博客 金烏工房

中国史に関する書籍・映画・テレビ番組の感想などをつれづれに語るブログです。

『琅琊榜』その8

2016年01月29日 | 中国歴史ドラマ
『琅琊榜』第43~48話まで見ました。

梅長蘇は宮廷の春の恒例行事の狩猟に同行することになり、初めて靖王の生母静貴妃(妃から昇格)と一対一で対面。彼女に対して自分の正体が林殊であると認めざるを得なくなります。靖王もさすがに梅長蘇の正体を不審に思い始めたようですが……?

一方、誉王は渋る皇后を説き伏せて謀反を決行。梁帝らが滞在している九安山を包囲します。靖王が援軍を求めに包囲を突破して附近の紀城へと向かい、その間蒙摯率いる僅かな数の禁軍だけで誉王の攻勢をしのぎ、さすがにもうそれも限界かと思われた最中に、靖王の使者から危機を知らされた霓凰郡主率いる援軍が駆けつけます。そして靖王も誉王を生け捕りし、見事に謀反を鎮圧。

で、一同九安山を引き揚げようという段になり、靖王の配下が謎のUMAというか野人を捕獲。


全身白髪の毛むくじゃらで人語を話せないUMAの正体は、13年前に戦死したはずの赤焔軍の一員、そして夏冬の亡夫でもある聶鋒でした。サブヒロインの死んだはずの恋人で、かつ獣のような状態になっているということで、于正ドラマ『宮廷の泪 山河の恋』の熊人間さんこと卓林哥哥のポジションですね。

聶鋒の治療のため、第1話冒頭で登場した琅琊閣の主人藺晨が駆けつけますが、彼の口から、聶鋒が白髪毛むくじゃらで言葉を話せないのは、「火寒の毒」の症状であり、かつて梅嶺から逃れてきた梅長蘇もこの「火寒の毒」に罹患しており、彼の治療を受けたことが明らかとなります。つまり、イケメンの梅長蘇にも一時期熊人間さんだった時期があるということになりますね。

「火寒の毒」の治療法は二つあり、一つは白髪が取れ、言語能力を回復しますが、容貌が一変し、虚弱体質となり、寿命も極端に短くなります。もう一つの治療法は白髪が取れず、言語能力も回復しませんが、天寿を全うできます。無論、梅長蘇が選んだのは前者の治療法。赤焔軍の無実を明らかにし、親友靖王を皇位に即けるためにリスクを厭わずこの治療法を選んだ彼ですが、残された時間はもうほとんどない模様。そして夏冬と再会した聶鋒は、後者の治療法を選択することに。

宮廷では誉王が獄中で自害し、彼の養母であった言氏が廃后となり、そしていよいよ靖王が太子に冊立されます。太子妃の選定も行われ、着々と後継者の座を固めつつありますが、一方で脱獄した夏江が一矢報いようと最後の悪あがきを画策し……

今回静貴妃に続いて夏冬も梅長蘇の正体を察知してしまいますが、身の回りの人間が徐々に正体に気付くあたり、名探偵コナンよりリアルですw 
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『琅琊榜』その7

2016年01月17日 | 中国歴史ドラマ

『琅琊榜』第37~42話まで見ました。

衛崢の身柄強奪の首謀者として夏江に訊問されることになった梅長蘇。ここで「烏金丸」という毒薬、すなわち7日後に毒が効いてくるので、それまで夏江に大人しく従って解毒薬を貰わなきゃいけないという、武侠物によくあるアレを飲まされてしまいます。

衛崢の一件を、靖王を陥れるための陰謀ではないかと疑い始めていた梁帝ですが、夏冬が師匠夏江の命で、衛崢の一件で裏工作に励んでいたことを自供し、梁帝の猜疑心が爆発。実のところ衛崢に関する裏工作は、(失敗したとは言え)彼を救出しようとする靖王や梅長蘇を煙に巻くためのものだったのですが、夏冬の方も師匠に色々含むところがあるので、その点は敢えて説明せず、さりげなく夏江が特務機関の長としての御法度、誉王と組んで靖王を陥れようと後継者争いに関与したという印象を受けるように仕向けます。

で、梁帝の命を受けた蒙摯が懸鏡司を封鎖。夏江は一転罪人として投獄。蘇宅に戻った梅長蘇はかかりつけの神医晏大夫のもとで「烏金丸」の解毒治療を受けます。一方、靖王は母静妃のもとで、静妃が皇后に拘禁された一件で、靖王が梅長蘇に不信感を抱くよう仕向けられたのは、誉王側の間者にしわざであった、身柄を押さえられた間者自身から告白されます。こうやって息子と梅長蘇の関係修復を画策するあたり、静妃は良妻賢母と言うより、自分の好きなカップリングを見守る腐女子の鑑ではないかという気がしてきますが (^_^;)

一方、誉王はと言えば、夏江と結託しているようだということで、やはり父帝の不信感を買っていたうえ、いつぞやの太子派の火薬庫爆破の一件で弾劾され、太子以外の皇子の中の最高格である七珠親王から双珠親王へと降格処分となり、失意に沈みます。

そこへ、滑族出身の女参謀秦般弱から、「あなたには実は滑族の血が流れているのです!」という驚愕の告白。幼い頃に生母と死別し、言皇后の養子格として育てられた誉王は、自分の身の上のことはまったく知らされていなかったのですが、実は彼の生母は梁に滅ぼされた滑族の玲瓏公主(秦般弱の師璇璣公主の姉)なのでした。そしてその滑族を直接滅ぼしたのは、梁帝の命を受けた赤焔軍ということで、梅長蘇=赤焔軍の若元帥林殊と滑族との因縁も見えてきました。

当然生母の身の上のことは梁帝も承知しているわけで、自分はもとの太子=献王や靖王に対する当て馬にすぎず、どう頑張っても太子になれないと思い込んだ誉王は、三月の恒例行事の春猟の機会を利用し、謀反を画策しますが……
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Netflixドラマ『マルコ・ポーロ』その2(完)

2016年01月11日 | その他映像作品
Netflixドラマ『マルコ・ポーロ』の後編です。第6~最終10話まで鑑賞。

後編のメインは襄陽攻略戦。アメドラだけあって、さすがにいつもの横店とか神雕侠侶城にある襄陽とは雰囲気が違いますね。

襄陽の城内では皇太后主導で賈似道を宰相から外そうという動きが進んでいましたが、辞職承認の押印を迫る新任の宰相と賈似道との間でカンフーバトルが!(; ・`д・´) そこへフビライから賈似道暗殺の命を受けて城内に潜入したマルコと百眼道長が突撃し、その隙を突いて賈似道が新任の宰相を殺害。ひょっとして2人が襄陽にやって来ない方がモンゴル側にとって都合良く事態が運んだのではないでしょうか……

暗殺失敗を承けて、フビライ自ら襄陽攻略に出征。暗殺失敗の挽回を図り、城内に潜入した際に防備が手薄だった所を攻めるよう進言するマルコでしたが、実はそれは賈似道の仕掛けた罠なのでありました。彼はカマキリの動きからカンフーだけでなく兵法も学び取っていた模様。で、敗戦の責任と南宋側との通謀の疑いで投獄されてしまうマルコ。

しかし実はマルコではなく自分が裏切り者だったという宰相ユースフの告白により通謀の疑いが晴れ、(前編で出てきたアサシンもこの人がカンバリクに手引きしたということなんでしょうか?)今度はアレクサンドロス大王の故事に倣い、投石機を使用して襄陽の壁を崩すことを進言。それ以前にもユースフが賈似道と対面した際にローマ皇帝クラウディウスのたとえを出したりと、歴史物としてグローバルというかカオスな作品です。

そして賈似道の秘密兵器のアジア式銃の猛攻をかわして城内に潜入し、百眼道長と賈似道との最終決戦が!!……制作スタッフの方も視聴者が本当に見たいものをちゃんと心得ていますね。

好評につきシーズン2の制作も決定とのことですが、つなぎとして30分のスピン・オフ作品『マルコ・ポーロ 百の眼』が配信されていますが、サブタイトルからお察しの通り、主役はこの人です!!


……師匠、弟子をさしおいて頑張りすぎでしょう (^_^;) 

更にTwitterでのやりとりで、「百の眼」というのは百眼→伯顔ということで、フビライの重臣で南宋征服の立役者バヤンを投影した人物ではないかという恐ろしい指摘がありました。『東方見聞録』でもバヤンのことを示しているとされる、「百の眼の怪物が南宋を滅ぼした」という話が記述されているとのよし。何にせよシーズン2が今から楽しみですw
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『琅琊榜』その6

2016年01月10日 | 中国歴史ドラマ
『琅琊榜』第31~36話まで見ました。

太皇太后の喪に服するため、梁帝は宮廷を離れて側近たちとともにしばらく陵墓に籠もりきりに。靖王も被災地の振恤のために都を離れます。その隙を突いて誉王側が暗躍を開始。まず梁帝に差し出すための薬草に毒草が含まれていたと言いがかりをつけ、皇后が静妃を拘禁。静妃は元々亡き宸妃に仕えていた医女で、後宮に入ってからも梁帝にマッサージとか薬草の処方などを行っていたんですね。

そして林殊(=梅長蘇)の副将で、梅長蘇と同じく崖から落ちて死んでいなかった衛崢が潜伏先から誘き出されて懸鏡司により捕縛・拘禁され、死罪を待つことに。おまけに秦般弱の仕掛けたハニトラが発動し、江左盟の諜報活動の拠点であった妙音坊が壊滅。このピンチに肝心の梅長蘇は重病で動けず……というか、かかりつけの晏大夫の意向によりピンチの情報すら知らされず。

そうこうしているうちに梁帝と靖王が帰還。静妃の一件を知った梁帝は、皇后を叱責して静妃を解放。しかし事の次第を知らされた靖王の気持ちは収まらず、母妃の危機に何もしなかったということで、梅長蘇に不信感を抱き始めます。そう、この一件は誉王側による手の込んだ離間策なわけですね。そして「赤焔軍」の一員であった衛崢を救おうと、まんまと夏江や誉王の口車に乗り、梁帝の面前で「赤焔案」の再審を求め、逆鱗に触れてしまいます。あの思慮深い母親のもとで、どうして靖王みたいなアホの子が育ってしまうのでしょうか……

なおも衛崢救出を図ろうとする靖王に対し、梅長蘇は病を押して決死の説得。「没脳子」(アホ)とか随分酷い言葉も投げつけたりしてますが、梅長蘇ではなく、「中の人」の林殊が親友に向けるような言葉で訴えかけたのが功を奏したのか、ようやく靖王も彼の言葉を聞き入れ、二人の友情が戻ります。やっぱりこれ、BLドラマなんじゃ……

この間にひっそり太子が廃されて献王となり、靖王はまた格が上がって七珠親王に。梁帝の靖王に対する評価はまだ下がっていなかった模様。実のところ、梁帝は「赤焔案」がきっかけで宸妃(祁王の母で林殊=梅長蘇の叔母)を死なせてしまったことを後悔すらしているようなんですね。

そして二年目の年越しを迎え、梅長蘇が衛崢救出作戦を決行。靖王を矢面に立たせず、あくまで無関係という体裁をとります。作戦の一環として梅長蘇の協力者となった言侯が、夏江の別れた妻子の消息がわかったということで別邸に夏江らを呼び寄せ、懸鏡司からの引き離しを図ります。もちろん夏江の方もそこはお見通しなのですが、考えあって敢えて敵の手に乗ることに。それで夏江の妻子の身の上が語られます。そもそも夏江の妻は同門の妹弟子だったのですが、夫婦で妹分として保護していた猾族の璇璣公主(すなわち秦般弱らの師匠)と不倫の中になり、怒った夫人が子供を連れて別離したという次第。なんやこのクズ(驚愕)


見てくれは渋いおっさんの夏江ですが、私生活は(察し)のありさまだった模様……

で、5年前に旧知の言侯に近況を知らせる手紙を送ったきりで、妻子とも病没してしまったとのこと。「5年前に女房から手紙が届いてるなら、なぜ今までワシに知らせなかった!」とブチ切れる夏江に対して、「手紙の宛先はてめーじゃなくてオレなんだよ!手紙にもてめーに消息を知らせろとは一言も書いてないだろ!」と逆ギレする言侯w

肝心の衛崢の救出はと言えば、夏江も彼の身柄を別の所に移すなどの処置をとっていたのですが、この言侯からの呼び出しも含めて梅長蘇が二重三重に仕掛けた心理トラップに引っかかり、江左盟側に隠し場所を知られたうえにむざむざと衛崢の身柄を奪われてしまいます。それで慌てて梁帝に靖王が衛崢救出の黒幕だと訴え出ますが……
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Netflixドラマ『マルコ・ポーロ』その1

2016年01月04日 | その他映像作品
年末からNetflixオリジナルドラマ『マルコ・ポーロ』を見始めました。今回は前半第1~5話まで鑑賞。

18 年間父と離れてベネチアで育ち、生まれて初めて会った父とともにフビライの宮廷にやって来たと思ったら、シルク・ロードでの商業権と引き替えに、人質替わりに宮廷に置き去りになってしまったマルコでしたが……

ということで、フビライはもちろん、皇后チャブイ、皇太子チンキムや財務官のアフマド、南宋の宰相賈似道といった実在の人物が割と登場し、チンキムが出来のいい皇太子と見せかけて実はそれほどでもないといったあたりよく描けてるなということで、本格的な歴史物なのかなと思いきや……


顔からは目立った印象がないこの賈似道さんですが、第3話で実は蟷螂拳の達人だったという衝撃的な事実が明らかとなります。史実でも「蟋蟀宰相」のあだ名があり、闘蟋に凝っていたことで知られていますが、ドラマでもカマキリやコオロギで遊んでいるシーンがまま見られます。しかしそれは蟷螂拳の修業の一環だったのです!!(; ・`д・´)

おまけに妹はハニー・トラップの専門家で、本作における脱ぎ要員です。当初は南宋皇帝の側室でしたが、皇帝の没後は兄によってフビライのもとに送られます。


そしてもう一人インパクトの強い登場人物はこちら。フビライに仕える盲目の武当派道士で、マルコのカンフーの師匠となる通称「百の眼」です。ここでは取り敢えず百眼道長と読んでおきましょう。第1話のラストでは、マルコがフビライのハーレムに連れ込まれて裸の美女たちに誘惑されるシーンと、この百眼道長が道場でコブラを相手に修業に励んでいるシーンが交互に挿入され、頭がクラクラしてきます……

そして今回のラスト第5話。マルコ・ホーロと言えば『東方見聞録』、『東方見聞録』と言えば「山の老人」、「山の老人」と言えばアサシンということで、アサシンの襲撃来ましたw 色々と視聴者の期待を裏切らないドラマです (^_^;)
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『琅琊榜』その5

2016年01月03日 | 中国歴史ドラマ
『琅琊榜』第25~30話まで見ました。

太皇太后の喪中にも関わらず、自らの宮殿で派手に宴会を繰り広げているということで梁帝の怒りを買い、太子は幽閉処分に。これで後継者争いは誉王の天下かと思いきや、靖王が郡王から親王に昇格し、更に寧国侯謝玉の管轄だった巡防営(都の防衛部隊)が靖王の手に帰したことで、靖王が新たな競争相手に。そしてこれまで誉王の相談役として振る舞っていた梅長蘇が、実は靖王を推していたことにも気付いてしまいます。


誉王蕭景桓を演じるのは、新版『三国』の周瑜などでお馴染みの黄維徳(ビクター・ホァン)。『三国』の時と比べてだいぶ老けました。


そして序盤から誉王の軍師をつとめるのが、こちら秦般弱。梁に滅ぼされた猾族の出身という設定。実のところここまで梅長蘇の掌の上で踊らされているという印象が強い人物ですが……

その秦般弱が有力者の邸宅等に張り巡らせていた情報網が、江左盟によって半壊に追い込まれ、たまりかねた秦般弱は姉弟子の隽娘に助けを求めます。彼女を江左盟のメンバーの一人童路に接近させて、いわゆるハニー・トラップを仕掛けようとしますが……

一方、梅長蘇は余興で地誌『翔地記』に批注を付けていたところ、それが靖王の目に留まって貸し出すことになりますが、その批注にうっかり母親に対する避諱を施していたことで、そこから自分の正体がバレないかと不安になります。幸い察しの悪い靖王は気付きませんでしたが、その靖王から『翔地記』を又借りした母親の静妃は、梅長蘇の正体が息子の幼馴染み林殊であることに気付いてしまった様子。

しかし静妃が息子に「何があっても蘇先生を信じるのよ?」と諭したり、息子に梅長蘇への手作りお菓子の差し入れを持たせてやったりしているのを見ると、何だか自分の推しカップルを成就させようとする腐女子のように見えてきます。

誉王は、例年自分か太子が担っていた被災地への振恤役(これが格好の汚職の温床となっていた模様)が靖王に取られてしまうと、秦般弱の助言を受け入れ、靖王を追い落とすため懸鏡司の首尊夏江と結ぶことを決意。夏江は13年前の「赤焔案」に靖王を巻き込もうと進言し……
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2015年12月に読んだ本

2016年01月01日 | 読書メーター
儒教とは何か 増補版 (中公新書)儒教とは何か 増補版 (中公新書)感想増補版が出たのを期に再読。これまで主に議論や研究の対象となってきた儒教の礼教性に対して、宗教性を強調するのが本書の特色であるが、「当時の儒教知識人が、霊魂の存在を認める自分たちの宗教性を忘れ」とか「儒教知識人の大いなる儒教誤解」といった記述を見ると、当時の人々に忘れられ、誤解される儒教の宗教性とは一体何なんだろうかという疑問も生じる。読了日:12月1日 著者:加地伸行
つながりの歴史学つながりの歴史学感想中国古代史・日本中世史・日本近世史・西洋近代史の研究者が、それぞれの分野の研究史と各論とをそれぞれ担当し、連結させるという構成。テーマとなっている「つながり」とのつながりは少々強引かなと。読了日:12月4日 著者:本田毅彦,木村茂光,柿沼陽平,山本英貴
「昭和天皇実録」を読む (岩波新書)「昭和天皇実録」を読む (岩波新書)感想既に同種の実録関連本もいくつか出ているが、本書では同じく原氏が岩波新書から出した『昭和天皇』の続編という番外編という位置づけから、宮中祭祀に関して、また昭和天皇と母の貞明皇后との関係、カトリックやローマ教皇との関係に重点を置いている。終戦直後に実際に昭和天皇がカトリックに改宗していたとしたら、現在の日本にどういう影響を及ぼしていただろうか?読了日:12月6日 著者:原武史
代議制民主主義 - 「民意」と「政治家」を問い直す (中公新書)代議制民主主義 - 「民意」と「政治家」を問い直す (中公新書)感想「代議制民主主義」と題しているが、議会制度・選挙制度だけでなく、大統領などの執政制度も含めて検討している。日本の代議制民主主義もおおむね世界的な傾向と歩調を合わせており、二院制の国会のねじれ、有権者の地方議会への不審と地方首長の突出など、日本が抱える問題は、世界各国が共通して抱えている問題ということになるようである。代議制民主主義の問題点に関して目新しい解決案を提示しているわけではないが、今の問題とその背景をうまく整理していると思う。読了日:12月9日 著者:待鳥聡史
中国学の散歩道―独り読む中国学入門 (研文選書)中国学の散歩道―独り読む中国学入門 (研文選書)感想加地氏の学術エッセーというか雑文集。個人的に考えさせられたのは、伝世文献での『詩経』の引用は、特定の詩篇や詩句に限られているのではないかとする第三章の「『詩経』からの引用」と、現代中国語の発音で漢詩や漢文を音読することの非を説く第八章の「漢詩指導についての覚書」。第九章の講演録では、中国学が資料の調査と分析を重視する分野であると説くが、別の言い方をすると、「ブラック体制」が養われる分野ということになるだろうか。読了日:12月11日 著者:加地伸行
真田四代と信繁 (平凡社新書)真田四代と信繁 (平凡社新書)感想信幸・信繁兄弟の父昌幸に関して、信玄のもとで武藤家の養子となるなど、武田氏の譜代格として遇される一方で、兄信綱の氏を承けて真田家を継承する際には信綱側から文書が譲渡されないなど、複雑な立場にあったと指摘。その他、信幸と三成とのつながり、大谷吉継がハンセン病ではなかったと考えられること、秀吉死後の淀殿が秀頼の母として、当時一般的に認められていた後家権を発動したと見られるといった、真田家の周辺人物や豊臣政権に関する指摘で面白いと感じた点があった。読了日:12月15日 著者:丸島和洋
漢文入門 (学芸文庫)漢文入門 (学芸文庫)感想入門とあるが、無論テキストとか参考書的な意味での入門書ではない。漢文とは何か、古代漢語による文献は日本でどうして漢文として、現在のような形式で読まれるようになったのかを解説した書である。本書によって現代漢語がわかれば漢文を読解することができるという意見には問題があるのはもちろんとして、一方で訓読形式で古代漢語による文献を読むという手法にも問題があるのではないかという疑問を抱かされる。読了日:12月18日 著者:前野直彬
福沢諭吉の朝鮮 日朝清関係のなかの「脱亜」 (講談社選書メチエ)福沢諭吉の朝鮮 日朝清関係のなかの「脱亜」 (講談社選書メチエ)感想福沢諭吉の朝鮮論と言えば「脱亜論」が知られるが、それ以外の朝鮮関係の社説はどういう内容で、どういう背景のもとで書かれたのか、そして福沢自身と朝鮮人との関わりはどのようなものだったのかを探る。当時慶應義塾に朝鮮からの留学生が相当数存在し、兪吉濬のように福沢の息子ともどもの付き合いとなった者や、祖国の政府高官となった者も存在するということで、当事者として、実際に交友を持った朝鮮人や、日朝清三ヵ国間の関係に散々振り回された上での「脱亜論」ということになりそうだ。読了日:12月21日 著者:月脚達彦
つくられた縄文時代: 日本文化の原像を探る (新潮選書)つくられた縄文時代: 日本文化の原像を探る (新潮選書)感想縄文時代・弥生時代という名称が歴史教科書に採用されたのは戦後になってからだったという衝撃的な指摘からはじまる縄文時代研究史。縄文時代・弥生時代のような形での時代区分は外国では類例がないガラパゴスな区分ではあるものの、ガラパゴスな分だけ使い勝手がいいという困った状況に陥っているようだ。しかしであるとすれば、実は縄文時代には既に農耕が始まっていたというような指摘や議論が何だか馬鹿馬鹿しく見えてくるが……読了日:12月22日 著者:山田康弘
蘇我氏 ― 古代豪族の興亡 (中公新書)蘇我氏 ― 古代豪族の興亡 (中公新書)感想葛城集団の中心氏族として、当初から朝廷で強い勢力を誇った蘇我氏が、大化の改新で本宗家を滅ぼされ、奈良・平安時代を経て中・下級貴族へと没落していくまでの過程を概観。蘇我氏の「その後」に相当の紙幅を割いているのが本書の特徴。中・下級貴族への没落が蘇我氏のみならず、物部氏の子孫の石上氏・大伴(伴)氏・橘氏など、古代氏族に共通した展開であるという点が興味深い。読了日:12月24日 著者:倉本一宏
今すぐ中国人と友達になり、恋人になり、中国で人生を変える本 (星海社新書)今すぐ中国人と友達になり、恋人になり、中国で人生を変える本 (星海社新書)感想本書が他の中国・中国人理解本と異なるのは、現実に中国で暮らすことを前提としている点。中国では酒を飲めないのは恥ではなく、むしろそれほど飲めないのに中途半端に飲んでしまうことの方が問題であるとか、中国ではエンタメ関係の流行は何でも規制されるとか、一人っ子政策下では女の子を産む方が勝ち組だとか、重要な指摘が盛り込まれている。最も重要な指摘は、あとがきにある、内戦がおころうと何があろうと、(当たり前だが)中国人は絶対にいなくならないということ。読了日:12月26日 著者:井上純一
ラーメンの語られざる歴史ラーメンの語られざる歴史感想アメリカ人研究者による、ラーメンをめぐる日本社会・文化史。元々中国・台湾系移民の手によっていたラーメンが、中国色を消して日本の国民食となっていく過程、(そもそもラーメンという名称自体、支那そばという名称を嫌った台湾系店主が使い出した呼び方とのこと)終戦直後のアメリカによる食料援助(実際は無償ではなく日本側が対価を払っていたが)とラーメンとの関係、そして台湾系移民で、アメリカからの余剰小麦の利用法としてチキンラーメンの売り込みを図ったと、日清食品の創業者安藤百福の業績を歴史的に位置づけている点が読みどころ。読了日:12月27日 著者:ジョージソルト
香港 中国と向き合う自由都市 (岩波新書)香港 中国と向き合う自由都市 (岩波新書)感想戦後、大陸からの難民の流入によって急激に人口が膨れあがったイギリス統治下の香港。難民たちにとってあくまで仮住まいのはずだった土地が、中国への返還決定を受けて、急激にイギリスによって民主化改革が進められ、急激に「香港人」としての意識が形成され、急激に副題にある「中国と向き合う自由都市」となっていく過程を描く。近年話題となった「雨傘運動」についても多くの紙幅を割き、ジャッキー・チェン、金庸といったポップカルチャーについても言及する。香港でのあり方を通じて、日本の難民やデモに対する新たな見方を迫る好著。読了日:12月29日 著者:倉田徹,張暋(チョウイクマン)
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