スピノザの『エチカ』と趣味のブログ

スピノザの『エチカ』について僕が考えていることと,趣味である将棋・競馬・競輪などについて綴るブログです。

新人王戦&ヤコービの動機

2023-11-17 18:57:24 | 将棋
 10月31日に指された第54回新人王戦決勝三番勝負第三局。
 振駒で上野裕寿四段の先手。後手の藤本渚四段の雁木に先手の矢倉という将棋。幕切れが劇的な一局となりました。
                                        
 先手が自玉の詰み筋のひとつを受けて詰めろを掛けた局面。
 ここから☖7九角☗9九玉に☖9七香成という詰めろを掛けたために,☗7四桂以下後手玉は詰みとなり,先手の勝ちになりました。
 第1図からは☖7九角☗9九玉のときに☖8八金から清算し,☖7九銀と先に銀を打って☗8七玉に☖9八角と打つ妙手順があり,先手玉は詰んでいました。第1図で後手は受け続けて詰めろを解除する,または受けているうちに詰めろ逃れの詰めろを掛けるというような勝ち方もあったのですが,たぶんそれ以前の読みの本線が,☗8四金と打たれなければ先手玉が詰みというものであったために,1分将棋の中で正解を発見できなかったということだったのだと思います。☗8四金のような一手を指せるのは,先手の特別の才能といっていいのではないでしょうか。
 2勝1敗で上野四段が優勝。プロ入りから1ヶ月での棋戦初優勝となりました。

 ヤコービFriedrich Heinrich JaobiがレッシングGottfried Ephraim Lessingの評価を貶めなければならないと思う動機があったかどうかは分かりません。ヤコービはレッシングがスピノザ主義者だったということについてはある確信をもっていたのは確実だと僕は思います。そしてヤコービは反スピノザの立場でした。だからレッシングの評価を貶めようとしたとすれば,説明として合理的ではありますから,ヤコービにそういう動機があったという仮説も成り立つでしょう。しかしレッシングは表面上はスピノザの哲学を否定していたのですから,わざわざそのようなことを公言する必要はなかったとも思われます。ここから考えれば分かるように,どのような動機があったにせよ,ヤコービはあえてレッシングについてスピノザ主義者であったという暴露を行ったのであって,それに対して何らかの反論が寄せられるということまで想定していたとするなら,あえてそのことについて論争しようと思っていたとみることもできます。
 したがって,そもそも汎神論論争のような論争をすること自体を目的として,ヤコービはレッシングに対する暴露を行ったとみることもできます。つまりそちらの方がヤコービの真の動機であったとする見方です。これはあまりにうがった見方と思われるかもしれませんが,ヤコービはスピノザの哲学については深く研究していたのですから,自身が深く研究した事柄について,それを発表してみたいとか,それについて論争してみたいというような意欲をもったとしても,僕はおかしくはないと思います。つまり極端にいえば,汎神論論争というのは,ヤコービがそれを望むことによって開始された論争であったという可能性も捨てきれないと思うのです。そしてこうした観点を導入すると,メンデルスゾーンMoses Mendelssohnはヤコービのこうした動機に巻き込まれたということになります。ここにも,汎神論論争に参加するにあたっての消極的なものがメンデルスゾーンにはあったということになるでしょうし,レッシングをヤコービの暴露から守るために,レッシングはスピノザ主義者ではなかったというのではなく,スピノザ主義を擁護する方法を採用したのが,ヤコービの誘導であったということになるでしょう。
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