トシの読書日記

読書備忘録

魂を揺さぶるむき出しの言葉

2019-11-05 16:37:20 | は行の作家



ルシア・ベルリン著 岸本佐知子訳「掃除婦のための手引書」読了



本書は今年7月に講談社より発刊されたものです。


10月27日の日曜日、いつものように仕事場に向かう車の中でFM愛知「メロディアスライブラリー」を聴いておりましたらなんと!同書が取り上げられているではありませんか。びっくりしました。こんな偶然、あるんですねぇ。非常にうれしかったです。パーソナリティの小川洋子氏、最近の作品はなんだかなぁというものが多いんですが、小説の読み方はやはり鋭いものがあります。本書に関する話をラジオで聞きながら何度も大きくうなづいた次第です。

それはともかく…


全部で24の短編が収められた作品集です。いやーびっくりしました。これはすごい作家ですね。1936年に生まれ、2004年に68才の生涯を閉じた女性の作家なんですが、この人の遍歴がまずすごい。高校教師、掃除婦、電話交換手、ERの看護師などの職を経ながら作家活動を続け、その経験を小説に生かすという、まぁネタには困らなかったと思うんですが、そんなことより作品の中での言葉の選び方、直喩、暗喩等を駆使した言い回しのうまさ、こういったもろもろが読む者の心をがっしりとつかんで放さないんですね。


解説で本書を訳した岸本佐知子氏も述べておられますが、<彼女の言葉は読む者の五感をぐいとつかみ、有無を言わさず小説世界に引きずり込む。その握力の強さ>と絶賛しています。


また、巻末にはアメリカの女性作家、リディア・ディヴィス(この作家は、以前「ほとんど記憶のない女」を読んで、すごい!とうなった覚えがあります。)が18頁にも渡る解説を記していて、これはディヴィスがいかにベルリンをリスペクトしているかということの証左にほかならないということでしょう。


そしてまた岸本氏は言います。<ルシア・ベルリンの小説は、読むことの快楽そのものだ。このむきだしの言葉、魂からつかみとってきたような言葉を、とにかく読んで、揺さぶられてください。けっきょく私に言えるのはそれだけなのかもしれない。>


自分は表題作の「掃除婦のための手引書」に一番心揺さぶられました。とにかく最後の一行、ワンセンテンスに絶句、感動しました。


たまたまネットでみつけた本なんですが、素晴らしい本に出会えてラッキーでした。早速姉にも教えねば!



姉と定例会を行い、以下の本を借りる


岸本佐知子編「変愛小説集――日本作家編」講談社文庫
リチャード・ブローディガン著 藤本和子訳「ビッグ・サーの南軍将軍」河出文庫
ジョン・バース著 志村正雄訳「旅路の果て」白水Uブックス
アリステア・マクラウド著 中野恵津子訳「冬の犬」新潮クレストブック




コメントを投稿