チューリッヒ美術館展と同じ日に、サントリー美術館の「高野山の秘宝」展を見に行きました。こちらも見応え満点でした。
何と言っても目玉になっている八大童子が見もの。
うち6体が運慶の作で、あとの2点はほかの仏師の作なようですが、明らかに造作が違います。どれも国宝ですが、もちろん運慶作の方が良い。
↓ こちらパンフレット左上の8体のうち、左端と右端のものが別の仏師作。
遠目で見るとわかりにくいですが、やや繊細さに欠けています。
運慶の代表作といえば、東大寺の山門にある金剛力士像・阿吽の2体のイメージが強いのですが、あの荒々しく力強い表現は実は運慶には珍しい作品です。
もっと小さな仏像は丹念に磨かれていたり、細かい顔の表情、内面まで表現しているものが多いのですね。
それにしても運慶の時代から空海の時代を見ると、約400年もの隔たりがあり、これは私たちの時代から関ヶ原の合戦を遡るのと同じくらいです。
鎌倉時代といえば、日蓮宗や浄土宗、浄土真宗、臨済宗、曹洞宗などが完成した時代で、いわば当時の新興宗教で、空海が完成させた真言密教ははるか昔に出来上がった教えでした。
運慶が特に宗旨にこだわったという話は聞きませんが、運慶作と伝えられるお寺は密教、あるいは密教の要素が入った寺(例・東大寺)が多いのは何か理由があるのでしょうか。
密教は言葉だけでは伝えることのできない教えとして、マンダラや独鈷などの法具を用いることで知られてますが、この八大童子に見られる深い表情にはそんな要素がうかがえるような気がします。
印象的だったのが、独鈷杵と呼ばれている法具ですが、いかにも何か法力がありそうな雰囲気です。
ちょっと霊感があるという友だちは、高野山で護摩を焚いて祈祷してもらったそうですが、高野山の独鈷杵のパワーはすごいというようなことを言ってました。
霊感のない私にはわかりませんが、「法力がありそうだな」というのは見ていてビンビン感じました。
でも、この法具。
修行を積んでないフツーの人が持ったら、たぶん独鈷杵のパワーに押し潰されるな。
良いものも悪いものも一切合切運んできそうな感じを漂わせていました。
密教というのはダークサイドのパワーも凄く、中には邪教として知られ、呪殺もいとわない「いざなぎ流」とかいう呪術団もあるとか。
密教というのは仏教でありながら、実はお釈迦さまをご本尊としない宗派です。密教のご本尊は宇宙の中心であり、宇宙そのものであるという大日如来さまです。
お釈迦さまは、あまたさぶらいける様々な仏さまの一部に過ぎず、必ずしもブッダの教えを重視していない仏教というのが密教最大の特徴ですね。
ざっくり言うと、インドで生まれた仏教が、もののベースにあったバラモン教(ヒンドゥー教)に先祖返りしたとも言いましょうか。
ヒンドゥー教の要素が強い密教ですから、当然ながら仏様や神様の数は多く、しかもダークサイドのフォースを持ってる神仏が多い。
そんな中、圧巻だったのが孔雀明王でしょうか。
孔雀は美しい羽に似合わず悪食で、コブラでも平気で食べてしまうという怪鳥。
その孔雀のパワーにあやかって、童子の姿をしている孔雀明王の真言はすごいと聞きます。
この展覧会は12月7日まで。
大きな大きな孔雀明王を見るだけでも行く価値がありますぞよ♪
ご興味ある方は是非足をお運びくださいませ。
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