スピノザの『エチカ』と趣味のブログ

スピノザの『エチカ』について僕が考えていることと,趣味である将棋・競馬・競輪などについて綴るブログです。

棋王戦&自己嫌悪の付随

2018-03-23 19:10:33 | 将棋
 20日に千代田区で指された第43期棋王戦五番勝負第四局。
 永瀬拓矢七段の先手で相掛かり。先手の早繰り銀に後手の渡辺明棋王が腰掛銀で対抗する戦型。先手の攻めに対して後手が素直に応じたため,後手は危うくサンドバック状態になりそうな将棋に。先手が決めに出たのはおそらくよかったと思うのですが,その後の後手の反撃に対応を誤ったために終盤は混戦になりました。ただ,はっきりと後手がよくなったというところまではいっていなかったようです。
                                     
 後手が☗4四角と攻められるのを防ぐために☖5四金と打ち,6四にいた龍が6二に入ったところ。6一に入る手もありそうですがここに入ったのが最善だったようです。
 後手の手番で☖1七龍と歩を取りました。角取りなので☗3八角。後手は☖7六歩とまた角取り。先手は☗5九角と逃げました。後手は3手連続で大駒に当てる手を放ち,先手はすべて逃げたのですが,この逃げた3枚のすべての大駒が効果的に働くという展開に進むことになります。駒の配置が先手にとって都合よくできていたという将棋だったとの印象を抱きました。
 後手は☖7七銀と詰めろを掛け先手は☗8八歩と受けました。そこから☖8六香☗同金☖5七龍と進んでいます。
 ☖5七龍のところでは☖8六銀成☗同角☖7七銀と進めるのもあり,しかしそれは詰めろではなく,後で角を取るのもあまり効果的ではないという判断だったそうです。ただ,香車を渡して龍が5七に回ったのは負けを早めることになったかもしれず,後手が勝つにはここで何か手があるのでなければならなかったことは確かです。
 先手は☗1五角と王手に飛び出し☖2四歩の受けに☗2二銀☖2三王として☗7四角ともう1枚の角を使いました。
                                     
 これが☗4一角成以下の詰めろで後手は窮しています。☖1四王と逃げましたが☗4八角が詰めろ龍取りとなり,先手が勝ちきっています。
 永瀬七段が勝って2勝2敗。第五局は30日です。

 自己満足acquiescentia in se ipsoが付随する喜びlaetitiaは,その喜びを感じる当人にとっては正当であると判断されます。もしもこの種の喜びが正当であると判断されないのであれば,人は自分の働く力agendi potentiaによって感じることができた喜びを正当であると判断しないということになりますから,正当と判断される喜びが存在しなくなってしまいます。自分の活動能力agendi potentiaによってなした喜びが不当で,外部の力を受けてなした喜びが正当であるというのは,それ自体で不条理であるからです。
 したがって,もしある人間が喜びを感じ,しかしそれを不当であると判断する場合があるとすれば,それはその喜びを自分の力で感じたわけではないと当人が認識している場合であるということになります。よって,それが自分の力のうちにあるか,それとも外部の力のうちにあるかということは,その喜びが正当であるか不当であるかを判断する際の材料になり得ます。あくまでもなり得るのであって,必ずそうなるというわけではありませんが,これが喜びが正当であるか不当であるかを認識する場合の比較の材料であり得るということは間違いありません。
 すると悲しみtristitiaの場合にもこれと逆のことが成立し得ることになるでしょう。喜びの場合と同じように,その他の条件が完全に等しいと仮定するなら,相手に好手を連発されて圧倒されて負ける方が,最後に自分のミスで負けてしまうより,より大きな悲しみとなるのです。なぜなら,後者の場合は最後を除けば自身の働く力を表象するimaginariことは可能ですから,自己満足という喜びが付随し得るのであり,その分だけ大なる完全性perfectioから小なる完全性への移行transitioの量が減じるからです。前者の場合は自己満足が付随する余地はありません。むしろ自分の無能力impotentiaだけが表象されることになるでしょう。
 後者の場合も,最後にミスをしたという仮定になっていますから,無能力は表象されます。しかしどちらがより強く自己の無能力を表象することになるかといえば,前者の場合であるということは明らかです。第三部定理五五は,その表象imaginatio自体が悲しみになるといっています。これは第三部諸感情の定義二六の自己嫌悪humilitasです。つまり自己嫌悪もより大きく付随するのです。
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