博客 金烏工房

中国史に関する書籍・映画・テレビ番組の感想などをつれづれに語るブログです。

『延禧攻略』その4

2019年08月29日 | 中国歴史ドラマ
『延禧攻略』第16~20話まで見ました。

自分が産んだ四阿哥すら陰謀の道具にしたということでに答応に降格されてしまった華貴人ですが、嫻妃はそんな彼女を許してはおかず、自ら絞殺して引き返せない道を進むのでした……


さて、近頃純妃が長春宮に入り浸っているということで、皇后は彼女と同性愛の関係にあるのではないかという噂を立てられてしまいます。実は皇后は亡き二阿哥の出産以来持病を抱えており、密かに医術の心得がある純妃の針治療を受けていたというオチなのですが、高貴妃は噂を乾隆帝の耳に入れて皇后を追い落とそうと画策。その小道具として王羲之の『快雪時晴帖』と、李漁の崑曲『憐香伴』が使われます。『憐香伴』の方は女同士の恋情を描いたものとのこと。


瓔珞の機転により危機が回避された後、今度は皇后の差配で出産間近の愉貴人を長春宮に住まわせることに。しかし皇后が皇太后のお伴で留守の際に産気づいてしまいます。そこへ「皇后が留守なら私が妃嬪を管理する」と高貴妃が乗り込んできて、愉貴人が産み落とした五阿哥は清室で禁忌とされる金瞳を持っていると騒ぎ立てます。

高貴妃は愉貴人への意趣返しとばかりに産まれたばかりの五阿哥を怪物扱いにして生き埋めにしてしまおうとしますが、瓔珞が皇后の印璽を持ち出してまで時間稼ぎをしている間に、騒ぎを聞きつけた乾隆帝が到来。江南の名医葉天士の診断により、金瞳は先天性の黄疸の症状ということで一件落着します。しかしここで、先天性の黄疸は母親の食事の偏りに問題がある→愉貴人は出産前に出身地のモンゴルの烤餅を食べまくっていた→なぜか都合良くモンゴル出身の料理人が新規で配属されていた→彼を呼んだのは……という流れで高貴妃の陰謀ということで処断されます。しかしそれは高貴妃に罪を押っつけるための純妃の策略で、真実は単なる偶然であった模様…… 

この一件で儲秀宮で謹慎処分となったはずの高貴妃も、得意の崑曲のパフォーマンスで乾隆帝の歓心を得て瞬く間に復権に成功。ここで高貴妃の生母が早くに亡くなった話とか、継母や異母妹たちとの確執やらが盛り込まれますが、このスタイル、同じく于正制作の『神雕侠侶』で五絶の恋愛エピソードを盛ってきたのを何となく連想させますね……


で、この乾隆帝の誕生祝いで宴が開かれ、皇后以下妃嬪たちからそれぞれ誕生祝いが贈られますが……


高貴妃の贈り物、康熙帝の時代に西洋からもたらされた楽器によるパッヘルベルのカノンの演奏が列席者並びに視聴者の我々の度肝を抜きます。しかし皆で花火を鑑賞している隙に舒貴人が贈った仏舎利が何者かに盗まれ……というあたりで次回へ。
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『延禧攻略』その3

2019年08月24日 | 中国歴史ドラマ
『延禧攻略』第11~15話まで見ました。


高貴妃の軍師嘉嬪は、なおも愉貴人を陥れるべく犬嫌いの彼女に高貴妃の飼い犬をけしかけたり、弱みにつけ込んで彼女の侍女を買収し、性懲りも無く毒を盛らせようとします。嘉嬪は『宮廷の諍い女』でいう曹貴人のポジションですね。

そうこうしているうちに、福建から献上されてきたライチの木が皇后の誕生祝いとして乾隆帝から下げ渡され、妃嬪を招いてそれをお披露目する茘枝会が開かれますが、お披露目の寸前にライチの実が高貴妃の手の者によって切り落とされてしまうという事件が発生。しかし瓔珞は慌てず騒がず高貴妃の犬を密かに攫って罪を犬と飼い主に押っつけます。ついでに愉貴人の一件も露見させ、すべての罪を一身にかぶせられた嘉嬪は貴人に降格。(その後またやらかして更に答応に降格……)


一方、乾隆帝の妃の中では良識派でクセのない嫻妃ですが、弟が鄂善の汚職事件に関与して投獄され、獄中で病死。清廉潔白で知られる父は女房にせっつかれて助命嘆願のために怡親王に賄賂を送ったばかりに、怡親王→高貴妃のルートで露見して投獄。すべてに絶望した母は目の前で自殺と、身内の不幸が一気にふりかかってきます。皇后の尽力により父那爾布は何とか釈放されたものの、もう元の彼女には戻らないのでした…… ということで早々と嫻妃が闇落ちしてしまった模様です。この時代の怡親王弘暁は、康熙・雍正朝の十三阿哥こと胤祥の息子ですね。高貴妃の実家の高氏とはずぶずぶの仲のようです。

高貴妃一派は茘枝会の意趣返しとばかりに怡親王を使って瓔珞を陥れようとします。怡親王の部下慶錫と彼女が密会していたと誣告しようとしますが、その動きを察知していた瓔珞がすぐさま反論。今回も前面に立って動いた華貴人は、自分が産んだ四阿哥の養育権を奪われてしまいます……

しかし怡親王は反省の態度を見せず、それが気にくわない瓔珞は、坤寧宮で乾隆帝・皇后臨席のもとで祭祀が行われ、出席した群臣に胙肉が下げ渡された際に、怡親王の肉に塩を振りかけて彼を陥れようとします。この儀式では味付けをせず単に湯で煮込んだだけの肉を食べなければならず、こっそり味付けをして食べるのは不敬だと見なされたのです。これで怡親王は宗人府へと連行されて行きますが、今一人同じワナを仕掛けた傅恒はきっちりワナを回避。

ワナを見抜いた傅恒は後日瓔珞を問いただします。そこで瓔珞の姉「阿満」のことは耳にしていたが、彼女とは本当に関わりがなかったことが明らかとなり……
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『延禧攻略』その2

2019年08月19日 | 中国歴史ドラマ
久しぶりの『延禧攻略』です。今回は第6~10話まで見ました。


瓔珞は姉の死に皇后の弟富察傅恒が関与しているらしいことを知り、何とか彼と接近する機会を作ろうとします。

さて、瓔珞は皇后の鳳袍の刺繍を担うことになりますが、その刺繍に使用する孔雀羽線が貴重な物なので「絶対なくすなよ?」と念を押されたと思ったら、案の定同僚の玲瓏の陰謀により盗難に遭ってしまいます。そこを毛皮に用いる鹿尾絨線で間に合わせて刺繍を仕上げて自ら皇后に献上。

そして皇后から鹿尾絨線を使用した理由を聞かれると、「清朝が北京に入関する前の習俗に合わせました」ともっともらしい理由を口にし、後宮の綱紀粛正を図っていた皇后の意図とマッチしたということでお褒めの言葉を頂きます。そして誰かに実情をチクられる前に、皇后と二人きりになったタイミングで自分から本当の理由を皇后に申し出ます。このあたりヒロインの頭の回転の速さや世知が垣間見えてめっちゃ面白いですね。

で、孔雀羽線の盗難が明るみに出たところで、盗難の犯人玲瓏が罪を瓔珞の親友吉祥に押っつけ、彼女は棒打ちの刑に処されて死ぬことに。吉祥ちゃん、割と早いタイミングで死にましたね…… しかし玲瓏は性懲りも無く瓔珞を出し抜こうとします。瓔珞と皇帝に献上する服を縫う勝負を行い、瓔珞が縫った服を盗んで自分のものと偽って勝利を収めますが、その服の襟の部分に針が残っていたということで、罪に問われて収監されることに。瓔珞はたまたま不注意だったと言っていますが、本当のところはどうだったのか……

鹿尾絨線の一件で皇后から気に入られた瓔珞は、綉坊から皇后の住まう長春宮の侍女へと引き立てられます。ある日皇后の命で懐妊した愉貴人のもとにお伺いをしたところ、いきなり高貴妃配下の宦官が愉貴人を絞殺しようとする現場に出くわしてしまい、自分も口封じに殺害されそうになりますが、持ち前の知略で騒ぎを大きくし、高貴妃が罪を皇后に押っつけようとするのも阻止して何とか危機を切り抜けます。突拍子もなく生きるか死ぬかというピンチに巻き込まれて知略で切り抜ける展開は、やはり『鹿鼎記』の韋小宝を見ているようです。

しょっちゅう長春宮にやってくる傅恒ともお近づきになり、試しに姉の名前を出して「阿満の妹だ」と名乗りますが、彼は顔色を変えたものの「そんな人は知らない」としらを切り……というあたりで次回へ。

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『長安十二時辰』その10(完)

2019年08月16日 | 中国歴史ドラマ
『長安十二時辰』第46~48話まで見ました。

檀棋は大吉酒肆から靖安司へと逃れ、何執正らに「聖人」の居場所を告げます。そして元載&王韞秀とともに手勢を率いて大吉酒肆を包囲するが、このカップル、この期に及んで太子の命と偽って「聖人」に矢を射かけさせたりしてます…… そして包囲戦に巻き込まれた女児を助け出し、酒場の前に立てかけた第八団の軍旗を守り通そうとした龍波の背にもハリネズミのように矢が突き刺さり、あえなく退場……


その頃、靖安司ではこれまで何があっても粛々と時刻を告げていた龐霊さんが林九郎のスパイだったことが判明…… スパイは姚汝能だけではなかったようです。林九郎の二女と恋仲ということでスパイ役を買って出たということですが、秘密を守り通すために自害。

そしてこれまで靖安司や張小敬のために尽くしてきた徐賓が、実は今回の事件で関係者を背後から操っていた黒幕ではないかという疑惑が持ち上がります。一方、そんなこととは露知らない「聖人」と張小敬は大吉書肆の隠し穴から徐賓の経営する製紙工場へと移動。「聖人」の身柄を引き取った徐賓は馬車で宮中に送り届けようとしますが、「お前に命令した者と一緒に引き立ててやろう」「何?命令した者などいない?本当にそれほどの能力があるなら八品官などではないはず」という「聖人」の何気ない言葉に、所詮こいつも官位でしか人を判断できないのかと深く失望。

で、今日一日様々なドラマの舞台となった靖安司の鼓楼に「聖人」を連れ込み、人質にとる形で、「自分は宰相が務まる器だ」「お前はなぜ林九郎などを重用しているのだ?」などと思いの丈をぶつけますが、ここに至っても「聖人」から「太子がお前の黒幕なのか?」などと疑われているのには見ていてつらみがあります……(もちろんそんな黒幕などいません)そこへこの二人を救おうと張小敬が鼓楼へと突入。徐賓とひとしきり問答をかわしますが、王韞秀の放った矢が徐賓に刺さり……

【総括】
唐代の長安に関する考証の成果と、中国時代劇版『24』という趣向(割とアメドラ的な雰囲気が濃厚な作品でした)、そして「蚍蜉」すなわち同胞の「無敵の人」によるテロという今日的テーマを融合させた作品でした。徐賓のような全能感を持ちながら世に容れられない人物がテロをお膳立てしていたという設定もかなり今日的な発想ではないかと思います(こういう人物は、前近代の感覚では「山月記」の李徴のように虎にでもなるしかなさそうです)

この作品、報道などでは仮に「長安の一番長い日」という英題・邦題がつけられていますが、本当の「長安の一番長い日」は本作より10年以上後の安史の乱による玄宗の長安からの逃亡であるはずで、ラストの張小敬の「再び長安が危機に陥ったら戻ってくる」という台詞はそれを示唆するものでしょう。本当のカタストロフはドラマで描かれた事件ではないというのも、何やら示唆的ですが……

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『長安十二時辰』その9

2019年08月13日 | 中国歴史ドラマ
『長安十二時辰』第41~45話まで見ました。

一向に自分を信用しようとしない父親や、その尻馬に乗る林九郎の態度にブチ切れた太子が興慶宮から退出。その後で何執正が太子のために「聖人」を叱責しますが、「聖人」は逆に太子や国家への思いを訴え、何執正を心服させます。


色々ふんだりけったりの太子李璵(後の肅宗)。

太子と入れ替わるように、聞染の死を知った龍波が「聖人」にひとこと物申してやろうと手勢とともに乱入。やはり興慶宮の入り口に石油をまいたりしております…… 「聖人」と対峙する龍波ですが、意外にも「聖人」が安西鉄軍第八団の一件を把握しており、戦死した戦友たちの名前が朗々と読み上げられたことで、さしもの龍波も「聖人」に心服しそうになります。何執正の件といい、こういう局面でだけカリスマ性が発揮されるのも困ったものです……

そして事情を知らない「聖人」は大量の火薬が仕掛けられているはずの灯楼に火矢を射かけますが、灯楼は炎上・崩壊しても、張小敬が切除するために頑張ったということで、爆発の鍵となる「麒麟臂」は作動しません。その様子を見た龍波は逆上して「聖人」護衛の龍虎軍と乱闘を開始。張小敬も興慶宮に合流して龍波と同調し、聞父子の件に関与したということで永王を斬りつけ、「聖人」と厳太真を人質にとり、興慶宮から撤退しますが、実は張小敬が人質にとったのは厳太真と見せかけて檀棋なのでした。厳太真の方は「聖人」お付きの宦官から「将来聖人があなたの命を犠牲にすることがあれば、今日のことを思い出してください」と意味深な言葉をかけられます。

檀棋が厳太真と入れ替わったことは龍波にもたちまち露呈し、「よくも騙したな!」と張小敬にブチ切れますが、張小敬の方は何とか彼を生かしたい模様。一方、主が不在となった興慶宮では、太子擁立を図る郭利仕らと、永王(張小敬に手加減されて命は助かったらしい)を擁立して実権を得ようとする林九郎の思惑が交錯。林九郎の策謀により太子は謀反人認定されてしまいます。

隙を突いて龍波のもとから逃亡した「聖人」は、夜の街中をさまよっていたところを戸部の役人祝慈一家に保護され、彼らによる貧民の振恤に付き合ってその暮らしぶりと、大唐の最盛期を導いたと自負する自身の統治の現実を目の当たりにします。しかしその祝慈一家も、自分たちの乗る馬車を襲おうとした夜盗と駆けつけた龍武軍との小競り合いの中で射殺されてしまい、激怒した「聖人」はなぜか隠し持っていたらしい爆薬に火を付けて兵士たちに投げつけます。怒りのあまり自らも街に放火する玄宗…… 

「聖人」は騒ぎを聞きつけた張小敬らによって再び保護され、一行は馴染みの酒場「大吉酒肆」で一服し、「聖人」の処分や長安を出るか否かで対立。一方の太子の方は林九郎の意を承けた甘守誠将軍に捉えられそうになるところを何執正と寧王孫(玄宗の兄の孫)に助けられ、李必が再び主導権を取り戻した靖安司に落ち着き…… というところで時刻は卯初。日の出が近づいてまいりました。
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『長安十二時辰』その8

2019年08月08日 | 中国歴史ドラマ
『長安十二時辰』第36~40話まで見ました。

前回明かされなかった張小敬が赦免された経緯ですが、どうやら「聖人」の思し召しで半日だけ赦免されたということのようです…… そして靖安司の不祥事をめぐって「聖人」の面前で太子と林九郎が争論したり、義子の何孚がテロに加担したことを問われた何執正が年のせいか居眠りしていたり、太子から「自分と林九郎のどちらが大事か」と問われた「聖人」が「林相ーーー!!」と絶叫したりと、地獄絵図が繰り広げられます。

そして「聖人」は太子に林九郎へ肉を取り分けてやるよう命じ、林九郎はこれ見よがしにトイレに行くと中座して太子を待たせ、各国の使者にその様子を見せつけます。何だか安史の乱で「聖人」が追い詰められるのが待ち遠しくなるような展開が続きますが……

一方、張小敬は灯楼への侵入に成功しますが、龍波とともに一足先に灯楼に足を踏み入れた李必は、両手を縄で縛られて吊り下げられ、魔王に捕まったお姫様みたいな状況になってます (^_^;) 

張小敬は龍波に加担する灯楼設計の責任者毛順や魚腸、聞染と向かい合いつつ、灯楼内に仕掛けられた「麒麟臂」を切除しようと四苦八苦。そして彼が安西鉄軍第八団の一員として出征し、塞外の烽燧堡で立てこもった時のことが語られます。第八団の面々は孤立無援で食糧にも事欠く状態のまま戦いを継続していましたが、味方から見捨てられたことを知ってしまい、イチかバチかの敵陣への突撃で起死回生を図ります。戦地より帰還して数年後、自分たちは総大将の蓋嘉運将軍によっておとりにされていたことを知るのでした……

そうこうしているうちに灯楼を包囲していた元載と王韞秀は、張小敬の死罪が赦免されたと偽って不意打ちをかけるます。その際に聞染が王韞秀に人質に取られ、自ら頸動脈を斬り……と、展開がどんどん救いようがない方向にシフトしていきます。


今日一日で知り合って結婚を誓い合う仲にまで進んだ元載と王韞秀のカップル。このカップルも実在しているとのこと。

灯楼内の上層をかけのぼる張小敬は遂に龍波と対面。彼の正体が往時の第八団の戦友蕭規であったことを知ります。そして彼が死んだ聞染と互いに心を許しあっていたのも、丁老三がテロに加担したのも、聞染の父親聞無忌、そして丁老三と戦友同志であったからだとここで察せられるわけです。「誰の命令で動いている?」と問い詰める張小敬に対して、「動かしているのはオレ自身だ!」と返す龍波。いよいよ「闕勒霍都」案は政界の誰の陰謀でもなく、「蚍蜉」(原義は羽アリ。転じて虫けらぐらいの意味あいだと思いますが、「無敵の人」と意訳してもいいような気がします)による反乱ということがはっきりしてきましたね。
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『長安十二時辰』その7

2019年08月03日 | 中国歴史ドラマ
『長安十二時辰』第31~35話まで見ました。

林九郎は「太子が事件の黒幕である物証を取りに行く」という李必の言葉を信じ、元載を見張りに付けて邸宅の外に出しますが、李必は守捉郎たちのもとに駆け込み、臨機応変にまんまと逃げおおせます。元載が何とか責任逃れをしようと「林右相、お喜び下さい!李必は守捉郎と結託して見張りの兵を襲撃しました!これで靖安司を監督する太子の新たな大罪が加わりました!」などと言い訳を試み、林九郎に「それで李必はどうした?」と呆れられてますw。

その直後、三司の官印を手元に置いて自分が思うままに文書を決済していたのがバレたということなのか、「聖人」に布衣を贈られ、「これを着て観灯宴に出席せよ」と命じられてしまう林九郎…… 「聖人」は元来林九郎に政務を代行させて自分は厳太真(=楊貴妃)とともに華清池に隠居する心づもりで、彼はこれを機に太子を排除しようと目論んでいたのですが、これでその野望も潰えたようです。

李必が逃亡したということで、姚汝能に棺桶に埋められて殺害されそうになった檀棋ですが、実は仮死状態にして助けようとしていた姚汝能の意図を察し、元載が邪魔立てをしますが、太子の助けを得て戻ってきた李必が救出。しかし檀棋は自分の気持ちが張小敬にあることを自覚し、これまで忠実に仕えてきた主人の李必から離れ、単身張小敬の助命へと動き出します。

その張小敬は、靖安司爆破に巻き込まれて死んだと思われていた徐賓→阿倍仲麻呂の従者だったという鍛冶職人晁分のもとなどを転々とし、龍波の狙いは興慶宮広場に建てられた灯楼を爆破し、観灯宴に臨席する「聖人」や多数の見物客を爆殺することにあると突きとめます。


そして李必も興慶宮広場に駆けつけますが、またもや龍波に取っ捕まり、ともに灯楼の中へ。


そしてここで厳羽幻=楊玉環=楊貴妃登場。檀棋とは旧知の仲らしく、彼女から何とか張小敬を助けられないかと相談を持ちかけられます。


「聖人」こと玄宗もようやく登場。齢60にしては少々老けすぎているような気もしますが…… ここで張小敬による熊火幇虐殺の事情が明らかとなります。「聖人」の十六皇子の永王が外国の使者のための使節駅館の建設用地の確保のため、熊火幇を使って聞無忌&聞染父子の店舗などに立ち退きを迫り、それに巻き込まれて聞無忌が死ぬと、張小敬が熊火幇の面々、そしてそれを支持した上司の万年県県尉を殺害。更には永王のもとに乗り込んで脅しつけ、聞染の身の安全を保証するよう迫っていたのでした。

「聖人」の面前で、死刑囚となったはずの張小敬を起用した責任を太子に押っつけようとする永王と林九郎でしたが、檀棋の願いを聞き入れた厳太真の介入、そして太子と林九郎の政治的妥協があったらしく、張小敬を包囲する元載に対し、太子・林九郎の両者連名で釈放の命令が届けられます。張小敬は急ぎ現場に駆けつけますが、タイムリミットの丑正の刻まであと僅か……というところで次回へ。


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2019年7月に読んだ本

2019年08月01日 | 読書メーター
三国志の考古学 出土資料からみた三国志と三国時代 (東方選書 52)三国志の考古学 出土資料からみた三国志と三国時代 (東方選書 52)感想
長らく出土資料に恵まれてこなかった後漢・三国時代史研究だが、近年走馬楼呉簡や曹操墓など目立った発見があったことを承けて、それらを使用した研究の成果を紹介。ただ、本書の異図とは逆に研究の広がりよりは限界を示すものになっているような気もする。数量、あるいは性質が限られた資料を最大限有効に活用して読み取れるだけのことを読み取っていこうとする試みとしては面白い。
読了日:07月01日 著者:関尾史郎

日米安保体制史 (岩波新書)日米安保体制史 (岩波新書)感想
文字通り安保条約の成立から現在までの状況を追った通史。安保体制の日米同盟化、グローバル化など、内実は少しずつ変化しつつも、日米双方の「非対称性」と「片務性」が問題にされ続けるという構造と、米軍機の墜落事故などの事故・事件が多発するというのは何ら変わっていないのだなと思った。
読了日:07月03日 著者:吉次 公介

楊貴妃 大唐帝国の栄華と滅亡 (講談社学術文庫)楊貴妃 大唐帝国の栄華と滅亡 (講談社学術文庫)感想
楊貴妃の生涯は割とあっさりめで、当時の文化的・歴史的背景が読みどころ。後世に作られた関連の伝説や文学作品についてかなり紙幅を割いているのも特徴。
読了日:07月05日 著者:村山 吉廣

三体三体感想
第一部は文革文学というか傷痕文学のSF版という印象。欧米や日本のSFだと汪淼、丁儀のような人物だけで話が完結し、史強のような人物は出てこないか、出てきても本作のような重要な役割を担うことはないように思う。欧米のSFの猿まねではない中国ならではの要素が盛り込まれていると思う。老百姓の力は地球の人類を救うのか。第二部以降も注目したい。
読了日:07月07日 著者:劉 慈欣

キリスト教と日本人 (ちくま新書)キリスト教と日本人 (ちくま新書)感想
日本キリスト教布教史を取っかかりにした著者なりの信仰論。キリスト教布教史の部分は先行する著作のまとめという感じだが、「かくれキリシタン」が実は16~17世紀の当初の段階からそれほど変容していなかったのではないかという議論が面白い。ただ、日本にキリスト教が根付かなかった事情について、本書で挙げられているような背景は大体中国や朝鮮半島でも当てはまるのではないかと思う。大胆に言えば、宣教する側や信者の側ではなく、逆に宣教される側の我々の問題点にもっと注目すべきではないかと思う。
読了日:07月09日 著者:石川 明人

二十七日間の皇帝 劉賀 (埋もれた中国古代の海昏侯国)二十七日間の皇帝 劉賀 (埋もれた中国古代の海昏侯国)感想
1巻が海昏侯劉賀の生涯と当時の歴史的背景、2巻が海昏侯墓出土文物について、3巻が海昏侯及び海昏侯墓に関するQ&Aとなる。海昏侯墓に関する知識が手軽に得られる図録集となっているが、1巻に内容と直接関係せず、かつ後の巻と重複する図版が多いのと、「監訳者あとがき」に触れられている通り3巻の内容に既刊分との重複が多いのが難点か。一般書としてはかなり高価なのだから、思い切って編訳にしてもよかったのではないかと思う。
読了日:07月10日 著者:盧 星,方 志遠

流罪の日本史 (ちくま新書)流罪の日本史 (ちくま新書)感想
古代から江戸時代までの流罪を通覧。死罪に次ぐ重罪、あるいは死罪を回避するためのものから、権力者の威を示すためのものに変化するなど、位置づけの変遷がうかがえるのが面白い。戦国時代において死罪にするか流罪にするか、流刑者の帰国を許すかは明確な基準が認められないというのは、前近代の刑罰とはどういうものかを暗示するかのようである。終盤の八丈島の宇喜多氏の話も面白く読んだ。
読了日:07月16日 著者:渡邊 大門

歴史的に考えるとはどういうことか歴史的に考えるとはどういうことか感想
様々な方向から「歴史的に考える」歴史教育について議論したものだが、小中高の教育現場での取り組みに関係する報告が面白い。特に第6章で紹介されている、小学校での国風文化の成立についてのグループ討論で、塾であらかじめ学習していた生徒が、その内容をなぞる形でグループ内での議論を押し切っていたという話がかなり示唆的になっているように思う。この種の本としては取っつきやすい切り口の話題が多い。
読了日:07月19日 著者:

世界史とつなげて学ぶ 中国全史世界史とつなげて学ぶ 中国全史感想
世界史とつなげるというよりは、グローバルヒストリー的手法でとらえ直した中国史という感じ。全般的にかなりざっくりした解説になっているが、宋・契丹・西夏などの並立の状況にウェストファリア体制のようなものが成立し得た可能性を見出したり、朝貢一元体制は明朝のみが打ち出したシステムで、全時代的に存在していたものではなかったという指摘は注目すべき。
読了日:07月21日 著者:岡本 隆司

曹操: 奸雄に秘められた「時代の変革者」の実像曹操: 奸雄に秘められた「時代の変革者」の実像感想
関係の専門家による論考14本からなる「曹操研究の最前線」的なアプローチ。家門としての曹氏の再評価、王陵・皇帝陵としての曹操高陵の位置づけ、屯田制の施行や税制改革といった政策面での評価など面白く読んだが、日本の戦国時代などの「研究の最前線」シリーズと比べるとやや物足りない印象も受ける。更に学術性を高めた続編に期待したい。
読了日:07月22日 著者:

日本社会のしくみ 雇用・教育・福祉の歴史社会学 (講談社現代新書)日本社会のしくみ 雇用・教育・福祉の歴史社会学 (講談社現代新書)感想
何を学んだかが重要でない学歴(学校歴)重視、一つの組織での勤続年数の重視(年功序列)、日本企業におけるこの二つの特徴が歴史的にどのように形成されてきたのか、アメリカとドイツを比較対象にして論じていく。大企業型・地元型・残余型の日本の雇用・労働の三類型のうち、大企業型が締める割合は実はバブル崩壊を経てもそれほど変化していない、団塊二世の就職難は一九八五年の時点で予測されていたなど、ロスジェネ世代にとっては辛い指摘が多い。
読了日:07月26日 著者:小熊 英二

独ソ戦 絶滅戦争の惨禍 (岩波新書)独ソ戦 絶滅戦争の惨禍 (岩波新書)感想
独ソ戦を通常戦争・収奪戦争・絶滅戦争という三種類の性格が複合した「複合戦争」と位置づけ、戦局の悪化とともに絶滅戦争としての性質が濃厚となっていったので、軍事的合理性を逸脱した虐殺が行われるようになったこと、また収奪・絶滅戦争を志向するヒトラーと、独ソ戦を通常戦争と認識する国内の軍人や外国との齟齬が合理性なき戦争指導と和平の拒絶につながったさまを描き出す。戦争観の違いへの着目は、他の戦争を考えるうえでも応用が利きそう。
読了日:07月29日 著者:大木 毅

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