小暮満寿雄 Art Blog

ダジャレbotと間違われますが、本職は赤坂在住の画家です。作品の他お相撲、食やポリティカルな話も多し。右翼ではありません

「硫黄島からの手紙」を見て

2006-12-15 10:01:53 | Weblog
昨日は10:00~14:00までの間、マンションの給水塔清掃のため断水。この機会に「硫黄島からの手紙」を見てくる。
「父親たちの星条旗」は、先日見にいったが、それ以上の出来。素晴らしい。
実は硫黄島2部作のうち、日本側視点の方がアメリカでの興行成績はいいそうで、なんでも理由はイラク戦争での現地人の視点が理解できるとのこと。
両方を見た立場から言うと「硫黄島からの手紙」の方が、単純に出来が良かったからとも思うが、字幕を嫌うアメリカ人が見にくるのだから、やはりイラク戦争の影響は大きいのだろう。
第1部の「父親たちの星条旗」も優れた出来だが、やはり日本人から見た視点の方が、心に訴えるものが大きい。「硫黄島」を見たあとに、アメリカ側の視点を思い出すと、やはり焦土となったことのない国民のアングルだと感じた次第。
その点でも、イーストウッド監督は凄い。日米両方の視点が見えてしまうのだから。
この人は「荒野の用心棒」や「ダーティーハリー」のイメージとは裏腹に、監督作品となると一筋縄で行かないものが多い。特に傑作とされる「ミスティック・リバー」や「ミリオンダラー・ベイビー」などは、その傾向が強く、見た人が戸惑うこともしばしばだ。実際に私自身も「硫黄島」を見て、この2作の価値を再認識したくらいである。
その点で言うと「星条旗」は、戦争に善悪、勝者敗者は本質的に存在しないという、イーストウッド監督にしては、比較的わかりやすい考え方が全編を貫いていた。
ところが「硫黄島」は、そうでない。日本人の視点を、たいへんニュートラルな立場で再現していただけに、簡単に割り切れない部分が浮き出てきた感じだ。
この映画は人によって違うとは思うが、娯楽映画として楽しむ類いのものではない。メッセージを強調したり、話を面白くさせるというのは、観客に感情移入をさせる。だから、みなを同じ意見に傾かせたい時は有効な手段で、国威発揚に使われる戦争映画は、みな娯楽がベースになっている。
特に子供は大好きで、私自身も(映画ではないが)小学校の時に担任の先生から聞いた、元寇の神風話にワクワクした覚えがある。(その先生は日教組の人だったが、神風の話も上手でした)。
個人的な感じでは、栗林中将の突撃は、「ミリオンダラー・ベイビー」の安楽死に近いものを感じた。死を覚悟した突撃(特攻も含む)や安楽死というのは、宗教的に言えば(特にキリスト教世界では)自殺にあたるので、大罪になるはず。
ところがイーストウッド監督は、その点を淡々と描いている。
まだ、感想がまとまらないが、必見の一本であることは間違いない。観客は高齢の方が多かったが、女子高生なども大勢いた。これも良いことに思う
コメント (6)
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