博客 金烏工房

中国史に関する書籍・映画・テレビ番組の感想などをつれづれに語るブログです。

『大侠霍元甲』その3

2020年09月30日 | 武侠ドラマ
『大侠霍元甲』第11~15話まで見ました。


霍元甲は自分たちの無念を晴らし、アヘンを焼却したということで、寿陽県の老百姓からは「銷煙大侠」と称えられます。実のところはアヘンを燃やしたのは彼ではなく沙狼なのですが……

その沙狼たちとは、「土匪と関係を保つのは御身にとってよくない」という魏知県の忠告もあり、距離を取ろうとします。しかし霍元甲を慕う沙燕は諦めきれず、弟子にしてもらおうと一行の後を追います。彼女が山中で虎に襲われたこともあり、東光県まで同行することになります。この時代でもやはり『水滸伝』よろしく山中では虎が出るものだったんでしょうか。

さて、東光県の我が家が近づくと、知県の薛学を疑う霍元甲は、まずは二番弟子の高奇と沙燕を霍家に派遣し、自分たちは役所などで様子を探ることになります。


女子供しか残っていない霍家。東光県側でアヘンの運搬を仕込んでいた胡六が、霍元甲によって陰謀が露見したことを怨み、やはり霍元甲たちとは因縁のある「蒼山五虎」とともに霍家を襲撃。彼らを撃退しようと、まだ子供だからと留守を託された五番弟子小伍が重傷を負わされつつ奮戦します。そこへ高奇と沙燕が帰還し、胡六たちを殺害。騒ぎの中で霍元甲の子を宿していた王雲影が産気づいてしまい、彼女に複雑な感情を抱く沙燕が出産を手助けすることになります。

そうこうしているうちに霍元甲たちも帰還。家族や、新たに生まれた我が子東覚と対面します。薛学ですが、アヘンの一件は下役の胡六たちのやったことで本人はあずかり知らぬことだったということで一件落着とします。お詫びと出産のご祝儀代わりと、霍元甲に天津の租界へ徽宗の書画の運送を依頼します。楽な仕事で運送料を儲けさせてやろうという配慮です。またも官鏢の請け負いということで少々嫌な予感がしますが、霍元甲は小伍を連れ立って天津の租界へと出立。その間に霍家は天津の霍家邸宅へと引っ越し。霍元甲の欽犯の汚名が晴らされたということで、元の家に戻れるようになったのです。

届け先にたどり着いた霍元甲&小伍ですが、待ち受けていたのは呂四鷹。徽宗の書画というのは朝廷への叛意を記した詩。やはり薛学は食わせ者だったようです…… そして師匠を逃すため、胡六の襲撃から生き延びた小伍も今度は壮絶な死を遂げてしまいます……

霍元甲はフランス兵に捉えられ、武功を見込まれてボクシングの心得があるフランス領事ベルトランに拘留されます。ここで霍元甲の身柄引き渡しを談判に来た呂四鷹と勝負をすることになり、散々に打ち破ります。


呂四鷹は腹立ち紛れに、天津の霍家を夜な夜な焼き討ちにしようとしますが、事情を知って駆けつけた農頸蓀の差配により撃退。ここで東光県の役所に忍び込んだ沙燕が、色々悪あがきしようとする薛学を殺害。アヘンの件も薛学が仕込んだということで、やはり食わせ者だったようです……

農頸蓀と黄文発はベルトランに接触し、霍元甲の釈放を求めますが、清朝の官吏である呂四鷹が彼の身柄を欲しがっているということで、彼より上位の大官を味方に付けろと即時釈放を拒絶。ベルトランは霍元甲にはフランスへの亡命を薦めます。そして王雲影は夫の釈放を勝ち取るため、わずかな伴を連れて北京に談判に向かい……

血気にはやる二番弟子高奇が力ずくで押し入って師匠を助け出そうと言い出した際に、農頸蓀が「私と勝負して勝ったら好きにしろ」と彼と手合わせし、サッとピストルを頭に突きつけて、力ずくで押し入った所でこうなるだけだぞ?と教え諭す場面が印象的です。どこまで意図してるかはわかりませんが、武侠の世界にも確実に西洋近代文明というかウェスタンインパクトが及んでおり、従来の武林の論理ではどうにもならないということを示す良い演出です。
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『大侠霍元甲』その2

2020年09月25日 | 武侠ドラマ
『大侠霍元甲』第6~10話まで見ました。


弟子たちと農頸蓀らに救出された霍元甲は、母親、兄嫁一家、そして新妻王雲影とともに山中の陋屋で隠れ住むことになります。王雲影を演じるのは、『蘭陵王』でのトラウマ演技が印象的な毛林林。


一家丸ごとお尋ね者の身で自由に街に出て行けず、食糧にも事欠く有様ということで、兄嫁からの風当たりが辛く、居候の弟子たちも肩身の狭い思いをします。画像の左から二番弟子の高奇、三番弟子の黄文発、四番弟子の許大有。弟子にはこの他に一番弟子の劉振声と、五番弟子でまだ子供の小伍がいます。

霍元甲は断腸の思いで同居の弟子のうち高奇、黄文発、許大有の3人に霍家に伝わる拳譜を与えて下山させますが、この3人、麓の東光県で鏢局のアルバイトをしてトラブルを引き起こし、山に戻ってきます…… 

霍元甲自らその尻拭いに乗り出し、その過程で東光県の知県薛学の知遇を得て、師弟一同で寿陽県まで官鏢の運送を請け負うことになります。しかしその途中の十三里崗で山賊の罠にかかって積み荷を奪われ、アジトへと連行。




山賊のボスの沙狼・沙燕兄妹。ともに腕に覚えありです。

この2人、王五と霍元甲を慕っているらしく、相手が霍元甲とわかると「お噂はかねがね」モードとなり、釈放されます。しかし実は積み荷の中身がアヘンだったということで兄妹2人して下山し、霍元甲を襲撃。忙しい兄妹です (^_^;) 薛学は清官と見せかけてとんだ食わせ者だったのでしょうか?

しかし積み荷はもう寿陽県の役所に引き渡した後。霍元甲は沙兄妹を説得し、取り敢えず県に訴え出ますが、県側は時間稼ぎをして積み荷を薬草に入れ替え、虚偽の訴えをしたということで霍元甲を棒叩きの刑に処します。このあたり10年ぶりぐらいに頭の悪い武侠を見ている感があり、なかなか辛いです……

寿陽県の魏知県が事件の黒幕であるかに思われましたが、意外にも彼は清官で実情を知らず、その部下の侯典史が東光県側と結託して仕出かした悪事の模様。霍元甲を証拠を積み重ねて自分たちの無実を晴らそうとしますが…… ということで良くも悪くも2000年代武侠のノリですw
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『民初奇人伝』その7(完)

2020年09月21日 | 武侠ドラマ
『民初奇人伝』第31~最終34話まで見ました。


華民初と鍾瑶の結婚式はいわゆる偽装で、結婚式を開いて方遠極一味をおびき出そうという計画。しかしその鍾瑶と方遠極は実は結託しており、方遠極が乗り込んでくると、彼女は民初たちに新八行側に着くことを宣言。諦聴行で保管されていた「万山河絵巻」も方遠極のもとに…… 

ショックを受けた民初は昏倒しますが、これも実は二人の計画のうちなのでした。まあ予想通りの展開なんですが、こういうのは好きです (^_^;)

方遠極が鍾瑶を自陣営に引き入れようとしたのは、諦聴行だけは対抗行首を立てられず、彼女でなければその情報網を管理できないからなのですが、鍾瑶の外八行離脱により「地蔵令」が発令され、民初が諦聴行の暫定トップに。結局情報網は方遠極の手に渡りません。これも無論計画のうちです。

そして鍾瑶は方遠極と華諭之の離間を図りますが、ここらへんで彼女の態度にしびれを切らせて方遠極が彼女を人質に取り、民初をおびき寄せます。「十行者絵巻」と「万山河絵巻」に隠されたお宝の秘密を探るには、易陽師の血を引く男女2人の血、すなわち民初と希水の血が必要とのこと。2人は方遠極のもとに向かい、最終決戦に臨みます。その頃、金綉娘、花谷、柯書、一方ら外八行の面々も、新八行の行首たちと決戦を繰り広げており……

【総括】
ということで詳細は略しますが、最後まで騙し騙されが続きます。北京→昆明→広州→上海とポンポン舞台を移しつつ快調に展開してきましたが、上海編で少し息切れしてきたかなという頃合いで幕引きとなりました。全34話と中編程度の尺ですが、ダレ場が続く手前でうまく話をまとめたという感じです。近代を迎えて江湖に生きる異能の士たちを隠退させるというテーマも、最後に絡んでくる「清朝復興の夢」とうまく噛み合っているように思います。

近代を迎えた江湖の士というテーマは、同時進行で見始めた『大侠霍元甲』とも共通するのですが、こちらはどういう展開になっていくのでしょうか?
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『大侠霍元甲』その1

2020年09月18日 | 武侠ドラマ
『民初奇人伝』と並行して趙文卓(チウマンチェク)主演『大侠霍元甲』を見始めました。今回は全45話中第1~5話まで鑑賞。

時は清末1898年、戊戌の政変勃発直後。霍元甲&弟子ーズは武林で名高い「大刀」王五との決闘を求めて天津から北京にやって来ますが、王五は自分がボディガードを務める譚嗣同をどう逃亡させるかで頭がいっぱいで、決闘どころではないのでした……


ということで趙文卓演じる霍元甲。この時点では満30歳ぐらいの設定。


こちらはどこかで見たような黒子演じる王五。自分や譚嗣同を助けようとする霍元甲の義気に感じ入り、彼と義兄弟の契りを結びます。ところが譚嗣同は自分の処刑によって人民の目を覚まさせたいと脱獄を拒否。霍元甲に頼んで王五を気絶させ、目が覚めるまでの間に譚嗣同が処刑されてしまったということで、霍元甲を義絶。


この騒動の中で、霍元甲は朝廷の捕り手である鷹四こと呂四鷹にロックオンされてしまいます。いかにもというクッソ悪そうな顔をしておりますが、彼はまた若い頃に悪事をなし、霍元甲の父親霍恩第にこっぴどく懲らしめられたという遺恨もある模様。


それから2年、父親や兄の尽力により霍元甲が王五に与したことは事なきを得て、近隣の名士の王氏から嫁をもらうことに。父親霍恩第はこれまたどこかで見たような高雄が演じています。

しかし結婚式当日に王五が西洋人に捕らえられたという情報に接し、居ても立ってもいられなくなった霍元甲は式をすっぽかして北京へ。しかし王五は既に処刑された後なのでした。この王五、義和団事件で義和団側に加担して教会を襲撃したというあたりでかなりモニョってしまうのですが…… それはともかく王五の旧友農頸蓀らと連携して王五の首を取り戻し、埋葬を済ませ、そして王五の遺品の大刀を譲り受けることになります。

天津の霍府にはこれまた呂四鷹がこの件で霍元甲を下手人として捕らえようと押しかけますが、夫不在のまま嫁入りした王雲影が撃退。しかしこれで諦めるようなタマでもなく、今度はドイツのヘルマン大人や日本の山本大人といった外国人の将兵も味方につけて来襲。

霍恩第・霍元棟(元甲の長兄)は霍元甲と一族の女子供を秘密の通路で外へと逃がし、自分たちだけで対応しようとしますが、為す術もなく敵の手に倒れます。銃声を聞きつけてひとり引き返した霍元甲も満身創痍のまま呂四鷹の手に掛かろうとするところを、救援に駆けつけた弟子たちや農頸蓀らに助けられ…… 

というところで次回へ。ここまで毎回濃密な武侠アクションが繰り広げられるうえ、展開も速く、序盤の展開は上々です。最終回までこのハイペースを維持できるか不安もありますが……
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『民初奇人伝』その6

2020年09月18日 | 武侠ドラマ
『民初奇人伝』第26~30話まで見ました。

酒浸りから立ち直った華民初は、父華諭之や方遠極と対抗するために、柴宇なる人物から仙流行に伝わる騙術を学ぶことになりますが、その柴宇というのは……


この人です!!( ・`ω・´) 「昨日の敵は今日の友」というか「敵の敵は味方」というか…… 柴宇こと章羽は、民初によって北京を追われた後、流れ流れて現在は上海でホテル暮らしの模様。

外八行の各行は、墨班行なら職人・技師、黒紗行なら刺客、千手行なら手業師という具合に特定の職業の組合という側面があるんですが、仙流行、騙術を教えているということはひょっとして詐欺師の組合なんでしょうか……? その騙術を体得した民初は皆の前から姿を消し、諦聴行の隠れ蓑となっている新聞社に潜伏し、本物の「万山河絵巻」の行方を追うことになります。


その民初を密かに追うのがこの人。方遠極に瀕死の重傷を負わされた後、章羽や兄弟子の羲和(この人も死んだと見せかけて生きてた)に助けられ、上海では密かに民初めを見守っていたのでした。

希水は、やはり上海にやって来ていた柯書、花谷、爵爺とともに民初を捜索しますが、浄安寺で「万山河絵巻」を探し当てた民初と再会を果たします。時を置いて再会したということで、広州駅で彼女ではなく鍾瑶を選んだわだかまりも解けたようですが……?

一方、方遠極の新八行側は、自陣営に神通行と諦聴行の新行首を欠いているのがネックとなっておりました。そこへお誂え向きに八仙の三人の弟子が神通行の代表として身を投じますが、これは八仙にそう促されたもの。方遠極は三人が役立たずと察しつつも、数合わせのために鄭重に迎え入れます。

そして上海では鍾瑶が民初と結婚するという電撃報道が駆け巡ります。外八行の面々にも事前の知らせはなく、ショックを受ける希水ですが……?
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『民初奇人伝』その5

2020年09月13日 | 武侠ドラマ
『民初奇人伝』第21~25話まで見ました。

「将軍百戦」に敗北した白錦ですが、今度は墨班の裏切り者馮本諾の力を借り、その根城の墨城を攻め落とそうと画策。華民初は墨班行の幹部たちにその危険を訴えますが、墨城が難攻不落と信じて疑わない彼らは危機感が薄く……ということで前回紹介した土楼に似た墨城ですが、客家の土楼と見た目は一緒でも随所に墨子以来の築城技術が施された要塞という設定のようです。

そんな中、年に1回の墨班師の資格試験が開始されたますが、墨班行の幹部たちは世のため人のため役立ちそうな技術に関してもどしどしダメ出ししていき、民初はそんな態度に疑問を感じます。このドラマ、やっぱり武侠的門派の近代化という視点から面白い描き方をしていますね。

そして墨班行の裏切り者馮本諾が登場。こいつはこいつで、技術の軍事利用というアカン方向で近代化を図りたがっているのですが……中国人だって素朴に科学技術の軍事利用はアカンという規範意識は持っており、それが『墨子』の兼愛・非攻から導き出されたという設定になっているのが面白いです。で、柯書の父親柯図が犠牲となりつつ、攻め寄せてきた佬礼泉を何とか制圧。墨班を解散に導きます。

これで広州での案件があらかた片付いたかと思いきや、広州駅で絵巻の奪取を狙う方遠極らが民初らを襲撃。「十行者絵巻」が奪われたうえ、方遠極は鍾瑶と希水を人質にとり、どちらかひとりだけを助けてやるから選べという選択を突きつけます。そこで鍾瑶を選んだ民初ですが、希水が瀕死の重傷を負わされてしまい……


で、方遠極&華諭之により外八行の不満分子をかき集めて新外八行が成立。あくまで新持巻人は方遠極で、仕掛け人の華諭之は仙流之主に就任ということですが……?


舞台は広州から上海へ。希水は救えず、手元に残された「万山河絵巻」もどうやら偽物らしいということで傷心の民初は上海の街で酒浸りに。一方、これまで民初たちに協力し、広州では金綉娘に映画を通じてプロポーズしようとしていた啓鳴が怪しげな動きをし始めます。彼は清朝の末裔なのですが、外八行の隠された財宝を奪取し、清朝の復辟を果たそうとしている模様……
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『実習女捕快』

2020年09月12日 | 中国古典小説ドラマ
タイムスリップ物の最新作『実習女捕快』全24話を見ました。

ヒロイン金虔は現代の女子大学生。試験に落第しそうなので、親友が研究しているタイムマシンで試験の前まで戻ろうとしたところ、タイムマシンの不具合で北宋の時代にタイムスリップ。そこで医仙&毒聖の老人二人組に無理やり弟子入りさせられて医術を仕込まれ……


あれやこれやで開封府の捕快(捕り手)にスカウトされるという、清々しいぐらいに出来心と思いつきで作ったような作品ですね (^_^;)


展昭はヒロインの憧れの人ですが、自分が女性であることを伝えていません。包大人こと包拯はこのドラマではイケおじですw そして本作では守銭奴という設定が付加され、中盤以降は美女とのロマンスもありと、包青天物には珍しく公孫策が存在感を主張しています。


そしてなぜかナルシストで、敵にすると厄介だが味方にすると頼りない白玉堂。

ストーリーは鍘美案から始まり、鍘龐昱、狸猫換太子、そして襄陽王の謀反とお馴染みのエピソードが続き、合間合間にパロディネタの応酬となります。意外と『三侠五義』のネタを拾ってるV5(威武)なドラマですw
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『民初奇人伝』その4

2020年09月08日 | 武侠ドラマ
『民初奇人伝』第16~20話まで見ました。

華民初たちは三野坡を根城にする丁天賜に水攻めを仕掛け、軍を全滅に追い込んで「十行者絵巻」を取り戻します。そして薛楓茗は無事に薛将軍の遺訓を公表。「還政于民、譲渡軍権」を求める遺訓に応じて、楊照山ら西南の軍閥の領袖たちは、地域の安定のために軍権を返上します。


そして舞台は昆明から広州へ。広州では女ボス白錦率いる佬礼泉と、郁歩堂率いる雲門とが血で血を洗う抗争を繰り広げております。で、白錦の方が「十行者絵巻」と対になる「万山河絵巻」を所有しているとのこと。広州は柯書の出身の「墨班行」の根拠地にも近いということで、白錦は彼らの技術力を目に付け、買収によって兵器の生産に乗り出そうと目論んでいます。


「墨班行」の根拠地。千陽坊に引き続き土楼っぽいやつが出てきましたが、こちらは客家の土楼の本場の福建に地理的に近いですね。「墨班行」の行首墨知山は広州で時計屋を営んでいますが、華諭之・華民初父子には良い印象を抱いていない模様。


一方、鍾瑶は華諭之が実は生きているのではないかという疑念を抱き、調査を進めてきましたが、遂に華諭之本人が接触してきます。これまで方遠極の黒幕として暗躍してきた謎の人物の正体が彼であったことが明らかに。本人は鍾瑶に対して、20年間密かに民初の成長を見守ってきたとか、方遠極の背後には清王朝の勢力がいるから注意しろとか何とか、それらしいことを言っておりますが……?


白錦の方は、希水を人質にし、墨班行の人員と技術を自分たちに引き渡すよう要求します。白錦と民初は希水の身柄と「万山河絵巻」、そして墨班行の将来を賭けて、墨班伝統の「将軍百戦」に臨むことに。要は広州の街の模型を挟んで双方の会話によって進められるシミュレーションのようなものなのですが、雲門の郁歩堂も民初に加勢。白錦を敗北させて「万山河絵巻」をゲットというあたりで次回へ。
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『民初奇人伝』その3

2020年09月03日 | 武侠ドラマ
『民初奇人伝』第11~15話まで見ました。


華民初は花谷が生まれ育った千手行の拠点である千陽坊に足を運び、花谷の師父で「千手之主」である蘭庭と対面。アメリカ行きを取りやめて天津から引き返してきた鍾瑶&爵爺、更には金綉娘や八仙らも千手行の拠点である千陽坊に到来し、民初らと合流します。期日を決めて薛将軍の遺訓が公表されることになったということで、遺訓の持ち主薛楓茗もここで匿われることに。千陽坊はパッと見は福建の土楼っぽいですが、建材は西南らしく竹です。

華民初は希水とともに、同じく昆明近辺にある易陽行の根拠地三野坡へと向かいます。こちらは地下迷宮のようになっています。希水の師で前任の「易陽之主」である柳軽は民初の母方の叔母にあたるはずですが、民初の父華諭之が姉をたぶらかし、死を招いたということで、その憎しみが民初にぶつけられ、「十行者絵巻」も奪われてしまいます。「師父、師哥はとってもいい人なのよ!」と訴える希水に対し、「私の姉も華諭之のことをそう言っていたわ!」というやりとりには笑ってしまいましたが (^_^;)

その後鍾瑶も三野坡へと足を運びます。彼女はどうやら華諭之が実は生きているのではないかという疑念を抱いているようで、それで蘭庭や柳軽に当時の話を聞き出そうとしたわけですが、華諭之と柳煙との因縁には他ならぬ鍾瑶の母で前任の「諦聴之主」である邵郁も関係しているようで、華諭之を愛していた邵郁が姉を死に追いやったのだと責められます。更には鍾瑶が現任の「諦聴之主」六耳先生であることを民初に知られてしまい、今までそんな重要な事実を知らされてこなかったということで、民初は彼女を不信の目で見るようになります。

そして千陽坊には薛楓茗の身柄を狙い、南方の軍司令である丁天賜の手勢が襲撃。薛楓茗と親しい旅長の楊照山の助けを借りて撃退しますが、蘭庭が射殺されてしまいます。民初は「外八行」内部に裏切り者がいるのではないかと疑い、鍾瑶もその容疑者として金綉娘らとともに広州へと向かわせます。しかしその実裏切り者は蘭庭の妹弟子、そして花谷と爵爺との仲に嫉妬していた蘭庭の一番弟子なのでした。


方遠極は北方政府の軍部から追われた後、南方政府の丁天賜のもとに身を投じていましたが、希水の師兄である羲和と結託し、無敵の肉体を手に入れます(その後羲和も彼によって殺害)。そして丁天賜とともに三野坡を襲撃、柳軽ら易陽行を全滅させ、希水と「十行者絵巻」を人質にとり、民初に薛楓茗と薛将軍の遺訓の引き渡しを要求。

というあたりで次回へ。嫌な野郎がラスボスという武侠の法則に従えば、方遠極が本作のラスボスということになるんでしょうか……?
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2020年8月に読んだ本

2020年09月01日 | 読書メーター
仙侠五花剣仙侠五花剣感想紅線、黄衫客といった唐代伝奇の剣仙たちが自分たちの剣を授ける義侠の士を求めて下界に降り立ち……ということで始まる武侠物。清末の作品だが、ミニ八犬伝という感じで短くまとまっていて読みやすい。現在の武侠物、玄幻物のルーツに触れるのに良い素材。読了日:08月01日 著者:海上剣痴

范仲淹 (中国歴史人物選)范仲淹 (中国歴史人物選)感想范仲淹の生涯とともに、対西夏防備、慶暦新政といった彼の事績、そして諫官の設置とその影響、朋党をめぐる論争などの彼の生きた北宋前半期という時代の気風、劉太后、呂夷簡ら関係人物の評価が手堅くまとめられている。中国時代劇『清平楽』の副読本として最適。読了日:08月03日 著者:竺沙 雅章

ドキュメント武漢:新型コロナウイルス 封鎖都市で何が起きていたか (平凡社新書)ドキュメント武漢:新型コロナウイルス 封鎖都市で何が起きていたか (平凡社新書)感想この半年ほどの武漢、あるいは中国の状況を現地リポートを交えつつ振り返る。社区と小区、中央と地方との緊張関係、なければないで困る全人代など、現地の政治・社会事情を的確に説明しつつまとめられている。感染者の統計をめぐる批判は、現在の東京、あるいは日本全体の統計のあり方に対する「ブーメラン」として返ってきそうだが。内容的にはオーソドックスで新味はないが、それだけに将来的には記録として価値が出てくるかもしれない。読了日:08月07日 著者:早川 真

教養としての歴史問題教養としての歴史問題感想歴史認識、歴史修正主義などの歴史問題を、社会学、歴史学、ジャーナリズムの立場から、あるいは海外との比較から語る。辻田氏の、実証主義の立場がもてはやされているのは実のところ実証が物語を征伐したという物語が受けているのではないかという指摘や、座談会での、歴史学にとって事実と物語の関係は昔からの大きなテーマだったはずという指摘が刺さる。ただ、歴史修正主義が史実を重視しないとか専門知を軽んじているという理解は少し違っていて、彼ら自身が史実・専門知を体現していると思い込んでいるのが問題の根幹ではないか。読了日:08月10日 著者:前川 一郎,倉橋 耕平,呉座 勇一,辻田 真佐憲

礼とは何か: 日本の文化と歴史の鍵礼とは何か: 日本の文化と歴史の鍵感想門外漢による中国古代の「礼」入門ということで恐る恐る手を付けたが、日本史研究者の視点による、『礼記』『左伝』の記述を利用した「礼」の整理・学習ノートといった趣きで、「礼」とはどういうものかがよく整理されている。細々とした問題点がないわけでもないが、質的に有象無象の『論語』本などとは一線を画している。本書の中身がどうというよりも、これを基礎として著者が今後どういう研究をされていくのかが重要。読了日:08月14日 著者:桃崎 有一郎

避けられた戦争 ──一九二〇年代・日本の選択 (ちくま新書)避けられた戦争 ──一九二〇年代・日本の選択 (ちくま新書)感想満州事変、そしてそれに続く日中戦争、太平洋戦争を避ける道はあったのかを、1920年代の外交史から探る。戦争へと突き進むことになったポイントとしては、旧外交から新外交への乗り遅れ、満蒙特殊権益への固執、蒋介石による国民革命の過小評価ということになるようだ。同時代の英国のように帝国縮小戦略は採れなかったのかという指摘は面白い。そしてエピローグでの、世界恐慌後のブロック経済化が日本を戦争へと追い込んだというよりも、満州事変が世界のブロック経済化を促したという指摘も重要。読了日:08月17日 著者:油井大三郎

ペルシア帝国 (講談社現代新書)ペルシア帝国 (講談社現代新書)感想ハカーマニシュ朝、そしてアルシャク朝を挟んでサーサーン朝と、2つの帝国の歴史と支配者たちを描き出す。中国王朝に引きつけた例えが目立つが、本書での帝国の都市化の進展、貨幣経済の浸透と税の銀納に関する指摘を見ていると、西アジアの先進性に着目した宮崎市定の歴史観を連想させる。本書によると、そのエーラーン帝国の遺産を丸ごと継承したのがアラブ人イスラーム教徒と位置づけられるということであるが。読了日:08月22日 著者:青木 健

香港とは何か (ちくま新書1512)香港とは何か (ちくま新書1512)感想同レーベルの近刊『香港と日本』と比べると、日本の読者を意識した客観的な解説になっており、安心して読める。日本との関わりも、周庭氏らが日本のアニメやアイドルが好きという話にとどまらず、香港デモと安田講堂事件との意外なつながりなど、興味深い話題を盛り込んでいる。香港と大陸との関係悪化はボタンの掛け違いを重ねた末という印象を受けるが、今後のシナリオとして、マカオ化、北アイルランド化、沖縄化などの方向を提示するのはまとめ方としてうまい。読了日:08月24日 著者:野嶋 剛

人口の中国史――先史時代から19世紀まで (岩波新書 (新赤版 1843))人口の中国史――先史時代から19世紀まで (岩波新書 (新赤版 1843))感想一応中国史の全時代を範囲としており、三国時代の前後に人口が急減しているのは、戦乱で本当にそれだけの人間が死んだわけではなく、王朝が把握できる人口が減ったということを示すというお馴染みのネタも盛り込まれているが、主な読み所は18世紀の人口爆発とそれ以後の展開。従来人頭税の廃止が人口爆発の理由とされていたのが、それは一時的なものにすぎないと、別の背景を模索していくが、そこで生態環境史や地域ごとの産業や移民の問題など、様々な視点が提示される。人口史からの話の広がりが面白い。読了日:08月26日 著者:上田 信

民衆暴力―一揆・暴動・虐殺の日本近代 (中公新書 (2605))民衆暴力―一揆・暴動・虐殺の日本近代 (中公新書 (2605))感想新政反対一揆、秩父事件、日比谷焼き打ち事件、関東大震災時の朝鮮人虐殺と四つの事件を扱うが、最も重要と思われるのが朝鮮人の虐殺。日頃の朝鮮人蔑視と恐怖がベースになっていたこと、政府や警察が誤情報を流し、直接間接に虐殺に関与したこと、また三・一運動の頃の朝鮮統治に関わった人々が震災当時の治安維持を担ったことで、朝鮮人にテロリストというイメージ、予断が結びつけられたことを指摘する。これを踏まえると、昨今のスリーパー・セル言説がいかに罪深いものであるかと思わざるを得ない。読了日:08月28日 著者:藤野 裕子
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