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博客 金烏工房

中国史に関する書籍・映画・テレビ番組の感想などをつれづれに語るブログです。

『秀麗江山之長歌行』その4

2016年12月27日 | 中国歴史ドラマ
『秀麗江山之長歌行』第16~21話まで見ました。

陰麗華と劉秀は敵陣で総大将の王尋と王邑を殺害。その2人の前に最後に立ちはだかったのは、前回チラッと登場した猛獣軍団。前回出てきたのは史実リスペクトというより、山場を作るための伏線だったんですね (^_^;) で、象兵に苦戦を強いられ、負傷しながらも何とか撃破。昆陽の戦いを大勝利に導きます。

このドラマ、要所要所で陰麗華のアクション・シーンが目立ちますが、そもそも陰麗華の母親がカンフー・マスターという設定なので、母親がカンフー・マスターなら娘も幼い頃から稽古をつけてもらっているので強いはずということになり、甲冑を身につけて戦場で男に混じって戦ってもそれほど不自然ではないのですよね。ヒロインが何かと歴史上の重大事件に絡んできて悪目立ちするということで評判が悪かった大河の『江』なんかも、江の母親のお市の方がカンフー・マスターという設定にすれば良かったのではないかと思います。

時を同じくして劉縯も宛城を陥落。その宛城に劉玄らも入城し、漢軍の拠点に。王匡や朱鮪らは、軍功により劉縯・劉秀兄弟の声望が高まったのに危機感を覚えます。一方の劉縯側も、特に族弟の劉稷が思ったより恩賞を得られなかったということで、あからさまに劉玄に対して反抗的な態度をとるようになります。

そして劉秀が帰郷していた馮異のもとへ出張を命じられた隙に、劉玄の意を承けた張卬・李軼らが劉縯・劉稷を宮中におびき寄せて殺害。もちろんここで劉縯が最後の大立ち回りを披露するわけですが (^_^;) 事態を知った陰麗華は劉縯を救出しようと急ぎ宮中に駆けつけますが、一歩間に合わず、2人の遺体を引き取ることに……

悲嘆に暮れる南陽劉氏一族ですが、劉秀は敢えて劉玄らに対して隠忍自重の態度をとることにします。もちろん南陽劉氏のみなさんは叔父劉良、妹の伯姫をはじめとして自重なんてしません。しかしその劉秀も、劉玄が麗華を側室として迎える意向であることを知ると、居ても立ってもいられずに雨の中陰家に直行し、麗華に求婚。その様子を見た麗華の長兄・陰識は、以前から2人の仲を快く思っていなかったこともあって結婚を認めず、求婚を取り下げさせようと雨天の中ひたすら劉秀をぶん殴ります。


クール系イケメンの陰識。2人の結婚に反対することについては、当然彼なりの考えがあるわけですが……

それで結局陰識の承諾が得られないまま2人は婚礼を挙げますが、そこに間が悪く、序盤で麗華に婚約を解消をされたのを機に遊学していた鄧禹が帰還。


本作の四大イケメンの1人鄧禹。いつか器の大きな人間になって再び麗華に求婚をと考えていた彼ですが、傷心のあまり再び旅路へ。劉秀の配下となるのはいつになるでしょうか……

陰識の承諾は得られず、かつての親友は去り、南陽劉氏のみなさんからは「兄が死んだばかりなのに何を考えているのか」と非難され、しかも劉玄が婚礼の宴にやって来て劉秀に嫌味をぶつけ……ちょっと2人の愛に障壁が多すぎやしませんかw

そんな中、漢軍が新王朝の都である長安を攻め落とし、王莽がナレ死。(大河の『真田丸』でお馴染みのアレです)劉秀は遷都を図る劉玄の命により洛陽に入城することになりますが……
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『秀麗江山之長歌行』その3

2016年12月19日 | 中国歴史ドラマ
『秀麗江山之長歌行』第10~15話まで見ました。

劉縯・劉秀は一族を説き伏せて王莽打倒のための舂陵軍を結成し、王匡・朱鮪らを中心とする新市・平林軍と合流。平林軍には前回登場した劉玄も加わっております。この新市・平林軍合流時に劉秀が馬ではなく牛に乗っていますが、これは史実を踏まえたエピソード。

初陣では順調に勝利を飾った舂陵軍ですが、漢軍の主導権をめぐって劉縯らは王匡・朱鮪らと対立。そして小長安聚の戦いでは王莽側の岑彭によって大敗を喫し、劉縯・劉秀の兄弟劉仲や、鄧晨の妻となっていた姉の劉元など、多くの人が亡くなります。ここらへんで兄の陰識や嫡母の理解を得た陰麗華が援軍として舂陵軍に合流。本作では陰麗華は完全に「戦うヒロイン」となるようです。

王莽側へのリベンジとなる泚水・淯陽の戦いでは、逆に舂陵軍が大勝。ここで初めて自軍の敗報を耳にする皇帝王莽が登場するのですが……




『相愛穿梭千年』(邦題『皇后的男人』)の頃の若き日のイケメンぶりは見る影もなくなってますね (^_^;)

この大勝を承け、王匡・朱鮪は劉縯を牽制するために劉玄を皇帝として擁立。これが更始帝です。王・朱らは彼を傀儡にする気満々で、劉玄も泡を食って「自分はその器ではない」と辞退するふりをしますが、その実彼は傀儡に甘んじる気はさらさらないのでした。このドラマの劉玄は武功高手・知謀過人・野心家と三拍子揃った非常にいいキャラクターになっているので、『宮』など于正作品でこの手の厨二病系イケメンを好演したミッキー・ホーなど大物をキャスティングしても良かったと思いますね。

そして更始帝によって劉縯は大司徒、劉秀は太常・偏将軍に任官され、舂陵軍は体よく解体。前後して劉縯は宛城攻略へと出征、劉秀らも漢軍側が押さえた昆陽へと派兵されます。ここで劉秀は太学の同級生で、王莽側の官吏となっていた馮異を配下に収めます。


個人的にこの馮異と劉秀、そして同じく元太学の同級生で隠者となっている、馬天宇演じる厳子陵、麗華にふられて以来登場シーンがない鄧禹を、本作の四大イケメンと呼んでますw

この劉秀らが駐屯する昆陽を、王莽側が42万の大軍を発して攻め寄せてくるということで、劉秀らは敵軍の包囲網を突破して定陵の主将王安に救援を求めますが、王安が救援を渋ると見るやあっさり彼を殺害して定陵の兵員を接収。そして王莽側の官吏であったという経歴を生かして馮異を王莽側に寝返らせ、心ならずも劉秀に捕縛されたということで相手を信用させ、王莽側の2人の主将王尋と王邑の離間を謀りますが……


この昆陽の戦いで、王莽側の部隊として一瞬こういう猛獣軍団が登場しますが、これも史実を踏まえたもの(描写に誇張はあるかもしれません)。このドラマ、割と細かい所で史実へのリスペクトが見えるんですよね。
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『秀麗江山之長歌行』その2 歴史ドラマですか?いいえ武侠です

2016年12月13日 | 中国歴史ドラマ
『秀麗江山之長歌行』第4~9話まで見ました。

時は過ぎ去り、地皇三年(西暦22年)。劉秀の長兄・劉縯(字:伯升)が反王莽の動きをおこし、姉・劉元の夫の鄧晨、そして宛城の豪族の李通とともに新王朝打倒の盟約を結びます。


劉縯を演じるのは、ここのところ『青雲志』の曾書書の父親役など、古装に出まくっている宗峰岩。典型的な豪放磊落・英雄好漢キャラです。

劉秀と、そして陰麗華も男装して陰戟と名乗り、南陽劉氏のアジトで謀反の準備を手伝うことになります。ここらへんで陰麗華が劉秀・鄧禹とともに太学で学んでいた時に、父母が殺害されるさまを目撃し、そのショックから当時の記憶を失ってしまったという事情が少しずつ明らかになっていきます。彼女が女性であることを隠して活動していることを知っているのは劉秀だけなので、2人で何とか秘密を隠し通そうと四苦八苦するのですが、その様子を見た一族の劉稷は2人の仲が異様に良いということで、「断袖」の仲を疑ったりしています (^_^;)

そして劉秀らの妹・伯姫から目の敵にされる麗華。実は伯姫は鄧禹に片思いをしていたのですが、その鄧禹が麗華に婚約を解消されてしまったのをきっかけに、奮起して再び都の太学へと赴き、伯姫と会えなくなってしまったので、麗華を怨んでいるという次第。そして伯姫は陰戟が麗華であることを知ると、劉氏一族が集まる母親の誕生祝いの場で彼女が男装していたことを暴き立てますが、なぜか劉秀と麗華との関係が一族公認の仲となりますw そしてこの場面で劉秀の口から「仕官するなら執金吾、妻に娶らば陰麗華」という有名な言葉が飛び出します。

そこへ謀反の情報が官憲に漏れてしまい、劉秀と麗華は太守の甄阜に睨まれた李通を救うために宛城へ。麗華は同じく宛城の豪族である公孫氏に嫁いだ従姉・鄧嬋を救出して新野へと逃亡を謀りますが、妊娠して身重の状態で官兵に追われたことにより、麗華の腕の中で死んでいきます。それがきっかけで麗華に父母の死の記憶が甦ります。彼女が劉秀・鄧禹とともに男装して太学に通っていた当時、カンフーマスターだった麗華の母は、弟子の劉玄(後の更始帝)とともに王莽暗殺を図りますが、失敗。


そして麗華の父が母を助け出すも、彼の腕の中で息絶え、絶望した父親は彼女の遺体を抱えて乗っていた馬ごと谷底へとダイブ。これ、実は父親の方は生きているというパターンですよね?というか、イケメン推しのライト系歴史物だと思って見ていたら突然武侠物になったことに驚きを隠せません。

仲の良かった従姉の死に絶望して官兵に立ち向かえない麗華を救ったのは、師匠の死以来行方をくらましていた劉玄でした。


この人、劉玄も単なるボンクラキャラとして登場するかと思いきや、麗華の母の弟子で武功高手という衝撃の設定。この後の展開が俄然楽しみになってきました。が、ここでは麗華を救った後、陳牧らの「平林軍」に参加すると言い残してその場を立ち去ります。

麗華は更にその後でやってきた劉秀の次兄・劉仲に連れられて劉氏のアジトへと帰還というあたりで次回へ。劉家では、麗華を殷の婦好にたとえたりしてますが、婦好は甲骨文や殷墟婦好墓の発見によって20世紀になってからその存在が広く知られるようになった人物で、この時代の人々が婦好の存在を知るはずがない……ということはスルーしておきましょう (^_^;)
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『秀麗江山之長歌行』その1

2016年12月05日 | 中国歴史ドラマ
日本語版の放映が決定したということで、『秀麗江山之長歌行』を見始めました。今回は第1~3話まで鑑賞。

時は王莽の新王朝の時代。南陽新野の豪族・陰家のお嬢様である陰麗華は、墨家の術に長じ、自らハングライダーを制作して実験を試みるお転婆娘として知られておりました。


ヒロイン陰麗華を演じるのは古装ではお馴染みルビー・リン(林心如)。同じく南陽の豪族である鄧禹と婚約しておりますが、結婚に乗り気ではありません。というのは、彼女には気になる人がいるからなのですが……


それが後の後漢の光武帝劉秀。演じているのはこれまた古装でお馴染みの袁弘。ジャクギで十三阿哥を演じた人ですね。

劉秀はかつて鄧禹と、男装した陰麗華とともに3人で太学で勉学に励んだ仲です。劉秀も彼女のことを憎からず思っておりますが、どういうわけか彼女はその頃の記憶が曖昧で(今のところ、その頃に大病にかかって記憶が一部失われたと説明されています)、彼の面影がおぼろげにしか思い出せません。陰麗華の長兄陰識も、劉秀とは鄧氏を通じて親戚同士になるのですが(彼らの母親が鄧氏出身で、また劉秀の姉妹が鄧晨の妻となっている)、劉秀のことを快く思っていない様子。

そんなある日、従姉の鄧嬋とともに外出していた陰麗華が山賊に誘拐され、そのことを知った劉秀は居ても立ってもいられず、兄の劉縯とともに救出に向かいます。この事件がきっかけで陰麗華と劉秀は再会を果たしますが……

ということで、陰麗華の誘拐犯の一人が後の雲台二十八将の一人馬武だったり、別の場面で出てくる別の山賊が呉漢だったり(南陽はちょっと山賊多すぎですね)、陰麗華とともに逃亡した・丁柔が馮異に保護されたりと、ちょこちょこと後の建国の功臣たちが顔見せをしております。しかし劉秀以下、鄧禹・呉漢・馮異と、イケメンが目立ちますね (^_^;)

劉秀と学友同士だったのに記憶がおぼろげであるとか陰麗華の設定がどうも不自然なのは、もともとは現代人が王莽の時代にタイムスリップして陰麗華となるという設定だったのが改変されたためかもしれません……

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2016年11月に読んだ本

2016年12月01日 | 読書メーター
井伊氏サバイバル五〇〇年 (星海社新書)井伊氏サバイバル五〇〇年 (星海社新書)感想古代の在庁官人として出発した井伊氏が、戦国時代の国衆としての立場を経て大名となるまでの過程を描く。来年の大河の主役となる次郎法師こと直虎が、性別や井伊氏の系譜の中での位置づけが曖昧である点、直政が主君家康と秀吉との連絡を任された侍従として名を高めたこと、「徳川四天王」としての直政の武勇は関係が深かった黒田氏を通じて広められた点などを面白く読んだ。読了日:11月2日 著者:大石泰史

国際政治学をつかむ 新版 (テキストブックス[つかむ])国際政治学をつかむ 新版 (テキストブックス[つかむ])感想国際政治史、国際政治学の理論、しくみなどについて過不足なくまとめた入門書。第2章・第3章の理論やしくみについてはもう少し突っ込んだ議論を読みたかったが、それは次の段階の本というかそれぞれの各論に求めるべきか。読了日:11月4日 著者:村田晃嗣,君塚直隆,石川卓,栗栖薫子,秋山信将

中華思想の根源がわかる! 中国古代史入門 (歴史新書)中華思想の根源がわかる! 中国古代史入門 (歴史新書)感想「中国古代史入門」と銘打っているが、「論語」「諸子百家」「儒教」「三国志」など、個々のトピックの解説を中心とする構成。時代は殷から始まって隋唐あたりまでを対象としているが、西周や秦は軽く触れるのみで、かつ高校の教科書レベルの解説になってしまっているのが残念。この内容であれば、思想史に限定してまとめた方が良いものになったのではないか。読了日:11月5日 著者:

通貨の日本史 - 無文銀銭、富本銭から電子マネーまで (中公新書)通貨の日本史 - 無文銀銭、富本銭から電子マネーまで (中公新書)感想戦国期以降の展開がメインだが、古代・中世についても、朝廷が通貨に期待していたのは国家支払手段としての機能であり、民間も含めた一般的な交換手段としての機能は二の次とされていたことなど、重要な指摘がある。私札の発行を承けて藩札が発行されるようになるなど、通貨の歴史は民間のアイデアを政府が追認的に採用するというのが常であったということだが、「おわりに」で触れているように、電子マネーについてもそういう展開になりつつあるようだ。読了日:11月6日 著者:高木久史

古代書体論考古代書体論考感想隷書・篆書といった書体の名称の由来に関する考証が中心。それぞれ前漢末期の今文・古文の対立を背景として命名され、特に隷書は古文学派が今文によるテキストを貶めるために、「隷臣が使うような卑しい書体」という意味を込めて名づけたということだが、もしそうだとすれば、当の今文学派が隷書という名称をどのように受け止めていたのかが気になる。読了日:11月8日 著者:山元宣宏

現代日本外交史 - 冷戦後の模索、首相たちの決断 (中公新書)現代日本外交史 - 冷戦後の模索、首相たちの決断 (中公新書)感想湾岸戦争時の海部政権から、現在の第二次安倍政権までの外交を総ざらいする。関係者の証言を多く引用し、ドキュメンタリー調で読みやすい。個別のトピックで興味深いものは数多いが、中国や韓国との関係、沖縄の基地をめぐる問題などが通時的に追えるようになっているのも魅力。終章もこの四半世紀の日本の外交の良いまとめとなっている。日本だけでなく中国なども、外交がそれぞれの内政の動向と直結している様子がうかがわれ、国際政治と国内政治は切り離しては理解できないと感じた。読了日:11月10日 著者:宮城大蔵

「火附盗賊改」の正体 (集英社新書)「火附盗賊改」の正体 (集英社新書)感想ご多分に漏れず火附盗賊改と言えば鬼平というイメージしかなかったが、鬼平以外にも、鬼平とともに名火盗として語り継がれた中山勘解由、盗賊集団の大ボス日本左衛門と渡り合った徳山五兵衛など、印象的な人物が取り上げられている。鬼平についても、松平定信による冷淡な評価、誤認逮捕に対して補償を行ったことなど、意外な面について触れられている。前身の盗賊改が、盗賊集団の殺戮を目的とした実戦部隊の指揮者であったこと、火附盗賊改が基本的に在任期間が短く、幕閣へのポストであったことなど、制度面の解説も面白い。読了日:11月13日 著者:丹野顯

新・中華街 世界各地で〈華人社会〉は変貌する (講談社選書メチエ)新・中華街 世界各地で〈華人社会〉は変貌する (講談社選書メチエ)感想横浜・神戸など旧来の中華街と池袋などの新中華街との比較、観光地としての整備によって中国人の街としての「リアル」を失ってしまった旧中華街、世界の新旧中華街、故郷に錦を飾る華僑のあり方、日本人に「魔改造」されるまでもなく、自分たちの力で現地化していく華人の食、「莫談国事」から転換しつつある華人の政治参加等々、華僑・華人をめぐる面白い地誌・民族誌に仕上がっている。読了日:11月15日 著者:山下清海

裁判所ってどんなところ?: 司法の仕組みがわかる本 (ちくまプリマー新書)裁判所ってどんなところ?: 司法の仕組みがわかる本 (ちくまプリマー新書)感想裁判所がどんな(手続きで運営されている)ところなのかという話とともに、裁判所がどんな(理念によって動いている)ところなのかを解説した本。中学・高校の公民の補足説明的な内容だけでなく、現状への批判や提言も盛り込まれている。読了日:11月17日 著者:森炎

井伊直虎 女領主・山の民・悪党 (講談社現代新書)井伊直虎 女領主・山の民・悪党 (講談社現代新書)感想第一章「直虎の生涯」と第二章「直虎の正体―「山の民」「女性」「悪党」」の二部構成だが、第一章まででやめておけば良かったのにと思う。第二章は著者の思い入れが上滑りしているというか、なぜ直虎の周辺を『もののけ姫』の世界観と重ね合わせなければいけないのかよくわからない。研究者というより、時代小説家が書いた評伝という印象を受けた。読了日:11月19日 著者:夏目琢史

足利直義:下知、件のごとし (ミネルヴァ日本評伝選)足利直義:下知、件のごとし (ミネルヴァ日本評伝選)感想従来の謹厳実直な政治家としての足利直義の姿とともに、高師直の排除や、観応の擾乱の際に南朝への降伏という禁じ手を創出した点など、目的のために手段を選ばないという一面や、政治に無気力になった晩年なども描き出している。また、兄の尊氏についても、従来は躁鬱症だったのではないかともされていた彼の不可解な行動に一貫性を見出し、合理的な解釈を施しているのも注目される。直義個人の評伝というよりは尊氏・直義兄弟二人の歩みとして面白く読んだ。読了日:11月22日 著者:亀田俊和

贖罪のヨーロッパ - 中世修道院の祈りと書物 (中公新書)贖罪のヨーロッパ - 中世修道院の祈りと書物 (中公新書)感想5世紀からカロリング・ルネサンスの時代にかけての修道院の歴史。フランク国家の貴族門閥の形成と修道院との関係については、門閥単位で修道院を建設し、家門の中から院長候補となる修道士を送り込んだという話は、日本の豪族・貴族の氏寺や門跡を想起させる。また修道院で生産された写本については、巻子本から冊子形式への移行に伴って失われた文献も多いだろうということだが、中国では竹簡から紙への移行に伴って失われた文献がどの程度あるのか。他の地域の文化と比較するための素材として面白く読んだ。読了日:11月24日 著者:佐藤彰一

内藤湖南: 近代人文学の原点 (単行本)内藤湖南: 近代人文学の原点 (単行本)感想中国古代史の研究者による内藤湖南論だが、その方面の議論は第四章の3に見える程度である。第六章を丸々割いて、湖南による代筆文・代作文の問題や無署名文の存在と、それらの『内藤湖南全集』本体への収録及び「著作目録」への著録の基準が明確ではないという問題を論じているのが特徴か。本書では、「得失」で言えば内藤湖南の学の「得」について論じているが、「失」の部分、その学問の限界についも論じて欲しかった気がする。読了日:11月28日 著者:高木智見
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