ということで昨日はWOWOWの生中継、有り難く拝見したいところでしたが、所用のため、夜になってから、当然、結果を知らずに、じっくり見ました。
簡単に感想。
今回の試合については、4大王座統一を目指すカネロ・アルバレスが、スーパーミドル級標準規格、という感じの体格と、抜群の技巧を持つケイレブ・プラントに対したら、どう立ち回るものか、と思って見ていました。
なまじカラム・スミスほど大柄なら、小回り効かせる側として闘えるでしょうし、自分と同じく下のクラスから上げて来たビリージョー・サンダースなら、基本、パワーで押し込める。
しかし、機動力があり防御が巧く、スピードでもパワーでも互角、という相手と、168ポンド級で対したら?という疑問の答えが見られるとしたら、それはあらゆる面で「規格外」な怪物デビッド・ベナビデス戦ではなく、プラントとの試合なのではないのか、と。
初回、カネロはボディーワークを駆使し、プレスをかけて出るが、あまり打てない。プラントのジャブがヒット。
ただ、プレスは早々からなかなかの「強度」。プラントはプラントで、好きに間合いが取れてはいない。プラント。
2回、プラントはリング中央に布陣したい風だが、思うようにいかず。プラントは左を中心にヒット。カネロは右フックの脇腹打ちが当たる。
このパンチ、背中に近いところにも入る。微妙。レバーの反対側だが、嫌がらせ効果はあり、と見える。互いに好打、それ以外ジャブの数でプラント。
3回、プラントは足使うが、カネロはミスの多い右を捨てて、左ボディなどを当てる。
プラントは体の軸を回して防→攻の動作で打つ、振りの小さい右ショートカウンター。
メイウェザーなどがよく打っていたパンチ。これが決まる。しかしカネロがヒットを増やした分、カネロか。
4回、カネロがプラントにロープを背負わせ、連打するが、ほぼヒットしていない。プラント、細かいジャブ、右ショート。
カネロ、左フック一発だけ当てる。
「絵」としてはこの3分、メイウェザー、カネロ戦の再現という趣。しかしメイウェザーが要所で、彼なりに強打もしたのに対し、プラントは本当に当てるだけ。
この先、当たる確信をもっと強く掴んだら、もう少し打ち込むようになるのか?この回プラント。
5回、似た展開だがプラントの手数が少ない。攻勢でカネロか?微妙。
6回、カネロがフェイントや捨てパンチを使って、左のダブル、トリプルへと繋げて攻勢。右アッパーは躱されるが、左ジャブを当てる。
プラント受け身に回り続ける。クリアにカネロの回。
7回、カネロは頭の位置を変えつつプレス。残り1分くらいで立ち位置入れ替わり、カネロがロープ背負う。
カネロもよく見ているが、プラントもこの構図で攻め口に欠ける。警戒は当然だが、何か打つ手があっても良さそうなもの。最後カネロが左フック。カネロ。
8回、左の応酬。カネロ、頭を動かしつつ、懐入る頻度は高いが、ヒットは互角かやや浅め。右脇腹打ちの効果で、プラントの左を抑えつつあるか?
この回微妙。カネロの攻勢か?
9回、カネロが出るが、プラント際どく芯は外している。しかしジャブが減り、右ショート迎え撃ちはあるが威力に欠ける。
最後、プラント軽い5連打、最後の右は浅く入っている。振るならプラント?
10回、プラントに疲れが見える。カネロは左の軌道を下と見せて上に返すフェイントから、右ヒットに繋げる攻撃が出る。
プラント、体が重く、芯を外せなくなってきている。ボディ攻撃応酬の後、カネロが左フック、アッパーを上に返す。カネロ。
11回、プラント動きが重い。カネロが飛び込んで左フック。プラント止まり、右アッパー、左アッパーと続けて打たれ、ダウン。
立ったが体勢がすぐに崩れてしまうプラントを、カネロが強引に詰めて倒し、TKOとなりました。
全体の流れとしては、カネロがパワーで技巧のプラントを攻略し、詰めて仕留めた、というものでした。
カネロは序盤から、力入れて右を狙うと大半が外されたり、左のダブル、トリプルを駆使しても芯を外され、ガードされ、という具合で、時にメイウェザー戦のイメージが頭に浮かんでくるような回もあり、相当苦しんだようにも見えましたが、プラントが余りにパワーレスで、それに救われたのかもしれません。
加えて、微妙な印象も残った右脇腹打ちの「嫌がらせ」も奏功したか、終盤はプラントの左ジャブを封じ込め、動きを止めて断続的に攻勢をかけ、きっちり攻め落としました。
この辺の、しっかり狙い、戦略を持ち、攻防共に「強度」の高さを維持して、勝負を賭け、その通りに倒しきれるのはカネロならでは、と言えるでしょう。
メキシカン、ヒスパニック系のファンが求めるヒーロー像そのものを、改めて体現した、という勝利でした。
対するプラントですが、試合前に思っていたのと部分的に違ったのは、ハイレベルな技巧に反して、余りにもパワーに欠けたところでした。
一打で倒せるようなパンチはなくとも、せめて相手を「食い止める」「突き放す」くらいの威力がなければ...何も全部でなくても、カネロがプレスを強めて、勝負してくるポイントでしっかり叩ければ、何とかそれで足りたかもしれませんが、本当にほぼ全部が軽打に見えました。
確かに、要所で見せた巧さは、往年のメイウェザーに通じるものがありましたが、このレベルでは、やはり巧さ「だけ」では厳しい。
ある程度の「威力」、倒せずとも相手を脅かすだけのものは、やはり最低限、必要だと。
プラントというボクサーの魅力、良さは出ていた、と見える反面、試合前に思い描いていた、疑問に対する答えは、残念ながら見られなかったかな...という印象が残った試合でした。
慢性的な負傷を抱えていて、思うように強打出来ないらしい、と言われていることも知ってはいましたし、それ故にこれほど見事な技巧を身に付けたのだろう、とわかってもいましたが、それにしてもこれほど極端だとは、と。
もっとも、それでもカネロとここまで闘えるのだから凄い、とも言えますが。
あれこれつべこべ書いておいてナニですが、これほど巧いと、見ていて目に楽しい、というレベルで、試合中、何度も感心し、感嘆させられました。
今回は厳しい結果でしたが、かなうならまた、その闘いぶりを見たいものです。