博客 金烏工房

中国史に関する書籍・映画・テレビ番組の感想などをつれづれに語るブログです。

于正版『笑傲江湖』その2

2013年04月30日 | 武侠ドラマ
于正版『笑傲江湖』第7~12話まで見ました。

衡山では劉正風の「金盆洗手」(引退)の儀式が執り行われようとしておりましたが、そこへ嵩山派の使者が乱入。劉正風が日月神教の光明右使曲洋と交流していることを暴露し、儀式の中止と曲洋殺害を命じます。この場面は「魔教を非難しなきゃ正派の人士に邪派扱いされる江湖」という物語のテーマが提示され、かつ主人公令狐冲の運命を暗示した重要なシーンなんですが、この場面をちゃんと描いてくれたということで、後の展開でどんなに酷いアレンジをされようと何となく許せそうな気分になってきました。

嵩山派に家族や弟子を虐殺された劉正風は、令狐冲に「笑傲江湖」の楽譜を託して曲洋と最期をともにします。一方、岳不群は両親が死に追い込まれて孤児となった林平之を弟子に収め、令狐冲と合流して華山へと帰還。令狐冲は魔教の人士と交わったということで華山の思過崖で1年間の面壁を命じられます。

新入りの林平之は岳霊珊の「玉女剣法十九式」の修練に付き合うことになりますが、肝心の華山剣法はまったく指導してもらえず、岳不群が自分を弟子に取ったのは家伝の「辟邪剣譜」が目当てであることを悟ります。「こんなことでは両親の仇は討てない。一体どうすれば…… ハッ!そうだ!霊珊と恋仲になって結婚すれば華山派の奥義を伝授してもらえるかも!」ということで、岳霊珊と二人きりになっては無理矢理キスをしまくるという作戦を決行。



元々令狐冲のことを好きだった岳霊珊は戸惑いを隠せませんが、次第に気持ちが林平之になびいていきます。……とにかくイケメンがキスしまくれば女の子の心をゲットできるというこの発想…… まあ、于正がやりたいのはあくまで武侠ドラマであって恋愛ドラマではありませんから、恋愛描写が超絶に適当になるのは仕様がないですよね。そして小師妹の心変わりを知り、絶望を隠せない令狐冲。

一方、東方不敗は恒山派の儀琳が生き別れになっていた妹であることを知り、彼女に会いに恒山へと向かいます。東方不敗も昔は普通の娘さんでしたが、故郷が匪賊に襲われ、両親は赤子の弟のみを連れて逃亡。東方不敗と儀琳は置き去りにされてしまいます。(取り敢えず跡継ぎの男の子さえ無事ならそれでいいという発想らしい)そして東方不敗は儀琳ともはぐれてしまい、匪賊に襲われそうになったところを黄海氷演じる通りすがりの謎の達人に助けられます。その謎の達人に武芸の素質を見込まれた彼女は、女を捨てて弟子入りを決意。黒木崖で修行に励んで日月神教の実力者となったという次第。

心ある原作のファンが見たら卒倒しそうな展開ですが、于正にはもうちょっとまじめに脚本を書いてもらいたいもんですよね(棒読み)
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于正版『笑傲江湖』その1

2013年04月24日 | 武侠ドラマ
『美人心計』『宮』でお馴染み于正が脚本&プロデュースを担当した『笑傲江湖』を見始めました。今回は第1~6話まで鑑賞。

物語は原作の開始時点より10年前、五岳剣派と日月神教との戦いから始まります。実はこの戦いは日月神教副教主の東方不敗が仕組んだもので、戦いの最中に日月神教の任我行が走火入魔してしまい、教主の地位を東方不敗に奪われたうえに西湖の湖底に幽閉されてしまいます。そしてその任我行と互角の勝負をした嵩山派の左冷禅が五岳剣派の盟主に就任。

東方不敗は原作では去勢した男性で、去勢以来女性趣味になったという設定ですが、今回のドラマでは元々女性で、普段は男装しているので周りからは男性と思われているという設定のようです。



「去勢した男性が女性趣味になった?めんどくせ。そんなら最初から女性ということでええやろ」という発想なんでしょうかw

それから10年。妓女のふりをして妓楼にやって来る正派の人士の動向を探っていた東方不敗は、青城四秀にからまれているところを華山派の一番弟子令狐冲に助けられ、彼に惚れてしまいます。原作ファンの方、「そんな話ではなかったはず」というツッコミは取り敢えず置いといて下さい(^^;) そして令狐冲は師父の岳不群に青城山にお詫びに行かされることになりますが、青城山の門前で足止めを喰らってしまい、ならば仙鶴に乗って中に入ろうということに。



これは原作の世界観を無視した展開だというので、テレビ放映時にファンの間で問題となったということですが……

その青城派は林家から「辟邪剣譜」を奪い取ろうと画策しており、都で錦衣衛を務めていた林震南一家が辞職して船で帰郷していたところを襲撃し、身柄を確保。しかし林震南の息子の林平之は岳不群の娘の岳霊珊に助けられ、群雄の集まる衡山へと逃亡。

一方、令狐冲も岳不群の命で劉正風の引退式に出席すべく衡山へ。そこで色魔の田伯光から恒山派の尼僧儀琳を助け出したり、田伯光が実はミツグ君だったという悲しい過去が発覚したり、男装した東方不敗と友情を深めたりしています。その東方不敗も光明右使の曲洋と衡山派の劉正風との関係を不審に思い(ちなみに曲洋も劉正風もこのドラマでは若いイケメン)、密かに衡山へと向かいますが……

ということでこのドラマ、原作からかなりアカン方向にアレンジされています。しかも于正は実は原作をちゃんと読んでおらず、香港TVB1996年放映呂頌賢主演のドラマ版を下敷きにしているのではないかという指摘もされています。確かに10年前の日月神教と五岳剣派との戦いから話が始まったり、令狐冲が青城山にお詫びに行くといった展開は、呂頌賢版のオリジナルエピソードを取り入れたものだと思われます。

しかし第6話まで見てきて、段々これはこれでいいんじゃないかという気がしてきました(^^;) 元々『笑傲江湖』の原作のテーマにちゃんと向き合った映像化作品なんて無いわけですし、諸事情によってこれからもおそらく作られることはないことを考えると、これぐらい原作を無視しているのは寧ろ潔いとすら思えるのです。ということで、現段階では于正が原作をちゃんと読んでいないという部分も含めて前向きに評価したい所存です。まあ、最後まで見たら「呸ーッ!」という感想になるんかもしれませんけどw
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『隋唐演義』その10(完) 瓦崗寨は滅亡しました

2013年04月18日 | 中国古典小説ドラマ
『隋唐演義』第57~最終62話まで見ました。

李密が伝国の玉璽を蕭皇后と交換したことに愛想を尽かし、1人また1人と瓦崗寨を去る好漢たち。気がつけば有力な武将は王伯当のみとなり、洛陽を拠点とする王世充の軍に攻め込まれるとたちまち持ちこたえられなくなり、王伯当は李密とともに射殺されることに…… こうして瓦崗寨は滅亡しました。しかしこういうのはホントに崩壊する時はあっという間ですよね(´・ω・`)

やはり李密に反発して瓦崗寨から出奔した秦瓊・程咬金・羅成は、取り敢えず王世充の娘婿となっていた単雄信を頼ることにしますが、そこへ李淵の唐に身を投じていた徐茂公が秦瓊らの前に姿を現します。実は徐茂公の主君である李世民が反王の1人劉武周の軍と戦うことになったのですが、新たに劉武周に召し抱えられた猛将尉遅恭を打ち破るには、秦瓊や程咬金の力が必要!ということで密かにスカウトにやって来ていたのでした。何かこのあたりの展開が、光栄のシミュレーション『三国志』の魅力の高い武将を派遣して有能な在野武将を引き抜こう!というノリとあんまり変わんないんですよねえ……

病に伏せっていた羅成を残して李世民の配下となった秦瓊と程咬金ですが、その秦瓊が戦場であっという間に尉遅恭に生け捕りに……と思いきや、その秦瓊を無断で釈放したことで尉遅恭が劉武周に忠誠を疑われ、最終的に尉遅恭が劉武周を討ち取って李世民の軍営に身を投じることに。

唐の勢力拡大に危機感を抱いた王世充は、竇建徳・朱燦ら5人の反王とともに王連合軍を結成しますが、王世充軍から寝返った羅成を味方に加えた李世民の軍にあっさり撃破され、単雄信は囚われの身に。秦瓊らは単雄信に唐への帰順を促しますが、李淵らを一家の仇と見なす単雄信は帰順を承知せず、逆に処刑を望み……

【総括】

ということで単雄信が死に、唐による統一が成ったところで劇終です。今回のドラマは古典小説そのものではなく、それを講談化した単田芳の同名の評書を原作とし、単田芳自身も出品人の1人に名前を連ねていますが、それがいい方に作用した部分もあれば、悪い方に作用した部分もあるなあというのが正直なところです。同じ場面でも耳で聞いたり文字で読んだりするのと、それを映像として目で見るのとはまた違うんだなあと改めて認識した次第です……
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『隋唐演義』その9

2013年04月12日 | 中国古典小説ドラマ
『隋唐演義』第51~56話まで見ました。

靠山王楊林は揚州近郊の紫金山で「銅旗陣」を布陣し、陣を破った者に玉璽を与えると十八路反王に挑戦状を発します。で、羅成の父親北平王羅芸や唐国公李淵らにそれぞれ10万の兵を送るよう命じます。李世民はこれを諸侯の兵力を削る策と見て、敢えて5000の兵しか引き連れずに李元覇とともに馳せ参じますが、「え?10万の兵を調達できなかったから5000人で勘弁してくれ?なめとんのか!」ということで、軍営に軟禁されてしまいます。

瓦崗寨では、羅成を父親の代理として出征させ、陣図を盗ませようとしますが、羅成が瓦崗寨の一員であることは隋将の丁延平(羅芸一家と家族ぐるみのつきあいをしており、羅成の義父でもある)にはバレバレでした。「陣図が欲しければワシを倒していけ!」ということで夜中の軍営で一対一のバトルとなり、見事陣図を勝ち取る羅成でしたが、丁延平は隋への忠義を全うし、そのまま自害して果てるのでありました…… この時についでに李世民も瓦崗寨の軍営へと逃亡。

陣図を得た十八路反王連合軍は、宇文成都と楊林の守る白虎陣へと突撃。(銅旗陣は玄武・青龍・白虎・朱雀陣に分かれている)兄李世民とともに瓦崗寨側に寝返った李元覇の活躍もあり、楊林を敗死に追い込んで銅旗をゲット。しかし李元覇が「四弟!敵は反乱軍ではなく隋軍だ!宇文成都を襲え!」とか「元覇!恩公(=秦瓊)が敵に襲われているぞ!救出するんだ!」というような李世民の指示に従って戦っているのを見ると、正太郎君にリモートコントロールされている鉄人28号を何となく連想してしまうのですが(^^;)

銅旗は奪われたものの、宇文化及や煬帝が素直に玉璽を引き渡すわけもなく、騙されたと怒った群雄は煬帝の行宮を攻めますが、結局攻め落とせずに連合軍は流れ解散。裏切りの代償として羅芸ら北平王府は一族郎党もろとも宇文成都によって殲滅され、唯一生き残った羅成も囚われの身となりますが、ここで羅成に恩を売っておこうと目論む夏明王竇建徳・竇線娘父娘によって救出され、竇線娘(勇安公主)はしばらく瓦崗寨の軍営に客人として逗留することに。

一方、揚州の行宮ではいよいよ宇文化及が簒奪を決行し、煬帝を縊死に追い込みますが、その直後になぜか蕭皇后の寝室の長持ちの中に忍び込んでいた王世充によって刺殺されてしまいます。王世充の目当ては伝国の玉璽でしたが、これまたなぜか寝室の長持ちに忍び込んでいた程咬金によって玉璽を目の前でかっ攫われてしまい、腹立ち紛れに蕭皇后を拉致。そして揚州城外では宇文成都と李元覇との最終決戦が行われます。宇文成都を討ち取る李元覇ですが、その彼も雷が原因で命を落とすことに…… 楊林・煬帝・宇文成都等々、主要な人物が次々に退場していきますね(´・ω・`)

隋朝の滅亡後、都の長安は唐王李淵が押さえ、洛陽も王世充が占拠。瓦崗寨では「俺たちこの後どうするよ?」と幹部会議に。秦瓊や軍師徐茂公らは隋の後継王朝の大本命である唐に帰順したそうな顔をしてますが、李淵一家に対して海よりも深い怨恨を抱える単雄信と、帝位を手放したくない李密とが反対し、方針がまとまらないまま解散。そして李密は折角手にした伝国の玉璽を王世充に引き渡してかつての愛人蕭皇后(李密は隋に仕えて大運河の工事に従事していた頃、彼女と密通していた)を引き取ろうと画策しますが……
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『劉邦の宦官』

2013年04月07日 | 小説
黒澤はゆま『劉邦の宦官』(双葉社、2013年2月)

ツイッターでこの本の情報が回ってきたので、何となく興味を持って読んでみたのですが……



カバーイラストと、オビの「歴史小説の重みと濃密な少年愛を見事に両立させたこの力業よ!」という芥川賞作家玄月先生の推薦の辞から アカン雰囲気がビンビンと伝わってきますね(^^;)

内容は、西域の旅芸人の子孫で青い目と栗色の巻き髪の美少年小青狐と、西周を滅ぼした犬戎の子孫の美少年張釈が、宦官として建国間もない漢王朝の宮廷に仕えることになり、兄弟の契りをかわす(意味深)が、2人が呂后に見いだされ、更に劉邦のはからいで小青狐が皇太子の劉盈(恵帝)に仕えるようになったことから2人の運命の歯車が狂いだし……というもの。

歴史小説の中に少年愛が絡んでくるのかなと思って読み進めてみたら、実際はエロの間に歴史小説が挿入されてる感じだったのですが、これは一体どういうことなんでしょうかね?(困惑) 色々差し障りがあるので詳細は省きますが、恵帝に関係するエロシーンがつらい。とにかくつらい。この方面では割とガチな作品なので、興味本位で手を出すのはダメ!絶対!まあ、恵帝の再評価とか歴史小説としての要素が皆無というわけでもないのですが……

前漢の恵帝期を舞台にした作品としては中国ドラマの『美人心計』がありますが、この小説と『美人心計』、宮女と宦官(美少年)を入れ替えただけで、やってることは大差ないような気がしてきました……
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『隋唐演義』その8

2013年04月05日 | 中国古典小説ドラマ
『隋唐演義』第45~50話まで見ました。

李密の主導により大運河の工事が完成し、煬帝は長安から揚州へと巡行を開始。その情報をキャッチした瓦崗寨は十八路反王と連合軍を結成し、四平山で煬帝の龍舟を襲撃しようと計画します。しかし連合軍の兵が思うように集まらないことに業を煮やした単盈盈は、「ならば私が自分で二賢荘の仇を討つ!」と、新入りの宮女に扮して龍舟に潜入。その意図を察した蕭皇后の密かな助力もあって煬帝と対面する所まで進みますが、暗殺は失敗に終わり、囚われの身に…… 

その単盈盈を玉郡主が救出したものの、今度は郡主が煬帝に捕らえられ、かつての思い人の宇文成都に助け出されます。しかし宇文成都の方は人妻となった郡主にまだまだ未練がありまくりのようで、彼女を逃がすのかと思いきや自分の部屋に監禁して隋に戻るように説得。アカンこの人、どんどんメンヘラ気質になっていきよる(;´Д`)

さて、四平山では十八反王全員が勢揃いし、煬帝の援軍に駆けつけた靠山王楊林の軍勢と戦うことになりますが、その楊林、群雄の1人雄闊海ごときに生け捕りにされてしまいます。「隋朝の守護神」と言わんばかりの今までの扱いは一体何だったのか…… その後かつての義子で娘婿でもある秦瓊の計らいによって解放された楊林ですが、宇文成都とともに再度反乱軍と対峙。しかし宇文成都が一騎打ちの連続で瓦崗寨側に痛めつけられても撤退命令を出そうとしません。権門の宇文氏への嫌がらせのようにも見えますが、「ふん、ワシの若い頃はあの程度の負傷など物の数に入らんかったわい!」と、単にブラックな感覚でやってるだけかもしれません(^^;)

一向に戦況が良くならないことに業を煮やした煬帝は、切り札の李淵の四男李元覇を戦線に投入。十八反王連合軍はこの少年バーサーカーに太刀打ちできず、煬帝を討ち果たせないまま何となく解散。玉郡主は李元覇とともに四平山に到来した李世民によって救出されます。この四平山での十八反王連合軍と隋軍との戦いって、『三国』での反董卓連合軍と呂布などとの戦いに似てるんですよねえ。まあ、原典がこのあたりの展開をモロパクリしてるってことなんでしょうけど。

しかし程咬金はこの結果に満足がいかず、単身揚州の行宮に忍び込んで煬帝暗殺を謀り、捕らえられますが、反乱軍の勢力を強化しようとする蕭皇后の意を受けた李密が程咬金を救出し、程咬金から皇帝の位を譲られることになります。


皇帝となり、ドヤ顔で我が世の春を謳歌する李密さんの図。

李密は調子に乗って「文武状元」が売りのエリートの王伯当と連携し、「我が大魏国に六部の官制を導入する(キリッ 」と宣言して改革を開始します。単雄信らが「ちっ、めんどくせえこと始めやがって」という表情をしてるのが最高ですw

で、兵力も増強されてきたところで五関のひとつ虹霓関へと侵攻。王伯当が守将の新文礼をあっさり討ち取りますが、その妻の東方玉梅に程咬金と王伯当を生け捕りされてしまいます。しかし彼女は捕虜にした王伯当にうっかり一目惚れしてしまい、彼と結婚させてくれるなら虹霓関を譲ってもいいと瓦崗寨側に交渉を持ちかけます。新文礼はDV夫だったようですし、その未亡人が敵将に鞍替えしてもしょうがないですね(棒読み)
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