ステージおきたま

無農薬百姓33年
舞台作り続けて22年
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コントとランとご飯パンにうつつを抜かす老いの輝き

『グッドピープル』はどこにいる?

2021-10-24 09:56:42 | 演劇

 昼飯は控えめに!2時開演の芝居、居眠り要注意だぜ。つまらない舞台なら、眠くなる、それならそれでいいかとも思うんだが、しっょぱなから寝落ちしたんじゃ、いくらなんでもだらしない。せめて作品の良し悪しがを見極めるまでは、寝ない!作ってる人たちへの最低限の礼儀ってもんだ。

 途中休憩を挟んで2時間30分、この前半がどうしようもなく退屈だった。あとどんたげ続くんだ?って、何度か時計見てしまったもの。休憩の時にゃ、どうしてこの芝居が面白くないのか?って必死で考えたな。

 一つ、日常のちまちま話、井戸端会議みたいなおばさんたちのやり取りが苦手、って個人的な好みの問題だな。映画やドラマ、毎日見てる身としちゃ、平板かつ単調、まどろっこしくて、付き合うのに苦労する。それと、翻訳ものの取っつき難さかな。話題もそうだし、おしゃべりのくどさとか、押しの強さに、付いて行けない。

 職を紹介して欲しいと、成り上がった医者に押し掛けた数十年前の元カノ(戸田恵子)、断られても、冷たく扱われても、ねちっこく居続ける。あのしつこさ、多分、なんかいわく因縁があるんだろうとは想像できたが、あまりに図々しくて、二人ともいい加減にしろよ!って、俺が腹立てたって仕方ないんだが。主人公に共感できない、これじゃ芝居に入り込めない。実は、後で思い返すに、主人公への反発を引き出しておく、ってのも、作者、演出(鵜山仁)の手だったみたいなんたけど。

 やっぱりなぁ!訳ありだったんだぜ、二人。後半は医者(長谷川初範)とその妻(サヘル・ローズ)の家に押し入った元カノによって、はぎ取られて行く医者の青春時代、その汚点。この暴かれて行く過程の描き方が実に絶妙で計算し尽くされたものなんだ。高校時代の喧嘩が実は多数での弱者ぼっこぼこだったことが明かされ、そらにその相手は黒人だったこと、さらには、一方的な差別暴力だったって過去の事実が一皮、一皮剥きだされて行く。そして、ついには、衝撃の事実が!って、まぁ想像は出来るものじゃある、って言うか、前半にしっかり伏線が張られているんだけど。過去が暴かれて行く道筋、その都度の3人の反応が、ほんと、上手くできてるよなぁ!かなり、しつこく自己主張するんだが、さっぱりうるさいとかねちっこいとか感じることなく、迫真のやり取りに引き込まれた。

 この縺れ絡まった糸をどうほぐして終わるんだ?難しい応用問題与えられた気分で考え考え見ていたら、なんと!これ以上スマートな終わり方はないぜ、ってほど見事に決着させてくれた。巧みに笑いでくるんでね。

 いいなぁ、巧いなぁ!これで終わりでいいよなぁ、って思っていたらさらにエピローグ、これがまた一捻り効いていて、グッドピープルは勉強が出来て努力して成功した医者なんかじゃなくて、そんな男を己を殺して送り出した下積み暮らしの女たちやその界隈の人たちなんだって、エピソード披露してお開きなんだもの!やられたっ!劇てのはこういうふうに書かにゃならんのだぜ!

 耐える女と不実な男の行き違い、なんて古くからある設定ながら、貧乏や貧困は、当人の責任なんかじゃない、自己責任なんてありえない!って今どきの過大な自助への痛烈な批判も展開されていて納得。そうだな、世界は何処も同じ、これなら翻訳ものでも演じる価値もあるって深く同意できた。

 あっ、もちろん、居眠りなんて縁遠い2時間半だったぜ。

 

  

 


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