スピノザの『エチカ』と趣味のブログ

スピノザの『エチカ』について僕が考えていることと,趣味である将棋・競馬・競輪などについて綴るブログです。

将棋日本シリーズJTプロ公式戦&状況的理由

2021-11-26 19:13:12 | 将棋
 21日に幕張メッセで対局があった第42回日本シリーズの決勝。対戦成績は豊島将之JT杯覇者が9勝,藤井聡太竜王が13勝。
 振駒で豊島JT杯の先手となり角換わり。先手は攻めの銀を動かさずに桂馬で速攻。後手の藤井竜王は早繰り銀から銀を交換と,早い段階から攻め合う将棋になりました。
                                        
 ここからも☖8八歩☗4四歩☖8九歩成☗4三銀と攻め合いが続きましたが,この順は先手の攻めの方が早く,大勢が決しました。後手としては第1図で☖7三桂とか☗4四歩には☖5四桂など,受けの手が必要だったようです。
 豊島JT杯が優勝。第41回に続く連覇。JT杯は第37回も優勝していて3度目の優勝。棋戦の優勝は4回目です。

 近藤は著書の中で,9萬を捨てた後,どのように打つかを考えていたといい,その考えの内容を示しています。
 この場合,7萬を引いてくるとテンパイになり,その場合は1索を捨てる必要が生じます。実際には7萬はパイレーツの手の中に残りの3枚がありましたから,7萬を引いてくることはないのですが,近藤にはそれは確知するcerto scimusことができるわけではありませんから,その場合のことも考えておく必要はあります。そしてその場合は,1索はパイレーツに対して危険ではあるけれども,それを捨てるつもりであったといっています。これは,テンパイして1位になれる可能性が出るのであれば,3位に落ちてしまうリスクは背負う価値があるからです。
 これでみれば分かるように,もしも1索を引いてきた時点でも,フェニックスがテンパイをしていたのであれば,おそらく1索は捨てられていたのです。なのでフェニックスの手がイーシャンテンであったということは,このときに1索が手の中に残され,失点を回避した理由のひとつになっているのです。つまり,テンパイしているのならどのような危険な牌でも捨てる価値はあるけれども,テンパイしていない段階では危険な牌を捨てるにはリスクが高すぎるという考え方はそれなりに合理性があるものであって,その合理性に則して打つと,この場面での1索は手の中に残るということになるからです。
 これは状況によるものでありますが,1索がパイレーツに対して危険であるという判断があったから手の中に残されたのは間違いありません。いい換えればその判断ができていなければ,1索はそのまま捨てられたでしょう。9萬を捨てる場合より,9萬を残しておいた方が,テンパイすることができる確率は明らかに高いからです。ですから,フェニックスの手がイーシャンテンであったという状況が,失点を回避した理由のひとつになっているとはいえ,そのことで近藤のプレイ自体の価値が低下するわけではありません。1索を残して9萬を捨てたのが高度なプレイだったのは間違いありません。それは1索が手の中に残された後に,解説者が吹き出してしまっていることが明白に物語っているといえます。
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