博客 金烏工房

中国史に関する書籍・映画・テレビ番組の感想などをつれづれに語るブログです。

2021年9月に読んだ本

2021年10月01日 | 読書メーター
「入れ墨」と漢字―古代中国の思想変貌と書―「入れ墨」と漢字―古代中国の思想変貌と書―感想
漢字の起源を入れ墨の紋様に求め、入れ墨あるいは殷文化と墨家の思想との関係、書の宗教性へと話が及んでいくが、入れ墨と文字の起源の雑感という感じで議論としてあまりまとまりがない。論証というか個別の事項について説明が不足している点も多々ある。
読了日:09月02日 著者:松宮 貴之

中国名詩鑑賞辞典 (角川ソフィア文庫)中国名詩鑑賞辞典 (角川ソフィア文庫)感想
唐詩を中心に日本で愛読されてきた漢詩を紹介。解釈の充実度は類書に及ばないが、その詩をもとにした和歌などを豊富に紹介しており、日本での受容のされ方に重点を置いた作りとなっている。
読了日:09月09日 著者:山田 勝美

批評の教室 ――チョウのように読み、ハチのように書く (ちくま新書)批評の教室 ――チョウのように読み、ハチのように書く (ちくま新書)感想
作品の読み方、分析の方法、書くコツ、実践例と四部構成で批評を指導。自分が批評をするうえで自然とできていること、できていないことが認識できた。ポストコロニアル批評、フェミニスト批評等は簡単そうだから手を付ける人が多いが、綿密な精読が要求されるという話が出ているが、これは中国エンタメの場合は政治的観点からの批評ということになるだろうか。
読了日:09月11日 著者:北村 紗衣

梁の武帝 仏教王朝の悲劇 (法蔵館文庫)梁の武帝 仏教王朝の悲劇 (法蔵館文庫)感想
政治の時代であった漢代に対して文芸・宗教の時代であったという六朝。その時代性の中に梁の武帝の生涯を位置づける。創業の君主であると同時に亡国の君主ともなったという珍しい経歴の持ち主だが(心当たりとしては王莽があるのみ)、彼の「寛容仁慈」の限界をもえぐる。儒学が「治国平天下」につながるのに対し、仏教信仰はまず個人の営みとして現れるという。「鎮護国家」につながらない為政者の仏教信仰は日本の平安時代のそれと対比させることができるのではないか。
読了日:09月13日 著者:森 三樹三郎
易学 成立と展開 (講談社学術文庫)href="https://bookmeter.com/books/18451227?title=%E6%98%93%E5%AD%A6+%E6%88%90%E7%AB%8B%E3%81%A8%E5%B1%95%E9%96%8B+%28%E8%AC%9B%E8%AB%87%E7%A4%BE%E5%AD%A6%E8%A1%93%E6%96%87%E5%BA%AB%29">易学 成立と展開 (講談社学術文庫)感想
古代における易の成立と、漢代以後の易学の展開との(ほぼ)二部構成。易、特に経文の成立は卦爻辞を寄せ集めて共通して見える文字を卦名としたことなど、啓発的である。易学の展開は易の解釈を中心とした経学史という趣きがある。陰陽二元論と言いつつも、ライプニッツの理解に基づくと陽がプラス1であるとすれば陰はマイナス1ではなくゼロであり、これは西洋的な悪の観念が存在しないことにつながるというのが印象的。
読了日:09月16日 著者:本田 済

倭国 古代国家への道 (講談社現代新書)倭国 古代国家への道 (講談社現代新書)感想
記紀に見える宮名、あるいは王名に現れる宮名を取っかかりに探る倭国王権論。「周縁王族」とは具体的にどのような存在かがもうひとつはっきりしないところがあるが(葛城氏のような有力豪族とは一応区別される存在のようである)、「中枢王族」の傍系あるいは「中枢王族」とは無関係の地方の王ということだろうか。逆にこの概念により継体天皇がどういう存在かイメージしやすくなったようにも感じる。 
読了日:09月18日 著者:古市 晃

怪異学講義: 王権・信仰・いとなみ怪異学講義: 王権・信仰・いとなみ感想
入門書ということで各篇とも読みやすい文章となっている。「天」の思想に裏付けられた一神教的な中国の怪異と、多神教的な日本の怪異、執筆者の関心によってバラバラの怪異論の寄せ集めに見えるが、冒頭の総論と各部ごとの総説によってうまくまとまりを持たせている。また日本の「警告する始祖たち」の姿が『左伝』に見える諸侯の始祖神の姿を想起させるなど、日中の共通点も何となく見出せる。
読了日:09月20日 著者:

アケメネス朝ペルシア- 史上初の世界帝国 (中公新書, 2661)アケメネス朝ペルシア- 史上初の世界帝国 (中公新書, 2661)感想
アケメネス朝の発祥から滅亡までを詳述。ダレイオス1世までは「アケメネス朝」とは呼べないのではといった指摘や、代理王の話が面白い。また帝国の歴史をどう語ってきたのか(どう語られてきたのか)という点にも重点が置かれている。固有名詞の原音表記にはこだわってないが、その分青木書『ペルシア帝国』より読みやすい。
読了日:09月21日 著者:阿部 拓児

ヒトラー: 虚像の独裁者 (岩波新書, 新赤版 1895)ヒトラー: 虚像の独裁者 (岩波新書, 新赤版 1895)感想
等身大のヒトラーというからにはゴシップ的な詮索が中心なのかと思いきや、それは序盤のみで政策的評価が中心。しかし彼の死を含めてヒトラー政権を阻止するチャンスは意外とたくさんあったのだなという印象。第6章はエンタメも含めてヒトラー受容史としてよくまとまっている。
読了日:09月27日 著者:芝 健介

コメント
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