たかはしけいのにっき

理系研究者の日記。

決めつけないで

2009-12-27 04:51:09 | Weblog
 数学の問題を解くとき、手が止まったら、考える価値のある手法がいくつかある。『定義に戻る』『図を描いてみる』『対称性に着目する』などなど。その中でも、一番誰でもやる∧役に立つ頻度が非常に高いのが、『下位の問題をいくつか解いてみる』だ。
 これは卒研でも使っていて、いきなり研究テーマは出来ないから、まず一番単純なのから考えてみることをさせられた。そのプログラムが理解でき、実行が成功したら、今度はそれをちょっとムズくしたやつ。それができたら、いよいよ、本来扱いたい問題の結果を目指す。
 このように解きたい問題を下位の問題にわけることで、流れを実感することができるし、本来解きたい問題をきちんと把握することができる。学習するときの基本的な手法であり、研究でもそうらしい。

 この手法において、特に注目すべき要素は、時間だ。時間に依存している問題を扱いたい時、いったんある時間に固定し、その時間の空間変化を追うことを考え、その中で、系(システム)を見に行く。
 すると、たいていの場合、どのような問題でも、今後、だいたい何が起こるのか、予想をつけることができる。その流れの曲線を見つめることで、この先、相転移を起こす可能性はどれくらいか、実際には把握しきれない空間領域の状態をどのように解釈するのがベストか、などを査定することができる。

 与えられた情報をきちんと解析し、時間依存性に気をつければ、確率的に、真実を見つめることができる。しかも、割と高い確率で。経験則は、ほとんど要らない。まったく無いのはダメだけど、経験則に縛られ過ぎた解は、そうでないものよりも、真実から遠いことが、経験的に多い(矛盾?(笑))。

 すごく抽象的な話を長くしてしまったので、簡単な具体例を出すとしよう。
 塾講師として、生徒が第一希望の大学に受かる確率を示唆するのは立派な仕事だ。受かる確率を算出してみるときを想像してみてほしい。
 この系では時間依存している問題なので、まず、その子の現在の学力レベルを査定してみる。国立大学なら5教科7科目、今現在、センター試験型の模試でどれくらいの点数がとれているのか、単純にこの問題が解けるのか?などを考えてみる。普通の全国模試では、あまりあてにならない。大学別の模試なら話は違うけど。。などと考えていく。
 これはこの系特有であると思うが、この系では、必ず、その時点での合格は難しいと判定されるはずだ。そりゃ、第一希望の大学を今すぐ受けても、受からないだろう。
 そして、ここから時間依存性を加えてみる。今までの伸び具合、精神面、直前まで諦めないタイプか、上手い負け方を探してしまうようなタイプか、どれほど賭けているのか。。そんなことを考慮に入れて、未来の可能性を判断していくのだ。

 こうして考え出された答えをもとにして、もっとこうすれば合格の可能性が高まるんじゃねーか?っていうのを、解析過程の条件から伝えれば良い。

 この例は、もっと大事なことだって教えてくれる。時間依存性のないモノこそ、ホンモノだってことだ。
 いつ受けても受かる。どんなに調子が悪い時でも、今すぐ受けても、どんな精神状態の時でも、この大学は受かる。そういうヤツは、実際、その大学はちゃんと受かるし、ホンモノの優秀な受験生だ。
 たいていの系で、もし、あなたがホンモノを見つけたいのなら、今までは別にして、ここから先については、時間依存していないかを考えれば良い。今後、時間依存性無しになる可能性を考えれば良い。時間によって揺らぎまくっているんなら、問題あり。

 以上のように、頭による解析は、ヒトにとって、貴重な武器となる。
 しかし、困ったことに、こういう作業をするのが、試験1週間前だったりするときが多々あるのだ。いやいや…、もっともっと前に俺に解析を求めたなら良かったけど、1週間前じゃ解析はできるけど、それによって算出される、「できること」は少ないぞ。。ってね。
 合格って判断できる場合は全然良い。だけど、ヤバいかもっと判断された時、どう伝えれば良いのか、本当に難しい。もっと最悪な場合だと、相談者にとっての不幸な事象が、時間依存性無しで、ほぼ確実であると解析されてしまう場合(つまり、不幸がホンモノってこと)だって、少なくない。

 こういうときは、冷酷に、頭による解釈をそのまま語るより、情を持って、相手の望みを考慮した解釈を語るのが大切だ。そうすることによって、その勝負はダメでも、絶望感にならず、次、頑張ることだってできるし、そもそも解釈自体が完全に間違っている可能性だって、十分にある。

 『っていうのが、大事だと思うけど、どう思う?』
 「当然。人から相談を受けるときの、基本中の基本だね。」
 『でも、(その相談者が抱いている幻想よりは真実によりきっと近いであろう)真実を言うほうが、良い事もあるっちゃあるし、だから、全部宣告する場合もあるんだけど…。』
 「うーん、っま、そうかな。あとね、僕は、所詮、確率でしょ、ってところに、自分の逃げを作っておく。」
 『え?』
 「だから、どんなにすごい解析力をもってした解釈でも、未来や見えないモノを語っている限り、確率でしかないじゃん。だから、極端じゃない程度の少ない確率でも、それが希望なら、そっち側へ切りつめていく。」
 『それは、なんか、性格悪くない??(笑)』
 「そうか?(笑)」

 結局行きつく先は、頭と心か。
 頭の解釈なんて吹っ飛ばす、心依存で働く、ものすごく強いパワーを知っているからこそ、こんなまわりくどい相談手法になっちゃうんだろうな。。

 何事でも、絶対に負けない方法が1つだけある。それは、何も期待しないことだ。少なくとも、期待していることを決して表に出さないようにする。そうしたら、実質的に負けることは絶対にない。
 だから、人は『あの科目は勉強してないから単位とれないと思う』『っま、別にそこまでじゃなかったけどねー』っと言いたがる。

 心で期待している事実の可能性が頭の解析によって矮小化されてしまったときに、その事実を期待している気持ちをも矮小化しようとすることが慣れてしまっている状態こそが、一般に、大人である、っと言うのかもしれない。
 きっと誰でも、そこに1%の可能性すら無くても、賭けてみたいっと願う子供の心を大切にしたいのに、スベテをさらけだすのが、とうとう難しくなってしまったんだ。

 いや、それでも、そんな気持ちを本当に大事にしたい、もしくは、それを誰かに求めるんなら、、
 決めつけないで。

 『なんで??なんで、お前は、そんなに全部について、勝てるんだよっ。ありえないわー。』
 「あー、ばんちょー、それはね、何事も勝つまでやめないからで、勝ったモノしか他人に言わないからだよ。」

 そこまで強くなりたいから、気持ちを矮小化したくない。
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