ステージおきたま

無農薬百姓33年
舞台作り続けて22年
がむしゃら走り6年
コントとランとご飯パンにうつつを抜かす老いの輝き

笑いをコントロールするって、難しい!

2007-12-17 23:19:53 | 演劇

 菜の花座公演『遭難、』の総括第2弾だ。

 まず、演技について。今回は、あえて役者の持ち味と反対の役を当ててキャスティングした。失敗すれは悲惨な結果になるけど、たまにはそんな冒険も必要だよ。でないと、役者育たないから。その標的の中心が、これまでコミカルな脇役専門だったさおりだ。練習でも日常でもどこかずっこけていて、なんかおかしく、常に笑いを振りまいているさおり、彼女をシリアスな演技のできる役者にしたいと思ったんだ。

 そこで、主役の里見。この役は前半の滅茶苦茶ナンセンスな言動から、後半一気の鋭くリアルな役柄へと、とても難しい役所なんだ。これをさおりに振った。それも、コミカルな部分について、従来のさおり節は厳禁にしてね。調子外れの声もだめ、お笑い芸人的な早口のセリフ回しもカット。声も低くして、興奮しても裏返るなと、とことん注文をつけた。だから、ダメ出しにつぐダメ出し、できませんよ~どうすればいいんですか~の泣きが入る毎日だった。いやいや、ほんと、泣いてた!

 でもね、僕が見込んだだけのことはあった。最後の一週間の追い込みでしっかり里見を自分のものにすることができた。もっとも、そのお陰で、コンビニのアルバイトはほとんど休業状態。収入激減の日々を送ったってことだけどね。いいんだよ、そのくらいの気持ちでなくちゃ!

 他の役者たちについても、不慣れな役柄に戸惑い、嫌がり、逃げ隠れしながら、最後はそれぞれ自分の手の内に収めていた。だから、今回の公演は、若手役者の演技修行としては、最高の舞台だったと思う。

 次に笑いの話しだ。これは、演出の僕が反省しなくちゃならない。参ったよ!笑いはたしかにおこった。お客さんはかなりの場面で笑ってくれた。その笑いで、後半の重たいシーンもなんとか突き抜けることができたほどだ。でもなあ、違ったんだよ、僕が予定していた場面とは!あーあ、なんちゅうことだ。

 僕が面白いと思っていたところは、里見の突拍子もないナンセンスな行動とセリフだったんだけど、ここはまるで反応が無かった。逆に笑いを誘ったのは、不倫主婦の仁科だったんだ。まあ、お互いに身体をたたき合いながら不倫相手と抱き合うシーンと言い、バーミアン行こうを連発しながらの激しい抱擁と言い、たしかに喜劇的で、当然笑いはおこると思っていたけど、ちょっとはしっとりとした情感を込めて演出したつもりだったんだ。ところが、笑いはかなり明るく乾いていた。だから、仁科が不倫で、人柄が変わってお洒落になって出てきた時、舞台に登場しただけで笑いがおきてしまった。これってまったく想定外だった。この笑いは、ちょっと、ショックだった。なんか嘲笑われたような不思議な気持ちになってしまった。あと、里見がカッターを出してリストカットで脅すシーンも笑われてしまった。あーあ!

 まっ、失敗ばかりじゃなくて、生真面目な江國が、自己犠牲に恍惚としていくシーンなどは予定通りに笑いをとれた。ってことで、お笑い星取り表は八勝七敗でかろうじて勝ち越しってところだったろうか。いつになったら、観客の笑いを手玉に取ることができるようになるのか。笑いをコントロールするって、ほんと!難しい!!

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする