さうぽんの拳闘見物日記

ボクシング生観戦、テレビ観戦、ビデオ鑑賞
その他つれづれなる(そんなたいそうなもんかえ)
拳闘見聞の日々。

挑戦者の「懸命」、最強王者を攻略 矢吹正道、死闘制す

2021-09-22 22:35:53 | 関西ボクシング




京都の会場から帰って参りました。
映像は来週月曜まで待たねばなりませんが、早く見返してみたい、という気持ちです。
とりあえず感想文。経過から。



初回、寺地拳四朗はいつもどおり?に左から。矢吹正道、スタート時点では若干硬い?と見えた。
しかし、すぐにロングの距離から右クロス、左から右。左ボディから入ろうとする場面も。これは外されたが。矢吹。

2回、矢吹が拳四朗のジャブを丁寧に外しているのが目につき始める。距離で外し、ガードで受け、ダックも駆使。
もちろん全部外せるわけもないが、単にリーチ差のみならず、それにかまけず、という意識付けが見える。
拳四朗が左当てて、リズムを掴む展開をかなう限り避けよう、という「方針」。

このあたり、攻撃のみならず防御の方でも高い集中...いや、矢吹らしい表現をすれば「気合い」が見えた、と言うべきか。
意外な、というと失礼ながら、想像以上に矢吹の良さを感じたポイント。

拳四朗はジャブの数を増やすが、思うようにペースを掴めない。互いにヒット応酬の後、ジャブの差し合い。矢吹、最後攻める。矢吹か?


3回、矢吹右ロングで入って左ボディも、拳四朗が足で外す。拳四朗ジャブ、ボディ攻撃。矢吹は挽回図るがミスも多い。拳四朗か。
4回、拳四朗、ジャブから右、ワンツー主体のプレス、という形「のみ」で、出入りの足が見られない。矢吹のボディ攻撃が出る。浅いが単発のヒットも。矢吹。

途中採点、38-38ひとり、残る二人がフルマークで矢吹。矢吹も楽なわけじゃないが、このリードは精神的に大きそう。

5回、矢吹がジャブから目先変えて右アッパー。拳四朗も同じパンチ返す。攻防の密度が上がってくる。
拳四朗はジャブを端緒に追撃して捉えよう、という風だが、矢吹が抵抗し、それが奏功している。
空振りもしっかり振り切るので、拳四朗がその打ち終わりを叩く、というわけにいかない場面が散見される。矢吹。

6回、両者ワンツー応酬。矢吹の左フック。矢吹はヒットのあと、ミスも多いが手を出す。印象が良い。
矢吹が右ヒット、ワンツーも。拳四朗右ボディ。矢吹。

7回、矢吹の右で、拳四朗が足取りを乱す。しかし拳四朗逆襲。ロープ際でワンツー。矢吹、首振った?それともダメージあるか?
拳四朗が追撃、矢吹下がる。矢吹左で飛び込んで反撃。激しい攻防。この日のベストラウンド...と、この時点では思いました。拳四朗。

8回、拳四朗のジャブ、ワンツーとプレスは、矢吹を苦しめてはいるが、らしくもなく単調というか、多彩さに欠ける気も。
矢吹が右フックを立て続けにヒットさせる。矢吹、ロープ際から右ヒット、拳四朗また足元が乱れる。
矢吹追撃し、打ち合いに。前の回以上のラウンド。矢吹。

9回、拳四朗が半ば捨て身、ジャブだけでなく左ボディを連発。右ボディも。
矢吹足が止まるが、苦しいながらもガードを締め、身を捻って、致命傷は避ける。
矢吹が反撃し、拳四朗後退。矢吹もバランス崩しながら右、左と、スタンス踏み換えて打つ。これが出来るのは乱戦のときにお得。
ここで拳四朗、右瞼カット。遠目にも分かる、けっこうな出血。
しかし拳四朗、ボディをまた攻め、矢吹を追い立てて右ヒット。またも打ち合い。

三連続で「今日のベストラウンド」更新の、凄い回。正直に言いますが、採点出来ませんでした。

10回、拳四朗が猛然と出て、矢吹は止まってガード、耐えて凌いで、という時間が続く。
そして、拳四朗の攻めを凌ぎきったのち、激しい逆襲。右ヒット、拳四朗が揺らぎ、後退。
矢吹も「ここで勝負」とばかり、半ば捨て身の連打を繰り返す。
致命的なクリーンヒットがあったかどうかは知らず、一方的に受け身になってしまった拳四朗を見て、レフェリーがストップしました。





この結果だけを見れば、一番最初に多くが思い浮かべるのが、拳四朗のコンディション調整について、だろうとは、容易に想像がつきます。
諸事情あってのことでしょうが、結果どうこう以前に、この12日延期という「リスケ」を、多くが疑問に思い、様々に危惧したことでしょう。
しかし、そういう状況であっても、寺地拳四朗はリングの上で、今日この時の自分自身、その全てを賭けて闘っていました。
試合後、矢吹も言及していましたが、両者の再戦があるなら、あらゆる面で「ベスト」な条件、それが前提であってほしい、とも思います。


が、今日の試合の感想を語るにあたって、それを殊更に言い募る気持ちもありません。
それは何より、矢吹正道が見せた「懸命」そのものの闘いぶりが、それを打ち消すほどに素晴らしかったからです。


長いリーチにかまけず、拳四朗の左を丁寧に外す意識付け。
ジャブや右ダイレクトのみならず、ロング、スイング、左フック、アッパー、ボディフックと、多彩すぎるほどに備えた「リード」の数々。
それをしっかり振り切ることで、相手を威嚇し、リズムを(ひとまず)切る。
好打されると、それが「劣勢」と化す前に、何か仕掛けて、「ヤマ」を作る。最低限、互角だという「絵」を見せる。

その上で、終盤になって、拳四朗が仕掛けた猛攻も、懸命に耐えて凌いでおいて、しっかり逆襲。
10回のストップ直前などは、攻める矢吹、耐える拳四朗という構図ながら、どちらも崩れ落ちる寸前、という風にさえ見えました。
それはまさしく、この両者が、ことに矢吹正道が、持てる力と技を全て振り絞っていたから、なのでしょう。



見終えて、どちらが勝って負けて、というより先に、何と凄い試合を見たものか、と感動した一戦でした。
ことに終盤へ向けての展開ときたら...数千人規模の京都市体育館、思ったよりは入ってたけど、という感じの「ロケーション」でしかないはずが、まるで井上尚弥の大会場で試合のように、歓声と悲鳴が交錯し、会場全体が「揺れて」いたようにさえ感じました。
まあこれは、私個人の勝手な興奮ゆえ、でしかないのかもしれませんが...。

しかし、本当に、何でこの試合が、満員の観衆で埋まった大会場、地上波ゴールデン生中継、という「ロケーション」を得られないのか、世の中間違っているぞ...と言いたい、そんな気持ちでもあります。
久し振りの観戦でしたが、当たりでした。見られて良かった、と心底思います。
寺地拳四朗、矢吹正道の両選手に感謝、そして拍手です。




コメント (5)
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