非国民通信

ノーモア・コイズミ

キーボードの理想的な配列を考える

2013-12-07 22:54:28 | 編集雑記・小ネタ


http://commons.wikimedia.org/wiki/File:1900_Schreibmaschine_Royal_anagoria.JPG

 上の画像は古いタイプライターのものですが、この時期から現代のPC用のキーボードに至る配列の原形はあったわけです。アルファベットの主立った配列はタイプライター時代から受け継がれ、ここから諸々のキーが追加されてきました。


http://en.wikipedia.org/wiki/File:Unicomp_keyboard.jpg

 そしてこちらが現代の最も一般的なキーボードです。カーソルキーや各種の機能キー、テンキーなどが付け加えられ、ほぼ完成と目されているのか、この形が定まってからは目立った変化はありません。しかし、どうしてこういう配置になってしまったのか、あまり上手い結果ではないようにも思うところです。もうちょっと、別のデザインが普及してしかるべきではなかったかと。

 ここで私が言いたいのは現行のQWERTY配列がダメでDVORAK配列の方が云々といった類ではありません。QWERTY配列は良しとして、なぜQWERTY/アルファベット部分から右方向にばかり拡張されていったのかを疑問に感じるわけです。まず教科書的なタイピングの基本として、キーボードの「F」と「J」がホームポジションとして左右の人差し指を置くものとされています。しかし、現行の右に右に伸びていったキーボードで実際に指を置いてみるとどうでしょう?


マウスが遠すぎる!

 上述の通り、キーボードは原形からひたすら「右に」キーを追加していきました。そして追加の標準的なデバイスとしてマウスが普及したとき、当たり前のようにそれは「右に」置かれるものとして認識されてきたわけです。少なくとも私の場合、「F」と「J」が体の正面に来るようにキーボードを置いてみると、明らかにマウスが遠すぎて操作に支障を来します。正面のアルファベット部から右にカーソルキーがあって、そのさらに右にテンキーがある、その先にあるマウスまで手を伸ばせば必然的にタイプが止まってしまうのは言うまでもありません。


ホームポジションが正面に来ない!

 では、そんなに大きく腕を右に伸ばさずともマウスが届くように、マウスを基準にキーボードを置いてみたらどうでしょう。必然的に、キーボードを左側にずらさなければならなくなります。そうなると「F」と「J」のキーも左側へ、「F」と「J」に左右の指を乗せるために、今度は体を左にひねらなければならなくなってしまうわけで、こんな体勢でPCを使っていれば腰や首を痛めることは必定です。「F」と「J」を体の正面に置くことと、マウスを自然に手の届く位置に置くことは両立しません。

 私的に可能な対策としては「マウスを左手側に持ってくる」ことですね。これだとキーボードのアルファベット部とマウスの距離を最短化できますので、スムーズにマウス操作とキー入力を両立できる――かに思えたのですが、幾らか難点がありました。「使用頻度の高いショートカットは左手で入力することが多い」のです。例えば「ctrl+C」や「F2」など、この辺は左手で入力したいところですけれど、マウスが左ですと「マウスからキーボードへ手を動かす」という工程が入ってしまう、右手にマウスを持っていたときには不要な手順が加わってしまい、やはりベストではありません。

 余談ですが、「左手用」ではなく「左利き用」として売られているマウスの方が多いのも私には不可解です。なぜPCの入力デバイスは右へ右へと志向しているのでしょうか。マウスは右に置くもの、右手でマウスが使えない人のために「左利き用」マウスは用意するけれど右利きの人が左手で使ったりはしないよね、みたいにメーカーは想定しているのかも知れません。何でも右でなければならないというものではないと思うのですけれど、当たり前のようにマウスは右側に置かれています。


Majestouch 2 Tenkeyless 赤軸・テンキーレス・かなあり


Logicool Bluetooth Easy-Switch Keyboard K811

 例えば上記のような、テンキー部分をカットしたキーボードや、変則的な配置によってあれこれと切り詰めたキーボードもあります。こういうものを使えば多少は楽になるのですが、ただテンキーをなくしただけでは、まだ右に長すぎる、変則的な配置はミスタイプの山を築くばかりとあって、幾分かの不便は残るわけです。もうちょっと改良できるのではないでしょうか。そこでヒントにして欲しいのが以下の「古い」キーボードです。


http://en.wikipedia.org/wiki/File:IBM_5150_Keyboard.jpg


http://world.std.com/~jdostale/kbd/SpaceCadet.html

 規格の統一が進む以前には、こんな配列もあったのです。ポイントは「アルファベット部の左側にもキーがある」点ですね。現代の標準的なキーボードは全て、「アルファベット部の右に」キーを追加しているわけですが、左にあって何故いけないのでしょうか? 何故「左に」キーを追加したタイプのキー配列は滅びてしまったのか、よもや「自分は右利きなので左側にあるキーは上手く押せません」みたいな人が規格を主導していったわけでもないでしょうし……


S.T.R.I.K.E. 7 Gaming Keyboard


分離合体機能がロマン溢れるMad Catz製キーボード「S.T.R.I.K.E. 7」「S.T.R.I.K.E. 5」が11月23日に国内発売(4Gamer.net)

 ちょっと色物ですが、現行品にもこういうキーボードならあります。カーソルキーとテンキーの部分を切り離して自由にレイアウトできる優れモノですね。これは悪くありません、後もう一押しで特定用途向けに限らず理想的なキー配列が得られそうです。理想的な――といっても人それぞれではありますけれど、上記キーボードのように分割して「好きなように配置できる」ことは全てのユーザーにとってメリットとなり得ます。惜しむらくは2分割に止まっていること、これが3分割できるタイプであったなら!

 ……で、個人的に私が考えるベストの配置が上記です。キーボードが3分割できることを前提として、マウスとテンキーは「右へ右へ」ではなく「奥と手前」に並べます(数値を集中的に入力する場合はテンキーとマウスの配置を入れ替えて対応)。そしてカーソルキー部分は「左側へ」。こうすればアルファベット部分を体の正面に置きつつ、マウスを含めた全てのキーを体をひねらずに自然な範囲で操作できるはずです。左にdelete、右にBack space、左にカーソルとpageUp/down、右にマウスとホイールと、従来は機能が近いにもかかわらず右側に偏在していたものを左右にバランスよく振り分けることもできます。こういう配置が可能なキーボードをどこか作ってくれませんかね。

 

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2 コメント

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Unknown (mobitan)
2013-12-15 21:26:51
お望みに近い製品は昔ありました (http://d.hatena.ne.jp/mobitan/20100226/1267183414 に写ってます) が、所詮は思いつきの漸進的改善にすぎず、すぐに別の不満が出てくると思います。
いまからキーボード最適化道に足を踏み入れるなら、いっそ一足飛びに Truly Ergonomic Keyboard http://www.trulyergonomic.com/ など試してみてはいかがでしょう!?
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Unknown (非国民通信管理人)
2013-12-15 23:25:15
>mobitanさん

 なるほど、上のリンク先に乗っているキーボードは良いですねぇ。変に配置をいじらず、ただカーソルキーが左に来るのが理想なのですが、「昔」の話になってしまうのが残念なところです。エルゴノミクスキーボードのように「いじりすぎ」なものほど新しい不満が出やすいように思うのですけれど、制作側の思惑は違うのが惜しまれます。
返信する

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