スピノザの『エチカ』と趣味のブログ

スピノザの『エチカ』について僕が考えていることと,趣味である将棋・競馬・競輪などについて綴るブログです。

代助&砂糖

2013-01-25 18:55:56 | 歌・小説
 夏目漱石の小説の中で,戦前の家父長制の影響というものが最も色濃く反映されているのは,『それから』ではないかと思います。
                         
 『それから』の主人公である長井代助は,長井得の次男です。この得というのは,かつては役人でしたが,辞めてから実業の世界に入り,物語が進行する時点ではかなりの財産家になっています。代助は次男ですから兄がいますが,これは誠吾といって,卒業後に父の会社に入社,具体的には示されていませんが,この時点でこの会社の要職に就いています。すでに梅子という妻があり,誠太郎と縫という兄妹を儲けています。誠太郎がすでに15歳という設定ですから,誠吾の結婚はそれより前と考えなければなりません。
 代助はいわゆる高等遊民で,父の援助で,稼ぐための仕事はせずに生きています。誠吾が卒業してすぐに父の会社に勤めるようになったのは,ゆくゆくはこの会社を父から継ぐためであるでしょう。このことは得と誠吾との間の了解事項といえます。実際に得は,すぐにでも自分は隠居して,誠吾に会社を継がせてもいいというようなことを言っています。ただ,この時点では会社の経営が順風満帆とはいえないので,それに一段落をつけてから継がせる意向なのです。
 誠吾が得の会社に勤務し,代助が高等遊民であるのは,誠吾が長男で代助が次男だから可能なことといえます。ではこの関係における代助の存在意義は何かといえば,もし誠吾に万一のことがあった場合のスペアにすぎません。
                         
 これは石原千秋が『反転する漱石』の中でいっていることですが,このように考えるならば,代助という名前自体がそもそも次男という存在を象徴するようなネーミングであるといえます。つまり家督であれ会社であれ,それを全面的に相続する立場として長男の誠吾がいます。しかしこの時代,ひとりの子どもを立派に成人させるということは,現代とは比較にならないくらい大変であった筈なのです。だからその予備的存在として,もしものときには代わって助ける者というのが,次男である代助の存在意義なのです。
 僕はおそらく漱石はこれを念頭にして,『それから』の主人公を代助と名付けたものと考えています。

 ごく簡単な例で,この一般命題を成立させているふたつの条件が正しいということをみておきます。
 砂糖は一面からみれば,すなわち色という面からみるなら白いものです。また,別の面,味という面からみるなら甘いものです。このとき,砂糖は白いという命題,また砂糖は甘いという命題は,真の命題です。もちろん厳密にいうなら白くない砂糖とか甘くない砂糖というのもありますが,ここではそれはレアケースとして無視します。このくらいの無視は許されると考えるからです。よって第一の条件の方は正しいことが確認されます。
 一方,白さというものが砂糖の一面を説明するということ,また,甘さというものも同じように砂糖の一面を説明するということも,また正しいと理解します。この場合にも第一の条件と同じように,無視しなければいけないようなレアケースがあるということは僕は認めますが,やはりこの無視は許容範囲内であると判断します。したがって,第二の条件も正しいということが確認されました。
 本当は,論理的な記述を行おうとする場合には,白さとか甘さといったような,本来は形容詞として用いられるべき語句を使用するのはあまりよい例とはいえません。ある事物を白いと認識すること,また甘いと認識することは,第二部定理一七でいわれている表象なのであって,真理を構成するものではないからです。ここであえてこうしたことを例示しているのは,それが分かりやすいであろうという意図以上でも以下でもありません。また,現在の考察課題は命題の条件を確認することなのであって,砂糖に関する何らかの真理を確定させることではありませんから,この例を使っても問題はないものと思います。
 このとき,僕は白さや甘さというものを,砂糖の本性から必然的に帰結するような特質であると理解します。このこともそれ自体でみれば論理的に大いに問題があるでしょうが,それに関しては過小に評価します。僕が示しておきたいのは,甘さや白さを砂糖の特質とみなせるのかどうかということではなくて,Xは一面からみればあAであり,一面からみればBであるという命題が真の命題である場合の,XとAおよびBとの関係をこの仕方で限定させるという点にあるからです。
コメント
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