ステージおきたま

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月は昇ったか?:50(歳)を過ぎたら板(舞台)地獄⑩

2007-08-13 21:02:40 | 演劇

 演劇学校1年目の総まとめは演劇公演、当たり前か。教頭の修三先生の作品『最後の狼』を上演するってことになった。まず、希望者から演出が選ばれ、演出がキャスティングを行った。言うまでもなく、僕はスタッフ、道具・装置の担当になった。まっ、不満はなかった。じっとなりひそめてたからね。僕がいるってことだって頭になかったと思うよ、演出さんには。

 この公演は、ホールのステージを使わずに、ロビーに小舞台をしつらえて行うことになった。こういうのって、燃えるんだよね。なんたって条件悪いでしょ。あれも無い、これも出来ないって中で、頭ひねって、うんうん唸って工夫する、これはもうパズル解いてるみたいで、ほんと楽しい。いや、いいアイディアが浮かべばだけどね。

 この時の一番の課題は月を昇らせるってことだった。どうやって?そこを考えてよ、って演出って誰も我が儘なんだ。なんせ、バトン(舞台でいろんなものをつり下げる鉄棒ね)なんてないから。しかも途中で月が出て、さらに天空高く上ってくってのが、演出のご希望だ。

 様々試行錯誤の末、2階からロビーまで斜めにテグスを張って、それを伝わらせて月を引っ張り上げることにした。月がゆらめかないにはどうするか、月が裏返られないようにどうテグスをつなぐか、たったこれだけのことだけど、結構、いろんな障害があって、苦心惨憺。で、結果は上々。やったぜ!って仲間とハイタッチ!でもね、観客はほとんど気付かなかったんだ、あんなに懸命に月が昇ったっていうのに!

 そういうもんなんだよ、装置って、大道具って、所詮はあって当たり前、役者の背景に過ぎないからね。何気なくそのシーンを作り上げ、その場の雰囲気の手助けできればそれでいい。それが、装置だ。それが道具なんだ。いいや、衣装だって照明だって音響だって同じこと、目立ちすぎれば、それは失敗。あくまで、ストーリー、役者のセリフが主役だから。

 でもね、そういう観客が気付かないようなところで、そっと工夫を忍び込ませる、これってすごい粋な仕事じゃないだろうか。森をくしゃくしゃにした紙に照明あててそれらしく表現したり、舞台にさりげなく専門家が活けた生け花飾ったり、装置の素材を吟味したり、場面を盛りあげる音楽探したり、そんな細かいこだわりが無性に楽しい。

 だから、僕はいつの舞台でも必ず何かオリジナルの工夫を滑り込ませることにしている。前回の子どもミュージカル『お化け屋商会』では、移動式の井戸作って、事前に隠れてた番町更屋敷のお菊さんが、井戸の中から、一枚、二枚って恨めしげに登場するって演出考えたし、今度の大会では、さっと一気に開く障子戸を製作中だ。

 こういう何気ない、何気なくもないか?工夫って、だれかがしっかり見てくれるんだよ、きっと。そうい目の肥えたお客さんを意識して、いつだって舞台を作っていきたいと思うんだ。演劇は総合芸術なんだからね。

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