今日、退院してきました。あと、水、木、金の3日で放射線治療は終わります。で、ちょっと日を置いて31日にCTの検査、それから1週間後くらいに胃カメラ、それでやっと自分のガンの状態がわかるというわけです。あまりにも長い。自分の病状を知るのにあと1ヶ月ほども待たねばならないとは…。患者の不安、心配をどう考えているんでしょうか。ま、なにを言ってもそんなシステムになっているのなら従うしかないんでしょうが。
それはともかく…
堀江敏幸「雪沼とその周辺」読了
本書は2003年に新潮社より発刊されたものです。
もう、何回読んだか知れないくらい、自分の中での名著です。全部で7編の短編が編まれた作品集になっています。冒頭の「スタンス・ドット」がいいですね。
5レーンしかないボウリング場を経営する50代(?)の男の話なんですが、もう店をたたむと決めた、その最後の夜、若いカップルがトイレを借りにきます。その二人に事情を話し、最後に無料でいいので1ゲームだけ遊んでいきませんかと誘います。結局彼が投げることになり、男はそのスコアを手書きでつけていくわけです。
男がスコアをつけながら自分の来し方を振り返るという手法は、小説のプロットとしてはありがちなんですが、そこは堀江にしか表現のできない詩情あふれるものになっていて、読む者を静かな感動に誘います。亡くなった妻との仕事を兼ねたアメリカ旅行、この仕事を始めるきっかけとなったハイオクさんとの思い出…。このあたりの筆運びは心憎いばかりです。
そしてラスト、意外な展開に読者は少し驚くんですが、このあたりの持ってきかたもうまいですねぇ。最後の数行でグッと盛り上げてスパッと切り捨てるように終わる。この手法は、本書の他の作品にも使われていて、トータルとして作品の全体に素晴らしい効果をあげています。ちなみに本作品は優れた短編小説に贈られる川端康成文学賞を受賞しています。
まぁ堀江敏幸となると、全くけなすところがないというか、小川洋子が百閒を愛するように、私も堀江敏幸を愛するということですね。
自分の人生で堀江敏幸に出会えたことだけでも僥倖としましょうか。
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