中島義道「エゴイスト入門」読了
本書は平成22年に新潮文庫より発刊されたものです。何年かぶりに再読してみたんですが、やっぱり中島義道は面白いです。
エゴイストとは自分の信念、美学(感受性)において、それに反するものに直面した時(他の誰もがそうしなくても)、その信念、美学をどんな抵抗に会おうともそれを貫く人のことである、と述べておられます。まったくもってその通りと思うんですが、これがなかなか…ね。
印象に残った箇所、引用します。
<われわれがある現象の原因を問うということは「見えないもの」の世界に足を踏み出すことである。その一部は科学的法則に支配された物質の関係に行き着くことによって、うまく説明できるが、そうでない膨大な現象についても、どうにかして納得したいという思いを消すことはできない。だから、みんなこぞって納得できる「見えないもの」を仮定し、それがこの現象を引き起こしたというお話を拵え上げ、安心したいのである。>
<哲学なんぞに首を突っ込むと、そしてそれを生涯探究しようとすると、普通の感覚では生きていけない。なぜなら、哲学とは根本的懐疑にまでさかのぼって根本的問いを発する営みだからである。「私」はいないかもしれず、他者もいないかもしれず、時間もないかもしれず、未来もないかもしれず、善悪の基準もないかもしれない。「あっと言う間に今年も終わりですね」と挨拶されても「それは錯覚です」と返事するほかはなく、「最近は厭な事件ばかりですね」と言われても「私は厭ではありません」と答えるかもしれない。つまり、自分に誠実であろうとするなら、普通の人間としてのコミュニケーションがとれなくなるのである。>
世間話ひとつとっても中島義道は自分の信念を貫く人なんですね。というか、世間話を拒絶してます。
こうやって時々中島義道の著作を読み返して、自分の生き方を疑ってみるのも有意義なことではないかと思っております。
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