スピノザの『エチカ』と趣味のブログ

スピノザの『エチカ』について僕が考えていることと,趣味である将棋・競馬・競輪などについて綴るブログです。

獣の数字&自転車の場合

2013-01-11 18:43:59 | 歌・小説
 ミコールカの場合のときに示したように,『罪と罰』は1866年が舞台です。ロシアのキリスト教に分離派が出現してからジャスト200年後という設定です。僕は気付かなかったのですが,亀山郁夫の『ドストエフスキー 父殺しの文学』を読んだところ,ここには分離派の誕生の一因が隠されていたのです。
                         
 1866年の200年前といえば1666年。この末尾の666という数字がキリスト教にとって不吉な数字であるということはご存知の方も多いでしょう。『新約聖書』の「ヨハネの黙示録」において,アンチキリストの獣の名前の数字として刻印されたと書かれているものです。分離派の誕生が1666年であったことと,これは大きく関係しているそうです。
                         
 666という数字が『罪と罰』に関係しているのではないかということは,江川卓が『謎とき『罪と罰』』で示しています。ロシア語というのはローマ字と同じで,規則を理解すれば意味は不明でも読むことはできます。主人公のラスコーリニコフのフルネームはロジオン・ロマーノヴィチ・ラスコーリニコフ。ロシア語でラ行はPなので,PPPとなります。このPPPをひっくり返して裏からみると,666に見えます。つまりラスコーリニコフには666の刻印が押されているのではないかというのが江川の解釈です。
                         
 亀山によればナポレオンはロシアにおいてアンチキリストの影を背負っていたそうです。そしてゲトマリア数値というものにおいて,666の数を与えられていたとのこと。ラスコーリニコフは自分の主義で殺人を犯しますが,それがナポレオン主義なのです。
 江川説は深読みのしすぎとも思えます。ただ。PPPというイニシャルになるのはおよそ600万人にひとりであろうというのが江川の計算。さらに,ロジオンというのは洗礼名ですが,ドストエフスキーは当初,ワシーリーという洗礼名を考えていて,それを途中で変更したそうですから,何らかの意図がドストエフスキーにあったということだけは,確かだと思います。
 ドストエフスキーは「ヨハネの黙示録」を好んで読んだそうです。666のことが念頭にあったとしても,不思議ではないでしょう。

 僕が自転車に乗っていて,タイヤの空気が抜けている感覚があったので,空気を入れて膨らませたと仮定します。このとき,タイヤが自転車の一部を組織している物体であるということには反論はないものと思います。
 空気を挿入されてタイヤが膨らむこと,このことの観念は第二部定理三,さらに慎重を期せば第一部定理一六により,神のうちにあるということになります。そしてこの仮定は明らかに現実的に存在する自転車とそのタイヤを意味しています。よってこの観念が神のうちにあるあり方というものは,第二部定理九によって説明されなければなりません。ここまでも問題はないものと思います。
 このとき,それが具体的にはどのように第二部定理九によって説明されるのかということに思いをいたすとき,僕にはこの観念は,タイヤの観念を有する限りでは神のうちにはあるだろうけれども,自転車の観念を有する限りでの神のうちにはないのではないだろうかと感じられるのです。つまり,空気を入れられることによってタイヤが膨らむなら,これは明らかにタイヤの中に何かが生じたというべきだろうと思うのですが,そのことの観念は,このタイヤによってその一部を組織されている自転車の観念を有する限りでの神のうちには存在せず,ただ単に自転車の一部としてのタイヤの観念を有する限りで神のうちにあるといわれるべきなのではないかと思うのです。したがって僕の感覚として,個物の場合にも,Xの観念を有する限りでAの観念が神のうちにあり,Aの観念を有する限りでPの観念が神のうちにあるとしても,Xの観念を有する限りでは神のうちにPの観念があるとはいえないという,三段論法不成立の可能性があると思えるのです。そして,自転車という,いくつかの個物によって組織されている物体に関してこのことがいえるのであるとすれば,人間の身体というものは自転車とは比較することが困難であるといってもいいくらいに複雑な物体なのですから,なおのことこのことが妥当するといえるように感じられますし,このことが現実的に生じる頻度というものも,自転車とは比較にならないくらい多いのではないかと思えるのです。
コメント
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