さうぽんの拳闘見物日記

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拳闘見聞の日々。

才気と技巧のインファイト 井上拓真、アンカハスをボディで倒す

2024-02-26 00:00:04 | 関東ボクシング




さて、セミが衝撃的な試合だったので、どうなるかなと心配でもあったメイン。
WBAバンタム級タイトルマッチ、井上拓真vsジェルウィン・アンカハス戦は、終わってみればこちらもなかなかの好ファイトでした。


初回、サウスポーのアンカハスは、パッキャオに似た、身体が前に出る踏み込みのワンツーを飛ばす。
これに対して拓真がさっそく、左フックと右アッパー、どちらもカウンターで狙う。高度な技で対抗。
ポイント微妙。拓真のカウンターは良いが「対応」のみ。ワンツー仕掛けた回数でアンカハス?

2回、アンカハスのワンツー上下に。アンカハスワンツー、拓真左フックカウンター、共に外れ、アンカハスなおも左アッパーボディ。
これを拓真が左へ回り込んで躱す。共に集中高い。拓真コンパクトなワンツー出るが、アンカハスのボディ連打など、手数と仕掛けでアンカハス。

3回も互いに攻め、外し合うが、拓真の右カウンターがまともに入る。パッキャオがマルケスにKOされたパンチに似た、ストロークの小さい一打。
ぎりぎりまで引き付けて打つ、凄いカウンターで、アンカハス左足が突っ張り、打ち返すがミス。
さらに拓真が目線落としてワンツー決める。拓真さらに右ボディ。アンカハスの反応が鈍っている。拓真の回。

4回、アンカハスはワンツーの距離ではなく、身体を寄せてくる。カウンターが怖い。
拓真は徐々にボディブローが増える。アンカハス出て、拓真ロープを背にボディ返す。一発右フックもらうが堪えていない。
なおも打ち合い、拓真の右ボディが続けて決まる。アンカハスも返すが、拓真がダックを繰り返し、大半を躱している。
詰めた間合いで、技巧のインファイトが冴える。拓真の回。

5回、アンカハス出て、拓真をコーナーに追う、拓真左に回り込んで外し、逃れる、というパターンが二度。
拓真、小さい右カウンターを三度。右ショート、フック、アッパー気味のをそれぞれ、地味に決める。拓真。
6回、アンカハス出ては躱され、の繰り返しに倦んだか、少し見合う感じ。
しかし間があるのは拓真にとっては好都合。右カウンター、左フック返しまで狙ってヒット。
7回、拓真の右ボディアッパーが繰り返される。アンカハス、インファイトを挑むが、拓真ガード、ブロックの「防御率」が高い。
拓真の左フックも出る。拓真。
8回、アンカハス踏ん張ってボディ攻撃。ややアンカハス?

9回、拓真の右から速いコンビが決まる。アンカハス出るが、インファイトで拓真の左ボディ、続いて右、もう一発右。アンカハス横を向き、ダウン。
タイミングの悪い打たれ方だったか、蓄積もあったか。相当きつそうで、立てませんでした。



試合後は父や兄、大橋会長らと抱き合って歓喜した井上拓真、やはりこれまでの世評を覆すようなKO勝ち、それもジェルウィン・アンカハスを倒したのだから、喜びは大きかったことでしょう。
世界戦初KOがこの相手というのも、やはり相手が強ければ光る、というところか。
今までは、セーフティーに外す巧さが中心だった拓真の、インファイトにおける、才気溢れる技巧と、ボディブローによる攻略は見事なものでした。

アンカハスは、ワンツーの威力やボディ攻撃の迫力などは、良い時に比べても落ちてはいませんでした。
しかし、拓真の右カウンターで突進に歯止めを欠けられ、間を詰めてカウンターを殺しにかかったら、インファイトで打ち負け、ボディで仕留められるという流れは、完敗としか言いようがないものでした。
試合後、拓真を称えていた心情も、得心いった、というところだったのではないでしょうか。



で、試合後の報道を見ると、次は石田匠だそうで「やっとか」と思ったところ、なんと噂の5.6東京ドームなんて話になっているのだとか?
いやはや...まあ、勢いに乗って、といえる勝利の後だから出た話で、実際そんなわけいくのかどうか、ちょっとわかりませんが。
そもそも、相手の石田に、そのスケジュールを事前に「あり得ること」として、通知しているかどうかも不明ですし。
しかし、そういう話もあり得るのかな、と思うくらい、明るい展望を持ちうる勝利だったことは間違いありません。

元々優れた選手だし、センスや才能も兄に勝るとも劣らないですが、唯一倒せないこと(パンチの当て際、身体の乗せ方に不足あり)のが玉に瑕でした。
普通に考えたら、今後も誰彼構わずバタバタと、と行くわけでもないでしょう。今回も序盤、見て対応する、という型自体は、変わってませんでしたし。

しかし今回の勝利で、自信や確信のようなものをその心身に纏ったとしたら、今後どうなるものか。楽しみな気持ちが、やはり勝ちます。
その変化の有無を、石田匠戦で確かめられるのだとしたら...改めて、必見の一戦となりますね。



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4 コメント

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Unknown (R45ファン)
2024-02-26 06:05:53
下の階級から来ましたが、アンカハスの方が少し大きく見えました。ただこれまでの経験を拓真くんがついに試合で魅せる形に昇華しましたね。
あの右ショートは見事。微妙な距離を見切り、外す。またはブロック、もらっても芯は外すなど、インファイトでの上手さも見せてくれました。
長谷川さんが解説した通り、この勝利が拓真くんの確変に繋がればすごい事。
ただ例の東京ドームに組み込むには期間短いんじゃないかと。ダメージはなくともこの試合に心血注いだのは間違いないですし、少し期間空けた方が良いような。
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Unknown (海の猫)
2024-02-26 08:44:03
セミの中谷は「衝撃」「戦慄」でしたが、メインは「感動」でした。

世界戦でこういう拓真が見たかったのですよね。拓真なら出来るはずと思いつつ、ひょっとしたら今回もまた、、、という不安もあり。拓真の消極性が真吾トレーナーのいうように「性格」「メンタル」だとしたら、フィジカルやスキル以上に変えるのは難しいのでは、と思っていましたが、それを乗り越えた姿にはちょっと涙出ました。もちろん相手次第の面もあり、それを狙ってのマッチメイクとも思いますが、期待に応えてくれました。

拓真の場合、「KO」や「面白い試合」を目指すことで、結果としてより「勝てる」ボクシングにもなると思います。相手のダメージや積極性がないとポイントも失いますし、相手に余裕を与え、手数も出させてしまう。今回もアンカハスが中距離で思い切りの良いパンチを出すだけで、見栄えの面で嫌でしたが、完璧なカウンターを合わせたことで、それを続けさせませんでしたね。接近戦に持ち込むことで、アンカハスはリスクを避けましたが、拓真にとっても怖さがなくなり有利に働きました。接近戦でのボディワークの上手さにホレボレしました。

欲を言えば、中距離でのパンチにあと少し体重がのせられれば、ほぼ完璧ではないかと。今回いくつかはいつもよりのっていたと思いますし、バランスを崩してまでやる必要はありませんが、もう少しいけそうなのですよね。拓真はディフェンス重視で後ろ重心のためパンチが軽くなりがちですが、パンチングパワー自体はあるので、それをもっと活かせれば、誰が相手でも有利予想になってきます。

東京ドームは本当に出るのでしょうかね。ダメージはさほどないと思いますが、この試合に向けてかなり追い込んだと思いますし、少し休んで欲しい気もします。まあでも、出たいですよね。試合前から言われていたので、石田陣営には伝わっていると思いますし、ドームなら大歓迎でしょう。待った甲斐あります。
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Unknown (Neo)
2024-02-26 10:42:46
本当に1-2cmの間合いのズレで大きく損している選手かと思うんですよね.スローで見るとほんの少し間合いとタイミングがズレていて,結果相手に対して脅威がない.お兄ちゃんくらいパンチや体幹があれば屁ともしないズレなんですが,そのズレはご指摘の通りほんの少しの自信や確信で,確変を引き起こし得ると思います.ただそうなったらそうなったでバランスの取り方が変わって調整が狂うかもですが,まあもうベテランですしね.
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コメントありがとうございます。 (さうぽん)
2024-02-26 12:37:45
>R45ファンさん

アンカハスは階級上げても楽じゃないパターンだったのかも知れませんね。そういう場合、あまり良くないこともありますが、目に見えた感じでは、衰えというのはなかったような。ただ、拓真の対応が見事で、前に出る力が徐々に目減りしていきましたね。
インファイトに関しては、気持ちから乗っているし、集中も高いし、世界戦のレベルでこれだけやれるかと。当然、完全無欠の防御とはいかないし、決め手の一打を持たない選手としてはリスクが高い(長いラウンドを闘う前提がある)と、一般論としては言わざるを得ないのですが。今回の試合はある意味、そういうところを飛び越えていたのかもしれません。
次戦については同感です。今時のボクシングで、こういう試合間隔はどうなのかなと。相手の都合もありましょうしね。


>海の猫さん

前の試合で不評だったことをバネにした、という部分は、少なからずあったと思います。私は基本的に、無い袖は振れぬのがボクシングの厳しい現実だ、という前提で試合を見ますが、井上拓真の技巧自体は兄にも劣らぬレベルにあると思っていまして、それをセーフティーファーストのみならず、もう少しところどころに「狙い」を持って闘えないか、と思っていました。今回、理由付けはともかく、そういうところを越えた闘いを見せてくれましたね。
かといって、これを他の試合、他の相手に同じように、と望むべきかというと...まあ、結果以外に正解の無い話かもしれません。今回はカウンターの効果で試合展開を掌握しましたが、自分から崩しに行ったかというと、序盤に関してはまだ保留です。
防御に関しては、あれだけ的を絞らせない防御を、近い距離でやれるのは感嘆するのみ、です。しかし上記コメントのとおり、確率論で言えば、一打の決め手がない選手にはリスクが高い闘い方でもありますね。仰る通り、当て際でもうひとつ、しっかり打ち込めたら、正確に打てたら、と思いますが。
東京ドームに関しては、陣営のコメントなどからして、本気みたいですね。心配な気持ちもありますが。


>Neoさん

基本、当てたら外す、躱す、というのは良いことなんですが、ここでどうしても兄との比較になってしまうんですね。辛いところですが。精度が、角度が、打ち込みの深さが、ちょっとずつ足りない、合っていないなあ、と思うことが多いですね。凄いタイミングで打てるところまでは、兄同様、秀でたものがあるんですが。
で、兄のように打てるようになったとして、その後が色々心配、というのも確かです。色々同感です。
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