博客 金烏工房

中国史に関する書籍・映画・テレビ番組の感想などをつれづれに語るブログです。

『花間提壺方大厨』その3

2017年08月29日 | 中華時代劇
『花間提壺方大厨』第13~18話まで見ました。

子供の連続拐かし事件の捜査にあたる沈勇&方一勺ですが、ここで突然一勺の武術の師匠の道長が登場。この老齢の道士、ひょっとしてドラマの冒頭で沈一博と方員外に子弟の結婚についてアドバイスし、沈勇と方一勺を引き合わせた道士と同一人物でしょうか?やたらと一勺の身を気遣うあたり、彼女の身の上には料理の腕以上に何か秘密があるなと察せられるのですが……

そしてこの道士が与えたヒントもあって、一同は拐かしに関わっていた犯人たちのアジトを突き止め、一網打尽にすることに成功します。前回あたりから沈勇&一勺が父親の仕事に積極的に関わるようになり、料理物というよりよくある公案物のノリになってきましたね。 





まあこんな具合に一勺の料理も相変わらず出てくるのですが。今回はスイーツというかおつまみのようなものが目立ちます。上の画像は、誘拐犯から救出された子供たちに振る舞われたもの。

しかし沈勇も、一勺が被害者の死体検分に立ち会うのには渋い顔。対して一勺は、「お義母様が寝てる人も死体も一緒だって言ってた。」とか、「私だって死人ぐらい見たことあるし」と、なかなか不穏なことを口走っています (^_^;)

で、いくつかの事件を解決に導いて沈勇の評判が高まると、本物の方員外のお嬢様である方瑤が、沈勇は本当に変わったのかと、侍女に様子を確かめさせたり、自ら確認しようと周辺に出没するようになります。



方瑤の動向に不安と不満を隠せない一勺ですが、沈勇にも堂々と不満をぶちまけるあたり、もう彼女が方員外のお嬢様という前提がなし崩しになっていますね……

そうこうしているうちに、彼らが暮らす東巷府では、煙翠楼の妓女に若い男が入れあげて身請けしたところ、その老母や師匠などが憤死するという事件が続発。しかも憤死と思われた老人たちがいずれも毒殺されていたことが判明し、煙翠楼の内部に犯人がいるかも?ということで沈勇が潜入捜査を試みて……

というところで本作の第一季(ファーストシーズン)が終わり、第二季(セカンドシーズン)へと続きますが、キリのいい所で話を切って次につなげるのかと思いきや、思い切り話の途中でぶった切ってきましたね……
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『花間提壺方大厨』その2

2017年08月22日 | 中華時代劇
『花間提壺方大厨』第7~12話まで見ました。

掌櫃的殺人事件の下手人は、方一勺らが参拝した尼寺の師太であることが判明しましたが、師太にも同情すべき点が多々あり、知府として事件の審判を担う義父の沈一博はどう判決を下したものかと頭を痛めます。そこで沈勇が「師太は人を殺したのは事実だが、そもそもそれは師太が掌櫃的の妻と娘を匿って人を助けようとしたことから発している。これは因果応報と言うべきで、殺人の罪は人助けによって相殺されているのでは?」とコメントし、裁判では師太に罰として寺で謹慎し、死者のために弔うことを命じるという、実質的な無罪を言い渡します。このあたりから沈一博の息子を見る目が少しずつ変わり始めていきます。


爹爹こと沈一博。今はお堅い印象ですが、漏れ聞く話を総合すると、どうやら若い頃は息子のような鳴かず飛ばずのやんちゃくれだった模様。

そして沈勇は一勺の薦めもあり、父親から紹介されたカンフーマスター莫風堂と、父親の同窓だったという占い師兼講釈師の蒼満雲から、それぞれ武術と学問を教わることに。以下は莫風堂とその悪ガキ弟子の冬冬のもとで一勺が披露した料理。なかなか姿を現そうとしない莫風堂をおびき寄せるためにヒロインがうまい料理を作るというのは、まんま『射鵰英雄伝』ですね。





沈勇は、悪ガキの冬冬からは「何の取り柄もないお前にあんな出来た嫁がずっと側にいてくれるわけないだろ。他にいい人が現れたらさっさと愛想を尽かされるに決まってる。オレの嫁になった方がずっとマシだ。」と言われて真剣に悩み、蒼満雲からは「一年以内にあの娘は大難に襲われる」と予言され、勉学に身を入れます。そう言えば一勺は宮中の皇子の手の者に追われる身なのでした。

実は赤の他人であることを隠して方員外の娘ということで嫁入りした一勺ですが、沈勇の父母が「あの子、絶対方員外の娘の方瑤じゃないよな。自分で一勺と名乗ってたし。」「もう誰だっていいじゃありませんか。勇児とも好き合っているんですし。」という会話をかわしたりしており、もうすっかりバレバレの模様です。そして沈勇とも、「なあオレなんかの嫁になって後悔してない?」「相公はお父さんよりずっといい人だもん。お父さんはろくでなしだったけど、お母さんが死んだら三日三晩泣き通しで、後を追うように死んじゃった。」「えっ、父親は方員外だったんじゃ…(困惑)」という会話をかわしておりますw 沈勇は一勺が実の両親の死後に方員外に引き取られて養育されたと、勝手に辻褄が合うように解釈してますが……

そして今回のラストで本物の方員外の令嬢方瑤らしき美女が登場し……
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『花間提壺方大厨』その1

2017年08月16日 | 中華時代劇
ここんところ重量級の大作・力作ばかりを見ていたので、たまには軽いものをとネットオリジナルドラマ『花間提壺方大厨』を見始めました。2シーズン×18話の全36話構成で、今回は第1~6話まで鑑賞。

街で屋台を営む腕利きの料理人娘方一勺は、たまたま知り合った同姓の方員外の陰謀で、彼の娘方瑶のかわりに知府の息子で札付きのワルと評判の沈勇に嫁入りさせられることになります。方瑶は「あんなのと結婚させられるぐらいなら自殺する!」と結婚を拒絶。かと言って方員外は有力者相手に結婚を断れないということで方一勺を花嫁の身代わりにしたという次第。

方一勺は不本意な状況で偽花嫁に仕立て上げられたということで、秘密を守ろうという意志がイマイチ薄く、親のことを尋ねられて方員外ではなく実の両親のことを答えたりして不審がられつつも、優秀な父親へのコンプレックスから悪ぶっている沈勇を更正させようとしたり、夫や義理の両親にに毎日おいしい料理を振る舞ったりして一家になじんでいきます。


ヒロイン方一勺と夫の沈勇。二人して悪いことを考えている場面ですw

で、以下が方一勺が披露する料理の一部。一番上の料理は「哈密瓜找蝦仁」(メロンのエビ炒め)。







で、二人がなじみの酒場で料理人と料理勝負を行い、迷惑をかけたということでしばらくその酒場で働くことになるのですが、酒場の掌櫃的が何者かに刺殺されるという事件がおこり、沈一博が取り調べを行うことに。これと前後して方一勺&沈勇が母親の沈夫人と尼寺に安産祈願へと向かいますが、そこでなぜか殺された掌櫃的の指輪を発見。尼寺で匿われていた瘋和尚(気が触れた坊さん)が怪しいということで連行され……というあたりで次回へ。

中華版『みをつくし料理帖』みたいな感じかなと思いつつ見始めましたが、軽快なノリでサクサク見られますね。謎の組織の刺客に追われているヒロインの身の上も気になるところです。
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『大軍師司馬懿之軍師聯盟』その7(完)

2017年08月08日 | 中国歴史ドラマ
『大軍師司馬懿之軍師聯盟』第37~42話まで見ました。

司馬師と夏侯徽との婚姻は、司馬懿率いる士族と宗親との和解の象徴となるはずでしたが、結婚式に出席した曹真らが老い先短い司馬懿の老父・司馬防を酔いつぶして死に追い込み、あっという間に修羅場に…… その上後宮でも献帝の娘の劉貴人が郭照を流産に追い込んで甄夫人を下手人に仕立てようとしたりして、曹丕は気が休まる間もありません。この頃から曹丕が吐血をするようになり、曹真らは彼も先が長くないと見切って「次」を意識して行動するようになります。

彼らのターゲットとなったのが、曹丕が魏王となって以来フェードアウトしていた曹丕。謀逆の意志ありということで都に召喚され、拷問にかけられます。そしてその曹植と通じ、曹叡は彼との間の子であると誣告された甄夫人は、服毒死を遂げてと引き替えに身の潔白を証明しようとします。事情を知らされた司馬懿は後宮に踏み込んで曹叡の身柄を確保し、次期皇后と見込まれていた郭照のもとに連れ込んで、強引に彼女の養子ということにして曹叡の身の安全を曹丕に保証させます。しかしそれが原因で司馬懿は投獄されることに……


そして獄中の曹植は、兄の前で「七歩の詩」を詠んで赦免を勝ち取りますが、彼からの恋文を隠していた甄夫人の玉枕を下賜され、彼女の死を知ることになります。


郭照は曹丕の強い押しによって皇后に冊立されます。同時に曹叡も平原王に封じられますが、涙をにじませつつ苦々しい表情で義母となったはずの郭照を睨みつけています。

で、曹洪も鄧艾への暴言が問題視されて投獄されますが、鍾会・鄧艾らの計らいもあって、郭照の皇后冊立の大赦ということで、曹洪も司馬懿も赦免。ただし司馬懿は庶民の身分に落とされ、一家ともども故郷温県に引き上げることになります。この司馬懿の赦免にあたって鍾会らに知恵を授けた柏霊筠はようやく張春華に家族として認められるようになり……

【総括】
ということで、ここで第一部完です。戦争シーンが申し訳程度にしか存在しませんが、それでも三国志物としてちゃんと面白く、予算はさほどかけていないはずなのに画面から高級感だけは溢れ出ており、史実を外している所が多々あるものの、お馴染みの故事を効果的に挿入したり、徹底的に人物像を作り込むことで、三国志物として奇跡のクオリティを達成しています。特に毒親としての曹操、知らず知らずに毒親として負の連鎖をしてしまっている曹丕、老害としての曹洪ら宗親たちなどは出色の描写になっていると思います。第二部『大軍師司馬懿之虎嘯龍吟』は秋頃の放映・配信を予定しているようですが、第一部でスルーされた戦争シーンをつぎ込んでくるようで、今から楽しみです。
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『大軍師司馬懿之軍師聯盟』その6

2017年08月01日 | 中国歴史ドラマ
『大軍師司馬懿之軍師聯盟』第31~36話まで見ました。

鍾会が推すまでもなく司馬懿に既に目をつけられていた鄧艾。吃音に悩む彼ですが、自分をバカにしない恋人の子夜と、よき理解者となった司馬懿の前ではスラスラと話せるようです。その屯田策が評価され、新設の屯田令として、曹洪ら魏王朝の宗親たちの地盤である譙県から屯田制の施行を試みることになります。

それに危機感を抱いた宗親たちは、一族の子弟である夏侯玄を譙県県令に推して鄧艾と対抗させ、また後宮で司馬懿の妻張春華を義姉と慕う郭照の対抗馬として、山陽公となった献帝の二人の皇女を曹丕のもとに入内させます。司馬懿の方も負けてはおらず、自分を「老師」と慕う鄧艾と子夜との仲人となったりと、士族を中心とする党派を形成して宗親たちと対抗の姿勢を見せます。

司馬懿と宗親との対立を解消しようと、宗親の長老格かつ良心派の夏侯惇が司馬懿宅を訪ね、新政から手を引くように要求します。しかし司馬懿が「それだけはできない」と拒絶して物別れとなり、憤然とした夏侯惇が母屋を出た瞬間に邸宅内で突然死。これはどう見ても司馬懿が殺ったと思われるパターン…… 案の定夏侯惇の葬儀で息子の夏侯楙らが司馬懿を成敗すると息巻いておりますが、曹丕は青州・徐州の元黄巾党による反乱を鎮圧させるという口実で彼を鄴城から遠ざけます。

今回のお伴は、曹丕の指名もあって張春華ではなく、監視役も兼ねて柏霊筠に。不満顔の張春華ですが、老い先短い義父の司馬防を守るため、司馬孚らとともに留守居役をつとめることになります。曹真たちは司馬防がぽっくり逝けば、司馬懿が三年の間原籍地に帰郷して服喪しなければいけなくなると期待してますが、それを見透かした司馬防は、息子の出征中に自ら曹丕に申し入れをし、自分が死んでも服喪には及ばないこと、そして宗親との対立を緩和するため、長孫の司馬師と夏侯尚の娘(すなわち夏侯玄の妹)夏侯徽との婚約を了承させます。

さて、司馬懿の方は首尾良く反乱を収め、鄴城への帰還の途上で鄧艾が屯田を進める寿春へと立ち寄ろうとしますが(譙県での屯田は結局諦めざるを得なくなった模様……)、途中の宿で彼を父の仇と付け狙う夏侯楙に刺殺されかかります。負傷しつつも何とか難を逃れた司馬懿ですが、柏霊筠は曹丕が宗親たちの司馬懿へのヘイトを押さえきれず、彼らを宥めるために帰還のルートを漏らしたのではないかと疑います。このドラマの曹丕、こういう具合に何気にクズな所を見せるんですよね……

そして寿春では、曹洪が、鄧艾が軍糧を横領したと濡れ衣を着せ、彼を処刑してしまおうとしますが、夫を庇い立てした子夜が曹洪に斬殺されてしまいます…… 鄧艾は負傷を押して駆けつけた司馬懿によって救われますが、鄧艾と宗親たちとの間で拭いきれない遺恨が生じたのでした。そんな中、司馬懿ら士族と宗親との若いの象徴である司馬師と夏侯徽との結婚式が行われることになりますが……
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2017年7月に読んだ本

2017年08月01日 | 読書メーター
東アジアで学ぶ文化人類学東アジアで学ぶ文化人類学感想韓国・台湾・中国・モンゴルなどでのフィールドワークや研究の実例が紹介されているが、印象に残ったのは、戦前に日本による委任統治下にあったパラオの章で語られる、かつての植民地主義と結びつく形で展開された文化人類学への反省の話。本書の各章での試み全体が、植民地主義的な研究から脱皮した後の文化人類学のあり方を示すものということになるだろうか。読了日:07月02日 著者:

中国の近現代史をどう見るか〈シリーズ 中国近現代史 6〉 (岩波新書)中国の近現代史をどう見るか〈シリーズ 中国近現代史 6〉 (岩波新書)感想これまでのシリーズとはかなり毛色が異なり、本シリーズで扱った清朝嘉慶年間から21世紀初頭までの約200年間をグローバル・ヒストリー的な観点から見ていくという趣向になっている。実質的な分裂時代とされる軍閥抗争期も、中華民国の政治的正統性を公然と否定する勢力は存在しなかったと「建前」の部分を重視したり、国連の常任理事国五ヵ国はいずれも帝国的性格を持っており、中国もそのひとつにすぎないといった指摘が新鮮。読了日:07月04日 著者:西村 成雄

戦争の日本古代史 好太王碑、白村江から刀伊の入寇まで (講談社現代新書)戦争の日本古代史 好太王碑、白村江から刀伊の入寇まで (講談社現代新書)感想白村江の戦いは対外的な脅威を煽って中央集権化を進める口実にするという、国内的な要因によって引き起こされた戦争であり、その目的が達成されるなら敗北しても構わない戦いであったとか、反新羅感情や「小帝国」意識が近現代にまで持ち越されたのではないかという指摘が興味深い。反新羅感情の頑なさは近現代の反中感情にもつながるのではないかと思った。読了日:07月07日 著者:倉本 一宏

甲骨文の話 (あじあブックス)甲骨文の話 (あじあブックス)感想著者がこれまで甲骨文に関して執筆した一般向けの文章などを収録したものだが、論文で引用・言及されることもある「「甲骨文」における「書体」とは何か」などが収録されているのが嬉しい。ただ、内容としては比較的古い研究に自らの見解を加えたものが中心なので、書き下ろしの「『甲骨文合集』の刊行とその後の研究」をもう少し詳しく書いて頂ければ更に良かった。読了日:07月09日 著者:松丸道雄

道教とはなにか (学芸文庫)道教とはなにか (学芸文庫)感想仙人・呪言・呪符・煉丹術・日本文化との関わりなど道教にまつわる諸要素について解説している。個人的に面白かったのは、岡倉天心が道教に入れ込んでおり、その研究は当時としてはかなり高水準であったということと、最後の気功と中国政府との関係をめぐる話。気功が劉貴珍という共産党員を通じて発見され、ある意味「創造」されたということと、文革や法輪功といった要因により、政府による保護と弾圧の波があるという話が面白かった。読了日:07月13日 著者:坂出 祥伸

習近平の中国――百年の夢と現実 (岩波新書)習近平の中国――百年の夢と現実 (岩波新書)感想習近平の評伝的なものかと思いきや、雑記的にいろんな話題を詰め込んでいる。習近平の抱える問題意識とともに問題点を描き出すなど、比較的「冷静」で「中立的」な論調になっているように思う。習近平が国家主席となる際に、前任の胡錦濤は江沢民の振るまいを意識して「完全引退」を宣言し、すべてを習に委ねるという姿勢を示したということだが、「七上八下」のルールを無視して現役続行を窺うような態度は、その誠意に応えることになるのだろうか。読了日:07月15日 著者:林 望

入門 公共政策学 - 社会問題を解決する「新しい知」 (中公新書)入門 公共政策学 - 社会問題を解決する「新しい知」 (中公新書)感想公共政策学の入門というより公共政策決定のプロセスをまとめた本のように感じた。「客観的・中立的な立場の専門家が価値中立的な分析によって政策案を形成する」という政策決定のあり方は幻想であり、一般の人が専門家とは違った枠組みで物事を判断するのは知識不足として批判されるものではないという指摘が面白かった。昨今反原発運動や豊洲問題に絡めて取り上げられる「安全より安心」という言葉に通じる視点だと思うが、これを「感情論」として片付けるのはおかしいということになるだろうか。読了日:07月19日 著者:秋吉 貴雄

観応の擾乱 - 室町幕府を二つに裂いた足利尊氏・直義兄弟の戦い (中公新書)観応の擾乱 - 室町幕府を二つに裂いた足利尊氏・直義兄弟の戦い (中公新書)感想尊氏・直義の「二頭政治」論の見直しなど、佐藤進一による通説の検証と、直義・師直頼りだった尊氏が指導者として覚醒していく過程を中心に描く。直義による「三条殿体制」が継続すれば、以降の室町幕府のあり方はどうなったのか、それとも二人の対立は必然だったのかと想像しながら読み進めた。また終章の「観応の擾乱」が歴史用語としては比較的新しいという話も面白く読んだ。読了日:07月22日 著者:亀田 俊和

ようこそ文化人類学へ: 異文化をフィールドワークする君たちへようこそ文化人類学へ: 異文化をフィールドワークする君たちへ感想従来調査される側だった「未開」とされてきた地域の人々が調査する側となり、外国での異文化体験を求める学生が入ってきた分野ではなく、LGBTなどの身近で新しい問題を考えたいという学生が入ってくる分野となった時代の文化人類学の入門書。マリノフスキやモースなどの古典的な研究と新しい傾向とをバランスよく、かつうまく接続した入門書になっている。読了日:07月22日 著者:川口 幸大
昭和史講義3: リーダーを通して見る戦争への道 (ちくま新書 1266)昭和史講義3: リーダーを通して見る戦争への道 (ちくま新書 1266)感想今回は首相・外相などの指導者の評伝を集めるという趣向。それぞれの指導者の挫折の物語として読めそうだが、宇垣一成に関して、「民主主義の信奉者」という評価が買いかぶりなら、「宇垣内閣流産」を仕掛けた陸軍側も彼を別の意味で買いかぶっていたのではないかという話が特に面白かった。読了日:07月25日 著者:筒井 清忠

オリュンポスの神々の歴史オリュンポスの神々の歴史感想ギリシア神話の神々の信仰が薄れたのはキリスト教の影響と何となく思っていたが、本書によるとソクラテスの時代に既に信仰への疑問や神像への冒瀆的行為が見られるようになっていたとのこと。そして中世ヨーロッパやイスラム世界でも、時に中世騎士の鎧や修道僧の衣服を身にまとっい、時に星座や天文学と結びつく形でといったように、書中の表現にあるように、どんなことでもしてオリュンポスの神々がしぶとく生き残ったさまが描かれる。何となくどんな宣伝でも引き受ける現代のキティちゃんを連想してしまったが…読了日:07月30日 著者:バルバラ・グラツィオージ
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