さうぽんの拳闘見物日記

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拳闘見聞の日々。

この完勝は、未来を拓くものなのか 平岡アンディ、強打バロッソをTKO

2024-09-06 09:12:21 | 関東ボクシング


そういうことでセミセミの感想に行きます。
この試合に関しては、特に前半ですが、会場で見ていた雰囲気と、映像で見た印象がちょっと違っていました。


WBA暫定王者イスマエル・バロッソと、同6位平岡アンディの「WBA挑戦者決定戦」は、会場では非常に静かな立ち上がりに感じました。
初回、右リードとこまめなバックステップに徹し、スリーパンチが一度あったくらい、という平岡の闘いぶりは、はっきりセーフティーファースト。
バロッソは時折左スイング、一度だけインサイドへの左ショートを覗かせたが、スピードの差は歴然。
2回、平岡の右リード強い。バロッソのガードを叩いてパンチの出所を封じるのみならず、ガードを通過しヒットするものも。
バロッソ右フック振って飛び込むが、平岡が同じパンチ合わせ、先にヒット。






3回、平岡ワンツー伸ばし、バロッソの左をスウェイで外して、また右フックカウンター。
4回も同様の右フックヒット。5回バロッソが出てくるが、厳しく右リード叩いて、また右フックのヒットも。
6回は右フック合わせてダウンを奪う。オープンブロー気味に見えたのだが、スローリプレイを見ると、微妙ながらナックルが返っている。
少なくとも掌部分で打って引っかけ、引き倒した、ということでは全然ない。

7回、バロッソ挽回したいが、平岡小さい右フック決めて追撃。右を上下に打ち分ける。
8回はバロッソの攻勢がようやく形になる。左クロスがヒットし、平岡の右目周辺に傷が出来る。この回バロッソか。

しかし9回、少し攻めに傾いていた平岡がまた右リード、長短共に厳しく叩いて、突き放す。
そして左クロスから右アッパー、ヒットしてバロッソ後退。右ボディが決まってバロッソ、膝をつくダウン。
バロッソ立つが、平岡左カウンターから左、右アッパーで二度目のダウン。
バロッソ立って、少し間があってゴング。ラウンド終了、ではなくてTKOでした。








内容的にはほぼ、平岡の完勝でした。右リード中心の攻撃組み立てと、バックステップとスウェイで外す、集中の高い防御。
バロッソの強打を徹底して外し、右フックのカウンターを決めていく。それでも8回、僅かに反撃され、無傷とはいかなかった、ですが。

とはいえ、この試合の平岡を「評」するとしたら、これはもう、完璧に近い勝ち方だった、と言うべきだと思います。
キャリア初の「チャレンジマッチ」で、概ね、これ以上望めないほど、打たせずに打つ、という表現に近い試合内容を実現した。
日本のボクシング史上、この近辺クラスで、これに準えられる試合が果たしてあっただろうか。
あの素晴らしき佐竹政一の試合の中から、これに近いものがいくつか選べるくらいではないだろうか。そんなことを思いもしました。



ただ、会場で見ていると、特に前半ですが、静まりかえった場内の雰囲気も相まって、少し焦れた感じもありました。
平岡の闘いぶりは、あらゆる無理や無駄を排除して、勝つための最善を追求したもので、自分から攻める手として右リード以外のパンチはほぼ「排除」され、攻防のアクションは、回数自体が少なく、言えば間延びした試合になっても、是非も無し、というものでした。

もちろん、キャリアで初めて世界的強豪を迎え、挑む側である平岡の、そうした闘い方を批判する理屈はどこにもありません。
ただ、試合後友人や識者の方と少し話したとき「この試合はアメリカでは売れないよ」という言葉が出ました。
厳しいな、と思いつつ、そうなのかもしれないな、とも。
最近ではシャクール・スティーブンソンの試合ぶりが叩かれた事例があります。
こっちは最後倒したんだから、と言いたい気持ちはあれど、確かに平岡の闘いぶりは、良くも悪くもそれに通じるものがあったかもしれません。


試合後はホセ・バレンズエラの名前を挙げて、世界挑戦への意欲を語っていた平岡ですが、先方にジャーボンテイ・デービスとの対戦が持ち上がっている、という話(難儀なことです)があり、バレンズエラの陣営、プロモーターにとり、平岡が次戦の対戦相手候補として最有力となるかのかどうか。
試合後には、大橋会長がWBA会長と交渉、という報がありましたが、現状「そちら」から攻めるしかないのかもしれません。


肝心なのは、米大陸のシーンにおいても重要な階級である、スーパーライト級で世界戦線に身を投じるボクサーとして、平岡が今後の試合でどのように闘うのか、闘い得るのかです。
今の段階で断じることは出来ないし、さらに強い相手と拳を交えるのだから、もっと安全第一の度合いを高めるくらいで丁度良い、という考え方もありましょうが...ほぼ完勝、という試合を見て、しかしこの勝利が必ずしも、誰もが思い描くような未来を拓くものかどうか、ちょっと迷う気持ちでもある。そんな試合でありました。



※写真提供は「ミラーレス機とタブレットと」管理人さんです。
いつもありがとうございます。



コメント (3)
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