スピノザの『エチカ』と趣味のブログ

スピノザの『エチカ』について僕が考えていることと,趣味である将棋・競馬・競輪などについて綴るブログです。

入ることと出ること&無限知性による説明

2023-01-28 19:03:53 | 歌・小説
 『ドストエフスキー カラマーゾフの預言』の中の,ポドロガが論考している中立的な外界について,ポドロガの論考事態とは別に,僕が考えていることをいくつか述べていきます。
                                        
 ここでポドロガは,小説の世界あるいは物語の世界について,その中に入ることとその外へ出ていくことというのをひとつの論点としています。この論点はポドロガにとってはそれほど大きなものではないのですが,僕はこの部分をもっと広がりをもった形で探求したいのです。というのは,物語の中に入るとか物語の外に出るというのは,一元的な意味をもつ事柄ではなく,多元的な意味をもつものであって,その多元的なものをそれぞれ探求していくことに意味があると思えるからです。
 まず端的にいって,物語の中に入るあるいはそこから出るということは,物語の作者にとってそのようにいわれるのか,それとも物語の読者についてそのようにいわれるのかということで,意味合いは異なってきます。作者は構成を練って小説を書くのが普通であり,その限りにおいて作者は物語の外から物語を綴っているということになるでしょう。しかし実際に小説を書き始めると,小説内の人物たちが,元来の構成とは異なった,あるいはそれを超越した行動をとるということはあり得ることであり,このとき作者は物語の中に入っている,あるいは物語内の世界に取り込まれているといえると僕は考えます。ドストエフスキーのように,登場人物が多岐にわたる長編小説を書く場合には,このようなことがとくに生じやすいといえるかもしれません。実際にドストエフスキーは小説の構想をほとんど一から練り直すということがあったようで,それは構想の段階ですでにドストエフスキーがその小説の世界の中に入っていたからだと僕は思います。
 読者にとって物語の中に入るとは,このようなことを意味することはできません。それは自分で練り上げた世界ではなく,他者が創作した世界の中に入ることを意味するからです。ただ,登場人物のだれかに感情移入しながら物語を読むとき,その読者は小説の世界を出てそれを読んでいるのではなく,小説の世界の中に入って読んでいるということになるでしょう。

 全体が存在することをやめないのであれば,その全体の一部を構成する一部も存在することをやめないというのは,一般論としては当然のことであるように思えます。そして第二部定理一一系にあるように,人間の精神Mentem humanamは,神の無限知性の一部partem esse infiniti intellectus Deiです。そして無限知性は思惟の属性Cogitationis attributumの直接無限様態であるのですから,永遠aeterunusから永遠にわたって存在します。つまりその存在existentiaには開始も終焉もないのであって,存在することをやめるということはありません。それでも僕は,この観点から人間の精神も永遠から永遠にわたって存在するということを結論することには懐疑的です。懐疑的であるというのは,そのように結論することはできないと断定しているわけではなく,断定することができるかどうかが分からないという意味ではありますが,おそらくそのようには結論することはできないだろうと思っているという意味でもあります。
 僕がなぜこのことについて懐疑的であるのかということを説明するとあまりに時間が掛かってしまうので,ここではそれについて深く考察はしません。ただここでは,このことが結論できるにしろできないにしろ,断定的な判断を下すためにはふたつの事柄を先に考えておかなければならず,考えておかなければならないというのはそのことについて何らかの結論を下さなければならないという意味ですので,そのふたつの事柄が何であるのかということと,僕自身がその二点に関して現時点でどのような判断を有しているのかということだけいっておきます。こうしたことは断片的にではあっても過去に考察はしてありますので,なぜこれらの二点が結論と関係してくるのかということや,その二点について僕がどうしてそのような判断を下しているのかということについて,詳しく知りたいという場合には,関係する過去の考察を読んで下さい。
 二点のうちひとつめは,第二部定理八系で神の無限な観念ideaといわれるとき,それを無限知性と同一視していいのかどうかという点です。当然ながらこれは,単に同一視することができるのかどうかということについて判断すればよいというものではなく,できるのであれできないのであれ,理由も必要です。
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