マンマミーア・イタリアンーと来たもんだ! 26
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2ヶ月ぶりのUPになりますが、本日は久々の「医食同源・マンマミーア・イタリアンーと来たもんだ!」の26回目をUPします。
リンクなども乱れてきたので、この機会に修正。
どうぞお楽しみを!
マンマミーア・イタリアンーと来たもんだ! 26
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掲載日:2005年6月22日
まいど、まいど、イダテンのゲンさんです!
梅雨入りして間もなくというもの、降ったり止んだりの日が続くけど、お客さんがたは元気でいらっしゃるかい?
雨が降ると外に出るのがおっくうになったり、気分が晴れなかったりするもんだが、さらにお年寄りや体の弱い方は、気圧の変化に敏感なもんだ。イマイチ調子の出ないなんてご仁もいらっしゃるだろう。
あっしは毎日、新鮮な海のモンをいただいてるせいか、おかげさまで元気でやっているが、同年代の友だちには体調を崩しているやつも少なくねえ。お客さんがたも、お体にはお気をつけていただきてえもんだ。
さーて。そんなワケってこともねえが、みなさんのお手もとに「お試しキャンペーン&特売セール」の価格パンフレットが届いたかい。
ご覧になっておくれかな?
これから夏にかけて、スイサンドンヤ・ドットコムさんは、新商品が続々登場。お配りしたパンフには、売切御免コーナーや半額キャンペーンが目白押しになっているよ!
これから体力のいる季節に入るけど、お客さんがたもスイサンドンヤ・ドットコムさんの新鮮な食材で乗り切っていただきてえもんさね!
ゲーテも愛したシチリアの大地
さて、ご好評をいただいてるマンマミーア・イタリアンも、残すところあと僅かになってきた。今回は南下に何かを重ね、シチリアの食の2回目だ。
シチリアといえば、つい20年ちょっと前までは、南北イタリアで貧富の格差を象徴する存在だった。当時は州都パレルモの治安もすこぶる悪く、歩いているだけでバイクに乗ったひったくりが、ハエのようにブンブンたかってくる――そんな町だったのさ。
それが、こないだ商用で立ち寄ってみたところ、ずいぶん良い町に変わっており、夜でも比較的安心して歩けるようになっていた(それでもドロボーさんには、十分気をつけなきゃいけないがね)。
禁句だったマフィアの存在(※1)も、10年ほど前のパレルモ大裁判で、当時の判事が暗殺されて以降、人々は積極的に反マフィアを唱えるようになってきたそうだ。
それというのもシチリアという土地が、次第に国内外から観光地として人気を高めているからだそうで――そんな中でネガティブなマフィアの存在は、彼らにとって歓迎できない存在に変わりつつあるようだ。
現在シチリア島はアグリジェントと、カターニアやシラクーサ、ラグーサといった南東部バロック地区の2箇所が世界遺産に登録されている。
加えて、降り注ぐ太陽に青い空、青い海は、月並みな言い方になるが、訪れる者を魅了してやまないワケさね。
あのゲーテも「イタリア紀行」の中で、「イタリア、それもシチリアなしでは、何ら心に刻むものはない。シチリア――すべてはここからはじまる」と賞賛したほどだ。今でもイタリアを旅行しているドイツ人は、一目見ればすぐにわかる。連中、太陽をなるべくいっぱい浴びようと、股下ギリギリの半ズボンにランニングという出立ちをしているからだ。
文豪ゲーテが、半ズボンにランニング姿だったかどうかはわからねえが、今も昔も旅人を惹き付けてやまないのは、やはり豊かな食材に彩られた、シチリアの食に違いねえ。きっとゲーテも、北国とは違ったシチリアの幸に舌鼓を打ったに違いねえ。
地中海の十字路として、さまざまな食材が行き来したシチリアだが――その食文化について、もうちょっとばかしお聞かせいたしやしょう。
※1 マフィアにはオメルタと呼ばれる「沈黙の掟」があり、それを破るものには、石を口の中に入れて暗殺する慣習がある。
シチリアはイタリアの田舎料理
日本でも田舎の結婚式に出ると、昼夜を問わず大量の料理と酒に見舞われるが、そんな事情はイタリアでも同じ。この国でも南下するに従って(あるいはアルプスへ北上)、料理のボリュームは大きくなる。
イタリア料理がボリューム満点とはいっても、よく知られているように、アンティ・パスト(前菜)にプリモ・ピアット(パスタなど)、セコンド・ピアット(肉や魚の主菜)の3皿でおさめてしまうのが主流で、応用で5皿くらいに留まるというのが通常のパターンだ。これは最近のフレンチでも同じことで、こいつは人間の胃袋が丁度良く満足するオーダーなんだろう。
ところがシチリア人の接待にあって、「おまかせのコース」をされた日にゃあ、アンティ・パストだけで5~6皿。プリモ・ピアットに突入した段階で、パスタやリゾットが3皿くらい出てくることも珍しくない。
おしまいのセコンド・ピアットを食べる頃には、食べ物を残さないのが自慢のあっしでも、胃袋の限界に達していたりするわけさ。
ブカティーニで気分はコルレオーネ?
さて、シチリアってえ土地は、昔アラブ人が乾燥パスタを伝えたところで、今でもパスタは盛んに食べられている。
中でもあっしが好きなのはブカティーニという、太めで中空になっているロング・パスタを使ったものだ。こいつは見た目がうどんのような太さをしており、いわばマカロニを長くしたパスタなんだが、食感もシコシコしているのが特徴だ。
ブカティーニは海の幸をふんだんに使ったペスカトーラや、アマトリチャーナのようなトマトソースと相性がバツグン・・・こいつを食うと、なぜかあっしはゴッドファーザーのドン・コルレオーネにでもなった気分になるんだね~。
なに、魚介類やトマトソースなら、細麺のカペッリーニの方が合うだろうって?
ウーン、そいつは確かにそうだけど・・・ペスカトーラやスパゲッティ・ポモドーロ=細麺というのは、日本のイタリアン――それもひと時代の常識さね。現地イタリアに行くと必ずしもそうでないことが多い。
もちろん、魚介類やトマトってえのは旨味成分が多いから、スパゲッティーニやカペッリーニなどの細いパスタと相性が良い。旨味のあるソースは、茹で時間4分くらいの細パスタに、よく絡みついて味がしみるわたるワケさね。
だが、こういった細麺には旨味があっても、軽めのソースが使われることが多い。
トマトソースにしても、裏ごしで味をなめらかにしたもの――それにタコのように淡白な食材を合わせたものがピッタリ来る。
だが、シチリア料理のように、スパイシーなこってり味を好む地域では、どうしても強い味に負けない太いパスタが良い。
その点ブカティーニってえのは、太いせいか強いソースによく馴染む。その上、中が空洞になっているから、ソースもよく絡むんだ。ちょっと塩味キツめ、スパイスやハーブもキツめに味付けされたペスカトーレには、こいつが最高なんだよ。
またトマトソースにしてもシチリアでは、アマトリチャーナ――赤唐辛子やベーコン、場合によってはナスやズッキーニを入れて、具沢山にしたものが主流。こいつにブカティーニが合うのも同じ理由と言えるだろうな。
シチリア料理はハーブが決め手
さて、シチリア料理をひとことで言うなら、ラーメンに使われる表現じゃないが「ガツーンとした味」ってヤツが魅力ってことだろう。
どの町にもあらゆる食材が溢れ、食べ方もアラブからスペイン、アフリカ、北欧、ドイツ、ギリシャ、ローマなどが入り交じったこの地の料理だが、本土イタリアに比べて味がすこぶる強いのが特徴だ。
それを支えているひとつの要素は、ギリシャ時代からこの地に持ち込めれてきたハーブやスパイスの数々だ。もともと気候が暑かったこの土地に、ハーブやスパイスが多用されたところで、何の不思議もない。
まあ、インドやアラブ地方に比べると、使われ方からするとむしろ控えめかもしれないが――それがなぜ際立って感じるかといえば、1~2種類のハーブ類を突出して使用しているからだろう。
ハーブとして使われる野菜の代表的としては、フィノッキ(※2)があげられる。こいつは茴香(ういきょう)、つまりフェンネルの一種――セロリと同じセリ科の植物で、形もセロリ(葉はニンジンの葉に似る)匂いの強いところもセロリに近いんだが、ちょっくらトニックウォーターを思わせる甘い香りがする香草なんだ。
最近じゃあ、高級食材を扱っているスーパーには、よく置かれているから、見たことのある人も多いだろう。
こいつは古代ギリシャ時代(※3)から栽培されていたそうで、消化を助ける効果があるとして、食後のフルーツと同じ感覚で食べられていたそうだ(フェンネルの種は、インドなどでも食後に同様にだされることが多い)。
ハーブというと、普通は上品な使われ方をされるイメージが強いけど、ガツンとした強い味わいは、やはりアラブ支配時代の名残なのかもしれないな。
※2 シチリア方言ではフィヌキェッドゥと呼ばれる。
※3 ギリシャのマラトンで栽培されていた。
匂いにご注意、フィノッキくん!
フィノッキを用いた料理で特徴的なのは、Pasta con le sarde(パスタ・コン・レ・サルデ)、イワシのパスタだろう。
こいつはイワシと松の実、オリーブオイルに野生のフィノッキで作ったソースに、マカロニを合わせたものだ。野生のフィノッキってえのは、海に面した岩場に自生しているそうで、フィノッキ・セルヴァティコという、ちょっと違う品種だそうで、香りはさらに強い。
ソースは黒ずんでいて、初めて見るとびっくりするが、シチリア料理のスタンダードとして、一度食べるとクセになる。こいつにはシチリア産の白ワイン――それもあまり強烈ではない上品なものが合う。
そうさな~。以前も紹介したスイサンドンヤさんの「コルディッチ・シチリア・インツォリア」なんてピッタリ来るだろうか(こいつはシトラス系の香りがあって、価格の割にボディもしっかりした、品の良い白ワインだ。おひとつ試してみてはいかがかな?)
さて、フィノッキには流通上の符牒として、オスとメスがある。
香りが高く、生に向いているのはオス。柔らく調理に向くのはメスで、雌雄両方あることから、単数形のフィノッキオには、現地の俗語で「おかま」の意味がある。ま、イタリアに行った時、人前で使うときには気をつけてもらいてえもんだ。
生のフィノッキの場合は香りが強いため、ワインには合わないとされている。
その昔、悪徳ワイン商人が、安ワインを客に高く売り付けるためフィノッキを食べさせた故事から、「ゴマかす」ことをイタリア語でインフィノッキアーレ(infinocchiare)なんて言うそうだ。
まあ、日本語の「ゴマかす」も、胡麻胴乱っていう江戸時代にあった中身が空洞の菓子から来ているそうだ。中身がないのを胡麻菓子といったことに由来するんだそうで、どちらも食べ物に語源を由来するところなんざ、日本人もイタリア人も、相当に食い意地の張った国民といえるかもしれねえな~(そういえば『サバを読む』も、鯖の数を数える故事から来ていたな・・・)。
ただ、ローマ時代くらいのワインは、今と違ってハーブを漬け込んだり、ハチミツで味付けをしたものが主流だったそうだから、生のフィノッキとの相性は良かったかもしれない。
ともかくフィノッキも、日本人には好きずきがあるかもしれねえが、一度くらいは試していただきてえもんだ。
さーて、時間が来やがった。
それじゃ、お客さん。次回をお楽しみに!
マンマミーア・イタリアンーと来たもんだ!
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