博客 金烏工房

中国史に関する書籍・映画・テレビ番組の感想などをつれづれに語るブログです。

『陳情令』その6

2020年03月31日 | 武侠ドラマ
『陳情令』第26~30話まで見ました。

温情から温寧が蘭陵金氏に捕らえられて「窮奇道」で労役に服していると聞いた魏無羨は、温情とともに現場に駆けつけますが、時既に遅く彼は死人として打ち捨てられておりました…… 無羨は怒りのあまり詭道で彼の遺体を「傀儡」として操り、金氏の見張り番に復讐。しかしコントロールが利かなくなり、温寧は暴走。実は温寧は死んだわけではなく、瀕死の状態になったところを今まで押さえ込んでいた負の感情に囚われて暴走していたようです。

駆けつけた藍忘機の協力もあって何とか温寧を封印した無羨は、温情ら大梵山温氏の一党を引き連れて、自分が三ヶ月間暮らした乱葬崗へと逃亡。乱葬崗はかつて薛重亥の居城があったようですが、今ではすっかり荒れ果てています。そこを開墾を進めて人が住めるようにし、温氏の隠れ家とします。無羨は江澄から破門を突きつけられ、四大世家の公敵となる一方で、江湖では「夷陵老祖」の異名で知られるようになります。


生ける屍の状態であった温寧も、再び目覚めて暴走した後は、無羨と忘機の尽力で意識と以前の穏やかな性格を取り戻し、復活を遂げます。無羨はこの温寧とともに夷陵の街で正体を隠しつつ栽培した大根を売りさばいたり、自称夷陵老祖の弟子としてインチキ商売に励む行商人をからかったりと、愉快な潜伏ライフを満喫。


江厭離&江澄も夷陵を訪れて無羨と密会し、厭離と金氏の御曹司金子軒との結婚が決まったと報告。無羨にいずれ生まれてくるであろう2人の子の名付け親となるように頼みます。


そして1年後、厭離は一子金凌を出産。字の「如蘭」が無羨の名づけた名前です。画像は第1~2話で登場した16年後の金凌の姿。この赤子出産満一ヶ月の宴に無羨を招くかどうかで四大世家の指導者たちが物議を醸し……というあたりで次回へ。段々オープニングの崖落ちに近づいてきましたw
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『陳情令』その5

2020年03月26日 | 武侠ドラマ
『陳情令』第21~25話まで見ました。

四大世家が足並みを揃え、岐山温氏に挑む「射日の征」が開始。魏無羨や藍忘機、江澄らが温氏の居城「不夜天」を外側から攻めて温氏の兵力を引きつけ、その間に清河聶氏の宗主聶明玦が単身「不夜天」の内側に潜入し、直接温氏の宗主温若寒に決戦を挑むという作戦なのですが……


温氏の戦闘兵が「陰鉄」の力により、『ゲーム・オブ・スローンズ』のホワイトウォーカーのようなクリーチャーに変身。


クリーチャーに倒された四大世家側の兵も「傀儡」に変身してしまいますが、これを撃破したのが無羨の横笛「陳情」から発せられる「詭道術法」と「陰虎符」。「詭道術法」は温晁に乱葬崗に突き落とされた際に無羨が編み出した術法。「陰虎符」は「陰鉄」と似ているものの非なるものということですが、どうやら「屠戮玄武」を封印していた剣が4片の「陰鉄」のうち残る1片で、それと関係するアイテムの模様。


異変に動揺する温若寒ですが、最期は孟瑶に背後から刺殺されてしまいます。孟瑶はもともと蘭陵金氏の宗主金光善の庶子だったところを聶明玦に拾われ執事となっていたのですが、色々あってその地位を追われ、温若寒の側近となったと見せかけて、忘機の兄曦臣と連携して情報を渡していたのでした。「射日の征」以後は金光善に子供として認知され、金光瑶と名乗るようになります。

無羨は江澄・江厭離とともに雲夢へと戻り、蓮花塢の立て直しに尽力することになります。しかし彼はどういうわけか乱葬崗から舞い戻って以来、二度と剣を手に取ろうとはしません。姑蘇に戻った忘機も、無羨が身につけたのが心身を損なう邪術であると見て、その治療法を探ります。

そうこうしているうちに四大世家の盟主格となった金光善が、各世家に百鳳山での囲猟の開催を呼びかけます。そこで有耶無耶となっていた金子軒と厭離との婚約の話を進め、また無羨を「陰鉄」を隠し持っているのではないかということで監視することに。無羨は「陳情」を演奏して狩りの獲物を独占するなど散々かき回した後に、蘭陵の街で温氏狩りから逃れてきた温情を見かけ…… 

ということで、ホラーテイストというよりは伝奇テイストと言った方が合ってるのかなという雰囲気になってきました。BL要素だけが喧伝されている本作ですが、武侠物としてもそれなりに見られるものになっています(アクションシーンにはまったく力を入れてませんが)。
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『陳情令』その4

2020年03月21日 | 武侠ドラマ
『陳情令』第16~20話まで見ました。

蘭陵金氏と対岐山温氏での連携を確認して戻ってきた江楓眠は、妻を救うべく蓮花塢へと急行しますが、駆けつけ一番で背後から刺殺。 いやあなた、あっさりやられすぎでしょう…… 

虞紫鳶の実家の眉山へと向かう魏無羨たちですが、父母を思う江澄が密かに蓮花塢へと舞い戻り、無羨が彼を救出するためにその後を追うことに。無羨は関係が良好だった温寧の協力により江澄を救出しますが、彼は温逐流の「化丹手」により、体内の金丹を失ってしまっていた(すなわち剣客としては廃人になっていた)のでした。

無羨らは取り敢えず温情のいる夷陵へと逃亡。医術に長けた温情でも江澄の治療はかなわず、彼はやけっぱちになりますが、ここで唐突に薛洋退治のところで出てきた流しの道士宋嵐が再登場。無羨は彼の情報から、母の師にあたる抱山散人が付近にいるらしいことを察知。江澄を彼自身に仕立て、母との縁で江澄を治療させようとします。

江澄は何とか抱山散人と巡り会い、金丹を取り戻すことに成功しますが、夷陵近辺に潜伏して彼の帰りを待っていた無羨は温晁に発見され、捕らえられてしまいます。


箒のかわりに剣に乗って空中を移動する温晁たち。この「御剣」は『花千骨』にも出てきました。本作はもう少し現実世界寄りかと思いましたが、こういう世界観なんですね……

無羨は空中から死霊が集うという「乱葬崗」へと投げ捨てられます。これで無羨は死んだという扱いとなり、三ヶ月後。四大世家が勢力を取り戻し、岐山温氏に奪われた各氏の本拠地が次々と奪還されておりました。かつて「聴訓」の場となった岐山不夜天の教化司も陥落し、温晁らは夷陵へと逃亡。その後を追う江澄・藍忘機。


温晁らが潜伏する宿で二人が見たものは、行方不明であった無羨が謎の巫術で温晁・温逐流を追い詰めるところなのでした。無邪気に無羨と再会を喜ぶ江澄でしたが、忘機の方は無羨が使っているのは傍門左道の邪術ではないかと警戒を隠せません。


こちらは16年後の江澄。この後の展開で無羨とは絶許の関係になってしまうはずですが……?

ということで、いつの間にやら「乱葬崗」から舞い戻った無羨が死霊の幻影を相手に見せる技を習得したことで、またホラーテイストが戻ってきました。
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『陳情令』その3

2020年03月16日 | 武侠ドラマ
『陳情令』第11~15話まで見ました。

ようやく雲夢蓮花塢に戻った魏無羨と江澄ですが、息をつく間もなく今度は岐山温氏から2人を「聴訓」に寄越すよう要請が来ます。


ということで雲夢の埠頭から岐山の「不夜天」へと出立する2人。このドラマ、雲夢とか岐山とか姑蘇とか実在の地名を押し出してくるのが面白いところなんですよね(ロケ地は貴州のようですが)

「聴訓」というのは五大世家の子弟を温氏のアジト「不夜天」に集めて教育する、姑蘇藍氏の「聴学」の向こうを張った試みなのですが、学生たちは体のいい人質、教育することと言えば歴代の温氏の言行録『温門菁華録』を暗誦させるとか碌でもないことばかり。魏無羨は「聴学」の時以上に確信犯でやんちゃをやらかし、温氏の次男温晁に目を付けられます。

この「聴訓」、姑蘇藍氏の「聴学」の真似というかお株を奪おうとして俗悪なパロディになってしまっているという面白い設定&描写になっています。意識の高いイベントの真似をしようとして俗悪なパロディになってしまうという現象、中国政府絡みでは孔子平和賞とかそれらしい案件がいくつか思い浮かぶわけですが、この作品の場合はさすがに制作者がそういう演出を意図してやっているわけではないでしょう。ただ、これからもちょっと注意して見ていった方がいいかもしれません。

「聴訓」には藍忘機も参加していますが、実は姑蘇藍氏の「雲深不知処」も温氏に攻められて焼け野原となり、忘機は族人の命を助けるために片足を折られ、また折角入手した「陰鉄」も温若寒に献上したようです。これで彼が手中に収めた「陰鉄」は3つとなり、欠けているのはあとひとつとなりました。


さて、温晁は妖獣狩りに無羨らを暮渓山へと駆り出します。山洞内に潜む妖獣というのは、その昔薛重亥が操ったという「屠戮玄武」の模様(映ってない背中の部分に甲羅っぽいものがあります)。ここで唐突に怪獣物みたいな雰囲気になりますが、温晁らが逃亡し、山洞内に取り残された無羨と忘機が妖獣を封印していた伝説の剣っぽいアイテムを使いつつ撃破。

ここで山洞内から逃れていた江澄、金子軒らが2人を救出。温氏の方では「隕鉄」の力を利用した「傀儡」の実験やらで「聴訓」の方まで手が回らない状況のようで、江澄らはその隙を突いて「不夜天」から逃亡してきたのでした。忘機は姑蘇へと戻り、無羨も江澄とともに雲夢へと戻ります。

雲夢江氏の宗主江楓眠は蘭陵金氏との連携を図るべく蘭陵へと発ちますが、その隙を突いて温晁の妾の王霊嬌と温氏の使い手温逐流が来襲。江楓眠の妻虞紫鳶は、蓮花塢を温氏の出先機関「監察寮」にするという王霊嬌の命令を一蹴。自分一人が抵抗することを決意し、無羨と江澄を蓮花塢から逃し……というあたりで次回へ。


出番は少ないが割と印象が強い虞紫鳶。

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『陳情令』その2

2020年03月11日 | 武侠ドラマ
『陳情令』第6~10話まで見ました。

姑蘇藍氏の「雲深不知処」で聴学を続ける魏無羨と藍忘機ですが、ともに罰を受けてできた傷を癒やすために寒潭に浸かっていると、水底の水洞に吸い込まれてしまいます。


2人はそこで死んだとされていた藍氏の当主藍翼と出会い、彼女から「陰鉄」の秘密を聞くことに。藍翼演じるは、香港TVB1995年版『神雕侠侶』の小龍女役で知られる李若彤(カルメン・リー)です。

その昔「陰鉄」の強大な力を独り占めしようとした薛重亥が姑蘇藍氏、雲夢江氏など五大世家に討伐され、「陰鉄」が四分割されて各地に封印されることになったのですが、彼女自身も「陰鉄」の力に魅せられ、それを有効利用できないかと模索した結果失敗し、自分の魂を賭けて封印することになったとのこと。


そして今度は修慶演じる岐山温氏の「仙督」こと温若寒が「陰鉄」を集めて自らの野望のために利用しようとしているということで、無羨と忘機は彼女の魂の前でその野望を阻止することを誓います。無羨はまた藍翼から、彼の母親蔵色散人の師匠にあたる抱山散人のことも耳にするのでした。

「雲深不知処」での学園物ターンがもっと長く続くのかと思いきや、このあたりで終了して学生たちはそれぞれ帰郷することになります。無羨も江厭離・江澄とともに雲夢の蓮花塢に戻るはずでしたが、忘機が単身残り3つの「陰鉄」捜索の旅に出ることを察知し、置き手紙だけ残してその後を追います。

これで愉快な2人旅と思いきや、そこへ帰郷の途中だった聴学の同窓生の清河聶氏の聶懐桑、無羨の後を追ってきた江澄も加わります。一行は大梵山に差し掛かりますが、大梵山と言えば……


第2話の16年後の世界で出てきた舞天女像です。ここでもやはり舞天女像が大魔神のごとく動き出して一行を襲撃したり、地元の村人たちが「傀儡」化して襲いかかってきたりしますが、それはもともと舞天女像の心臓として埋め込まれていた「陰鉄」が温若寒に奪い取られてしまったことによるものでした。舞天女像は心臓の埋め合わせを求めるべく、村人たちの「霊識」を吸い取り、傀儡として動かすようになったとのこと。実は岐山温氏の傍流である温情・温寧姉弟も大梵山の出身であり、彼女たちの父親は舞天女像の暴走によって死亡し、温寧は霊識を吸い取られ、温情は弟の治療法を追求しているようです。


一行は櫟陽で当地の仙門世家常氏が全滅したという情報を耳にしますが、その下手人は温若寒の手先として動く薛洋でした。彼はまた薛重亥の子孫でもあるようですが……?常氏の邸宅では一族全員の死体が並び、凄惨な光景が映し出されます。本作冒頭のチャイニーズホラー的なテイストが戻ってきました。

一行は薛洋を捕縛し、清河聶氏の「不浄世」に連行して聶氏の当主聶明玦に引き渡しますが、彼の身柄を取り戻すために、温若寒の息子温晁が手勢を率いて襲撃。更には藍氏の「雲深不知処」にも岐山温氏の手勢が向かったと聞いた忘機が、居ても立ってもおられず単身姑蘇へと引き返し……というあたりで次回へ。
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『陳情令』その1

2020年03月06日 | 武侠ドラマ
『大明風華』をうっちゃって、WOWOWでの日本語版放映を控えているこちらに手を出してしまいました…… 今回は第1~5話まで鑑賞(全50話)。

姑蘇藍氏、雲夢江氏、清河聶氏、岐山温氏、蘭陵金氏の五大世家が武林を支配する世界が舞台。物語は16年前の「不夜天の一戦」から始まります。肖戦演じる主人公「夷陵老祖」魏嬰(字は無羨)は武林の公敵とされているらしく、かつての兄弟弟子江澄によって崖に追い詰められ、友である「含光君」藍湛(字は忘機)の助けの手も届かず、崖落ちしてしまいます。


それから16年。ふと気がついたら無羨はなぜか莫家の厄介者莫玄羽として扱われておりました。莫家の者が「邪祟」に取り憑かれて全滅したのを機に16年ぶりに下山。


正体を知られたら困るので、あくまで莫玄羽として行動しますが、そこで「邪崇」退治にやって来た王一博演じる忘機と再会。ここで再び16年前の話となり、2人が出会った頃にさかのぼります。

魏無羨は雲夢江氏の同門弟子江厭離と江澄の姉弟とともに姑蘇藍氏のもとへと向かっています。姑蘇藍氏では、他の武林世家の子弟を受け入れて教育する「聴学」を行っていたのです。そこで無羨は藍氏の二公子忘機と出会いますが、品行方正で孤独を好む忘機に対して、万事に不真面目でかつ人から好かれる人気者タイプの無羨は何かと角を突き合わせています。しかし藍氏の長兄藍曦臣は、無羨との出会いが弟をよい方向に導くのではないかと思っている様子。忘機も碧霊湖での水祟退治での無羨の活躍を見て、少しずつ認識を改めていきます。


藍氏の聴学では、これまで他の世家と対立してきた岐山の温氏も、どういうわけか温情と温寧の姉弟を送り込んできます。温情を演じるのは古装でお馴染みとなりつつある孟子義。特に温情の方は温氏の「仙督」温若寒の指令を受け、何やら怪しげな動きを示しており……

ということで、本作はBL物として人気を博したということなのですが、武侠物でよくある崖落ちから始まり、莫家の話でチャイニーズゴシックホラー調になったと思ったら、16年前の回想では一転してコメディタッチの、これまた古装でよくある学園物になっています。ここからまた雰囲気が変わっていくのでしょうか?

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2020年2月に読んだ本

2020年03月01日 | 読書メーター
20世紀アメリカの夢: 世紀転換期から1970年代 (岩波新書)20世紀アメリカの夢: 世紀転換期から1970年代 (岩波新書)感想
変わった時代の区切り方だなと一瞬思ったが、南北戦争以後の黒人・女性の権利拡大を求める動きとその帰結、ニューディール連合の成立と瓦解を内包した区切りということで納得。ルシタニア号事件と米国の大戦参戦が直接結びつくのか、大戦が女性の社会進出をもたらしたと手放しで評価できるのかという問題や、恐慌を国際問題ととらえたフーバーに対し、国内問題ととらえたローズヴェルトという対比を面白く読んだ。
読了日:02月03日 著者:中野 耕太郎

荀子 ビギナーズ・クラシックス 中国の古典 (角川ソフィア文庫)荀子 ビギナーズ・クラシックス 中国の古典 (角川ソフィア文庫)感想
篇ごとではなく、性悪説、天人の分、礼治など、トピックごとに読みどころと思想の特色を示すという手法で、構成がよく工夫されている。第二部では『孟子』の性善説や『韓非子』の説く法治との比較、新出資料による再評価も盛り込まれている。荀子の主張は「性悪説」と呼ぶべきなのか、最終的には善に至ると人間の可能性を認めているという点では、孟子とそれほど違いはないのではないかとする点が面白い。
読了日:02月05日 著者:湯浅 邦弘

漢語の謎: 日本語と中国語のあいだ (ちくま新書 (1478))漢語の謎: 日本語と中国語のあいだ (ちくま新書 (1478))感想
漢語の中で近代用語は、従来日本→中国の一方通行で広まったとされてきたが、中国で成立した漢訳洋書に注目することで、中国→日本→中国といったように日中間の相互作用によって成立するという具合に複雑な様相を呈していることを示す。取り上げている漢語も、この手の話で取り上げられやすい「自由」「経済」「科学」といったベタなものではなく、「電池」「化石」「半島」「熱帯」「空気」といった少々変わったものが多い。具体的なものの方が意味の幅が小さく扱いやすいからだというが、これはこれで面白い。
読了日:02月10日 著者:荒川 清秀

世界哲学史2 (ちくま新書)世界哲学史2 (ちくま新書)感想
今回印象に残ったのはゾロアスター教とマニ教の位置づけの話。執筆者が対象をdisり気味に書いているが、ゾロアスター教は元来一神教的二元論を採っていた、マニ教はキリスト教のペルシア的変種として捉えた方がよいという指摘を面白く読んだ。後者の指摘はアウグスティヌスがキリスト教に回心する以前はマニ教徒であったという話とも響き合う。
読了日:02月12日 著者:

歴史人口学事始め: 記録と記憶の九〇年 (ちくま新書 (1475))歴史人口学事始め: 記録と記憶の九〇年 (ちくま新書 (1475))感想
先頃亡くなられた速水融の学問の歩み。メインとなる歴史人口学との出会いのほか、1944・1946年の東南海・南海大地震、スペイン・インフルエンザ、日本の高齢化社会への視点に惹きつけられる。歴史人口学との出会いは偶然の重なりによるものだったようだが、研究者と研究テーマとの出会いはそういうものかもしれない。
読了日:02月17日 著者:速水 融

天変地異はどう語られてきたか (東方選書)天変地異はどう語られてきたか (東方選書)感想
日本と中国に限らず、朝鮮・琉球・東南アジア、時代も近現代まで射程に入れ、幅広くアジアの天変地異を語る。天変地異が宗教信仰や怪異だけでなく、環境問題、(天変地異としての疫病に対して)医療、(天変地異をもたらす外界の者への)排外意識、トラウマやデマ、(沖縄での米軍や自衛隊の位置づけをめぐって)政治や軍事など、様々な問題と関わることが示されている。
読了日:02月19日 著者:

南朝全史 大覚寺統から後南朝へ (講談社学術文庫)南朝全史 大覚寺統から後南朝へ (講談社学術文庫)感想
大覚寺統の血筋の恒明が北朝に身を投じつつ、その子息が南朝の護持僧になっているという現象、南朝が小規模ながらも朝廷としての要件を十分に備えていたという評価、南北朝の合一を成し遂げたとされる足利義満も、鎌倉時代以来の両統迭立の原則から完全に解放されているとは言い難いのではないかという指摘、後南朝が説話の世界では意外に長い寿命を保っていたという指摘などを面白く読んだ。
読了日:02月23日 著者:森 茂暁

律令国家と隋唐文明 (岩波新書 新赤版 1827)律令国家と隋唐文明 (岩波新書 新赤版 1827)感想
古代の日本が隋唐からいかにして律令制を受け入れ、国家としての体裁を整えていったのかを追う。律令制の受容は土俗的な社会に接ぎ木したような状況だったと言うが、租庸調の税制が名称は唐風だが実態は律令以前の慣行を基礎としていたとか、近代に皇室の「伝統」となった籍田が、実は古代天皇制になじむものではなかったという話が面白い。最後に日本の「古典的国制」について議論しているが、中国史でも「古典中国」「古典国制」が議論されているのを連想させる。
読了日:02月24日 著者:大津 透

台湾の歴史と文化-六つの時代が織りなす「美麗島」 (中公新書 (2581))台湾の歴史と文化-六つの時代が織りなす「美麗島」 (中公新書 (2581))感想
植民地統治時代に台湾で生まれ育った日本人の目を通して見る台湾の歴史と文化。歴史よりは、主に台湾南方の街並み、信仰、先住民との交流など、文化面に重点を置いている。個人的には植民地統治時代よりも、終盤の戦後の「外省人」の視点からの話、「外省人」の学校教員も日本人教員と同様に青少年の教育に熱意を持って当たったというような話が新鮮で面白く感じた。
読了日:02月25日 著者:大東 和重

エリザベス女王-史上最長・最強のイギリス君主 (中公新書)エリザベス女王-史上最長・最強のイギリス君主 (中公新書)感想
序盤の「王冠を賭けた恋」と終盤のハリー王子の結婚、夫の叔父の暗殺指令者かもしれないマーティン・マクギネスとの握手など、長い在位期間を誇るだけあって、対比的に時の流れによる変化を感じさせるエピソードが多い。変化といえば、もてあましていたダイアナのやり方に倣って慈善活動のアピールを重視するなど、王室のあり方を変えていくという話も印象的である。「おわりに」で紹介されている、ヨーロッパの君主制を滅ぼしてきた者は誰かという夫のエディンバラ公の言葉が、時代に合わせて変えていくことの重要性を示している。
読了日:02月29日 著者:君塚 直隆

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