博客 金烏工房

中国史に関する書籍・映画・テレビ番組の感想などをつれづれに語るブログです。

『大江大河』その6

2019年02月23日 | 中国近現代ドラマ
『大江大河』その6

『大江大河』第31~36話まで見ました。

順風満帆に経済発展していく小雷家ですが、ここにきて老書記がリベートを受け取って村の工場で生産されたレンガを安値で横流ししていたことが発覚。幼い頃から面倒を見て貰ったからこそと雷東宝は老書記を厳しく問い詰めます。


老書記演じる王永泉は、実は『琅琊榜』の夏江の中の人でもあります。改革開放の時代に生まれ変わっても微妙な立場に立たされることに (^_^;) 東宝は老書記をレンガ工場の責任者から引退させることで隠密に処理を図りますが、老書記の息子が村長の雷士根のもとに怒鳴り込んだことにより、老書記の収賄が村中に知れ渡ってしまい、そしてそれを苦にした老書記が首吊り自殺…… 

そうなると今度は老書記が冤罪だったのではないかという風聞が広まり、東宝らチーム小雷家への風当たりがきつくなります。しかたがないので東宝は老書記の汚職の総額が31000元にのぼることを明らかにしますが、その額の大きさに逆に村人たちに動揺が広がります。31000元は今のレートに換算すると50万円ちょいといったところですが、「万元戸」という言葉がリアルに使われていた頃の話だというのを忘れないで下さい(「万元戸」という言葉はこのドラマでも出てくる)。

東宝は老書記の死によって償いは済んだことにしようとしますが、村人から遺族が31000元を村に償うべきではないかという声が揚がります。そこで遺族が弁償すべきかどうか投票にかけますが、圧倒的多数の村人が弁償すべきという方に投票すると、東宝は「お前たちは本当にオレの知ってる小雷家の人間なのか!?」と激怒。萍萍の墓に「貧しい頃は数ヶ月給料が停止されてもみんな団結して一生懸命働いていたのに……」と語りかけます。みんなの生活が豊かになったから汚職がおこり、またみんなが人間の心を失っていくという発想で、「倉廩実つれば則ち礼節を知り、衣食足れば則ち栄辱を知る」的な世界観とは逆の認識なんですね。

一方、宋運輝は西ドイツでの調査を終えて帰国すると、水書記から新車間(「車間」は工場の作業単位)の建設という大任を任されます。西ドイツの自分用のお土産にラップトップかというぐらいにバカでかい高級関数電卓を持ち帰っていますが、初期の電卓ってあんなんだったんですね (^_^;) 


そして地域の領導を招いての新車間始業の責任者という大役を無事果たすと(画像は新車間のコントロールルーム)、程開顔にプロポースし、彼女を連れて帰郷したり、姉の墓参りがてら小雷家を探訪したりしています。ここでも東宝と老書記の死を承けての汚職防止策の話に。前回の環境保護意識と同様に「反汚職」的な取り組みも時期的に少し早いような気もしますが……

東宝から1万元の資金を借りて個体戸(個人経営者)として金州の卸売り市場で小雷家産の電線を業者に販売するという商売を始めた楊巡&東北出身の戴嬌鳳のカップルですが、大口の取引先との酒宴にかつて小雷家との借金問題で揉めた江陽電線工場の責任者と鉢合わせし、相手をはめて取り引きをゲットしたりと、口八丁手八丁で順調に仕事をゲットしていきます。しかし楊巡の母親からは結婚を反対され、東宝からの借金の返済問題も絡んで楊巡と母親、戴嬌鳳との仲がぎくしゃくし始め……というあたりで次回へ。
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『大江大河』その5

2019年02月17日 | 中国近現代ドラマ
『大江大河』第25~30話まで見ました。

宋運輝は大勢の面前で費工場長と劉技師長が導入を計画している新設備は諸外国ではもう既に時代遅れだと批判し、工場長の不興を買ってしまいます。一方で水書記とは仲直りを果たし、二人でともに北京に資料調査に赴き、北京に移った元の徐書記(当初県長だったのが副県長の陳平原に地位を譲り、県委書記となった後に辞職)と再会し、新設備の調査に関して助言を得ます。徐書記は妻を亡くしたことで両親と子供が暮らす北京へと戻ったという設定ですが、この後も小運や雷東宝の後見人兼アドバイザーとして登場します。

金州化工では「設備引進大会」が開かれ、小輝は北京での調査の成果をもとに、費工場長や劉技師長が導入を進めようとしている設備は時代遅れであるばかりか、国内の他の工場も導入を進めようとしているので、新規性もないと批判。これが原因で再び技術員から現場作業に回されることになります。しかし劉技師長から、自分の知らない間に中央の判断によって水書記の退職が延期、更に費工場長は党校での学習を命じられ、水書記の主導で新設備導入の計画練り直しが決定されたことを知らされます。水書記復帰の大功臣のはずの小輝が現場作業に留め置かれていることから、劉技師長は「君は利用されたのだ」と言われてしまい、小輝は「たとえこうなるとわかっていたとしても、やはり会議では一技師として同じことを主張しただろう」と強がるほかありません……

一方、小雷家では雷東宝の指導のもと村の資金を電線工場建設と工員の教育養成に全ふりしてレンガ工場など他の部門では無償労働を強い、大隊の人々の不満が高まると東宝ら幹部連が私財を擲って当面の給与に充てるといった自転車操業が続きます。工員の養成には隣の市の国営電線工場の技師の葉を教師役として雇っていましたが、東宝は葉の工場の工場長の銭との交渉のすえ、小雷家の電線工場を国営電線工場との共同経営とすることに成功します。銭も元解放軍所属ということで軍のコネが生かされてますが、コネといっても単に二人とも軍にいたことがあるという程度のもので、こういうのも中国ビジネスでよく話題になる「解放軍ビジネス」の実態ではあったのでしょう。

さて、不遇を託っていた小輝は水書記のお声掛かりにより設備改造部へと異動し、程工場長のもとで新設備導入の実務にあたることになります。現場作業に留め置かれたのは、小輝が周囲から嫉妬されないようにという深謀遠慮だったようです。そして劉技師長の娘の劉啓明と付き合っていた虞山卿は、劉技師長が水書記との権力闘争に敗れて彼を後ろ盾とするアテが外れたと、彼女と何とか縁を切ろうと逃げ回ってます。


そこで「それではあんまりだ」と劉啓明の幼馴染みの程開顔が乗り込んできます。開顔は小輝の直属の上司程工場長の娘で、姉御肌の性格。虞山卿の友人ということで小輝にもいい印象を抱いていませんでしたが、段々2人は親しくなっていきます。

小輝のルームメイト尋建祥は夜の食堂で暴力事件をおこし、たまたま劉啓明とともに通りかかった虞山卿の頭にレンガを投げつけたということで警察に拘束。事情を知ろうと派出所を訪ねた小輝もその一味と勘違いされて投獄。身元引受人として小輝を引き取りに来た程工場長が「お前は出身が良くないんだから尚更行動には気をつけなきゃいかん」と説教してたけど、「反革命家庭出身」というレッテルが地味にそういう所にも響いてくるんですね…… で、小輝と、彼に説得されたらしい虞山卿も大尋の情状酌量を求めて運動し、刑期が幾ばくか軽減されますが、結局刑期10年ということで新疆に労働改造に送られます。実は個人的に本作の中でもお気に入りのキャラだったのですが、本作終盤か第2部での再登場に期待していましょう……

その頃、小雷家は電線工場の開業によって再び好況に転じます。そして小雷家の組織自体も大隊から村となり、同時に人民公社も郷政府に改められています。これは当時の人民公社解体に関係する措置でしょうか?雷東宝は売り上げが思わしくない生け簀を潰して養豚場を作ろうとしますが、生け簀で働いていた村民雷忠富が猛反発し、その補償に追われます。その前後に春節の休暇で里帰りした小輝は久しぶりに小雷家へと足を運び、電線工場では有害な素材を用いて生産を進め、汚染物資の排水処理もなされていないことが気にかかりますが、東宝はまずは村が豊かになるのが先だとあまり真剣に受け止めません。環境保護に意識を向けるのは時代的にまだ早いような気がしますが、このことが第2部以降に影響してくるのでしょうか。 


そして東北で商売をしていた楊巡は、恋人の小鳳を連れて故郷に近い金州で工業用品の卸売り商売を始めることになり、まずは小雷家から大量の電線を仕入れようとしますが……というところで次回へ。楊巡パートがいよいよ本格始動となるようです。
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『大江大河』その4

2019年02月10日 | 中国近現代ドラマ
『大江大河』第19~24話まで見ました。

仕事が変わってから工場付設の図書館で夜中まで調べ物に励む宋運輝ですが、やはり夜な夜な何やら調べ物をしている水書記と顔を合わせる仲となり、時に夜のコートでバスケを付き合ったりすることに。水書記はこの年代の人物には珍しくバスケが趣味のようです。


そして運輝は水書記(画像真ん中)のみならず劉総工(右側の眼鏡)、費工場長(左側)といった他の幹部からも注目されるようになり、現場作業員から技術員へと配置転換を命じられます。新しい部署で付けられた部下二人があまりやる気を見せないのが悩みの種でしたが、これも水書記のアドバイスによって乗り切り、二人で工場への新設備導入のための計画書づくりに励みます。退職が近い水書記は新設備導入を工場への置き土産にしたようです。

小雷家では方々から借金の返済を迫られる一方で自分たちが電線工場に貸した資金はなかなか返済されないということで、雷東宝は世知に長けた老猢猻を使って電線工場から取り立てを図りますが、思いがけず小雷家側と電線工場側との間で暴力事件が発生し、電線工場の門前で暴動寸前の事態に至ります。東宝ら小雷家の幹部連や、事態を聞きつけた新任の陳県長・市長も現場に急行し、事態の収拾に当たります。県の役所で「共産党員としてのお前の経歴に傷が付いてもいいのか!」と市長に叱責される東宝ですが、「オレの経歴なんかどうでもいい!借金が返済されなきゃ村の老人たちに年金が払えないんだよ!!」と反発。

一方、男たちが出払って村に残された身重の宋運萍は、暴動に関する電話の問い合わせや現場作業を必死に取り仕切ろうとしますが、無理を重ねたすえに足を躓いて昏倒…… 取調中の東宝のもとにも知らせが入り、急ぎ搬送先の病院に駆けつけますが、時既に遅く遺体となった彼女と対面することに……

葬儀の場で「姉さんを託した時に幸せにするって誓ったじゃないか!」と東宝に詰め寄る運輝。工場に戻っても気持ちが沈みっぱなしでしたが、早くに父親を亡くしている尋建祥や、東北から訪ねてきた楊巡の励ましによって徐々に立ち直っていきます。しかし水書記からは新設備導入のためのレポートが水書記から「現実を見ていない」と厳しい評価を受け、二人の仲は決裂してしまいます。それと入れ替わるように今度は劉総工から知遇を得るようになりますが……

雷東宝の方はと言えば、こちらはまったく立ち直る気配もなく、困り果てた老書記や副書記の雷士根らは宋家の父母に頼み込み、二人と食事をともにすることでようやく生きる意欲を取り戻します。運萍の死と周囲の人間に与える影響を見てると、今季の朝ドラ『まんぷく』でヒロインの姉が死んだ後もホイホイと夢枕に立つのとどうしても比べてしまいますね。彼我の差が辛すぎます……  

そして電線工場とのトラブル以後、小雷家では方々から取り引きを渋られるようになり、県長の庇護も得られず、電線工場からの借金の返済もやはり思うようにいかず、八方ふさがりとなりますが、東宝は密かに国営の電線工場から技師を招き、自前で電線工場を建てようとしますが……
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『大江大河』その3

2019年02月04日 | 中国近現代ドラマ
『大江大河』第13~18話まで見ました。

雷東宝が告発された一件は、彼が徐県長に目を掛けられているということでどうやら県内の権力争いのとばっちりのようですが、省委の判断により釈放。ついでにそれとは無関係に県に連行されていた楊巡も釈放。その楊巡、「東北で一旗揚げるんや!」みたいなことを言いだし、弟も巻き込もうとして母親や宋運輝にたしなめられ、結局1人で家を出ることに。楊巡は序盤で出てきた楊主任の息子だったんですね。

しかし釈放されても東宝と小雷家が目を付けられてしまったことには変わりはなく、小雷家の売りであるレンガに対しては県のレンガ工場が値下げ競争を仕掛け、村で養殖していた兔毛も県で買い取って貰えず、小雷家潰しの荒波が押し寄せますが、東宝は「そういえば『人民日報』で見たんだが……」という小輝の助言により、上海での兔毛の取り引きを実行に移し、村に兔毛の買い取り所設置を計画します。そしてレンガの件は敢えてダンピング競争に乗り、県の工場を操業停止に追い込みます。しかし小輝『人民日報』好きすぎでしょう (^_^;)


その宋運輝ですが、卒業後の進路として化学工業では地域トップの金州化工を目指し、ルームメイトの「三叔」こと虞山卿と採用枠をめぐって競い合うことになります。成績トップの小輝の採用間違いなしと思われましたが、虞山卿が色々裏工作をしたらしく、採用をかっさらいます。地元の化学工業への就職に切り替えることにした運輝ですが、学生寮の退所間際に金州化工から追加採用の連絡を受けます。事情を知った東宝が、もともと金州化工にいた徐県長に話を通し、彼が元同僚の工場の水書記に推薦した模様。工場で小輝と再会した虞山卿は何となく気まずそうな表情を浮かべておりますw


そして「大尋」こと社員寮のルームメイト尋建祥が登場。親子二代で工場に勤める二世工員の一人で、かつ父親が工場のために殉職した功労者という事情もあり、好き勝手に振る舞っても誰も止められません。

小輝は後ろ盾と見られた水書記が上の政策の影響により工場運営への発言権を失ったことから、一転不利な立場となり、新人配属では大卒にも関わらず現場作業に回されます。しかし「大尋」に朋友認定されたことで彼の庇護を得る一方で、モグリの映画鑑賞に付き合わされたり、彼の恋人を母親の目を盗んで連れ出す役回りをさせられたりと、碌でもないことに付き合わされることになります (^_^;) しかし段々とその地道で着実な仕事ぶりが同僚たちや工場の上役にも評価されるようになります。

一方、小雷家では宋運萍が懐妊。大喜びの東宝ですが、小雷家の運営では苦しい資金繰りを迫られ…… ということで尋建祥の登場によって作品自体の雰囲気が大きく変わりましたw
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2019年1月に読んだ本

2019年02月01日 | 読書メーター
独学で歴史家になる方法独学で歴史家になる方法感想
歴史学の研究とはどういう営みなのかということを、中高年になってからの独学という前提でまとめた本。細かな点で気になる部分はいくつかあるが、典拠には必ず当たるということや、引用のしかた、史料の発掘のコツ、独学=孤立無援で研究をするということではないということなど、大事なポイントは外していない。研究は小さな問題への関心から始まるというのを実地で示しているのが良い。
読了日:01月01日 著者:礫川 全次

ガンディー:秘教思想が生んだ聖人 (平凡社新書)ガンディー:秘教思想が生んだ聖人 (平凡社新書)感想
ガンディーと西洋の神智主義や神智主義者との関係、あるいは菜食主義など、その宗教思想面や身体性に着目した評伝。植民地エリートの出身ながらも、「敵の論理」に乗って自らのアイデンティティを構築しつつ、更にそれを逆手に取って反英運動への大衆動員に成功し、エリート主義の限界を突破したと評価する。グジャラート商人の家の出身というガンディーと同様のルーツを持ちながらもガンディーと袂を分かったジンナーとの対比をもっと読みたかった気がする。
読了日:01月04日 著者:杉本 良男

中国ジェンダー史研究入門中国ジェンダー史研究入門感想
前近代の部分では、滋賀秀三の家族原理、すなわち漢から清まで不変の父系原理が存在していたという家族法理解に対し、それがあてはまるのは明清の一時期のみではないかと強い疑問を突きつけ、滋賀説に対する挑戦状のようになっている。近現代の部分でも人民公社の制度を女性の仕事と家庭生活の両立という面で肯定的に評価する一方、文革期にもてはやされた「鉄の娘」は男女平等を唱いながら男性基準に女性を同化させようとしたと批判するといった具合に、従来の評価の盲点を突いている。
読了日:01月08日 著者:

中世史講義: 院政期から戦国時代まで (ちくま新書)中世史講義: 院政期から戦国時代まで (ちくま新書)感想
「家」の成立と分割相続から単独相続への移行、公武両政権の共存、文化や信仰、対外交渉や交易など、各方面から日本の中世の時代相を切り取る。各章とも近年の研究成果や議論の方向がコンパクトにまとめられている。西欧や中国の中世と比較して独自の時代相が得られるようであれば、敢えて「中世」という名称にこだわる必要はないのではないか。本書を読み進めつつ何となくそのようことを感じた。
読了日:01月10日 著者:

戦国大名と国衆 (角川選書)戦国大名と国衆 (角川選書)感想
武田氏領国を例として、室町期の国人領主から戦国期の国衆へ、そして国衆の終焉までを追う。「戦国大名」「国人」「国衆」などについて歴史学の用語としての概念規定の問題にこだわっているのは、他の地域・時代の研究でも良い手本になりそう。本論の方では、大名と国衆との関係が江戸期の幕府・将軍と大名との関係のひな形として生かされているのかなと感じた。続考として、国衆の終焉の過程をもう少し詳しく読みたい。
読了日:01月12日 著者:平山 優

ヨーロッパ近代史 (ちくま新書)ヨーロッパ近代史 (ちくま新書)感想
ヨーロッパ近代の始まりを告げたダ・ヴィンチやルターからヨーロッパ近代を否定したレーニンまで、「個人」の時代である近代史を、各時期を象徴する人物の生涯を通じて描き出す。人物伝と宗教・芸術・科学・政治思想といった文化史・思想史の流れとを融合させ、近代の時代性を具体的に描き出している。
読了日:01月14日 著者:君塚 直隆

神話学入門 (講談社学術文庫)神話学入門 (講談社学術文庫)感想
古典的なものを中心とする神話学の学説史。神話学が元来比較言語学や人類学との関係が密接であったことや、レヴィ=ストロースが「構造」を神話学に取り入れたといった学問的背景、あるいは『金枝篇』がキリスト教批判として読まれたこと、キャンベルとスターウォーズとの関係など、学説の受容に関する話を面白く読んだ。古代・中世・近代の時代区分や「宗教」の定義などと同様、「神話」も西欧の基準を他者にあてはめるという側面が強いのではないかと感じたが…
読了日:01月17日 著者:松村 一男

ドイツ三〇〇諸侯 一千年の興亡ドイツ三〇〇諸侯 一千年の興亡感想
選帝侯となった家門を中心に見るドイツ史。神聖でもなく、ローマ的でもなく、そもそも帝国ですらなかった神聖ローマ帝国がなぜ1806年まで解体されなかったのか?実態があろうがなかろうがとにかくご大層な肩書きを欲しがる大諸侯(帝国解体の前夜1803年にようやく選帝侯となった諸侯も存在する!)、帝国という枠組みがなくなれば自分たちの主権など粉みじんになる豆粒諸侯、それぞれがそれぞれの事情で帝国の存在を望んだという見通しが本書によって見えてくる。そして更に帝国解体後も諸侯たちの物語は続いていく…
読了日:01月21日 著者:菊池 良生

顔真卿伝―時事はただ天のみぞ知る顔真卿伝―時事はただ天のみぞ知る感想
顔真卿の生涯、その書作品、一族や姻族、時代背景、交友、後世の評価などをバランス良く描き出した評伝。個人的には顏之推以来の家学、あるいは書法の継承について面白く読んだ。副題はオビにも採られている「書を以て自らに命づくること勿かれ」でも良かったかもしれない。書芸術は人間性、更に言えば道徳性の一局面の表出であるという東アジアの伝統的な芸術観について考えさせられる。
読了日:01月23日 著者:吉川忠夫

古代オリエントの神々-文明の興亡と宗教の起源 (中公新書)古代オリエントの神々-文明の興亡と宗教の起源 (中公新書)感想
太陽神、地母神、死んで復活する神、神々の王といった具合に、オリエントの神々を属性別に見ていく。神々にまつわる神話そのものよりも、後世のユダヤ教やキリスト教、更には佛教を通じて日本の宗教信仰とどうつながっているのかに重点を置いている。冒頭の拝一神教・単一神教・唯一神教の違いと、ブランコにまつわる儀礼の話、神像の素材や大きさに関する議論が面白い。
読了日:01月24日 著者:小林 登志子

源頼朝-武家政治の創始者 (中公新書)源頼朝-武家政治の創始者 (中公新書)感想
義経との関係について、彼を介して藤原秀衡との連携を期待したものの思うような支援が得られなかったのが、義経冷遇の背景であること、朝廷において九条兼実は頼朝の盟友的存在ではなく、逆に源通親と対立関係にあったわけでもなく、通親が将軍家のために恩恵を施していたという指摘や、大姫・三幡入内計画に積極的な意義を見出している点を面白く読んだ。五十三歳での死は長生きとは言えないものの、当時としては早すぎるというわけでもないと思うが…
読了日:01月27日 著者:元木 泰雄

サンデル教授、中国哲学に出会うサンデル教授、中国哲学に出会う感想
東西の中国哲学研究者によるサンデル論評・批判とサンデルからの応答。サンデルの中国哲学との出会いより、中国人あるいは中国哲学のサンデルとの出会いに比重が置かれている。朱子学・陽明学の立場からサンデルの議論はどう見えるかというのも読みたかった。中国哲学がサンデルの議論と調和できる、あるいは補足できるという議論を見てると、我々日本人は果たしてこのような哲学を持っているのかと感じた。「儒教」は我々日本人の哲学でもあったはずだが…
読了日:01月30日 著者:

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