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ノーモア・コイズミ

疑問に思って欲しいもの

2012-06-29 22:53:12 | 社会

<放射能除去>不当広告、昨年度136件 東京都、修正指導(毎日新聞)

 福島第1原発事故後の放射能に対する市民の不安に乗じ、放射性物質除去に効果があるかのような不当なインターネット広告が、東京都の調査で昨年度136件見つかっていたことが分かった。都は事業者側に広告の修正や削除の措置を取るよう指導した。
 
 都生活文化局は消費者行政の一環で、ネット通信販売のバナー広告などを日常的に監視しており、昨年度は約2万4000件をチェックした。景品表示法などに抵触するとして指導したのは前年度(302件)の2倍近い582件に急増。うち約4分の1は、実証データがほとんどないまま放射性物質除去をうたった広告だった。
 
 扱っていた商品は▽浄水器56件▽健康食品34件▽放射線測定器16件▽マスク11件--など。浄水器で「放射性セシウムを95~99%、ヨウ素を96~99%除去」と宣伝したり、健康食品を「放射性物質や環境汚染から来る発がん物質を排出してくれるサプリ」と紹介したりしていた。
 
 一般の商品と製法が変わらないマスクや洗剤を「放射性物質に効果がある」とPRした広告も、表示に問題があるとされた。また、特定の物質を吸着する性質がある鉱物のゼオライトを使ったとする複数の商品でも、科学的根拠がない効果が示されていた。

 

 まぁ、この辺は今更のことですが、どうにも原子炉の冷却や放射性物質の拡散を止めるより、ずっと時間を要することがあるのでしょう。国民の頭を冷やすのは原子炉を冷やすより難しく、デマの拡散を止めるのは放射性物質の拡散を止めるより難しい、原発のリスクを左右するのは電力会社だけではなく、その社会の理性でもあるように思います。反原発を掲げたヘイトスピーチや風評被害を広めようとする声を耳にするにつれ、電力会社だけの問題では済まされないのだと痛感するところです。

 ……で、引用元で伝えられているように不当広告が急増、中でも放射性物質除去をうたった広告が目立つわけです。ハローワーク等の求人広告に掲げられた偽りの嵐に比べれば可愛いものと言えなくもないですけれど、ともあれ根拠なく「放射性物質に効果がある」「放射能を除去できる」と称した商品の売り込みは減る様子がありません。どうなんでしょうかね、原発に否定的でありさえすれば科学的な根拠は問わない昨今の反原発の姿勢とシンクロしているような気がします。実際の影響の多寡を調べるよりも不安に乗じる形で脱原発を進めようとする、そうした気運が高まるほど、不安に訴えかけるような広告が受け入れやすくなるのですから。

 

「脂肪にドーン」CM、誤解招く恐れと改善通知(読売新聞)

 サントリー食品インターナショナルが販売する特定保健用食品「黒烏龍茶」のテレビCMが誤解を招く恐れがあるとして、消費者庁が同社に改善を求める通知文を送っていたことが25日、わかった。
 
 対象となったのは、アニメの主人公が「脂肪にドーン」とひとさし指を突き出し、「食べながら脂肪対策」というテロップが流れる内容。昨年8月から全国で放映された。
 
 通知文は3月26日付。内閣府消費者委員会の指摘を受け、「偏った食生活を助長する恐れがあり不適切」として改善を求めた。サントリーは「CMの表現は元々配慮して制作している」として、今年6月中旬まで放映を続けた。

 

 例によって求職者に誤解を与える求人広告を掲載するハローワークにも改善を求めよと思わないでもないのですが、ともあれこんなことも伝えられているわけです。サントリーの姿勢もどうかという気がしますけれど、それがマーケティングとして成功してしまうのですから似たようなケースは今後も相次ぐことでしょう。「放射性物質に効果がある」とか「食べながら脂肪対策」みたいな類は、それだけで十分にいかがわしいと私などは感じるところですが、それでも信じたい人は信じてしまう、自分に都合の良いように頭の中で「設定」してしまうものなのかも知れません。人々の不安や期待を掻き立てる要因は、実効性や確からしさよりも別のところにあるのでしょう。

 なおサントリーによれば「OTPP」こと「ウーロン茶重合ポリフェノール」が有効成分とのことです。ポリフェノール云々は近年の流行の一つですけれど、ことによると摂取量の増大が健康リスクを招いたりするのではとか、普通の人は考えないのでしょうか。イソフラボンとかも取りすぎは良くないと聞きますけれどOTPPはどうなのか、何か根拠があって「大量に含まれている飲料を摂取し続けても大丈夫」と判断しているのならともかく、何か特定の対象(例えば東北地方の農産物とか、遺伝子組み換え食品とか食品添加物とか)を無闇矢鱈と危険視する一方で、OTPPなりオルニチンなり、健康関連で持ち上げられた類には何の疑問も持っていないとしたら、それはリスク評価の姿勢として甚だしく偏ったものである、必然的に間違った判断へと繋がるものと言えます。

 例えば、電磁波過敏症と称する人もいるわけです。本当に電磁波に反応しているのかどうかはさておき、じゃぁマイナスイオン過敏症を訴える人はいないのかと、私はその辺を疑問に感じるのです。マイナスイオンだって、と言うより定義の曖昧なマイナスイオンの方が格段に、正体不明の「何が起こるか分からない」代物のはず、氾濫するマイナスイオンの存在を不安に感じる人がいてもおかしくない、それを避けられる権利を主張する人がいたって不思議ではないと思うのですが、なぜか電磁波その他諸々を気にかけるようなレベルの人ですら、マイナスイオンのことは全く気にしていないように見えるのはどうしてなのでしょう。結局、自分にとって嫌悪の対象であり、排除したいと願っているものを「危険」と位置づけ、そうでないものは検証すらしない、そういう基準で判断されているのかも知れません。

 

PCメガネ「JINS PC」、自販機を全国に設置へ(@niftyビジネス)

ジェイアイエヌは、パソコン用メガネ「JINS PC」専用の自動販売機「JINS Self Shop(ジンズセルフショップ)」を2012年7月2日より全国のショッピングセンターなど商業施設へ順次設置開始する。パソコン用メガネに関心を持ちながら店舗に出向くのを面倒に感じている人なども手にしやすくなる。

JINS PCは、パソコンやスマートフォン、タブレットの液晶ディスプレイなどから出る波長380―495nm(ナノメートル)の可視光「ブルーライト(青色光)」を50%程度遮断できるとうたうメガネ。ブルーライトはエネルギーが高く、目の角膜や水晶体で吸収されず網膜まで到達し、長時間浴び続ければ負担になる。

 

引用元、LEDの色温度を考える(All About)

 このJINSが訴えるブルーライトの影響に関しては鵜呑みにできないところもあります。All Aboutに掲載されたLEDのスペクトル分布も製品次第で差はあることでしょう。それでも波長を見ると、まさにJINSが目に悪いと説く380―495nmの部分にLEDの大きな山ができていることは注目に値します。これで即座に「LEDは危険」と判断すべきものではありませんけれど、検証されるべき懸念材料の一つであることもまた否定できないでしょう。にも関わらず、安易にLEDへの置き換えが奨励されてしまう、そこに批判的な声、安全性を問う声が聞こえてこないところに私は不安を感じます。自分が気に入らないもの、社会から放逐したいと考えているものの危険性ばかりが強調され、都合のいいものは盲信される、その一方で実際の影響の度合いはマトモに審査されないどころかスルーされているとしたら、こうした判断の偏りこそが我々の生活を危うい方向へ導くものと言えます。

 

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4 コメント

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Unknown (くり金時)
2012-06-30 03:26:07
世の中、広告通りの効能や、結果が出れば、何も問題なんて起こらないはずなんですがねぇ。(実際には、結構問題が発生しているのだが。地味でわかりづらいから、ほとんど表に出てこない。)最近じゃ、「広告に載っている」だけで、無条件に信じ込む人の多いこと!余りにも「お人好し」過ぎだと、私は考えているけどね。一方、「放射能」「生活保護」ともなれば、異常に騒ぐ。不勉強を晒している気がするのだが、騒ぐ当人たちはわかってないんだろうな。多分。(そこにつけ込む輩がいるのが、なんともやり切れんが。)広告なんて、話半分程度位で見聞きするのが一番だと思うが。
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Unknown (非国民通信管理人)
2012-06-30 22:58:53
>くり金時さん

 結局、ろくに確かめもしないで鵜呑みにしたり盲信したり、あるいは全否定したりする人ばっかりなんでしょうね。眉唾物だな、とか本当かな?と自分で考えてみるべきところを、その実は「好き嫌い」で信じるかどうかが分かれているようにすら思います。そして後になってから自分の「盲信」あるいは「全否定」を正当化する理由を探すみたいな。
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Unknown (ノエルザブレイヴ)
2012-07-02 22:52:04
週刊プレイボーイに今短期連載されている「これでいいのか脱原発」という特集が何気にいい感じだと私は思います。機会があれば一読をオススメします。
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Unknown (非国民通信管理人)
2012-07-02 23:08:44
>ノエルザブレイヴさん

 プレイボーイは、キン肉マンがweb連載に移ってから読んでませんねぇ。まぁ、脱原発論を批判的に検証する見方が出てきたのは悪いことではないのでしょうけれど、さりとて今の脱原発論に連なる煽りやデマを撒き散らすことに、週刊プレイボーイだって荷担してきたはず、その辺への反省はあるのかと首を傾げないでもありません。
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