博客 金烏工房

中国史に関する書籍・映画・テレビ番組の感想などをつれづれに語るブログです。

『武侠』(邦題:『捜査官X』)【一部ネタバレ有り】

2012年04月29日 | 映画
ということで、昨日『捜査官X』こと『武侠』を見に行って来ました。Xって一体何やねんと思ってたら、金城武演じるシュー(Xu)の頭文字らしいです。その発想は無かった……

舞台は四川のとある少数民族の村。ひょんな事から甄子丹(ドニー・イェン)演じる村の職人さんが外地からやって来た凶悪な逃亡犯2人組を倒してしまいますが、街から捜査に派遣された金城武演じる警察官がドニーさんの身元を不審に思い、あれこれ詮索した結果、彼が西夏族による暗殺者集団「地煞七十二星」のナンバー2であったことを知ってしまいます。

そして「地煞七十二星」の教主で、10年前に逃亡した息子のドニーさんの行方を探っていた王羽(ジミー・ウォング)も村に到来。このジミーさんが登場することで作品全体の雰囲気が変わるというか、まるっきり違う作品になります(^^;) 特にジミーさんがドニーさんの息子、すなわち自分の孫にムリヤリ豆を食べさせる場面は、うっかり子供に見せたらトラウマになりそうなレベルです。

幼い頃母親によく「悪いことしてると怖いおじさんに連れて行かれますよ」という脅しを聞かされたもんですが、この「怖いおじさん」を映像化するとこんな感じになるのかなと。この作品がPG12指定というのも納得出来ますw

そしてドニーさんと金城武がジミーさんに勝ち目のない戦いを挑むことになるわけですが、衝撃のラストシーンを見て隋唐物に出て来る李元覇の最期を思い出したのは私だけではありますまい。……えっ、私だけですか(^^;) 
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張紀中版『西遊記』その3

2012年04月27日 | 中国古典小説ドラマ
『西遊記』第13~18話まで見ました。

観音菩薩の弟子恵岸行者の協力もあり、無事に徐錦江演じる沙悟浄が唐僧に弟子入り。これで仲間が全員揃った状態に。



その後、万寿山五荘観に立ち寄った一行ですが、そこで唐僧にふるまわれたのがお馴染み人参果。



中身が中途半端に孵化しかかっている卵というイメージで、このグロさは唐僧でなくても返品したくなるレベルw しかし悟空らは人参果に寿命を伸ばす効用があるということで、盗み食いした挙げ句にそれが童子たちに見咎められると、ブチ切れて人参果の木を打ち倒してしまいます。留守から戻った五荘観の主の鎮元子はそれを知って激怒し、唐僧と悟空らを捕らえますが……

人参果の一件が片付いた後は、安以軒演じる白骨精が登場。ここまで八戒の嫁以外美人らしい美人が登場していなかったので、思わず見とれてしまいます(^^;) しかしここで白骨精に取り憑いた村娘や老婆を容赦なく打ち殺す悟空の行状に激怒り心頭の唐僧は、悟空の言い分を認めつつも破門にしてしまいます。そしてその後、うっかり黄袍怪の巣に入り込んでしまいも囚われの身になる唐僧。いったい何やってんすか…… 

今回黄袍怪を演じているのは、張紀中の金庸ドラマや『春秋淹城』でお馴染みのイケメン俳優程皓楓。宝象国の王女百花羞を攫ってきて嫁にしていますが、百花羞の方も、生き別れとなった父親の宝象国王の身を案じつつも、2人の子供を儲け、黄袍怪との結婚生活に満更でもない様子。おまけに黄袍怪と百花羞との前世からの因縁話が悲恋秘話みたいな扱いになっているのですが、これがイケメン補正というやつかっ!猪八戒と黄袍怪、どこで差が付いたのか。

そして父親の宝象国王というのがこれ。



『射英雄伝』の西毒や『レッドクリフ』の劉備でお馴染みの尤勇さんです(^^;) 百花羞に解放された唐僧は彼に黄袍怪のことを訴えますが、事の次第を知った黄袍怪に虎に変えられてしまいます。で、猪八戒は悟空に助けを求めるべく花果山へと走りますが……
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張紀中版『西遊記』その2

2012年04月15日 | 中国古典小説ドラマ
『西遊記』第7~12話まで見ました。

唐僧(玄奘三蔵)によって500年にわたる五行山の封印から解放された孫悟空ですが、師父となる唐僧が空を飛べず、法術も使えないと知って超絶にがっかり。つーか、あんたの師匠になる人は空を飛べないといかんのかと(^^;)

で、悟空のあまりの乱暴ぶりに呆れ果てた唐僧は、観音菩薩から授かった緊箍児(悟空のトレードマークの金の輪っかですね)を悟空にはめることになりますが、心優しいお坊さんらしく(?)はめる前とはめた後でそれぞれ罪悪感を感じているのが面白いところ。



それで上の画像の如く孫悟空がようやくお馴染みの孫行者となったわけですが、こうして見てみると悟空を演じている呉樾さんの素顔が全くわかりませんね。

その後、とある寺で宿を借りたところ、その寺の住職が袈裟マニアで唐僧の袈裟を借り出してそのまま我が物にしようと、唐僧と悟空を焼死させようとしたり、その火事のドサクサに紛れて黒風大王が袈裟を盗み出したりといった話が展開されますが、このドラマ、こんなどうでもいい話もきっちり映像化しちゃうのか。ここで間尺を使うぐらいならどうして大鬧天宮の所でもう少し話を引き延ばさなかったのかとツッコミたくなりますが……

黒風大王から袈裟を取り返した後は高老荘へ。ここで人間に化けて荘主の娘と結婚しようとした猪八戒が登場するわけですが、散々馬車馬のように畑仕事とかさせておいて、いざ正体が妖怪だとわかったら追い出そうなんてひどいw 今回のドラマでは嫁の翠蘭ちゃんが八戒のことを想い続けているのが救いです。個人的には人間の男と白蛇の精が夫婦になる『白蛇伝』がアリなら、その逆バージョンとも言える八戒が荘主の娘と添い遂げるという展開もアリだと思うのですが。……えっ、ダメっすか(^^;)

八戒を弟子に収めた後、黄風大王のもとに唐僧が攫われるイベントを経て流沙河に。ここで香港映画でお馴染み徐錦江さん演じる沙悟浄がキター!ということで次回に続きます。
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張紀中版『西遊記』その1

2012年04月08日 | 中国古典小説ドラマ
金庸原作ドラマの制作者としてお馴染みの、張紀中制作『西遊記』を見始めました。今回は全60話中第1~6話まで鑑賞。

花果山で誕生した孫悟空は須菩提祖師に弟子入りして法術を身に付けますが、その力を使って東海龍王に金箍棒をたかったり、閻羅殿で自分の寿命を伸ばしたりとやりたい放題。

で、天界の玉帝から招安を受けて弼馬温に任じられるも、それが単なる馬飼いの官と知った悟空は怒って大暴れ。玉帝は托塔天王に悟空追討を命じますが、配下の巨霊神や息子の哪三太子といった手練れが次々と敗退。困った玉帝は「斉天大聖」の称号を認めて様子を見ることにしますが、その後も西王母の桃を食い荒らすなど悪事がやまず、遂に玉帝の甥の二郎神に追討の命が。

悟空は二郎神との激闘の末に捕らえられ、道祖(太上老君)の八卦炉に放り込まれますが、そこからも脱出して大暴れ。いよいよ手が付けられなくなった時に西方より仏祖(釈迦如来)が現れて悟空と対峙することとなり……

ということで、6話までで「大鬧天宮」の話が終わってしまいました(^^;) 元の話でも一番盛り上がるのがこのあたりということで、これまでの中華圏の『西遊記』物ではここらへんでオリジナルストーリーや設定を盛り込むだけ盛り込んで引き延ばすというパターンが多かったのですが、今回は原典通りの展開をなぞっただけであっさり終わってしまいましたね。それでも天蓬元帥(後の猪八戒)が悟空と馴れ合って将来のことが思いやられたり、馮紹峰(『宮』で八阿哥を演じたイケメンですね)演じる二郎神が、玉帝に逆らう悟空を心の中では憎からず思っていたりと、細かい見所はあるわけですが。

「大鬧天宮」と言えば、「この手の神話劇に出て来る天界って、なぜかギリシア神話チックな感じになっていることが多い。おそらくそれが現代中国人の天界のイメージなんだろう。」という話を以前にどこかで見聞きし、今回のドラマではどうなってるか楽しみにしていたわけですが……





CG技術が発達しても、どことなくギリシア神話チックな天界は今回のドラマでも健在なのでありましたw 2枚目の画像の古代ギリシア・ローマ風の兜に注目(^^;)
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『百代の過客』

2012年04月07日 | 日本史書籍
ドナルド・キーン『百代の過客 日記に見る日本人』(講談社学術文庫、2011年10月)

以前に読んだ同じ著者の『日本人の戦争』が本書の続編にあたるということで、こちらも読んでみることに。日本では古くから日記が文学として読まれてきたと評する著者が、平安時代の円仁の『入唐求法巡礼行記』から始まって幕末の川路利謨の『下田日記』まで、『土佐日記』・『奥の細道』のような有名古典からそうで無いものまで数十編の日記を取り上げています。

特に(たぶん色々とネタにしやすいからでしょうが、)旅日記の占める割合が多く、現代の我々が海外旅行に行って取り敢えずガイドブックに載ってる観光地を写真に収めてくるのと同じような感じで、昔の旅は取り敢えず先人が詩歌に残した名跡を観光し、同じように歌や記録を残すのが流儀であったとか、色々面白い指摘をしています。個人的にはもう少し旅日記以外の通常の日記について取り上げて欲しかったような気もしますが……

以下、例によって面白かったポイントを書物別に列挙していきます。

『竹むきが記』
南北朝時代の朝廷に仕えた女性日野名子の日記。彼女とその家族も当時の貴族の例に漏れず、鎌倉幕府滅亡や南北朝の争いといった動乱に巻き込まれ、波乱の人生を送ることになるわけですが、夫の西園寺公宗が鎌倉幕府の復興画策に関わったことで囚われの身となり、彼女の目の前で名和長年に斬首されたというだけで泣ける…… (ただしこの話は『太平記』に見えるものの、この書では触れられていないということですが。)日本映画界は彼女を題材にいわゆる「スイーツ(笑)」層向けの泣ける映画を作るべきですよ!

『富士紀行』
この書は室町幕府第6代将軍足利義教が富士山見物に赴いた時に随行した公家飛鳥井雅世が残した旅日記ですが、以下はこの時に彼が義教に捧げた和歌二編。

「誰もみなひかりにあたる日本の神と君をとさぞてらすらん」
「君が代はながれもとをしさめが井のみづはくむともつきじとぞ思ふ」


義教に対して「君が代」という言葉を使ってあたりでドン引きです(^^;) キーン先生も「天皇にでも向けて書いたものかと思われようが」と評してますが、義教はどんだけ当時の人に恐れられてたのかと…… 義教の治世に対する「万人恐怖」の評は伊達ではないということでしょうか。義教の暴君と言うか専制君主っぷりはもっと一般に知られてもいいかもしれません。

『高麗日記』
これは秀吉の朝鮮出兵に従軍した鍋島直茂配下の部将田尻鑑種の従軍日記ですが、日記を付けた動機は戦争が退屈だったからとのこと。これについて太平洋戦争時の従軍経験があるキーン氏はこう述べます。「だがこれは私自身の体験とも一致していて、短期間の戦闘のあとには、普通必ず長い退屈な時間が続くものなのである。多分戦争というものは、昔からずっとこうしたものであったにちがいない。」……そういうもんなの?(´・ω・`)

『井関隆子日記』
こちらは天保年間に旗本の未亡人となった老女がつけた日記。本居宣長ら国学者の著書に感化されてナショナリストになり、天保の改革を熱烈に支持し、大塩平八郎やシーボルトに日本地図を渡したことで獄死した高橋景保をdisり、そして非業の死を遂げた渡辺崋山を「蘭学なんかに手を出すからそんなに目に遭うんだよ!ざまぁwww m9(^Д^)」とプギャるなど、色々とひどいw 井関隆子さんが今の世に生きていたら、大阪維新の会の熱烈な支持者になってたりしたんだろうなあとしみじみ……
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お知らせ

2012年04月05日 | 雑記
中国ドラマ『歩歩驚心』の感想につきまして、中国人のファンの方からあまりにも紹介のしかたが酷いのではないかとお叱りを受けました。私自身も改めて記事を読み返してみて悪ノリが過ぎたと感じましたので、公開を停止することにしました。

まあ、『宮』のように最初からネタで作ってるドラマならともかく、『歩歩驚心』とか『太王四神記』などは見る人が見たら怒るだろうなとは思っていたのですが(´・ω・`)
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TVB96年版『笑傲江湖』その6(完)

2012年04月01日 | 武侠ドラマ
『笑傲江湖』第36~最終43話まで見ました。

岳不群は嵩山封禅台で左冷禅を打ち破って五嶽派の総掌門となり、林平之は余滄海・木高峰を討って両親の仇討ちを果たすも、令狐冲と任盈盈は2人が辟邪剣法を習得していることを見破ります。そして娘の岳霊珊は林平之に殺害され、妻の寧中則も夫の性根に気付いて絶望から自害するも、2人の死を物ともせずに野望の階段を駆け上る岳不群。その様子を目の当たりにした令狐冲はいよいよ師父に絶縁を宣言するのでありました。

その後岳不群は失われた五嶽派の武功を公開すると称し、五嶽派の領袖を華山思過崖に招きますが、乱戦の中で左冷禅が殺され、林平之は武功を廃され、岳不群も儀琳によって討たれと、死ぬべき人がどんどんと死んでいきます。

五嶽派がほぼ全滅したことを知った任我行は、恒山派など五嶽派の残党を勢力下に収めようとしますが、令狐冲はやはり日月神教への入信を拒否。1ヶ月後に恒山で正派と邪派の決戦が行われることとなり、少林寺・武当山からも助っ人が恒山に駆けつけます。

その頃、黒木崖では任盈盈が実は東方不敗から三屍脳神丹を飲まされており、その解毒の方法が見つからず、余命幾何も無いことが明らかとなりますが……

【総括】

ということで、一部オリジナル展開を交えつつ原作のラストまで到達しました。まあ、原作の終わり方があまりにもご都合主義で波乱が無いということで、盈盈が実は余命幾何も無いという話を盛り込んだのでしょうが、三屍脳神丹の解毒の方法が更にご都合主義だったのが何とも…… このオリジナル展開は必要だったのかとツッコミたくなります。

ここまで順調にほぼ原作通りに展開してきた本作ですが、このラストの展開で「魔教を批難しなきゃ正派の人士に邪派扱いされる江湖」という原作のテーマがやや薄くなってしまったのが残念。

で、このパートを見ている最中に新たなるドラマ版『笑傲江湖』制作の話題が飛び込んできました。

「霍建華版笑傲江湖ぉ~~ 」:『江湖迷人』

よそ様のブログの紹介記事で恐縮ですが…… 注目すべきは主演のウォレス・フォ……ではなく、制作・脚本担当が于正という所。あの漢代後宮トンデモスパイアクションドラマ『美人心計』や清朝後宮トンデモタイムトラベルドラマ『宮』の制作者ですね。たぶん原作とはかけ離れたトンデモ設定&トンデモ展開のオンパレードになるんでしょうけど、今から楽しみです(^^;)
コメント (3)
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