タイトルを方言で決めてみた。「わかんね」はここ山形置賜地方の言葉で、だめだってほどの意味だ。たかが人形劇、子ども相手のお手軽舞台、とまでは思わなかったけど、正直、まあ、軽く見てたね。劇団「プーク」の『金壺親父恋達引』作:井上ひさし。
まず、一言、面白かった!さらに、一言、凄い!!
何がよかったかって、圧倒されたのは、人形の表現力だ。顔の表情は変えられない、手足はぶーらぶら、3尺ほどの人形を人形遣いがセリフを言いながら操る。時に、足を担当するもう一人が付くものの、複雑な仕掛けなんて何もない。なのに、複雑な人間の愛憎、情欲がしっかりと伝わってきた。中でも、コミカルな人形の動きは、完全に井上さんのセリフの楽しさを食っていたね。
言うならば身体だけの表現だ。表情は全く変化無し。なのに、ここまで表現できる。おいおい、役者さん、大丈夫かい?顔の表情も使えるって条件で、君ら、この人形を越える表現を実現できているかな?もちろん、よっくと見れば、人形に適した場面や仕草をしっかり選んでいるんだけどね。だけど、人形の得意な表現は何かってことをしっかり掴んでるってことが凄いと思うんだ。さすが、長年、人形劇一筋で世渡りしてきた劇団『プーク』だけのことはある。
次の凄いは、人形の造形だな。思い切ったデフォルメが実に見事にその役柄を伝えきっていた。しかも、恋人役の人形も、決して美男美女に作られていないってこと、これ、喜劇の本質だよね。二枚目役でも、どこか抜けてる。恋に悩める青年も、なんか、ずるさが感じられる表情に作られている。娘達もそうだ、剽軽なんだ、二人とも。金持ちの強欲爺さんも、憎めない愛嬌がある。こういった造形が、この芝居を生き生きと笑い充満の舞台にしていることは間違いないところだ。
そして、最後は音楽だろね。音楽は”マリオネット”というポルトガルギターとマンドリンのデュオが担当していて、当日は、前半がこの二人のライブになっていた。このライブも素晴らしかったけど、それについては、後日、ここでは、CD2枚買っちまったとだけ言っておこう。
で、劇を彩った音楽だけど、これが、ほんと、不思議な組み合わせなんだよね。まあ、ところどころ、劇の進行に合わせて、劇的になったりもしたんだけど、全体通して、ポルトガルギターとマンドリンのどこか切ない音が流れ続けているんだ。どう考えても、このお芝居と同化した音楽じゃない。こんな、洒落たお話しじゃないもの。金、金、金のごーつく爺の話だから。それに笑い、満載の舞台なんだから。
なのに、この音楽が、実に良かった。もし、この音楽がバックを支えていなかったら、この洒落た雰囲気は出なかったと思う。話しの内容とは異なり、とても小粋な作品に仕上がっていて、大人の芝居だよな、って嬉しくなった。こんなプレゼントをしてくれる川西町フレンドリープラザってほんと、凄い!試験中の生徒達連れて行った甲斐があったってもんだ。おっと、いけない、これは内緒、内緒。