さうぽんの拳闘見物日記

ボクシング生観戦、テレビ観戦、ビデオ鑑賞
その他つれづれなる(そんなたいそうなもんかえ)
拳闘見聞の日々。

攻防ともに「品揃え」の差、歴然 松本亮、初挑戦は大敗

2018-03-01 08:25:12 | 関東ボクシング



ということで昨夜はホールにて観戦してきました。

大橋ジムのホープ、松本亮は、WBA王者ダニエル・ローマンに大差の判定負けでした。

松本亮については、世界ランカー、或いは「保留選手」が多数存在するものの、
実現していない直接対決も多い、日本スーパーバンタム級の現状、
その中でも二階級下のOPBFタイトルを決定戦で獲っただけの松本は、
挑戦者に相応しい実績、という以前に、ボクシングファンの支持を
受けていない段階にある、と言わざるを得ませんでした。

私も多分に漏れず「世界タイトルマッチ」の価値、グレードを期待するより、
世界上位ランカーと見れば十分な実力のローマンに対して、
日本上位のメインイベンタークラスの選手が、どこまで通じるか、
という感じで、この試合を見ていました。

しかし、不足は様々に言えるにせよ、松本亮には普通の好選手とはまた違う、
スケールの大きさを感じていたのも確かです。
長身で、大柄で、伸びがあり強い、ストレートパンチ中心の攻撃力、というより
「破壊力」は、国内や東洋の中堅クラス相手の試合においては、目覚ましいものでした。

その反面、あまりに動き(足も、上体も、頭も)が乏しく、
長身とリーチから来る懐の深さがあるとはいえ、ほぼ止まって迎え撃つ型で
すっかり固まってしまった最近の松本の試合ぶりを見て、
果たしてこれで良いのか、それとももう変える段階は過ぎてしまったのか、と
疑問を感じてもいました。
このスタイルで、世界上位の相手に勝つとなると、それこそアルゲリョ並みの
精度と破壊力がないと難しいのではないか、と。

その松本が挑む相手が、見事に対照的というか。
目を引く一打の威力や、派手な技巧や速さがあるではないが、
攻防ともに多彩で、堅実な攻め口を見せるダニエル・ローマン。

ある意味、今の松本亮の「是非論」を語るのに、これほど適した相手はいない。
そんな風に思って、試合を見ました。


いざ向かい合うと、体格的にはそん色なし。やや松本が上背あり。
初回早々、距離としてはやや近め。松本はもう少し離れた方が、と見える。
そして、やはりというか、松本はあまり動かず、迎え撃つ型。

この型だと、松本は槍衾のように左ジャブを出せればいいが、現実には単発止まり。
ストレートパンチの距離を作れない。
ローマンはやや低い姿勢から攻め始める。下から上へと連打。
ボディを叩き、右フック2発ヒット。松本もう顔が少し赤い。

2回、松本は右ストレートを決め、同じパンチで追撃。
しかしその前後は、ローマンがボディブローを端緒に入り、上に右クロスを返し、
離れて松本のミスを誘って、打ち終わりをまた打つ、という繰り返し。

手数、ヒット数でローマン、単発ながら威力で松本、という具合で、
この2回は、双方持ち味が出た攻防、と言えました。

しかし3回以降は、初回の攻防がほぼ踏襲される繰り返しでした。

松本はジャブが少なく、右ストレートから左フック返し、というパターンが、
攻め口の大半を占める。
ローマンは松本の強打を恐れず距離を詰め、ボディを2発、3発と打ち、上に返す。
松本は単発ヒットを、倍以上のヒットで打ち消される。

4回は松本が少しリズムを取って動き、左ボディを決めるが、ローマン耐えて反撃。
5回少し均衡するが、ローマンが右ダイレクト、左右ボディで押さえる。

6回も松本、単発ヒットはある。
しかしローマンが目に見えて効いたり、止まったりせず、執拗なボディ攻撃で
手数を出している以上、過度に評価も出来ない。


折り返しの7回、松本ボディを相当打たれているが、ここからさらに馬力を出せるか、
或いは、単発ヒットのダメージをこらえてローマンが攻勢を維持出来るか、というところでしたが、
松本の左ボディが決まるも、ローマンはスイッチしながら連打。
8回ローマン肩ごしの右を決め攻勢。松本のタフさに感心も、やはり打たせすぎ。
この回、松本右の相打ちから連打も、ポイントは取り切れず。

9回は松本が少し離れてジャブ、ストレートで競り勝ったかな?と思う回。
しかし10回、松本また狙った右相打ちに失敗、逆に打たれて少しぐらつくも、
そこまで止まりで堪える。やはりタフ。

11回、単発とはいえ強打の松本を攻め続けているローマンにも疲れの色。
しかし松本も同様、両者手数少なめ、ミスも増える。

最終回、ローマン攻勢に出る。
ボディブローをリードに使っている、と言える風だったが、ここに来て上へのパンチを増やす。
「駄目押し」に来た、という印象。
松本、体が少し揺らぐが単発の右決める。しかし最後また押されて終了。


判定は大差でローマンでした。私は公式採点とほぼ同じか、やや松本に甘いか?
4回は松本でいいかなと(映像で見るとどうかわかりませんが)。
あとは9回を松本に振って、あと迷う回が...ひとつあるかどうか、でした。


攻防ともに精度が高く、ジャブから、右ダイレクトから、
そして左右ボディから上への返し、スイッチしての左ボディ、などなど、
あれやこれやと多彩で、なおかつ松本の強打を手数で相殺する執拗さ、
少し流れが悪くなっても巧みに引き戻す冷静さなど、
ダニエル・ローマンはやはり、世界上位の総合力を見せました。

対する松本亮は、ローマンと比して、あまりにも出来ることの数が少なく、
他にやろうと試みたこともあったでしょうが、それを実現する技巧で劣りました。
時折リズムを取り、足を使い、ジャブが出て後続もあり、という時間帯も、
ローマンが様々にそれを封じ、断ち切ってしまいました。


やはり現状、松本亮のスタイル「固定」は、世界上位には通じなかった。
結果と内容が、それを明らかにした、と思います。

「世界タイトルマッチ」として見るなら、批判されるべき内容なのでしょうが、
日本上位ランカーが、世界上位に挑んだチャレンジマッチとして、この試合を見れば、
この試合の意義は、松本亮の今後いかんにかかっている、という言い方は出来る試合でもあった。
そんな風にも思っています。

あまりに打たせ過ぎ、と終始感じながら、劣勢の中でも、
松本亮は果敢に、懸命に闘い、ローマンの側に緩みや揺らぎが見えれば、
その強打で形勢を変える可能性は、乏しくても、ゼロではない。そう示し続けてもいました。

その心身のタフネスが、この試合を経ても生きていれば、あとはこの大敗を糧に出来るか否か、です。
かなり険しい道のりになりましょうが、そんな気持ちにもさせられる、奮闘ぶりでもありました。



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2 コメント

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本日の試合 (よっぴー)
2018-03-01 14:47:29
さうぽんさん、昨日の観戦お疲れ様でした。
結果はローマンの圧勝でしたね。おっしゃる通り、あの止まったスタイルでは限界がありますね。
また、本日の試合、ネリは罰則されなければ許せません。追放ですよ。
山中の気持ち考えたら・・・・
それと、本日試合はBS日テレで6時から粟生と岩佐放送されるんですね。ボクシングマスターの記事にて発見できてラッキーでした。
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コメントありがとうございます。 (さうぽん)
2018-03-02 03:20:40
>よっぴーさん

止まって迎え撃ち、のみで勝つには、一番相性的に悪かったですね。評価で言えば王者、タイトルホルダーの中では下の方かもしれませんが、ローマンの良さ、多彩さと継続性が出た試合でした。
山中の試合は別記事上げました。罰則については、以前は同感でしたが、違う側面もあるとも考えるようになっていて、その辺も少し書きました。


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