さうぽんの拳闘見物日記

ボクシング生観戦、テレビ観戦、ビデオ鑑賞
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拳闘見聞の日々。

「漏れ落ち」無しの見事な勝利、だが ヘイニー、プログレイスに完勝

2023-12-11 09:15:03 | 海外ボクシング




昨日は色々ありましたが、大阪のYouTube配信をのんびり見終えて、遅くになってから、DAZNで近藤明広のカザフスタン遠征試合、配信ありますよと教えてくれた方がいて、驚いてメインだけチェックしました。
昨日っていうかもう今日ですけど。しかし、いつ配信すると決まったんでしょう。ホンマにもう...。

話題もあれこれありますが、とりあえず昨日の「メインイベント」から感想です。



デビン・ヘイニーはレジス・プログレイスに大差の判定勝利で、WBCスーパーライト級新王者に。
基本、ヘイニーが打たせずに当てて、大差をつけるだろうと思ってはいましたが、細かいところでは、ちょっと違っていたところがありました。


序盤の内は、ヘイニーが距離の測定を慎重にやっていて、当然警戒しつつ、なので若干硬い。
初回、ヘイニーのワンツーがかすめ、プログレイスは右肘で押し返すのがせいぜい、という場面があり、スピードの差は初回から出ていたが。
ヘイニーはスリーパンチを空振りするなどしていたが、言えばこれも測定の作業、その一環だったか。


2回、プログレイスは左側へ身体を傾け、ヘイニーの右を誘う狙いか。
左上は当たらないと見てか、左ボディから打っていく。右手で抑えて左も。しかしそれでもヘイニーを捕まえられない。

ヘイニー、プログレイスの左オーバーハンドを外し、ジャブ、右。右アッパーで迎え撃ち。スリーパンチでプログレイス、スリップ。
ヘイニー、徐々にスピードアップ。ほぐれてくる。このまま走られたらワンサイドになりそうな印象、早々に。

3回、ヘイニー、ジャブでプログレイスの右ガードを「ピン留め」して、左アッパー。サウスポー対策としては高度な技。
直後、ヘイニーの右、ダイレクトで入り、プログレイスがダウン。打ち込み自体は浅いが、タイミングの芸術というべきか。

場内大歓声。しかしヘイニー、再開後、見る。詰めない、というより、打たれないことが最優先。
それはダウンを奪って、相手が目に見えてよろめいたりしていない限り、変わらない。 
右ダイレクト、もう一度見せ、ボディも打つ。ジャブ三つも。いずれも散発的。

4回、ヘイニーが当てて行く。速い。プログレイスも速い方だが、遅く見える。ヘイニーのワンツーに肩入れた右を返すが、一度だけ。
5回早々、プログレイス出るが、ヘイニーが足使って大きく外す。左上下にコンビ返す場面も。
6回も左アッパーでプログレイスを脅かし、速いワンツー。プログレイスの腰が落ちかける。大チャンスと見えるが、ヘイニー、ワンツーなどを「追加」はしても、激しく「追撃」はしない。


この辺、私のような旧型の目には、相手を回復させてやっているようなもの、と見える。
しかし、ヘイニーはあくまで、プログレイスが来たら、カウンター当てて、下がってジャブ、というのが基本線。
この膠着を築き、維持することが何より大事で、それより優先されるべきものはない。
それが彼の「方針」であり、それに忠実に闘っている。
ダウン奪取やクリーンヒットなども、相手が一押しで崩れるような状態でない限り、その方針を変える理由にはあたらない。
あくまでボーナス、オマケでしかない。

こうなってしまうとプログレイスには勝ち目がない。以前、例えばホルヘ・リナレス戦など典型ですが、終盤4つに失速し、連続失点を重ねたような、ヘイニーの体力面の不安、そこからくる「漏れ落ち」に期待するしかない。
しかし、どうもスーパーライト級に上げて最初の試合ながら、減量苦から解放され、コンディションは非常に良いようで、そんなことにもならなさそう。


7回、ヘイニーがジャブ、プログレイス前にのめる、ヘイニーがワンツー。方針に揺るぎなし。たまに左右ボディブローがあるが。
8回はアッパー気味の右がヒット。左ダブルも。9回、プログレイスまた前のめり、ヘイニー右当てる。いよいよ厳しい。

10回、状況変わらず。11回、プログレイスさらに出て、顔を突き出し、両手下げて迫るが、ヘイニークリンチに逃れる。
揉み合いになっても、プログレイスが振り回したり、抑えて打ったり、とはいかない。ヘイニーの体格は、この階級でも通じるものらしい、と見える。

プログレイス出るが、ヘイニー大きく足使う。ここまで省エネで闘ってきていて、終盤に来ても足が「残っている」。余裕の足捌き。
その上で、右ボディアッパーから左フックのコンビ、右ショートカウンターなどを要所で繰り出す。
最終回、プログレイスさらに迫るが、届かず。判定は大差でヘイニーでした。



全体的には予想した感じの試合展開でした。
しかし、これほど完璧に、水漏れ無し、漏れ落ち無しで、転級初戦のヘイニーが闘い終えるとは思っていませんでした。
そういう意味では脱帽モノです。圧倒的なスピードとセンス、そしてコンディションの良さがそれを支え、攻防共に無理も無駄も無い、現代的技巧派ボクサーの真骨頂というべき試合を、強打、或いは「恐打」のレジス・プログレイス相手に、ほぼ完璧にやってのけました。


しかし、上記したとおり、その闘い方、スタイル、方針、或いはボクシングというものをどう捉えるかという哲学...ちょっと大仰ですが、とにかくそういう面においては、予想どおり想像通り、今までどおりやなあ、つまらん奴や...という気持ちでもありました。

抜群の技巧を、時に嫌みなほどに見せつけ、巧さで相手を攻略し、結果的に倒してしまう...ライトやスーパーライトの頃に、フィリップ・ヌドゥやアルツロ・ガッティを、やりたい放題の末に倒していたフロイド・メイウェザーの再現を、減量苦から解放されたデビン・ヘイニーならやれるのではないか、と、3回早々のダウンシーンの時に、ちょっとだけ思ったんですが、そういう期待はする方が間違っていたようです。
そういう意味では、ちょっと残念な試合でもありました。勝手な贅沢を言いすぎかもしれませんが。



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2 コメント

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Unknown (アラフォーファン)
2023-12-11 20:19:58
このヘイニーに限らずスティーブンソンもそうですが、強いですよ。見りゃ分かる才気の持ち主。ただ、そんな強いなら何でもっと魅せる、観客を満足させたいと思わないんだと。
以前さうぽんさんおっしゃってた通り、リゴンドーほど歳行ってたらまあ仕方ないかと少しは思うんですが、まだ若いのにと。
これで人気出ますかね。タンクは素行めちゃくちゃです。でもこの観客魅了する点では最高です。
尚弥様は素行も魅了する点でも神ですし、かつて私たちを魅了した畑山さん長谷川さん西岡さん山中さん内山さんのラインも素晴らしかった。その意味では日本は良いのかもしれませんね。変なのもまあいますが。
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コメントありがとうございます。 (さうぽん)
2023-12-13 17:31:15
>アラフォーファンさん

その辺は考慮の内に入ってないんでしょうね。それで通るものなのかが不思議なんですが。アメリカのお客さんて、ちょっと見たらすぐブーイングする向きも多いのに、一方でこの手の選手が高額報酬を得ていたりする。昔日のレナードやカマチョなんかも、ある意味似た闘い方しましたが、好機となればすぐ行きましたからね。それと比べて...いまだにようわかりません。
そういえば、デービスは次の試合どうって話になりませんね。身から出た錆、ですかね。
日本の「変なの」は、ちょっとベクトルが違いますかね(笑)まあ最近の人と、少し前の「連中」とでは、実力ではだいぶ差があるんですが...そういえば日刊スポーツとか、他のもですか、インタビュー記事出てましたね。都合のええことばっか、上手いこと言うなあ、という点では、新旧通じるものあり、ですね。
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