トシの読書日記

読書備忘録

行為の起爆力

2008-02-17 02:45:33 | あ行の作家
安部公房「他人の顔」読了

現代文学ばっかりにうつつを抜かしていてはいけないと、たまにはこんなのもねと思って読んでみたんですが、やっぱり安部公房はすごいです。同作家に限らず、たとえば大江健三郎、富岡多恵子、中上健次なんかもそうなんですが、文章の重みが全然違うんですね。やっぱりたまにはこういうのも読んでリハビリしないと、と思った次第です。

化学者である主人公が液体酸素の爆発で、顔にケロイド状の大火傷を負い、自己の開放を目指して仮面を作る。
物語は、男がその妻に宛てた手記という形で延々続いていくわけですが、後半からは思いもよらない展開で非常に面白く読めました。

仮面をかぶって赤の他人になりすました男が妻をナンパしてしまうんですね。そして、こともあろうに妻は男とできてしまうんです。男は妻への復讐という意味もここに込めていたんですが、あとで妻は、誘ってきた男は自分の夫であると先刻承知だったという、どんでん返し。すごい展開です。

次は久しぶりに大江健三郎でも読もうかな。

a lot of people

2008-02-17 02:24:50 | あ行の作家
奥田英朗「ララピポ」読了

これも「ダーティ・ワーク」同様、連作短編集でした。なんかこういうの、はやりなんすかね。
社会の底辺で生きる、どうしようもない男と女達の滑稽で惨めなお話です。
まぁ読みやすくて面白いには面白いんだけど、底が浅いという感は否めないですねぇ。

奥田英朗がこういう物書きだってことがわかったのが収穫でした。もう同作家の本は手に取ることはないと思います(笑)

転がる石のように

2008-02-17 02:15:42 | あ行の作家
絲山秋子「ダーティ・ワーク」読了

本の帯には、芥川賞作家の初の連作短編群像劇とある。そのコピーの通り、ひとつの短編で主人公の友達が次の短編ではその人が主人公になっていてそこで脇役だった人が次にはその人が主役だったりという感じで全編がつながっていくという体裁をとっている。

いつもの同作家の持ち味が存分に発揮された作品で、なかなかおもしろかったです。しかし、「海の仙人」は越えてないなぁ。

ま、形よくまとまった小品といったところです。