さうぽんの拳闘見物日記

ボクシング生観戦、テレビ観戦、ビデオ鑑賞
その他つれづれなる(そんなたいそうなもんかえ)
拳闘見聞の日々。

敗者復活戦からの決勝進出 伊藤雅雪、吉野修一郎と激突

2021-11-20 05:24:01 | 関東ボクシング


12月29日さいたま決戦のアンダーカードが発表されました。


WBOフライ級チャンピオン、中谷潤人は9位クリスチャン・ゴンサレスと二度目の防衛戦。
ユーリ阿久井政悟との再戦だったら最高でしたが、海外からの選手招聘がしやすくなってきたから?まあ無難な相手という感じでしょうか。

挑戦者ですが、他の階級で同姓同名の選手がいて、検索してもややこしいことになってしまいます。
BoxRecのメキシコ、フライ級のカテゴリーでは、上から4番目に名前が出ます。
戦績は14勝(4KO)1敗と、若いけど、恐さがあるわけではないでしょう。相手選びとしては、甘い部類ではないでしょうか。

井上尚弥の例もあるとおり、いざ大勝負、というカードなんて、なかなか組めない場合も多いのに、今回はこのくらいで、という、昔ながらの感じでやっている余裕が果たしてあるのか、という気にもなるマッチメイクです。
中谷はまだ若いし、というところでもあるのでしょうが、若い若いと思っていても、あっという間に時は過ぎます。
中谷くらい、強豪王者へと成長していく素養、可能性を感じさせるボクサーならば、早い勝負、厳しめのカードを、どんどん組んでいくくらいの構えでいって丁度良い、と思うんですが、このへんはまだまだ、旧態依然の風が吹く、という感じですね。



それはともかく、順番で言えばセミセミになるんですかね、ライト級ウォーズのビッグマッチ決定がやはり目を引きますね。

日本とアジアのライト級三冠、吉野修一郎が、元世界王者の伊藤雅雪と激突。
本来なら昨年、伊藤を破った三代大訓が、吉野と「決勝戦」を闘うところでしょうが、三代がケガか体調不良だったか、試合延期などで足踏みし、細川バレンタインとの「敗者復活戦」を勝った伊藤がそれに成り代わって、という感じです。


こちらはA-Sign動画。伊藤が、石井会長とともに、試合決定の経緯などについて、興味深い話をしています。
しかし坂井祥紀と12ラウンズのスパーリングとは。相当きつそう...。






このクラス、国際的知名度や評価で言えば中谷正義が抜きん出て、それに伊藤が続くのでしょうが、ゴロフキンvs村田のアンダーという舞台ですから、吉野にとっても、現状、日本で闘う試合としてはこれ以上無いアピールチャンス、というところでしょう。
これはなかなか良いカードが用意されましたね。

大会場興行のアンダーというのは、舞台として良いものかどうか、微妙な場合もあったりしますが、客数制限もかなう限り低いハードルにしてもらって、大いに盛り上がってほしいものです。
こういう興行だったら、それこそPPVでも納得なんですが...ブツブツ。






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最も望ましくない形で 井上尚弥次戦、PPV配信に

2021-11-19 00:17:44 | 井上尚弥



こんな噂があるらしい、と又聞きはしていたんですが、まさか、というのが率直な感想です。
井上尚弥、アラン・ディパエン戦、フジテレビでは生中継なし。
ひかりTVとAbemaでPPV方式のライブ配信、料金は記事によるとどちらも同じで、3960円、とのこと。


...どこから突っ込んで良いのか迷います。「正気か?」というのが、一番最初に頭に浮かんだ言葉です。


何よりもまず、カードが弱い。もちろん諸事情ありましょうが、結果として統一戦はおろか、上位陣でもなく、さりとて中堅と言うにも及ばない格下相手。
本人の言葉をあげつらうのは気が引けますが「調整試合」というのがぴったり。
ファイティング原田の時代なら、間違いなくノンタイトル戦として行われていた試合です。


まあ、それを世界戦として組むのは、ひとまず良しとしましょう。時代が違えば事情も違います。
しかし、井上尚弥というボクサー単品の価値以外、何も特別な「売り」がない、言えば高くは買えないカードを、よりもよって彼のキャリア初の国内PPVにしてしまうというのは「今」の事情にもまったく、かなうものではありません。

このような矛盾をものともしない?主催者の鈍感ぶりには、もはや呆れるほかありません。
そして、あまりにも感覚が古いことも、また。


おそらくですが、カードの弱さに反して、大橋ジムないしは井上陣営の要求が高く、それにTV局が応え得なかったから、こういう話になったのでしょう。
大橋ジムが井上陣営の要望に応えるグレードのカードを組めなかった、という意味では、責任は大橋ジムにありますが、傍目から見れば、このカードしか実現しなかった以上、条件面の調整はならなかったのか、と思いますが...。

結果、TV局が買わないカードを、オンデマンド配信に逃がす、という、過去にも何回かあった、実りなく、話にもならない構図が、人もあろうに、井上尚弥の試合で実現してしまった。
何と馬鹿馬鹿しく、間の抜けた話か。もはや溜息も出ません。


もしこれが、絶対無いでしょうが井岡一翔戦であるとか、ドネアにカシメロ、或いは他の世界的有名選手との試合というなら、まだわかります。
というか、むしろ、そのようなカードを組んだ上で、PPVライブ配信の世界へ、華々しく躍り出てくれ、と心から願っていたくらいです。
しかし実際には「これだけはやってくれるな」と思う方向で、井上尚弥初の国内PPVが実現「してしまい」ました。


まあ、話の前後や食い違いは色々あったんでしょう。
今回のカードが、勝敗を心配するようなものではない、という前提で「テストパターン」としては悪くないものだ、という見方も、あるのかもしれません。


ただ、先のゴロフキン、村田戦のAmazonプライムと比べ、あまりに規模が小さく、普及の度合いも低いプラットフォームで、しかも芸能人だかYouTuberだかがゲストに出ると。
おそらく、専門性が低く、迎合度は高い、ある意味従来の地上波TV局以上に「これじゃない」番組作りがなされそうな雰囲気でもあります。
カードの良し悪し以前に、そんな連中の顔や声を見聞きせなならん、そのためにPPVの視聴料金を払えというのか、という、半ば怒りにも似た気持ちさえ抱いてしまいます。


日本におけるDAZNが、一番注力しているサッカーの配信などを見ていると、周辺番組の一部にはそういうテイストのものもあるようですが、基本的には、サッカー自体に通暁したアナウンサー、ジャーナリストが番組の柱として起用され、しっかりしたものを日々、制作して配信しています。

しかしボクシングはというと、よりによって井上尚弥の試合が以下同文、というのが現実です。
まあ、こういうことも起こり得るのか、と思って諦めるしかないんでしょう。
とはいえ、よりにもよって井上尚弥の試合で「こんなこと」が起こってしまうのか、と思うと...本当に、ただただ情けない、ですね。



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大変だけど楽しい週末 WOWOW&DAZN、二週連続でライブ配信

2021-11-18 08:18:00 | 海外ボクシング




昨日の豪州決戦は、井上岳志が大差の判定負けを喫したとのこと。
映像は見られませんでしたが「バレさん」こと細川バレンタインさんはライブで見ていたようですね。







やはり、パワーの差だったかなあ、という想像をします。
ティム・チュー、直近の試合では、一回り上半身が分厚くなっていたように見えました。それによって損なわれるものもあるか、と逆に思うくらいでしたが。
何にせよ、井上岳志には厳しい試練、世界の壁ということでしょうか。
しかしこのクラスで、ハイメ・ムンギア戦に続き、世界上位に再び挑んだことは、それ自体が貴重ですし、堂々たる挑戦を闘い終えたことに拍手したいという気持ちです。



さて、海外の試合についてですが、この週末と来週末、WOWOWオンデマンドとDAZNにおいて、ライブ配信が二週連続で重なります。
本当に昔を思えば夢のような話ですが、これだけ続いて、しかも重なる日もあると、嬉しい悲鳴ですね。


まず明後日、20日。土曜日、午前10時からDAZN。日曜ではないんですね。現地金曜夜の興行か。
WBOミドル級タイトルマッチ、デメトリアス・アンドラーデvsジェイソン・クイグリー。
挑戦者は一時、村田諒太との対戦話もあった人。はっきり言って「担がれた」感ありありでしたが、実力はいかに。

アンダーのムロジョン・アフダマリエフは、岩佐亮佑戦以降、やっと試合が決まったが、ロニー・リオスのコロナ感染により挑戦者がホセ・ベラスケスに変更。残念。
それよりフリオ・セサール・マルチネスと、マックウィリアムス・アローヨの強打対決が要注目。マルチネスは強いですが、ドーピング疑惑に加え、試合ごとに波があるところも最近はほの見える。はてさて。


次はその翌日、21日、日曜午前10時からWOWOWオンデマンド。
WBOウェルター級タイトルマッチ、テレンス・クロフォードvsショーン・ポーター。
知らんかったんですが、親友対決なんだそうですね。
アンダーにはロンドン五輪決勝で村田諒太に惜敗したエスキバ・ファルカン、そして村田とプロで一勝一敗のアッサン・エンダムも出場。いっそ直接対戦すれば良いのに、と思ったりも。


で、翌週は28日、日曜日。開始時間は違いますが、おそらく「被り」ます。

午前10時からDAZN。世界ライト級タイトルマッチ、テオフィモ・ロペスvsジョージ・カンボソス。
やっと実現です。ロペス、要らん足踏みを経て、ライト級で良いコンディションを作れるか。ちょっと不安も。

アンダーではアジンガ・フジレvs尾川堅一。「南アの黄金」相手に、尾川が右ストレート狙いで突撃、という試合になる?
何しろ、こういう試合がライブで見られるんですから、有り難い限りです。


そして同日、正午頃から。WOWOWオンデマンドでWBC・WBOスーパーバンタム級タイトルマッチ、ブランドン・フィゲロアvsスティーブン・フルトン。
これぞ水と油の激突、という感じもあるが、どちらもそれぞれに自分なりの「理」を持っている者同士でもあり。

アンダーに勅使河原弘晶が出るのでは、という話もありましたが、これは12月以降、他の興行にスライド?した模様。



これに加え、国内では27日土曜日夕刻から、日本フェザー級タイトルマッチ、丸田陽七太vs日野僚戦のライブ配信も。
セミでは渡部大介vs阿部麗也戦もあり。これ、メインで通りますよね。
PPV購入はZAIKOと、BoxingRaiseの双方で出来ます。一応ZAIKOのリンクを。私はRaise会員なので、2000円です。








以前も少し触れましたが、12月に入っても色々続きます。
WOWOWはデービス、ドネア、カシメロにロマチェンコvsコミーとありますが、DAZNもヘイニーvsジョジョ・ディアスがあり、またあれこれと大変です。
12月5日は府立に行こうか行くまいか、悩ましいところでもあり...ゴニョゴニョ。



何しろ大変ですが楽しい週末が続きます。ただ、全部が全部、TVの前に張り付いていられるわけもなく。
特に不便なのはWOWOWの方。毎週月曜夜9時からのTV放送枠で流すため、オンデマンド視聴は一発勝負、アーカイブが置かれるのは月曜のTV放送のあとになります。
基本的にはWOWOWオンデマンドを見て、アーカイブが置かれるDAZNを後から見る、という選択をすることになりますが、ことによっては月曜まで見られないこともあり得ます。
WOWOWはどうしても、TV放送と平行しての配信ですんで、配信専門のDAZNとの差が、この辺に出ます。
まあ、こればかりは、仕方ないところかもしれませんが。



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豪州決戦、本日夜ゴング 井上岳志、世界1位チューに挑む

2021-11-17 10:20:08 | 海外ボクシング




本日、豪州はシドニーのクドスバンク・アリーナで、コンスタンティン・チューの息子であるWBOスーパーウェルター級1位ティム・チューに、同級6位井上岳志が挑みます。前日計量の記事
時差がないので、日本時間午後5時くらいには、アンダーの試合が始まる模様。

DAZN NEWSに記事があったので、DAZNで見られるのかなと思ったら違いました。
オーストラリアのFOXTELというケーブルテレビと、KAYOというオンデマンド配信で見られるが、アメリカやイギリスでは、時差の関係もあってか、放送や配信は、この記事が書かれた二日前の時点で未定のようです。
日本においてはWOWOWが頑張ってくれるかと期待しつつ、さすがに無理か、とも思っていて、その通りでした。残念。


で、KAYOのHPはこちらですが、DAZN NEWSの記事にもあったとおり、PPV視聴料金は59.95ドル。
現地では言ってみれば村田諒太や井上尚弥のようなナショナル・ヒーローであろう、ティム・チューの試合とあって、来週末のクロフォード、ポーター戦より20ドル高い料金です。これは厳しい...。
そりゃまあ、現地まで応援しに行くことを思えば、考えるまでもない、という話ではありますが(笑)。


試合自体については、以前内定のときにあれこれ書きました
これに勝てば、再びの世界挑戦に大きく前進...というのみならず、もう一人の「イノウエ」の名前が、改めて世界的に知られ、広まることでしょう。
健闘を、そして願わくば、朗報を、と。思うことはそれだけです。


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歪な綱引きの末に 矢吹正道、寺地拳四朗直接再戦へ

2021-11-16 00:33:14 | 関西ボクシング



昨日、YouTubeに動画も上がったりしていた記者会見。
プロモーターの真正ジム会長と、緑ジム松尾会長、BMBジム寺地永会長の三者同席にて、矢吹正道vs寺地拳四朗の直接再戦が決まった、という発表がありました。


バッティング問題で紛糾?していて、あれやこれやと、傍目には何を言っているのかわからんような話があれこれ飛び交いましたが、要するにWBCなりJBCなりに、再戦の時期や場所、その他さまざまな取り扱いの面で、自分の側に都合の良い条件を得ようとする者同士が、そのお墨付きや後押しを求めて「綱引き」をしていた、ただそれだけの話やなあ、と思っていました。
そもそも、利害が対立しているはずの両陣営にして、この試合を自分たちの手の内に収めたい、というベクトルは同じでしたしね。


以前少し触れた、WBCからの再選指示がうやむやになっている話に関しては、WBCが試合の終わり方を、連打によるTKOではなく、カットした傷によってTKOになった、と誤認していたせい、という説明がなされたようです。
本部では映像を見ていなかったんでしょうかね?そんなことあるのかなぁ...と思いますが、とりあえずそういう話になってます。


で、矢吹正道のコメント
潔くない、とか、汚い真似しておきながら居直るのか、とか、まあ案の定なことばかり、色々言われているんでしょうし、コメントのひとつひとつには、若干、共感できない部分もあります。
ただひとつ、えらく安い金額で設定されている、と噂のオプションが行使されての再戦に出ないといけない、その一点が気の毒です。
マッチルームとの交渉がなくなった原因については結局、よくわかりませんが、そちら方面との関係を望まない「勢力」の思い通りの道で闘わねばならなくなったわけですから。


また、そもそも1位挑戦者でありながら、オプションに縛られていること自体、おかしな話ではあります。
そんなもの、ルールなんて仮にあっても有名無実なのかもしれませんが...今回のバッティング「騒動」は、つまりはその「おかしな話」を正当化するための「テコ」なんだろうなあ、と思ってもいました。
結果、会見に出ていたお三方、もちろんそれぞれの立場はあれど、この一点においては思い通りに事を運べた、という点で一致していますね。



また、いつもと同じ事を書くことになりますが、結局こうして「会長ファースト」のボクシング界、その枠内に押し込められたまま、ボクサーがその身命を賭して闘い続けることになる。
そういう「絵」をまたひとつ、見ることになるんでしょうね。

それにしても再戦は決まった、と言いながら、日時も場所も未定、そもそも拳四朗は再起を明言もしていない。
まあ、それは近々、普通なら表明されるんでしょうけど...何か色々、歪な感じがしてしまう、そんな話でありました。



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さいたま決戦、アンダーに入るのは? 色々想像するのも楽し

2021-11-14 11:04:17 | 関東ボクシング




んなことで、艱難辛苦を乗り越えて(笑い事じゃないですが)やっと決まった12月29日、さいたま決戦です。

村田諒太には昨年、カネロ・アルバレスと東京ドームで対戦という話があって、結局コロナもあって立ち消えになったんですが、そのときさる筋から「井上尚弥vsジョンリエル・カシメロ戦も、この興行のラインナップに入る方向」と聞いて、びっくりしたことがありました。

要するに、東京ドームの収容力を考えた場合、単独では若干の不安もあり「駄目押し」をしたい、と興行側が考えた、ということでして、もし実現していたら、それこそ桁外れの大イベントになっていたことでしょう。
残念ながら、興行自体が実現しなかったわけですが...。


今回のさいたま決戦、さすがにドームよりは小さく、おまけに客数制限もかかるでしょうし、井上尚弥は別に試合することが決まっているわけですが、さりとてせっかく、世界的に注目される大興行、DAZNで世界中に配信されるとなれば、当然そちら「関連」のカードも何か、アンダーに入ることでありましょう。
その辺、あれこれ想像するのも楽しい時期、ですね。


と、思っていたら早速こんな記事。
京口紘人、第二王者エステバン・ベルムデスとの統一戦(指名試合?)は両陣営が合意し、入札は不要となった、とのこと。

さて、日時や場所は、となるところですが、ご存じの通り京口はマッチルーム、DAZN契約選手でありまして、もしすでに、この日程に向けて調整に入っているのだとしたら、これは...と思いますが、はてさて。


あとは、かねてから噂になっている中谷潤人の試合なんかも、可能性アリかな、と思っています。
まだトップランクと正式に契約を交わしてはいないでしょうし、こちらに出るのも問題はないはずです。
相手が誰かですが、銀河系最強を目指すあの人との再戦か、それとも他に何か良いのがあるか...ホントに、色々楽しみですね。



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色々部品を取り揃え、高性能でもある、が 井上拓真、和氣慎吾に判定勝ち

2021-11-13 00:18:50 | 関東ボクシング


ということで一昨日、秋の好カードを見るために、後楽園ホールに突撃してきました。
簡単に感想を。


国内のバンタム級シーン、日本タイトルマッチは昨日の決定戦がまたしても中止になるなど「呪い」はいつまで続くのか、という状況ですが、それ以外のOPBFやWBOアジア、そして無冠戦などにおいて、栗原慶太との「頂上決戦」を制したのをはじめ、日本バンタム級チャンピオンとしての仕事をしてきた、と言える井上拓真が、さらに一階級上げて、こちらは背水の陣、という趣の高速強打レフティー、和氣慎吾と闘う一戦。


試合前の予想としては、全体的な技術レベル、安定度では拓真、スピードと爆発力は和氣。
和氣はスピードでまさる展開で、正対した相手を一打で倒せる「スウィート・スポット」を持つ希有な選手だが、防御は足のスピードが落ちたら最後、技術的には心許ない。
長所と短所がはっきりしている相手に、拓真がその良さをいかにやり過ごし、外して、短所を突いて攻略する流れに持って行けるか。
そういう想像をしながら、試合を見ていました。


初回、和氣がワンツーからスタート。拓真もすぐ返す、こちらはコンパクトなパンチ。
和氣が速いワンツー、ストレート。拓真がリターン、カウンター。和氣の左ストレートを際どく外し、左フックカウンター。拓真か。

和氣はもっと左右に回るフットワークが欲しい。速い足で外し、打ち込む流れで、久我勇作を打ちまくったベストパターンを再現したい。
だが拓真は防御がはるかに巧みで、リターン、カウンターの狙いも厳しく、鋭い。
和氣にしたらどうしても、打ち込める手応えが欲しくなってしまう。その分、足が撥ねるのみで、左右に動いていない。





2回、和氣のワンツー、左ダイレクト。振りが小さく速い。拓真は右カウンター。大振りの右ミスが数回。
和氣のポイントだが、拓真の空振りは、よく見ていると徐々に振りが小さくなってもいる。意図してのことか?

3回も和氣の左、ボディから上に返る。拓真は左から狙うが、プレスをかけきれない。この回も和氣。

終盤、拓真は右へ回る和氣を左フックで狙う。兄の尚弥がダスマリナスを初回早々止めたパンチと同じ。
空振りだが、これも狙いのひとつか、と思っていたら...。

4回早々、和氣が若干、止まり気味。そこに拓真が、左ではなく右のロングフック。まともに決まって和氣、ダウン。

ひとつ狙いあり、と見えた直後、違うことをすぐにやる。相手の裏を取る繰り返しを普通にやれる。
これが「巧者」たる井上拓真の真骨頂ということか。

拓真追撃に出る。しかし、リターンやカウンターの「対応」は鋭いが、詰める段になると精度、威力に不足あり。
和氣も左アッパー返してしのぐ。この回拓真10-8。

5回、和氣が立て直し、左ストレート、ワンツー。拓真は攻め落とそうという風でなく、また普通の攻防に戻った感じ。和氣。
6回、前の回に費やした労力故か、和氣が少し止まり気味。それでも左当てて右へ回る。
拓真は和氣の左に対し、左フックカウンター、浅いが際どい。直後、右ボディから左、右フック上に。
拓真が狙いの多彩さ、切り換えられる能力の高さを見せつける。拓真の回。





7回、和氣は懸命に左ストレートを繰り出すが、拓真の「合わせ」に余裕が見える。
和氣左ストレート、拓真右ストレート、互いに外すが際どく交錯、という場面も。
拓真はこの回、左フックが狙い。その攻め口は多彩で、合わせたり飛び込んだり。和氣の奮闘も、ポイントは拓真。





8回、少し膠着。互いに少し離れ気味。拓真の右ショート狙いが数回。振るなら拓真か。
9回、和氣ワンツー繰り返し出る。左ヒット。アッパーも。肩のスナップで打つ速い左、威力は出ないが決まる。和氣。

10回、和氣苦しいか、手数、ヒット率共に落ちる。前の回良いが次は、という繰り返し。果敢に闘うがどうしても波がある。
拓真は右クロス、ロープ背負っても左フックから攻める。右ボディから連打へ。こちらは爆発的ではないが安定している。拓真。

11回、和氣さらに奮起して出る。左ボディストレート。上体が前にのめっているが、拓真はそれを強打で捉えられない。
拓真右カウンターもミス。和氣の奮戦に場内拍手。手数、攻勢で和氣。





最終回、拓真が和氣の左を外して右を決める。良い流れだったが和氣がなお出て、拓真も応じ「打ち合い」になってしまう。
拓真の右から左のコンビがヒット。拓真の回だが、和氣に見せ場を与えてしまった、という印象も。


判定は三者とも117-110で拓真。ラウンド数でいえば9対3。
さうぽん採点はやや和氣に甘く、115-112で拓真。ラウンド数7対5。
しかし内容的には、技術レベルの差埋められず、クリアな拓真の勝利だと見ました。



井上拓真は、やはり巧く、その巧さを安定して出せる、二重の意味で良い選手だというところを、改めて見せました。
まして相手は本来より上の階級、大柄で、しかも速く、パンチがあって、サウスポー。
普通の選手ならほとんど嫌がらせのようなマッチメイクですが、いつも通りに巧さを見せ、外して合わせ、返し、多彩な狙い、攻め口を見せてダウンを奪い、その後も山場はないが谷もなく、クリアに勝利する。
一言、大した選手だ、というしかありません。それはこれまでの試合同様でした。

しかし国内最強、おそらく東洋でも同じでしょうが、ならばその上は、となったときに、一段上の巧さ、頑健さを持つ相手だと...という疑問も持たれていたわけで、それが今回の、上記したような厳しい条件の試合をクリアしたことで解消されたかというと、微妙な印象でもありました。
それは、あの兄との比較があるから余計に、というのではなく、それがなくても...好機の詰めで精度に欠け、組み立ての妙が失せてしまうところに、変わらず出ていました。

パンチ力自体、けっして無いわけでもないのでしょうが、防御で動いて外せる反面、打ち込むときにどう止まるか、そしてまた動くか、その案配が、兄と比べて上手くいっていない、と見えます。
それは技術か、経験か、精神的なものか。おそらく「成功体験」の乏しさと、自身の耐久力をどう見積もるか、という面も含めた、精神面の話なのかもしれません。
プロボクサーとして、国内上位や王者クラスを全て破ってきた実力者である井上拓真にとり、勝利を勝ち取るための最善、その尽くし方が今のボクシングなのだとしたら、それをどうこう言えようはずもないのですが、しかしまたも毎度のとおり、兄との比較をされてしまう辛さが、変わることなくつきまとう。


今後はバンタムに戻すという談話が陣営から出ていましたが、今後の舵取りは陣営としても頭の痛いところでしょうね。
すぐ世界戦と組むと言っても、兄の4団体統一の妨げになってしまうし、階級変えるといっても、世界どうこうとなると難しい。
ホントに矢吹・力石兄弟のように、階級が全然違う、ということであれば、少なくとも比較してどう、という話だけでも避けられたのかもしれませんが...。




敗れた和氣慎吾、残念ながら内容的には厳しく「差」をつけられてしまった敗戦でした。
そして、これは見る者の目玉の勝手なのかもしれませんが、これまで多くの試合で見てきた切れ味、爆発力、一打の決定力が、今回の試合では目減りして見えてもしまいました。
それは井上拓真の技量故に、でもあったでしょうが、初回早々から、過去と比べてどこかこじんまりとした動きで「まだ打たれても疲れてもいないうちから、こんな感じなのか...」と。

神戸の狭くて天井の低い会場で、あの小國以載戦での完勝を見たのが最初ですが、その強打と個性的なルックスで、スター性抜群のボクサーとして長く活躍した間、何度もその試合ぶりを楽しませてもらいました。
今後について定かな話など何も知りませんが、おそらく...なのかもしれません。長きに渡る健闘に、ファンとして感謝したいと思います。



※写真提供は「ミラーレス機とタブレットと」管理人さんです。
いつもありがとうございます。




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新たな枠組みで世界に挑む 村田諒太、ゴロフキン戦ついに発表

2021-11-12 16:06:04 | 関東ボクシング





ということで遠足から帰って来たら、驚きのニュースです。
ゲンナジー・ゴロフキンvs村田諒太、12月29日、さいたまスーパーアリーナで決定。
それ自体は、ついに決まったか、と安堵するだけですが、なんとTV中継がなく、Amazonプライムでライブ配信になった、とのこと。


過去の例から見ると、例えばタイソン来日試合なら、タイソンの方は高額だが相手はその数分の一、という組み合わせだけど、このカードは両者ともに報酬が高額で、合わせたらタイソンの試合並かそれ以上か、と言われていたそうで、バブル期のTV局なら放送出来ても、今のTV局ではそれが出来ないかもしれない、としたら、てっきりDAZNになるのだと思っていました。
サッカーのW杯アジア予選、アウェー戦の例もあるとおりに。


ところがAmazonプライムです。DAZNのみならず、欧米ではすでに様々な配信プラットフォームが、衛星TV局最大の売り物だったスポーツの分野に進出していて、Amazonも当然、その一角ではありましたが、国内では何とボクシングが、その先陣を切ることになりました。
国内のカード充実を業界挙げて実現し、パッケージにして配信ビジネスにする、という形を整えた上で、例えばDAZNやAmazonに持っていく、という取り組みが出来ないものかと、いちファンとしてかなわない想像をすることはありましたが、本当にAmazonで、ボクシングのライブ配信が実現するとは。改めて、本当に驚きでした。


Amazonプライムはもう長きに渡り会員になっていますが、映像コンテンツの充実ぶりたるや驚くべきもので、最近では公開数ヶ月後に配信される映画などもあるし、スポーツドキュメンタリーも含めて、4K画質で見られるものも多いです。
バラエティー、お笑い番組なども(個人的には、あまり良いとは思いませんでしたが)けっこうな予算を出しているようですし、これまでTV局が担っていたが、今は担いきれないものをAmazonが...という流れの中、ボクシングのビッグマッチが配信されるというのは、ひとつの大きな転換点が来た、と見るべきなのでしょうね。


そして、村田諒太という、日本のボクシング界にとり規格外の存在が、こういう形での試合を闘うことは、彼でなくては起こりえない、そして成しえない事だ、と言えるでしょう。
今回の試合は、単に彼のボクサー人生の集大成、というだけでは収まらないものになった。そんな風に思います。



と、試合周辺の話について書きましたが、試合自体については、遂に決まったのだから、あれこれとまた、語れるでしょうね。
それはおいおい、ということで、まずは決まって良かった、と安堵の気持ちです。
アンダーカードの発表なども、これから色々ありそうで、それも楽しみですね。




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伝説のみならず、その一歩手前から語ってくれたら WOWOW、黄金の中量級特集

2021-11-10 11:20:15 | 海外ボクシング




WOWOWが来月から「レジェンド名勝負選」という特集を放送するとのことです。
言わずと知れた80年代、中量級黄金の4人の直接対決が中心ですね。

統括団体が2つで始まり、途中で3つに増え、4つになって終わる時代でしたが、基本、権威あるのは2つと言えた最後の頃でした。
全員がトップランクのプロモートを受けていた(対抗勢力のドン・キングがヘビー級偏重の傾向だった)こともあり、シュガー・レイ・レナード、トーマス・ハーンズ、マービン・ハグラー、ロベルト・デュランの4人が、ほぼ10年がかりで総当たりのリーグ戦を闘ったようなもので、今、こういう顔ぶれが揃ったとて、なかなかこうはいかないだろう、と思います。


当然、全部見たことある試合ばかりですが、高画質の素材であれば、保存版として残しておきたいなあ、と思います。
実況解説は「今のもの」をつけるんでしょうが、まあ、何というか、ほどほどに収めていただければ(微妙な表現)、というところですね。



ひとつ要望があるとすれば、この4人が「黄金」たり得た理由...それは、直接対決に辿り着くまでに、これまた歴史を画すと言えるレベルの、偉大な相手と闘い、それを乗り越え、打ち破ってきたからだ、というところから、巻き戻して語ってほしい、ということですね。

今回のラインナップだと、レナード初の戴冠戦、対ベニテス戦がそれに該当しますが、このベニテスがどれほど凄い天才だったか。
レナード、ハーンズには敗れますが、デュラン戦で見せた天才と技巧のパフォーマンスは、それこそ後年のメイウェザーにも通じるレベルのものでした。

また、ハーンズの前の王者、ホセ・ピピノ・クエバスが当時、どれほどの「恐怖」を持って語られる存在だったか。
防衛戦でKOの山を築くのみならず、顎を負傷させられる挑戦者が続出していた時代、それは怪物強打者クエバスによる「力の支配」そのものであり、だからこそ、ハーンズの戴冠が、途轍もない衝撃的事件となった事実。

デュランはカリブの天才エステバン・デヘススとの「3番勝負」を乗り越えて、ライト級最強の伝説を築いたし、ハグラーは不遇の70年代、コンテンダーとして、当時の世界王者と比較しても遜色ないほど、世界上位の強豪ばかりと闘い続けていました。
後年ハグラーが「レナード、ハーンズより上」と評したとおり、彼の生涯最強の敵ではないか、と見えるウィリー・モンローとの三試合などに代表されるように、今の常識なら世界戦で通じるような試合が、見た限りだけでも、10数試合ばかり、確かにあります。



これらの「過程」について、短いハイライト映像で充分ですから、何か用意して、その上で「本題」に入る、という構成で番組が作られたらいいなぁ、と思います。
さらに言うなら、この4人にとり「闘わざるライバル」となってしまった強豪たち...アントニオ・セルバンテス、アレクシス・アルゲリョ、アーロン・プライアーなどについても、際どいところで繋がらなかった関係性について、少しで良いから触れてほしい、とも。
そうすれば、単に偉大な4人の王者についてのみならず、その「時代」そのものが見えてくる、そんな番組になるのではないでしょうか。

ただ単にトップランクから映像素材借りてきて、音入れして流す、というだけでは...もちろんそれでも充分、見応えある試合ばかりですが、我々みたいな旧世代はともかく、これらの試合、未見の方々が多く見るせっかくの機会なのだから、よりその価値を深く知り得るものになれば、と願います。



あと、日本人ボクサーとして、この時代の、このカテゴリーの「世界」に一番近かった存在として、亀田昭雄氏にインタビューしてきてほしい、という、友人の意見もありました。
もし、そこまでやってくれたら、それこそWOWOWさんに脱帽するのみ、ですが...まあ、難しいかもしれませんね。





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明後日の井上拓真vs和氣慎吾戦、FODプレミアムでライブ配信

2021-11-09 16:27:22 | 関東ボクシング




もう明後日に迫って来た、秋の好カードの目玉、ふたつめという感じの井上拓真vs和氣慎吾戦、ひかりTVやdTVチャンネルのライブ配信はなく、後日フジテレビ録画放送のみ、なのかと思っていたら、FOD、フジテレビオンデマンドのプレミアムでライブ配信あり、とのことです。
試合のページはこちらFODプレミアムについてはこちらです
月額976円、初回2週間無料だそうです。
※この試合だけでなく、フジテレビ関連のコンテンツがあれやこれやと見られて、この額です。


今まで、フジボクシングは三迫ジムのダイヤモンドグローブ枠と、大橋ジムのフェニックスバトル枠がありましたが、大橋ジムの枠がひかりTVでのライブ配信にシフトしたのに対し、三迫枠は相変わらず、数日遅れの関東ローカル深夜録画放送のみ、という扱いでした。
翌週月曜から、FODで無料配信されるようになり、地方にいても録画放送された映像は見られるようになりましたが、やはり、ひかりTVのライブ配信に比べると...と思っていたところ、今回の発表です。

フジテレビもこういう方向に舵を切ってくれたのだとしたら、大変有り難いことですね。
今後は、大橋枠=フェニックスバトルのみならず、来月の小原佳太の防衛戦、そのセミで行われる前田稔輝vs木村蓮太朗の好カードもなども是非、ライブ配信してもらいたいものです。

こういう流れになるということは、ひかりTVの配信も、そう悪くはない反響というか、まずまずうまく行っているのかも、と希望的観測込みで推測してしまいますが、実際はどうなんでしょうかね。
とにかく、明後日の試合も含め、良いカードがひとつでも多く、ライブで見られる環境が整っていくように、と願います。




で、この明後日のFODプレミアムについてですが、私は視聴しません。
何故かというと...ハイ、お察しの通りです。
先月と同じパターンです。馬鹿な奴だとお笑いください(笑)。



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