に苦しくなるわけですが、二叔は「これでふんぎりがついた」と、呉家の財産を傾けてでも陝西機器織布局の出資金二十万両の支出に同意します。

一方、図爾丹のプロポーズ宣言に焦った星移は、渋る家族を説得して周瑩への婚約を申し入れようとしますが……
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2017年10月に読んだ本

2017年11月01日 | 読書メーター
天皇の戦争宝庫: 知られざる皇居の靖国「御府」 (ちくま新書1271)天皇の戦争宝庫: 知られざる皇居の靖国「御府」 (ちくま新書1271)感想
靖国神社と同様に戦没者の慰霊・顕彰を目的としながら忘れられた存在となった皇居内の「御府」の歴史を掘り起こす。靖国と同じく戦争への勝利を前提とした施設であったこと、基本的には限られた人間にしか拝観が許されなかったが、戦没者の増加でその遺族の拝観が許されるなど、戦況や世相に応じて御府の扱いが変わったことなどを面白く読んだ。また、日露戦争の戦利品であった「鴻臚井碑」に渤海王の冊封に関する記述があったことから、中韓の歴史論争の火種になった事情にも言及されている。
読了日:10月03日 著者:井上 亮

「悪の歴史」東アジア編〈上〉「悪の歴史」東アジア編〈上〉感想
各執筆者がこれまで発表した研究や一般書の良いダイジェストになっている。先秦~前漢武帝あたりまでは『史記』の記述の克服が裏のテーマになっているように感じた。ただ、この内容で「悪の歴史」を語っていることになるのかどうかは非常に疑問を感じる。他の巻との兼ね合いもあるのだろうが、君主や后妃だけでなく、盗賊・遊侠など多彩な人物を取り上げたり、思想面での掘り下げがあっても良かったのではないか。
読了日:10月08日 著者:鶴間 和幸

矢内原忠雄――戦争と知識人の使命 (岩波新書)矢内原忠雄――戦争と知識人の使命 (岩波新書)感想
戦中の「キリスト教知識人」としてのあり方を描くという本書の本筋からは外れるが、主に第二章で触れられている、矢内原忠雄と植民政策学との関わり、植民政策学が戦後に国際関係学・国際経済学へと発展したという話や、矢内原の殖民理論が近年グローバリゼーション論の先取りとして評価されているという点などを面白く読んだ。
読了日:10月10日 著者:赤江 達也

悪の哲学―中国哲学の想像力 (筑摩選書)悪の哲学―中国哲学の想像力 (筑摩選書)感想
『悪の歴史(東アジア編上)』の内容・構成に不満を感じたので、中国史で「悪」を語るなら他にどういう方向性があるのだろうと本書を手にとってみた。先秦諸子や朱子学・陽明学を「悪」、そしてそれと対比される「善」を切り口に新たな文脈に再構成しているが、本書を読んで連想したのは、儒教を「怨念と復讐の宗教」という文脈に再構成した浅野裕一の『儒教』である。両書を対比し、同じ歴代の思想の再構成を図るなら、本書のような方向性が有意義ではないかと感じた。
読了日:10月12日 著者:中島 隆博

享徳の乱 中世東国の「三十年戦争」 (講談社選書メチエ)享徳の乱 中世東国の「三十年戦争」 (講談社選書メチエ)感想
応仁・文明の乱を引き起こすきっかけとなり、「戦国」のはじまりとなったと位置づけられる享徳の乱の過程を追う。その享徳の乱も、西国を押さえる室町幕府と東国を押さえる鎌倉府との二元統治体制のひずみによってもたらされたものだが、幕府側も鎌倉府側も両者対立しながら、「兄の国」と「弟の国」との二元体制自体を精算しようとしなかったのは面白い。全国一元統治は中世から近世へと脱皮する課題だったということになるだろうか。
読了日:10月14日 著者:峰岸 純夫

全訳 封神演義 1全訳 封神演義 1感想
巻末のコラムで「小説として完成度が低い」とし、安能務が原作を改めたのも「要するに原作がイマイチなので、改変せざるを得なかったのであろう」としなかがらも、それなりにスラスラと読み進められるようになっているのは、翻訳者の力によるものだろうか。カットせざるを得なかったという注釈類も、続巻のコラムなどの形で公開を望みたい。
読了日:10月18日 著者:

司馬遷と『史記』の成立 (新・人と歴史 拡大版)司馬遷と『史記』の成立 (新・人と歴史 拡大版)感想
司馬遷の生涯と『史記』の著述を重ね合わせる構成。司馬遷が最初に手を付けたのが、当時の現代史の入り口にあたる秦末の反乱、「陳渉世家」「項羽本紀」「高祖本紀」ではないかとか、著者の想像の部分が面白い。
読了日:10月19日 著者:大島 利一

道徳を基礎づける 孟子vs.カント、ルソー、ニーチェ (講談社学術文庫)道徳を基礎づける 孟子vs.カント、ルソー、ニーチェ (講談社学術文庫)感想
哲学の門外漢には難しいというのが正直なところだが、個別の指摘、たとえば中国思想は道徳の領域と政治の領域とをつなぐものを真剣に考えてこなかったのではないか、法が支配者による抑圧の道具にしかなっていないのではないかという問い掛け(これは中国だけでなく、中国思想の影響を受けてきた日本の問題でもあるだろう)や、舜と弟の象の話をカインとアベルのような兄弟相克の物語として見ようとする視点などを面白く読んだ。
読了日:10月22日 著者:フランソワ・ジュリアン

国際政治 - 恐怖と希望 (中公新書)国際政治 - 恐怖と希望 (中公新書)感想
およそ半世紀前の著作で、当時のキューバ危機などを念頭に置いて議論しているが、不思議と古さを感じない。「すでに核兵器をもつ国がこれからそれを持とうとする国に対して「持つな」と言うことは、正当性を持たない」といった核開発による安全保障のジレンマの問題、国連と国際法の役割とその限界など、現在の北朝鮮問題に対しても通じそうな視点や議論が盛り込まれている。
読了日:10月25日 著者:高坂 正堯

国宝の政治史: 「中国」の故宮とパンダ国宝の政治史: 「中国」の故宮とパンダ感想
大陸でのパンダの国宝化と、主に台湾での故宮文物の国宝化が、ともに対外的主権の確立や「一つの中国」論と密接に関わるなど、パラレルな関係にあるという観点からの議論。この二つを結びつけるという発想は面白いが、両者の個別の議論、特に「ふたつの故宮」をめぐる議論がやや薄く感じられてしまったのが残念。
読了日:10月28日 著者:家永 真幸

馬賊の「満洲」 張作霖と近代中国 (講談社学術文庫)馬賊の「満洲」 張作霖と近代中国 (講談社学術文庫)感想
張作霖の勢力が馬賊から地方政権へと脱皮していく様子と、馬賊や土豪から抜け出せないままに討伐されたり没落した他の勢力との対比、張作霖の日本人軍事顧問が、必ずしも日本側の都合に沿って動かなかったという話を面白く読んだ。張作霖の半生の部分は「馬賊の「満洲」」というより「軍閥の「満洲」」という趣きがあったが…
読了日:10月30日 著者:澁谷 由里

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