トシの読書日記

読書備忘録

自在な妄想の言葉

2013-07-18 15:28:35 | た行の作家
田中慎弥「実験」読了



デビューから注目していた作家が芥川賞等を受賞すると、自分の目が間違ってなかったことを実感してうれしくなるもんです。でも、最近の芥川賞、直木賞は、なんだかなぁという作家が取ってますが…。例えば朝井リョウとか。ため息が出ます。


「もらっといてやる!」で一躍有名になった田中慎弥であります。文庫で430円だったので買って読んでみました。初期の頃の「図書準備室」とか「切れた鎖」、「犬と鴉」等に比べるとずいぶん作風が変わったなぁというのが第一印象でした。しかし、解説を読んでみると、本書は「犬と鴉」と芥川賞受賞作の「共喰い」の間に書かれたとのこと。文字通り、田中慎弥の「実験」ということでしょうか。


表題作の他に「汽笛」「週末の葬儀」と三編を収めた短編集です。作風の印象とは別にどれもまずまず面白かったです。特に「週末の葬儀」は吉田知子を思わせる世界で楽しめました。でもまぁ、どれをとっても衝撃的なものはなく、佳作三編といったところですかね。少し残念でした。


「切れた鎖」「犬と鴉」のような世界をもう一度書いてほしいと切に願うものであります。

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