これだけ色々書いているけれど、私i_と光の物事の好みが似ているかといえばそうでもない。いちばん違うのは食の嗜好だろうか。どんな理由であれ、ケーキやハンバーグが嫌いと口にする感性は私にはない。辛党だから甘いモノはダメ、という理解の仕方は出来るし、ハンバーグは嫌いな理由の素っ頓狂さからしてエピソード記憶による嗜好の表明ではないか、とか推測も出来るんだが、そもそも自分に食べれない食べ物がある現実が悔しくて堪らない私からすればそれを言う事が屈辱だ。あれ、なんだ私が変なだけか。
音楽の好みについても、何だかちょっと錯綜している。光の作ったアルバムで一番方向性が好みなのはExodusだが、これは何度も何度も触れてきた通り、光の書いた音が(他のアルバムと比較して)いちばん多いからである。でも、では光の好きな音楽をそのまま好きかというとやや微妙だ。この差はどこから来るのか。
私の場合は普段はプログレ/メタルを聴いている事が多い。King Crimsonは神、みたいなノリだ。光はプログレ好きでも何でもない。Pink Floydは何度かラジオで掛けたが、あのバンドは知名度が図抜けているのでスタンダードの一環としての選曲だろう。狂気から虚空のスキャットを選んでいたが、なるほどこういうのが好きならGentle Beast Interludeがああなるのもわかるな~なんて話は昔したな。閑話休題。
カラオケのレパートリーにMetallicaがあるのだって、あの世代(光の場合6歳ぐらい耳年増(ていうのか)と考えた方がいい)にとってブラックアルバムはスタンダード中のスタンダードだし別に特別な事じゃない。特にメタルに入れ込んでいた時期は光にはない。
R&B歌手として日本でまず認知されてしまった為、R&Bは好みなのだろう、ということは、ある程度までならいえる。Groove Theoryからの影響は真っ正面から肯定しているし、Mary J.Blige風のフェイクはお手のものだ。じゃあ光はこのジャンルが好きなのか…というと、そうでもない。This Is The OneをR&BではなくR&B風ポップスと形容したのは、この特定のジャンルに依拠する心づもりがなかった事を意味する。いや全く捉えどころがない。
試みに今私は私自身の好みと比較してあーだこーだ言っているが、これは結構普遍的な問題な気がする。たまにはいるもんだ、好きなアーティストと好きなアーティストが重なるファンって奴が。しかし、宇多田ヒカルの場合、そう言える人は極端に少ないのではないか。ヒカルに出会う前から、フレディ・マーキュリーに熱狂し、尾崎豊に心ときめかせ、スティングになら抱かれたいと発言し、Cocteau Twinsとレニー・クラヴィッツとモーツァルトを愛聴していた人が居たら手をあげて欲しい。そして教えてくれ。これは一体何なんだと。何をどうすればこんな雑食になれて、尚且つ趣味の離れた私に絶賛されるアルバムを作ることが出来るのか。そしてそのあなたは、ヒカルの作るアルバムは総て好みのドンピシャなのだろうか。何だか、そんな人は光本人しか居ない気がしてきたが、それくらい独特の好みで生きてきてこれだけCDを売れるというのはどこまでも奇跡的な存在なのだなぁ。
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