彼らを何と呼ぶべきか

　私は時々「先軍主義者」という言葉を使っていますが、意味は通じておりますでしょうか。「先軍政治」とか「先軍主義」という言葉は元から存在しますので、全くのでっち上げというわけではありませんが「先軍主義者」は私の造語です。別に意味不明なジャーゴンを作り出そうという意図ではありません。ただ何の解説もなく「先軍主義者」と書いてみても、言わんとするニュアンスは概ね通じるかなと、そう思って使ってきたわけです。

　単なる軍事マニア、オタク、愛好家、軍事評論家と一緒くたに語るのではなく、それとは切り離して語るための言葉として「先軍主義者」が必要だったのです。単なるミリタリーのファンや軍事の専門家は尊重されるべきものですが、それとは違って唾棄すべき対象として、もう少し限定された範囲を指し示す述語が欲しい、そう思ったときに浮かび上がったのが「先軍主義者」ですね。兵器や銃などが好き、格好いいと思う、関心がある、これだけなら良いのですが、単なる趣味人ではなく、往々にして痛い子も混じっている、その痛い子と趣味人を同列に扱わないために、まとめて罵倒しないために考え出したのが「先軍主義者」なのです。

　良心的な趣味人と先軍主義者の違いは、その趣味に関心がない人に向ける態度が挙げられますね。先軍主義者は自分達の嗜好を神聖化し、その嗜好に理解を示さない人を蔑視します。軍事関係に無関心な人に対して実に居丈高に振る舞うのが先軍主義者の特徴です。自分は何でも知っているつもりになっているわけですね。そして軍事評論家と先軍主義者の違いは、情報量もさることながら、現実に対する態度が挙げられます。本物の専門家は現実を語りますが、先軍主義者はまず結論ありき、自説を押し通すためなら現実に目を背けることを厭いません。気に入らない情報は「誤訳」「捏造」「偏向報道」などと、自らの脳内世界に相応しくない情報をきっぱりと退けるのが特徴です。

　そして言うまでもなく、何を語らせても結局は軍事力行使の正当化がに至る辺りがポイントです。平和維持のために軍隊が必要であると語っているように装いつつも、軍事力の必要性を印象づけるために仮想の脅威を力説するなど、要は軍隊が何より優先される社会を信奉し、目指しているわけです。この辺の手合いを想定して「先軍主義者」と呼びたいのですが、「先軍主義者」という言葉からニュアンスは感じ取れますかね？

　造語でもなんでも、要はパッと見た感じでニュアンスが伝われば、それは通用する言葉であり、既存の言葉と同じ価値を持ちます。逆に、解説がなければわからない、人によっていかようにも解釈できるようであれば、造語としては「質が悪い」と言わざるを得ません。「地頭力」なんてダメな例ですね。ビジネス本とかテレビをよく見る人にはそうでもないのでしょうか？　とりあえず私には何を指しているのか想像できませんし、一昨日ぐらいまで「じとうりょく」と読んでいました。泣く子と地頭には勝てぬの地頭です。同じことを誰かが書いていたので私だけではないはずです（巡回先のブログで見たばっかりなのですが、ブックマークを忘れました。どなたのところでしたっけ？　8/28追記、こちらでした）。

　「先軍主義者」の他には「民主党集中制」という造語もたまに使います。ニュアンスは伝わるでしょうか。伝わらなければ、不徳の致すところと思うほかありません。

　……で、前フリばかり長くなってしまいましたが、私が考えているのはこちらのエントリで取り上げた「Ｄ層」です。詳細はリンク先のエントリをお読みいただければ幸いですが、ともあれこのＤ層、便宜上の仮称とはいえ造語としては最低ランクです。Ｄ層などと言われても解説がなければそのニュアンスは微塵も伝わらないでしょう？　これではダメです。ただこのＤ層、これから物事を考えていく上では重要な概念と感じてもおりまして、「Ｄ層」に相当する人々をもっと適切に表す言葉が欲しいなぁ、と常々思案しているのです。しかるに決定打となるものは思い浮かばず、どなたか妙案をお持ちの方はいらっしゃいませんか？

 

　←お客様の中に運転手の方はいらっしゃいませんか？